2016/10/31 のログ
ご案内:「常世神社」に美澄 蘭さんが現れました。
美澄 蘭 > 夕方。ピアノの練習が一段落した蘭は、「瞑想」のために神社を訪れていた。
大通りでハロウィンパーティがあるらしいが、仮装は年齢一桁の頃に卒業してしまって一人でやるような度胸もないし…何より、今はピアノの練習で忙しいのだ。

神社の鳥居をくぐって、いつも通り正しい手順で身を清めて「挨拶」を済ませると、境内のベンチに腰掛ける。

喧噪が街の大通りに集中しているためか、神社はいつもにまして静寂に包まれているように感じられた。

ご案内:「常世神社」に滝川 浩一さんが現れました。
滝川 浩一 > 夕日に背を照らされながら、境内へ続く階段を一歩一歩、登っていく。
ハロウィンパーティーの催しが大通りで行われているらしく、振り返ってみれば煌びやかに輝く照明や目立つ色彩の仮装が
ここからでも目に入る。

そのパーティーに参加したいなどと考えつつも、正面を向き直って境内への進行を再開する。

「今はそれどころじゃあない、か」

学業に打ち込みつつ、自習、鍛錬、その他に自分を侵食している『黒い塊』についての調査をしなければならない。
今のこの少年には何よりも時間が足りなかった。
目の下には隈を作り、睡眠不足を物語っていた。

それでもこの神社へ来たのは調査と『あること』をするためである。
鳥居を潜り、本堂へ挨拶を済ませれば手水舎へと向かい、身を清め始めた。

美澄 蘭 > ベンチに腰掛けて、目を閉じる。

魔術の訓練を意識していた頃は、周囲に注意を巡らせて、ものを「視」たりしていたが…最近の「瞑想」は、頭を空っぽにする本来の「瞑想」に近い、気分転換が主である。
それでも、静かな心地よさは感じることが出来る。
…蘭がそうして頭を空っぽにし、風の肌触りや木の葉のせせらぎに身を委ねていると、蘭の持つ魔力が周囲の気配と溶け合うように染み出すのだが…魔術の素養なり、魔力に対する感受性を備えていないと、感知するのは難しいだろう。

自分の後にやって来た青年とは対照的に、その表情は静謐に満ちていて。
そして、まだ彼には気付いていないようだ。

滝川 浩一 > 疲れ切った表情で手水舎での儀式のようなものを終えれば、いざ本堂へと向かう。
本堂の目の前まできて、合掌。その後礼をして、合掌。
適切な手順、回数でそれを負えれば、疲れ切った表情で周囲を見渡す。

ふと、境内にあるベンチに見覚えのある女性が座っているのが見えた。
目を閉じているようだが眠っているのだろうか?
まだ夕方とはいえ、季節は既に秋。既に肌寒い季節となっているので風邪を引いてはいけないと思い、近づく。

「えっと…美澄さん?美澄さーん?」

隈の出来た顔で彼女の名を呼び、軽く指でちょんちょんと彼女の肩をつつこうとする。
彼女が今現在、ただ寝ていると思っているからこそできる行動だ。

美澄 蘭 > いくら頭を空っぽにしていても、声をかけられれば分かる。
聞き覚えのある声が自分を呼べば、

「え?」

と、虚をつかれたように目をぱっちりと開き…

「…!!!」

肩をつつかれかけて、蘭は思いっきりのけぞった。
浩一も、最初の1回くらいは触ったかもしれないが。

「………あ…た、滝川さん?」

のけぞったのは反射らしい。改めて相手の姿をみとめて、茫然とした表情で目を瞬かせる。

滝川 浩一 > 「えっ」

声を掛け、目の前の人物の瞼がぱっちりと開いた。
彼女がのけぞり、戻ったかと思えば茫然とした表情でぱちくりと目を開閉していた。
その様子にこちらの茫然としつつも、ハッと意識を取り戻す。

「えっと、その…寝てたかと思って…すいません。」

声かけに即座に反応したこと、自分と違って眠そうな顔をしてないことを踏まえ、何かのトレーニングをしてたのだろうと予想を立てる。
だとすれば今の自分の行為は褒められたものではなく、素直に彼女に礼をして謝る。

