2015/06/04 のログ
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」に和泉 兼次さんが現れました。
和泉 兼次 > 学校の帰り。
一度来てみたいと思っていた異邦人の商店街に足を踏み入れる。

たまに学生服を見かける以外は概ね異邦人のように見える。
特にアテもなく、気の赴くままに歩みを進め、
面白そうなものを見つければ、ふと足を止める。

和泉 兼次 > 少しずつ進んでいくと、徐々に賑やかになっていく様子。
少し先から楽しそうな音が聞こえてくる。

…気持ち、足を早めてそこに向かう…と、
小さな、ドワーフだかホビットのような、そんな小さな異邦人達が数人で楽団を演っていた。
実に楽しそうに演奏をしており、人も結構足を止めて眺めている。

和泉 兼次 > 自分を足を止める。
楽しそうだ。いい顔でやってるなぁ、と感想を抱いた。

…なんとなく、前の学校の事を思い出す。
自分も以前はあれくらい楽しそうな顔をしていたのかな、と考えた。
ぼんやりと目の前の演奏に耳を傾けながら、その光景を眺めている。

和泉 兼次 > 不意に、気づく。
はっと顔を上げると、楽団の一人がじーっとこっちを見ている。

何かしたっけ、そう考える間もなくちょこちょこと近づいてきた。
そのままじーっと見上げてくる。
「……な、何、かな?」
さすがに、ちょっと気後れ。

和泉 兼次 > いきなり手を取って、ぐいっと引っ張られる。
不意撃ち食らったのでされるがまま、観衆の面前に引っ張り出された。
やんややんやと湧き上がる声。
なんだそれ、と思う間もなく、曲が変わる。

…自分達のよく知る、この世界のポップス。

和泉 兼次 > ばっしと背中を叩かれた。
思わず痛って…!と声が出る。

手を引いた子はこちらをじーっと見たまま、演奏を続けている。
…つまるところ、歌え、という事らしい。
観衆も見ている。引き下がれそうな雰囲気は、ない。

和泉 兼次 > ……。
腹をくくらなければならないようだ。
まさか断って異邦人との関係が悪化する、なんてことはないだろうけれど。

思い切って、息を吸い、声を……出す。
伸びやかなテノールが、道に響いた。

和泉 兼次 > わっ、と周囲から声が上がる。
演奏はさらにヒートアップしていくと、足を止める人も心なしか増えているような気がする。

楽団の子達も、皆笑顔を浮かべている。
周囲が笑顔で、自分も楽しくて。
なんだか忘れていたかのようだ。懐かしい感覚。

和泉 兼次 > 一曲終わると、拍手と口笛が聞こえてきた。
…なんだか急に恥ずかしくなってくる。

一息ついた、瞬間にまたばっしと背中を叩かれる。
若干涙目になりながら、見下ろした。
ヤルジャン、とちょっとカタコトっぽい言葉で言われた。

和泉 兼次 > そうこうしていると、また演奏が再開された。
また歌え、という事らしい。
「…あと一曲だけだぞ。」
そう断って、楽団の選曲に任せる。

さっきとは違う、でもやはりこちらの世界の歌だ。
洋楽だったけれど、これならわかる。
流れてくる音にあわせて、再び声を張った。

ご案内:「異邦人街大通り/商店街」に和泉 兼次さんが現れました。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」に和泉 兼次さんが現れました。
和泉 兼次 > 英語の歌だったけれど、特に問題はなかった。
歌ったことさえあれば問題なくこなせる。
1曲目よりも喉と緊張がほぐれたせいか、滑らかに歌うことができた…気がする。

2曲目が終わると、再び拍手をいただいた。
もっと歌えーという声に軽く頭を下げる。
楽団の子達にも謝り、その場を離れた。

和泉 兼次 > 「ふぅ…。」
なんだか大変な目にあった気がするが、気持ちは晴れやかだ。
皆そうではないだろうが、異邦人はアクティブなのかなぁ、と考える。

……考えていると、さっき自分を引っ張った子が駆けてきた。
カタコトの話を聞くに、辛気臭い顔をしていたから、だそうだ。
さすがに苦笑いが出てしまう。
そして、小さな皮袋を差し出された。お礼だといわれた。
礼を言って受け取ると、マタヤレヨ、とだけ言って、また戻って行った。

和泉 兼次 > なんだろうこれ、と皮袋を目の高さまで持ち上げる。
ビニール袋じゃないのはさすがという所だけど。
開けてみると、きらりと輝く何かが転がり出てきた。
…ペンダントトップのような。
やっぱり、ドワーフだったのだろうか、彼らは。

そう考えると、来たときと同じように歩き始めた。
面白いものがあれば、買って帰ろう。
そう考えながらの足取りは、来たときよりも軽く。

ご案内:「異邦人街大通り/商店街」から和泉 兼次さんが去りました。