2017/08/31 のログ
ご案内:「常世神社」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 夕暮れ時。
まだ気候は夏そのものとはいえ、徐々に日が沈むのは早くなりつつある。
夏休み明けを間近に控えて…蘭は、久々に常世神社の境内にやってきていた。
鳥居をくぐり、手水舎で手と口を清めて…
(…お久しぶりです)
拝殿で、二礼二拍一礼。
■美澄 蘭 > 「挨拶」を済ませると、鎮守の森へ足を踏み入れていく。
夕暮れ時とはいえ、この季節にまだ日傘を下ろす気にはならなかったのだ。
(…「瞑想」も、久しぶりね…)
この夏休みは、自宅にピアノの練習環境を用意するための資金稼ぎのバイト、講義の課題、来年の受験に向けた勉強で、あっという間に過ぎてしまった。
…もうすぐ、講義が再開する。今までとは別の意味の慌ただしさが、帰ってくる。
その前に、自分自身を…自分の身の丈の大きさしかない自分自身を振り返るために。
そして、五感以外の、自分に備わる感覚を「思い出す」ために。
蘭は、この鎮守の森に「瞑想」…その実、魔力を捉える感覚の訓練のようなものなのだが…をしに訪れたのだ。
■美澄 蘭 > 森の中で、日傘を差したまま目を閉じる、蘭。
視覚が閉ざされた中で「視える」のは、御神体を傍らに抱く森が抱く、大小さまざまな光。
それは長い歳月大地に根付いた樹の形をしていたり…あるいは、短い命をこの夏にかける小さきもの達の気配だったり。
日光を和らげる木々に守られた空気は瑞々しく…その中で深く呼吸をすると、蘭は、自分が森の中に少しだけ溶け込んだ感覚を覚えた。
■美澄 蘭 > その感覚が、ふわりと軽く心地よくて…蘭は、「視点」の中心を自分の近くに移す。
…人型の光がある。これは自分だ。
その人型の光の周囲を覆うように、淡い光がゆらめき…その境目は、森の中にうっすらと満ちる光との間でぼやけているように見えた。
(………ここ、もっとぼやかしたら、どうなるのかしら………)
蘭は、深く呼吸をして、より、周囲の光を森の中にぼやけさせるイメージを頭に作り上げる。
………人型の光が薄れる。
頭の中も白く、ぼんやりとして…
「………!」
………無数のざわめきがして、蘭は思わず目を開けた。
あまり心地よくない感覚があって、しばし、息を詰める。
■美澄 蘭 > 再度目を閉じて、意識を「光」に向ける。
人型の光は確固としてそこにあり、周囲との境目も分かる。
………ざわめきは、もう聞こえない。
「………。」
蘭は、詰めていた息をやっと吐き出した。
普段から白い顔から、更に血の気が引いている。
■美澄 蘭 > (…この感覚…前にも………ううん、微妙に違う………)
街の方を同じ感覚で「視」ようとして、混沌とした気配に声にならない悲鳴をあげたこともある。
転移荒野の渦巻く気配に、気持ち悪さを覚えたことも。
…しかし、先ほどのざわめきは、それらとは種類が違う不快感…恐怖があった。
■美澄 蘭 > (…まるで、余計なものが入ってくるみたいな…
私が、私じゃなくなっちゃうみたいな…)
自分の意識を森と溶け込ませようとして…周囲の気配と、自分そのものの境目が曖昧になった結果、多分良くないことが起こったんだろう。
蘭は、それを感覚で掴んでいた。
「………。」
ひとつ、深呼吸をする。ただし、目は開けたまま。
今ここにある世界を、一人の人間として、客観的に認識したまま。
(…自然に溶け込むって、なかなかいい気分転換だけど…やり過ぎは禁物ね)
蘭の顔色は、幾分生命力を取り戻したようだった。
■美澄 蘭 > 気がつけば、夕暮れの赤は西の空にしか残っていない。
(…と、いけない。夜になる前に帰らなくちゃ)
蘭は鎮守の森を出、鳥居の下で拝殿に向けて頭を下げると…小走り気味に、石段を駆け下りていった。
ご案内:「常世神社」から美澄 蘭さんが去りました。