「…滝川、でいいです。敬称は無くても…すいません」

ついでに敬称について指摘を加える。
一応、島に居る長さとしては相手の方が先輩なので敬称は必要ないと考えての発言だ。
そして必要もないのになぜか謝る。

美澄 蘭 > 「………。」

相手も何故か驚いて、双方が固まること数秒。
相手に悪気がなかったことを察して、態度を緩める。

「…ああ…気分転換に瞑想しに来てたのよ。
誤解させちゃって、こちらこそごめんなさい」

「最近肌寒いことが多いし、気になっちゃうわよね」と、相手が頭を下げて謝ってくれば、気にしないように促すよう、自分の胸元の前で手をひらひらさせながら申し訳なさそうに笑みを浮かべた。
…が、相手がひたすら敬語を続ける上に謝り続けるので、少女の表情が困惑に変わる。

「………そう言われても…私、同年代の男の子を呼び捨てなんて、したことないし。

あと…どうせ同じ学生なんだし、ここはあんまり学年の縛りがきつくないんだから…敬語じゃなくていいわ。堅苦しいもの」

と、困惑に眉を寄せ、小刻みに首を横に振りながら。

滝川 浩一 > しっかりと敬語を使って謝ったつもりだが相手が怒っているかどうかが心配で気が気じゃなかったが
次の相手の発言と笑顔が見られればホッとしたように胸を撫で下ろす。

「そ、そうだったんですか。邪魔してすいませんでした」

謝罪に対し、また謝罪で返す。
面倒な不良や課題の穴などを教師に責められた際の言葉がついつい癖になってしまい、何度もぺこぺこと礼をする。
彼女の顔色を窺い、困惑に変わればこちらも不安げな表情へと変化する。

「…えっと…わかりま、わかった。
 それじゃ、敬語は取っ払わせて貰う。美澄さ…美澄」

彼女の言葉を聞き、数秒硬直すればこちらも困惑する。
かくいう彼も、余り同年代の女性へのタメ口や呼び捨てはしたことがなく、ぎこちなく、それでいて恥ずかしそうにそう告げた。
眉を寄せる彼女が少しでも納得すればと少しドキドキするが果たして。

美澄 蘭 > 「ううん…気にしないで。どうせ気分転換だもの。
…寧ろ、滝川さんの方こそ疲れてない?」

「身体の不調を取るような治癒魔術、滝川さんが良いならかけてもいいけど」と、苦笑いしながらも相手の様子を気遣う。

ハードワークしているように見えて、蘭は割と普通に睡眠時間を確保しているのだ。
蘭の趣味は学生である現状半分くらい本業と結びついているし、一人暮らしであれば無理は利かないから。

「………ごめんなさいね、無理を言って。
慣れないかもしれないけど…その方が、私は気が楽だから。

………代わりに、というのもなんだけど………私も…「滝川君」って呼んでも良い?」

そう言って、はにかみがちの微笑を浮かべながら、ことりと人形めいた愛らしさで首を傾げる。
眉間の皺は、きっちり綺麗に消えていた。

滝川 浩一 > 「ありがとうございます。…えっと…まぁ、多分、そう見えるかと…」

気にしないでと言われたら礼を言い、疲れていることを容易に看破される。
その事に驚愕と困惑をしつつも、治癒魔術の事を問われれば「お願いします」と礼をして受け取る。

彼は別段天才でもなければ劣等生でもない。少しだけ賢く、恵まれた異能を持っている物のその本質はごく普通の一般大衆なのだ。
そんな人物がハードワークをこなそうとすればまず犠牲にするのは時間だ。
この島に来る以前はこのような努力はせずに日々を過ごしていたために、スケジュール管理というのが苦手というのも絡んできている。

「いえいえ、滅相もございません。あっ…じゃなくて、大丈夫で、大丈夫!
 俺もどちらかと言えばこっちの方が気楽だし…美澄とは仲良くしたいし…

 ……いいのか?それじゃ、是非呼んでくれ」

時折、敬語が混じりそれを自覚すればその都度直していく。
最後の方はやっとタメ口が流ちょうになり、彼女の柔らかい敬称を受け取る。

美澄 蘭 > 「そこまで隈が浮いてたら、流石にね…」

疲労を看破されて驚く様子の浩一に対して、そう言って苦笑する。相手の事情は、知る由もないが。
そして、相手から頭を下げられれば「ええ、分かったわ」と頷いて、彼の方へ手を伸ばし…

