2015/06/12 のログ
■夕霧 > 「ああ、すいませんなー。気にしないでおくれやす」
そう言いながらもふふ、と思い出しながら笑う。
まさか大名、畑本をここで聞くと思わなかったからだ。
笑いを止め、柔和な顔に戻りつつ、手に取った物に再度目を向ける。
「大きさ的には首に巻くもの、みたいに見えますけど」
なんてことは無いウィンドウショッピングではあるが異世界に迷い込んだようで。
それは一種のアトラクション。
自然と笑ったのはこれが久々かも知れない。
そう思いつつ。
しばらく、行けばカフェもある。
「さて、どうします?よければ入ります?」
カフェを軽く指さし、カーチャに提案する。
■エカチェリーナ > 「そうね、やっぱり首に巻くものかしら、ね……。」
そこまで言ったところでさすがに店主の視線が気になった。
確かに買うつもりもなくワイワイやるのはさすがになんか、気まずい。
けれど見咎められたから買うなんていうのはなんか負けたようで――ああ、また悪い癖が出ている――
とにかくその場はさっさと店を後にした。時間を置いて全く関係ないものをいつか買おう。
「あれ、そうね。結構歩いたし少し休憩しましょうか。」
指差されたカフェに入る。すでに暑いので空調の効いた店内はオアシスのようなものだった。
「私はえーっと、アイスミルクティーかな……ユウギリ先輩は?」
メニューをクルッと回して差し出すと、聞く。
■夕霧 > 二人でカフェに入り、席へと腰を落とす。
何だかんだで結構歩いても居たので、座った途端にじわりとわずかな疲労が身体を駆け巡って行った。
心地よい、とも思える程度のものではあるけど。
一息ついた所でメニューを渡され、ふむ、とメニューを眼を落とす。
「ホットコーヒー」
つい、と指でメニューを差す。
「あ、後店員さんすいません、砂糖とミルク、多めに持ってきて貰えます?」
コーヒーは好きなのだがいかんせん甘くないと飲めないのだ。
■エカチェリーナ > 「あら、ユウギリ先輩甘くしないとコーヒー飲めないのかしら?」
フフン、となぜかドヤ顔で挑発的に言い放った。
今まで割と先輩らしいというか、大人な対応を見てきたので少しからかってみたくなったのだ。
彼女自身は何が入ってようがコーヒーは苦手だったし、紅茶ですらジャムをいれるぐらいだがそんな事は言わなければバレはしない。
「私オトナなユウギリ先輩ならブラックとか頼むと思ってたわー!」
ニヤニヤしながらそんな事を言う。
■夕霧 > う、という風に顔が少し苦笑を作る。
「……み、店によって凄く苦い、とかありますでしょ?その時の為に頼んでるだけですよ?」
どう聞いてもどう考えてもその場しのぎなのである。
「普通ぐらいの苦さなら大丈夫なんで―――」
そう、言っていると件の飲み物が二つとも届く。
目の前には、黒々とした、光さえ飲みこむほどの黒いコーヒー。
■エカチェリーナ > 「そう? じゃあこのお店のコーヒーはどうかしら――。」
見ればそれはまさに悪魔のように黒いコーヒー。地獄のように熱かったり色々するかは知らないが。
いわゆるアメリカンのような薄目のものではなさそうだった。
「とにかく一口味わってみないと『普通ぐらいの苦さ』かどうかわからないわ、ね?」
絶対に苦い。なんかドロッとしてるんじゃないかという気すらしてくる。
■夕霧 > たらり、と汗が頬を伝う。
ごくり、と喉が鳴る。
断言できる。
絶対に苦い。
しかし張った意地は通さねばならない。
筋とは通すものなのだ。
小刻みに震えるカップ。
努めて優雅にくい、とカップを傾け。
―。
――。
―――。
ふ、と軽く目を閉じて微笑み。
「すいませんカーチャはん、砂糖とミルク、取ってもらえます?」
最初に出された水を口に入れ、もごもごさせながらそう呟くのだった。
■エカチェリーナ > 崩れない! やや怪しいが夕霧の表情には一切の歪みは見いだせなかった!
