2015/06/24 のログ
ご案内:「常世神社」に狛江 蒼狗さんが現れました。
■狛江 蒼狗 > お昼過ぎ。神職たちが竹箒で境内を掃いている。
からっと晴れた青空に見下ろされているが、落ち葉は湿りを帯びてそこらじゅうに散っている。
昨晩気圧の影響から、激しい雨と風に見舞われたためだ。
常世島も離島の宿命からは逃れられぬらしい。
大振りな箒を持つ制服姿の狛江蒼狗は、単なるボランティアだ。黙ってさかさかと掃いて集めている。
「………………」
ご案内:「常世神社」に久喜棗さんが現れました。
■久喜棗 > 昼下がりの午後、雨上がりの道を小石を蹴りながら散歩を楽しむ
途中で神社に立ち寄ったところ見たことのある男が箒を持ち掃除していた
それだけならば日常の1シーンにすぎないが、その男は確か公安を自称していたはずだ
公安がこんなところでなぜ掃き掃除を?などと疑問に思いながらも興味本位で声をかける
「おお、蒼狗ではないか。この間ぶりじゃな
こんなところで掃除などしておるとは意外じゃな、これも特雑の仕事か?」
身長の関係上、見上げるように顔を向けながら大男にそう尋ねた
■狛江 蒼狗 > 地道にゴミ袋へ落ち葉を掃き溜めていく。もう、90リットルが二つ一杯になった。
「?」
参拝客とおぼしき少女に声をかけられると、首を傾げ。
白髪にそこから伸びる角。それを目で辿ってから、ワンテンポ遅れてハッとして気がつく。
「久喜? ……こんにちは」
足を揃えて慇懃に礼をする。いつかの夜よりも真面目ったらしい。
「………………」
落ち葉やゴミが多く朝拝前の掃除の時間までに境内が片付かなかったとき、蒼狗は呼ばれる。
常世神社の宮司と、狛江神社の宮司──つまり、蒼狗の父親──に面識があり、その繋がりで蒼狗の連絡先も渡しているからだ。
といっても親しい訳ではなく単に顔見知りというだけで、狛江蒼狗にこの神社の神事がどうこうという権利や義務はない。
ただ神社の掃除というのは大変だから。
『手伝って欲しい』、『喜んで』とスマートフォン越しに遣り取りをした。それだけの話である。
「これは特雑とは関係ない。…………ボランティア、だろうか」
そのあたりの事情を、口下手な蒼狗は上手く説明ができないので、そういうふうに纏めて答えた。
「きみは散歩だろうか」
さっ、さっと片手間に箒を振るいながら、久喜に訊ねる。
■久喜棗 > 辺りを見回しその落ち葉の量に少し驚く
そういえば昨晩は風も強かった、だからだろうか
「ひどい落ち葉の量じゃなぁ、昨晩の嵐のせいか?
こう落ち葉が多いと掃除するのも一苦労じゃの」
蒼狗の事情を知らぬ棗はボランティアという答えににこりと微笑む
公安をやってるだけにやはり根は真面目な若者なんのだろうか、などという印象を受けた
「ほーう、それは感心感心
偉いではないか、自ら進んで掃除を手伝うなどとは
うむ、儂はただ散歩のつもりじゃったがな
どれひとつ儂も手伝ってやろう、箒は余っておらぬか?」
といって左手のひらを差し出し箒を要求する
■狛江 蒼狗 > 参拝道や社務所、拝殿の前など目につくところは既に掃除が終わっている。
ここは、裏参道側の階段であり、その他の道もそこいらじゅうに落ち葉が散っているし、風に流されてきたビニール袋もちらほら見える。
「…………大変な日だから、俺が来た。
……毎度手伝っているわけでもない」
偉い、だのと言われると面映くてたまらない。
久喜は年下風の少女に見えるが立ち振舞は遥か年上めいて感じられて。
そんな彼女に言われると余計に照れくさい。
だからそうして事実を付け足しながら、顔をそむけた。
「…………」
(それは、悪い)
と言おうとして、やめて、ゴミ袋を乗せるリアカーから小振りな箒を取り出してきた。
それを久喜にすいと渡す。
「この前言っていた礼だのというやつか」
そう、微笑んで言いつつ有り難く任せることにする。
■久喜棗 > 箒を受け取ると階段を降り、片手でカサカサと落ち葉を掃き集めていく
「なるほどのう、しかしこのような日にだけでも手伝うのは
やはり手伝ってもらえる側としては有難いと思うぞ
良いことをしているのだからそう照れるでない、胸を張るべきじゃぞ」