「…かの者の身体の妨げを浄化せよ、ノーマライズ」

そう唱えた。
魔力が、生命の理路にそった術式を構築する。
浩一が特異な体質をしているとかでなければ、少なくとも肉体的な疲労感は大分緩和されるだろう。

「…滅相もございませんって、普段はなかなか使わない敬語よね?」

時折混じる相手の変な敬語に、そう言ってくすくすとおかしげに笑う。
…が、相手が徐々に流暢に言葉を砕いていけば、その表情を優しく和らげ、

「…ええ…それじゃあそうさせてもらうわ、「滝川君」」

「改めて、よろしくね」と、はにかみがちに微笑んだ。

滝川 浩一 > 「あ、あ…ははは…」

苦笑いをして、彼女の行動を見据える。
手を伸ばされ、目の前の少女が詠唱を唱えたかと思えば疲労が緩和されていく。
目の下の隈も消え、顔色は大分血色がよくなるが体を汚染している黒い塊のせいだろうか。完全には疲労は取れてはいない様子。

しかしそれでも大分よくなり、息を吹き返せば笑顔になる。

「う、うん。えっと…ついつい、癖で、ね?」

笑う彼女とは真逆に恥ずかしそうに指をいじりそう告げる。
普段中々使わない敬語を使うのがこの少年の癖らしい。

「…あぁ、こちらこそ改めてよろしく!」

疲労が消えたからか、その表情は明るく前向きで優しい笑顔を作っていた。
再スタートの証のつもりで手を差し出し握手を求める。

美澄 蘭 > 相手の苦笑いに、優しい苦笑いを返しながら相手の様子を伺う。
少なくとも隈は消えたし…心なしか、顔色も良くなったようには見える。

「うん、少なくとも隈は消えたみたいね。………大丈夫そう?何かおかしなところはない?」

そう、確認をした。

「…癖にしても、自然な敬語なら分からなくはなかったけどね…」

どこで覚えたの、とまでは言わずに、おかしそうに笑う。
…が、相手から握手のように手を差し伸べられれば、少しだけ表情を強張らせ、

「………え、ええ………」

そう頷いて…異性にはあまり慣れていないのだろう、躊躇いがちに相手の手を優しく握り返すが…

(………!)

握った瞬間、何か、とても気味の悪いものを感じて。
蘭は、その顔から笑顔の色を完全に消し去って、浩一の「侵食」されているだろう身体の部位に、驚愕の視線を向けていた。

滝川 浩一 > 「はい、お陰様でな!これでバリバリと学業に戻れそうだ!」

元気いっぱいと言った風に笑顔で答える。
先ほどとは一転した様子。これが本来の彼なのだろう。

「むっ…そこまで笑わなくても…」

自分の発言が愉快だったようでおかしそうにずっと笑っている彼女に少しムッとしてそう答える。
差し出した手に顔を強張らせ視線を向ける彼女に踏み込み過ぎたかと不安になるものの、優しく握り返されてホッとする。

「……美澄?」

手を握ったまま彼女に首を傾げ声を掛ける。
彼女に対し、自分がどう見えているかもわからず、ただただ驚愕の視線を向ける先…自分の脇腹付近を見つめる。

美澄 蘭 > 「…そう、ならよかった。
でも、無理とか無茶はほどほどにね?」

笑顔で答えられれば、こちらも自然と笑みが晴れやかになる。
ただ、釘を刺すのは忘れなかった。初対面時に効率の悪い勉強法に特攻をかけようとしていたイメージが強いのだろう。

「…あ、ごめんなさい…つい」

相手にむっとした顔をされれば、笑いを引っ込めて軽く頭を下げる。
何だかんだで大人と会うことの多かった蘭は、「子供なら許される範囲」の敬語はそこそこ使えるようになって今に至る。変な敬語が癖になるという感覚は、「分からない」のだった。

