2016/03/04 のログ
■ソラとルナ > そんな様子をじっと見つめる銀髪の少女が一人。
彼女は薄汚れた毛布ですっぽりと身を包み、雪のない社務所の軒先に座っている。
少女の青い瞳は片割れの少年をじっと見つめている。
ほとんど雪のない場所で転がされ、落ち葉と泥にまみれた雪玉を転がす少年の姿を見て少女はため息をつく。
泥玉、もとい雪玉の大きさはそろそろ1メートルを超えようとしている。
残り少なくなった雪で果たしてあの上にのせてバランスが取れるような雪玉が作れるのだろうか、などと考えながら。
きっと、彼はそんなことを考えてはいないだろうし、
バランスなんか気にしないだろう。
実際、周囲の雪だるまのうちいくつかは頭が妙に小さかったり逆に胴体より大きかったり。
積んである数も2個だったり3個だったりする。
■ソラとルナ > ちらちらと降る雪の量は決して多くない。
地面に落ちてから溶けるまでの速さを見ると、まったく積もらないことはなさそうだが、
積もっても明日日が昇れば溶ける程度の量だろう。
服も顔も泥まみれになった少年を見て少女は嘆息する。
この季節は服を洗うにはまだ水が冷たい。
それ故に自身は極力服を汚さないように気を付けている。の、だが。
当然のことながら片割れの少年はそんなことを気に留める様子はない。
雪が無くなって最後の雪玉を作るのはあきらめたのか。
一番最初に作った優に3メートルは超えているであろう4段重ねの雪だるまによじ登っている。
見ている方が寒くなりそうな光景だ。
■ソラとルナ > 雪を降らせる空は曇り空。
薄く広く空を覆う雲はその向こうにある星と月を隠している。
金髪の少年は雪だるまの上に立ってゆっくりと動く雲を見つめている。
何か考え事をしている……と、いうことは彼に限ってはないだろう。
今までも、そしてこれからも。
銀髪の少女は時折少年の方を気にかけながら、地面に落ちて溶ける雪を見つめている。
そっと軒から手を出すとほんの少しだけ雪が手の上に落ちた。
体温が低いのか、雪が溶けていく速度はほんの少しゆっくりに見えた。
■ソラとルナ > 雲を眺めることに飽きたのだろうか。
少年は退屈そうに雪だるまの頭に座って足をぶらぶらさせ始めた。
少女は思い出したように毛布の中から古い新聞を引っ張り出して目を通し始める。
日付は数週間前のもの。ゴミ捨て場で拾ったものだ。
依然と比べてほんの少しだけ騒ぎも減ったような、減っていないような。
すでに内容を知っているとはいえ、何かを読むことは
少女にとっては貴重な娯楽の一つだった。
■ソラとルナ > ばこん、と鈍い音がした。
少女はその音に反応して目を上げる。
大体予想はついていた、が。
実際にその光景を見て少女はこめかみを押さえる。
雪だるまから滑り落ちたらしい少年が石畳の上に倒れている。
最初に作られたおかげで泥がついていなかった雪だるま。
一番下の段は白ではなく赤に染まっていた。
何事もなかったかのように起き上がり、へらへらと笑う少年を見て、
少女は今夜何度目になるかわからないため息をついた。
顔面流血状態でそんなに楽しそうにされても困るのだが。
■ソラとルナ > とはいえ、流石に放っておくわけにはいかない。
少女はぺたぺたと裸足で石畳を歩いて少年に近づく。
冷えた石畳の感触は少女にはやや辛いらしい。
ほんの少し顔をしかめている。
反対に、少年はそんなことは一切気にしていないようだ。
石畳より冷たい雪だるまの上にいたにもかかわらず、
寒さを感じているようには見えない。
少女は無言で少年の顔についた血を毛布で拭いとる。
頭を打ってから数分の時間も経っていないが、すでに傷はふさがっているようだ。
この島ではそんな体質の生き物も珍しくはないのだろう。
■ソラとルナ > 改めて境内を見渡せば、辺りには60個を超える雪だるま。
しかもそのうち一番大きいものは血染めである。
こんな光景はまともな人が見つけたら大騒ぎだろう。
少女は元凶の少年にちらりと視線を送ってみるが、
案の定無邪気な笑顔で流された。
できることならせめて雪だるまは処分しておきたいところだが、
片割れが楽しんで作ったものだと思うとなかなか壊すこともできず。
次に神社に来る誰かに心の中で謝って少女は石段を下りていく。
それを見た少年もそのあとに続く。
神社には異様な数の雪だるま(一部泥まみれ、一つ血染め)が残されている。
ご案内:「常世神社」からソラとルナさんが去りました。