と言って顔を背けている蒼狗をクスクス笑う
「礼?ああ…そういえばそのようなことも言ったな
気にするでない、それとこれとは別の話じゃ
今日はただ暇つぶしついでにやっておるだけじゃよ
こうしてお主と世間話もできるしな」
その後、掃き集めた落ち葉をちり取りに入れようとしたところで問題が発生する
片手だけでもできなくもないが、ちり取りが面倒くさいのだ
掃いてちり取りに入れて、箒を近くにおいてからちり取りを持ち、集まった落ち葉をゴミ袋に入れて、と
段階を分けてこなしていく
■狛江 蒼狗 > 「………………」
むず痒さで表情が覚束ない。
笑うような、困るような、慌てるような、織り交ざった顔だ。
歳上の女性は苦手である。
久喜が実際に歳上かどうかはよく解らないが。
とにかく、なんとなく、色々と見透かされている気分で落ち着かないのだ。
「別の話、なのか?」
顎に手を当てて小首を傾げた。
(掃除の手伝いだけでも、十二分に礼に足ると思うのだけれどな)
「………………では、甘えておく」
訝しんだが、本当に暇なのだろう。
常世神社は学区から離れている。こんな所まで足を伸ばすくらいなのだからきっとそうだ。
ステンレスの火ばさみでビニール袋と、空き缶を拾う。
落ち葉とそれ以外では分別をして捨てる。久喜には落ち葉を任せて、こちらはそれをやる。
「………………」
さて。世間話だ。
蒼狗は口下手な男である。話題のチョイスはちょっとした難題であった。
──それはそれとして。
「持とう」
久喜の傍に寄ると、ちり取りの把手を持ち、箒で入れ易いよう固定して向ける。
「………………この前といい、散歩が好きなのか」
当たり障りのない話題も、そうして差し向けながら。
■久喜棗 > なんとも言えない微妙な表情を浮かべる蒼狗の顔を見ながら楽しそうに微笑む
こういった年頃の子は多感で繊細なためか反応が見ていて飽きない
「ああそうじゃ、今回のを礼と受け取られてはつまらぬからな
礼はまた今度にでもするとしよう…まぁ今はまだ特に何も思いついておらんが
そうじゃのう…お主何か趣味とか、もしくは好きな食べ物でもあるか?」
と言って蒼狗の反応を伺う
天文好きなのだからその関連でよかったかもしれない、と口に出した後すぐに思ったりもしたが
蒼狗が持ってくれたちり取りに落ち葉を詰め入れていく
「おお、すまんな。助かったわ
掃除もちと片腕ではやりづらいものじゃなぁ、やはり
うむ、儂の趣味か?
そうじゃなぁ…まぁ散歩は趣味というより日課に近いかもしれんな
あとはそう、釣りじゃな
港に行くと結構魚が釣れるのじゃよ
お主は釣りなどやったことがあるか?」
■狛江 蒼狗 > つまらぬとは一体。
生来余り女性と触れてこなかった身である。
複雑怪奇の乙女回路がどう駆動するかなど予想できようはずもない。
「……トレーニング。あと、コーヒー」
ともあれ、端的に答えた。
ちり取りを少しずつ後ろに動かして、集まったものを綺麗に収めた。
ざあ、と湿って重いそれらを袋に流し込む。
「礼には及ばない。……隻腕の知り合いは居るし、なんとなく、苦労はわかる」
“あの男”と同様に妙な経緯を辿っているのやら、それとも事故か何かか、生来のものか、知らないが。
いま初めて久喜が隻腕である事を意識させられた内心の動揺を表に出さず、何の気もないふうを装う。
……どう、触れたらよいやらわからないから。仲良くもない己が。
「日課か。…………釣りは、ないな」
神道は殺生を禁じられていない。
潔斎のときにはそういう腥いことを出来る限り避けようという考えはあるが。
でも、特に釣りが趣味の者と付き合った事もないのだ。
「…………楽しいのか、釣り」
粗方缶等は拾い終わったので、久喜と共に箒を掃き、ちり取りは自分が担当しながら、そう訊うてみる。
待つばかりで、退屈なものだというイメージがあるのだ。
■久喜棗 > 蒼狗の鍛えられた体を見てうんうんと頷く
「なるほど、確かに筋トレが趣味という体をしておるわ
その歳にしてはずいぶん筋肉質であるものなぁ
それと、珈琲じゃな…ふむ、儂はあまり珈琲は飲まぬ方じゃがそうじゃな
何か今度美味い珈琲でも探してみるとしようか
ちなみに味はどのような物が好きだったりするんじゃ?