…もっとも、それらのことも、浩一が抱えていることを「感知して」しまった異常に比べれば、些細なことではある。

「………ううん…その………
………ごめんなさい、「何かある」のは感じるんだけど…私には、「それ」への対処の仕方、よく分からなくて」

不思議そうに尋ねられれば、困惑の表情を浮かべながらそう言って頭を下げる。
治療を請け負ったのだから、「どうしたら良いのか分からない」という謝罪自体は、そう不自然なものではない…はずだ。

どす黒いような、ひりひりと冷たいような、熱いような「何か」。浩一の身体には良くなさそうな「何か」。
手に…身体に触れたことで、蘭の「感覚」が、得体の知れない「それ」を捉えてしまったのだ。

滝川 浩一 > 「…あぁ、わかった。」

彼女の笑顔と発言にそう短く告げる。
わかった。理解しているものの、やはり今置かれている状況では時間が足りない。
約束は出来ずに短くそう答えるしかなかった。

「いやいや…そう謝らなくても」

笑顔がなくなって頭を軽く下げた彼女へ今度は焦り気味にそう答える。
少し険しい顔はしたが本気で怒ってるつもりは無かったので素直に謝られるとこちらとしても対応に困った。

「……いや、いいんだ。美澄がそう謝ることはない。
 すべては俺の落ち度だ。自分の尻は自分で拭く。………逆にさ、心配してくれてありがとうな」

脇腹を見て驚愕したこと、自分の中にある異物を察知したかのような台詞。
それらの事を繋ぎ合わせて彼女が何を察知したのか、大方の予想を立ててそのように返す。

『謝罪は必要ない』と、『自分のせい』だと告げれば、頭を下げている彼女の肩に手を置き励ますように礼を言う。
心配してくれたことは少し嬉しく、自分を侵食している何かとは正反対の笑顔を彼女に向けた。

「っと…ごめん。そろそろ時間だ。もう行くよ…瞑想邪魔して悪かったな。…また」

手元の時計のアラームが鳴ると時間を確認する。
組み込んだスケジュールを完遂せねばという使命感に駆られ、彼女へ別れを告げつつ手を振り、境内を後にするのであった―――

美澄 蘭 > 「私で良ければ…勉強くらいなら、力になれると思うから」

そう言って、気遣わしげに首を傾げて浩一の顔を伺った。
短い言葉に、決意と…距離の気配を感じて。

「不快に思わせちゃったら、謝らないと…じゃない?
…滝川君が気にしないなら、引きずらないけど」

「あ、でもこれからは気をつけるから」と、あどけない表情で、且つ不思議そうに首を傾げながら。

「………落ち度だからって、一人で何もかも背負って、潰れたら…一番良くないわ。
…だから…頼れる人は、ちゃんと頼ってね。私は、あんまり力になれないと思うけど…」

良くない「何か」を蘭が察知したことを察したらしい、浩一の強い…寂しい言葉に、瞳を陰らせる。
「頼れる人は頼れ」と言う時には浩一の顔を見ることは出来たが…その後、自らの無力さに顔を伏せた。
…が、アラームが鳴れば再び顔を上げる。

「ううん…私の方こそ、引き止めちゃってごめんなさい。
………本当に、無理はしないでね」

そう、本当に心配そうな表情で告げて…蘭は、浩一を見送ったのだった。

ご案内:「常世神社」から滝川 浩一さんが去りました。
美澄 蘭 > 「………。」

浩一の背中を見送って、再びベンチに腰掛ける。
そうして、再び目を閉じると…浩一の中に確かにあった「何か」の気配は、感じ取れなくなっていた。

(…どうしたらいいのかしら、あれ…)

蘭は、魔術もまだまだ勉強途中で、学んでいる範囲はごくごく狭い。
きっと、どこかには「アレ」に対処出来る人も、いるのだ。だから、自分が気負う必要なんて、ないのだけれど。

(………「分からない」っていうのが、一番イライラするわ…)

少し、むっとした様子で目を開き、顔を上げる。

(…でも、調べるのは今やってることが一段落してからね。
その前に滝川君の「アレ」が治ってるなら、それに越したことないし)

そんなことを考えながら、ベンチから立ち上がる。
神社の去り際、鳥居の下から神社の方を向いてお辞儀をしてから、駆け足気味に石段を降りていったのだった。

ご案内:「常世神社」から美澄 蘭さんが去りました。