2015/08/22 のログ
■ヨキ > 「なッ……何奴……!」
(ずざざざ。転がってくるユキヱを、ひょいと片足を上げて避ける。喋った。今、明らかに喋った。
燃え尽きたユキヱを抱き起こし、その肩を揺さぶる)
「しっかりしろ平岡君!
おのれ猫……ヨキの生徒に何と不埒をな真似をッ」
(今生の別れよろしく平岡の手を握り、目を伏せて首を振る。
形見の武器を受け継ぐかのように、仰々しく猫じゃらしを取る)
「常世島に公安、風紀、そしてヨキありッ!
君の仇はこのヨキが討つ……!」
(眼光鋭く、猫をきっと睨み付けた)
■平岡ユキヱ > 「いや生きてます生きてます」
頬に肉球の跡が残っているが、割と元気だ。
死んでませんアピールをしながら魔剣猫じゃらしを手にしたヨキ先生を見守る。
「先生! 気を付けてください! その猫…なんていうか…
とらえどころがない達人の動きというか…。霞かのれんと戦っているような…!
とにかく普通じゃないです!」
ちょこんというよりは、どどんと鎮座するような風格を持つ猫がヨキと向き合うだろう。
石燈籠の上に座し、しゅるりとただしなやかに尻尾がゆらめかせて、目を細める。
■ヨキ > (割とぴんぴんしているユキヱを、猫じゃらし片手にシリアスな顔で見下ろす。
なんと殊勝な……とでも言いたげであった。面倒なタイプだ)
「すぐに決着をつける。君はこれを」
(持っててくれ、と、徐にスーパーの袋をユキヱに預ける。
中身はしょうゆとか白ごまとかスナック菓子とか、そういう品々だ)
「ふふ……このヨキが神仙のごとくに霞を呑み尽くしてやろうぞ。
のれんならば、腕押しのち引き裂いてやるわ……!」
(不敵な笑みを湛えながら、ゆらりと歩む2m弱の長身が猫と対峙する。
石灯籠を見上げて猫じゃらしを向けるその構え、並みの美術教師ではない――!)
■平岡ユキヱ > 「生モノとか冷凍系はないですよね?」
この時期はなー、としみじみ感じながら神妙に袋を両手で丁寧に受け取った。
油断すると速攻でダメになる恐ろしい奴らである。
「うわー!? ヨキ先生なんか変なスイッチはいってませ…えぇ…!?」
思わずツッコみそうになる中、じとりと嫌な汗が流れる。
「か…構えが…。堂に入っている…」
なんだあの美術教師…と見守る中、虎猫が座った体勢を解いて、四足で構える。
『こちらも構えるに値する』と、考えているようだ。
静かに木漏れ日が漏れる境内、ざぁと生ぬるい風が吹いた瞬間。
『ヌンッ!!』
明らかに猫の鳴き声でない鳴き声を上げながら、虎猫が爆ぜた。
空を裂く猫パンチが矢のような速度で飛ぶ。
■ヨキ > 「抜かりない。
もしも買っていたらば、そもそも此処へは寄らなんだ!」
(ドヤ顔ドン!大ゴマ!)
「案ずるな。間もなく終わる……」
(流れるような動きで眼鏡を外し、懐へ仕舞い込む。戦いの合図だ。
獣の虹彩が猫を見据え、夏の日に焼け付いた木々がざわめく)
「――はあッ!」
(一閃!)
(――すこん、と音がして、猫パンチがヨキの顔に鋭角に刺さる。
潰れた犬のような、文字に表すも憚られる見っともない悲鳴を上げて、ヨキの身体がよろめく)
「そ……その動き。面白い!