ほれ、珈琲と一口に言っても酸味や渋みがあるじゃろう」
蒼狗の反応に隠してはいるものの少し気まずいものを感じ、気を使わせてしまったことに気づく
そういうつもりではなかったと弁明したいが、それを口に出すとこの少年は更に気を使ってしまうかもしれない
なのでこの話はそこで終わらせ、自分の趣味の話へと移る
「うーむ、そうじゃな。お主が楽しいと思うかどうかはわからぬが
暇を持て余してる者にとって釣りほど楽しい物はないぞ
魚がかかるまでは結構時間がかかるのだが
ハマるとそれまでの時間が楽しくなってくるものなのじゃよ
もちろん釣り上げる時が一番楽しいのは言うまでもないことじゃがなぁ
お主は職務があるゆえそう暇な時間が多いわけでもなかろうが
休みの日に何もすることがなければやってみるのもよいかもしれんな
なに、そう道具も高いものである必要はない
一番安い竿と網で十分じゃ、あと釣り餌は魚によって変わってくるから店主に聞いてみると良いな」
自分の趣味の話に思わず饒舌になってしまう
言い終わった後自分の喋り過ぎに思わずオホンと咳払いした
■狛江 蒼狗 > 週に三回ジムに通い、筋肉に負荷をかける。人間科学に基いた正しいスケジュールとカリキュラムで。
半ば自らに脅迫をかけるような強い意志のもとで、それを続けている。
「強くならねばならんからな」
趣味に打ち込み楽しんでいる、というような柔らかい表情や語調ではない。
「…………」
コーヒーについて聞かれると一拍間を置いて。
「『男なら──ブラックだ』」
ドラマの登場人物のような芝居がかった口調で、右手にマグカップを掴むような動作をとらせながらそう言う。
「…………コーヒーを好むのも人の影響でな。その人はとても渋いのを飲んでいた」
それから、また一拍黙り、
「銘柄についてはそこまで詳しくもないし、拘ってもいなかったりする」
照れくさそうにそう言った。
さかさかと。
箒を動かしつつ、久喜の長台詞へ聞き入る。
(星について語った俺も、同じように見えていたのだろうかな)
楽しそうな様子はなんだか、見ていて愉快だ。久喜は可愛らしい。
肝心の内容については、『とりあえずやってみろ』というのに集約されるようだというぐらいの理解である。
「……青垣山は自然が豊かだという。
暇があれば……川釣りでも試してみるとしよう」
目を細めてそう言う。先の予定を律儀に頭で確認しつつ、いつなら時間がとれるだろうかと考えつつ。
落ち葉は、そうしているうちにおおかた片付いていた。
「お疲れ様、久喜。……助かったよ」
ゴミ袋の口を閉じて、リアカーに乗せる。
リアカーも一杯だ。中型サイズのものへ隙間なく袋が詰まっている。
■久喜棗 > 「うむうむ、男の子は強くあらねばならんからな
やはり身体こそ資本よのう」
蒼狗の答えに嬉しそうに頷く
単純に男だから強くなりたいというわけではないことは言い方からして理解できたがそこは触れずにいた
「ふむ…なるほど、お主はブラックが好みなのじゃな
儂はあまりブラックは飲まぬでなぁ…ついカフェオレにして飲んでしまうのじゃ
珈琲屋の者にでも何かブラックで飲んで美味いものが無いか聞いてみるとしよう
まぁ儂に任せておけ、必ず良い物を手に入れてみせようぞ」
といって自信ありげに無い胸を張って答えた
「ああ、あの山か。確かにあそこは自然が豊かじゃのう
うむ、そういえば儂もあそこで釣りをしたことはなかったな
川釣りは海釣りとはまた違った趣があって良いものじゃな
ただあそこはたまに化け物の類いが出よるから、そこだけは注意じゃな」
落ち葉を掃き終わり、箒を片付け石段に腰を下ろす
ふぅっと息を吐き、ゆっくりと体を休める
「ふぅ…やはりただの落ち葉掃除とはいえ嵐の後は一苦労じゃのう
お主こそお疲れ様じゃ、なに暇つぶしだと言ったろう
さて……」
休み終え、石段から腰を上げ蒼狗に向き直る
「そろそろ儂もお暇するとしよう、邪魔したな蒼狗よ
次会う時を楽しみにしておくがいい」
そう言って入口の方へと歩いていく
鳥居をくぐった辺りで振り向きブンブンと手を振って別れを告げた
ご案内:「常世神社」から久喜棗さんが去りました。
■狛江 蒼狗 > 暢気で静かな神社の一角は、話の華が咲いていた。
こんなにも長く談笑するのは久々のことだ。
時間自体は大した事がないかもしれないが、とにかく蒼狗には久々だ。
(着物でカフェオレと言われると、大正ハイカラじみた響きがあってなんだか面白い)
(化け物の類が出るのならば、いっそ公安の仕事の一環として行けないか上に打診してみようか)
(それでも助かったのだから、有り難い暇つぶしだ)
とか、諸々の心情を含めた「うん」「うん」という頷きを久喜に返し、話はおしまいに近づいた。
「じゃ、また、だな。……さようならだ」
リアカーを引く体勢になり、ぐっと体重をかけると車輪は転がる。
水を含んで重たい落ち葉の塊たちは、軽々と運ばれていった。
押しながら、遠くの手を振る久喜へひらひらと手を振り返す。
(気にするな、と言われても。借りができてしまったか)
なにか考えておこうか、そう思いながら蒼狗はゴミの収集場所へ急ぐのであった。
ご案内:「常世神社」から狛江 蒼狗さんが去りました。