かつてヨキが獣であった頃を思い出すわ……!」
(その肉球揉み尽くしてくれる、とか何とか叫びながら、猫を引っ掴もうと鉤爪めいた手を振るう。
かつて猫との間に何かがあったらしい。
そうして肉球は、獣にとっては触らせるためのものではないらしい)
■平岡ユキヱ > 「ならばよし!」
ドドン! と同じ気負いで答えるユキヱさん。
勉強させてもらいます! と先生と猫とのやり取りに目を見開く。
「~ッッ!」
まばゆいほどの勢い、その数瞬を少女は見逃さなかった。
「はっ…速い! いやそれ以上に、しなやかで鋭い!」
せんせー! とよろめくヨキに声をかげるが。
どうもだいぶんヒートアップしてきているようで。
『…』
伸び来る男の手、猫の瞳孔が見開く。宙で錐揉みしながら一回転、
尻尾をその男の手首に絡め、さらに飛んで、にゃんぱらり。間合いを離す。
『若いな…』
二本足ですっくと立つとパンパンとほこりを手で払い、今日はこれにて失礼。
と頭を垂れてごく普通にのしのしと猫は塀伝いに歩いて立ち去っていく。
「…」
見てはならないものを見てしまったという顔のまま、
大口を開けてユキヱさんは固まっていた。
■ヨキ > (それはスローモーションのような一瞬だった)
(目を見開く。
顔の間際を掠めてゆく猫の視線。
優雅に跳躍する尻尾さばきに往なされて――)
「――へぶッ」
(石畳の上、顔から盛大に転んだ。
ぐわんわんわんわん、と、まるで鉄の什器でも引き倒したかのような音がして、残響が鳴り渡る)
「……………………」
(――やがて静寂が戻る。
猫が二本足で歩いて去ってゆくのを、ヨキは見ていなかった。
こういうとき、大人は役に立たないものなのだ)
「くッ……くそ!
これだから……これだから猫はッ……!」
(地面に伸びたまま、拳を握り締める。
歯噛みし、忌々しげに声を荒げた。
よろよろと起き上がる背中から、恨みがましいオーラが立ち上る……
否。それは陽炎であった。
この暑苦しい夏の日に、ヨキの身体が怒りの熱を発しているのだった)
■平岡ユキヱ > 「ねっねねねこ…足…足で…猫がっががが!!」
物凄い動揺しながら暑苦しくなっているヨキ先生に現状を何とか伝えようと頑張る。
驚きすぎて声が出ないため、わたわたと身振り手振りで必死に何かを訴えようとしているのだ。
異能だの魔術だの怪物だので見慣れてはずの怪異が、まさかパッと見
普通の猫にもあるとは露程も思っていなかった事による驚愕。その衝撃、どれほどのものだろうか。
「ってうわー!? すっごい悔しがってるー!?」
こっちもえらいこっちゃあ! と暑苦しい怒りのオーラを待とう先生に戸惑う生徒。
学校の授業でも見たことねえ、と一歩引く。
■ヨキ > (学校ではおよそ見せない憤怒の形相で、ぎらぎらと猫が去っていった方向を見ている。
その脳裏には四本足の猫の姿だけが焼き付いているのだ)
「みなまで言わずともよい……不甲斐ないのはヨキである。
あの足捌き、敵ながらに天晴れであった……!」
(盛大に勘違いしていた。
アスファルトの塊が服を着て歩いているかのような熱をぶすぶすと発しながら、ユキヱに歩み寄る。
裸眼の奥で金色の焔をぎらりと沸き立たせ、目を伏せ、息を吐く。
怒りの爆炎はやがて小さくなり、ぷすぷすと鎮火して……)
「………………、はあ」
(その溜め息は、どことなく黒煙めいていた。
猫に負け、土埃にまみれ、見るからに落ち込んでいる)
■平岡ユキヱ > 「あ、足さばき…!? いや、まあ、そうですけど!!」
微妙にかみ合っていない事に気が付かず、確かにあれは特殊な足だあ、と納得する。
眼前の先生の気配に気圧されがら、じりじりと後退し…。
「…。あー…」
しょぼくれる先生を見て、どうしようと、頬を掻く。
「ま、まあ、猫もナワバリとかそういうのあるみたいですし…。
また神社とかに出てくるんじゃないですかね!? リベンジはその時に!」
てか落ち込みすぎですよ! とか言いながら途中までスーパーの袋を持ったりして
先生帰りますよ! と落ち込むヨキを道中励ましていただろうか。
ご案内:「常世神社」から平岡ユキヱさんが去りました。
■ヨキ > (ドン引きするユキヱに、額に手を当ててふっと笑う)
「済まない……女性の前で見っともない姿を。
次に遭ったが百年目、年貢の納め時としようではないか……!」
(眼鏡を掛け直す。
女生徒に励まされ、たちまちツヤとハリを取り戻してゆく。
ユキヱと並んで帰りながら、猫への決意を新たにする――)
ご案内:「常世神社」からヨキさんが去りました。