「え、ええ、そうね。なんていうかその、さすがだわユウギリ先輩――。」
言われたとおりに砂糖とミルクを夕霧に渡す。
自分があんなものを飲んだら誰か呪ってるんじゃないかと思われるようなすごい表情になっていたはずだ。
もしや本当にいざという時のために砂糖やミルクを頼んでいたのだろうか、目測を誤ったか――。
そんなことを考えながら自分のアイスミルクティーにはガムシロップを入れた。ふたつ。
■夕霧 > 恐らく。
一人なら想像を絶する顔になっていただろう。
ちなみに口の中は既に苦味に蹂躙されており、所謂白旗状態であり。
向こうしばらくこの苦味は続くだろう、と思うと憂鬱で仕方なかったりするのだが。
スティックを二つ、ミルクをだぱーという表現がぴったりな程に入れる。
正直、そこまでしてもこのコーヒーは甘くなるのか?という疑問すら浮かぶのではあるが。
それでもここまで先輩としての体面を保ったのはやはり一つの意地だったのだろう。
「ふふ、褒めても何も出ませんよぉ」
そういう彼女の声色はどこと無く、余裕は無かった。
が、ガムシロップを二つ入れたのは見逃さない。
「あら、カーチャはんもシロップ、結構入れ張るんですねえ」
普通なら一つでいいはずだ。
と思いつつ。
■エカチェリーナ > 「えっ!? ああ、これね、これはね、その……ま、間違っちゃったなー!」
もちろん最初から二つ入れるつもりだった。二つも入れれば通常のアイスミルクティーでは溶けきらない。
だが彼女は底のほうでドロドロしてる感じのを飲むのも好きだった。
コーヒーのドロッとは悪夢だがこのドロッは文字通り甘露である。
「別に二つはいらないっていうかなくても良かったんだけどね、ほらなんかね、つい流れでね。」
そう言いながら甘ったるいミルクティーを飲む。おいしい。
ちょっと甘ったるいわねーなんてことをそれらしい顔で言いながらもズルズル飲んでいく。
■夕霧 > 慌て振りに、思う所はあれど。
「ふふ、よしましょうか」
軽く笑う。
「気を張っては、飲み物にもお店にも失礼やしねぇ」
そう言った後、くい、と飲む。
「……」
まだ苦かったが飲めないほどでは無い。
無い、が。
念のため、もう半分ほどスティックシュガーを足すのであった。
■エカチェリーナ > 「そうね、休憩に来てるのに変な、うん……ごめん。」
悪ノリを反省する。やはりこの人は先輩だ。
例えば自分が後輩に同じ目に合わされた時こんな反応ができるかといえば……いや、やめておこう。
ともかく、今はここで存分に憩うべきだろう。時間があればもう少しみてまわってもいい。
なんにせよ一人でいるよりずっと多くのものが見られたし知ることが出来た。
そんな感謝を伝える、のは気恥ずかしいので黙っているがいろいろなおしゃべりをしつつある日の時間はゆっくり過ぎていく――。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」からエカチェリーナさんが去りました。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」から夕霧さんが去りました。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」に八衛 瑪斗さんが現れました。
■八衛 瑪斗 > 「嗚呼、今日のあの子も可愛かったわねぇ。
年頃だと思うのだけど、反応が初々しくて飽きないわぁ」
商店街にあるカフェの一つ。そこでくつろぐ少女が一人。
何かを思い出して悦に浸っているのか、
浮かべる笑みが実に実にキモチワルイ。頬杖までついている始末。
■八衛 瑪斗 > 彼女が注文したらしき紅茶を届けにきた店員も、
その怪しい笑みには軽くひいてしまった様子。
挨拶もそこそこに、早足で立ち去る。
まぁ、彼女はそんなこと気にも留めていないのだが。
「さて・・・そろそろ報告を入れましょうか。
『この世界がどういうところなのか』が分かってから、
みんな、ちょっと心配しすぎなのよねぇ」
そう呟くと、懐から水晶玉のようなものを取り出す。
大きさは彼女の手の平に収まる程度のものだ。
■八衛 瑪斗 > 水晶玉を軽く小突き、ボソボソと喋り始める。
話している内容はといえば、曰く
、
「いつもの男子生徒にいきなり抱きついてやったら、変な声をあげた」だの、
「ちょっとドレスのスリットを上げてみせたら、真っ赤になって
そっぽ向いた」だの、
・・・報告とはなんだったのか。
水晶玉の方からも声がするようだが、周囲にはよく聞き取れない声量だ。
女性の声だということは辛うじて分かるかもしれない。
■八衛 瑪斗 > そんな、誰が聞いてもどうでもいいような「報告」を終えると、
彼女は水晶玉を再度小突き、懐へと戻す。
そして、少し冷めてしまった紅茶を静かに啜る。
落ち着いたのだろうか、そこに先程までの
キモチワルイ笑みは無く。
「まぁ、まだ時間はかかりそうなのよね。
のんびりとやるしかないのよ、平和的に行くのなら」
と、ため息をつきながら、そう漏らした。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」から八衛 瑪斗さんが去りました。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」にシャーロットさんが現れました。
■シャーロット > バッテリー上がりで動かなかったスクーターを引っ張りだす。
一日店を開けずに街を歩き回った甲斐があった。
ジャンク屋さんからまだ生きているバッテリーを桔梗の鉢植えと交換で譲ってもらえたのだ。
「んふ」
思わず笑みが溢れる、交換の仕方も教えてもらったし、これで今度こそ海を見に行ける。
■シャーロット > ジャンク屋のおじさんに書いてもらったメモを片手にバッテリーの交換を始める。
帰ったら店をあけようと思っていたけど、海のことを思うと我慢できなくなってしまった。
今日はもう休業だ。明日ももしかしたら休業だ。
「ええと、横のカバーを開いて、中にあるロックカバーを外す。」
今まで一度も使ったことのなかったヘルメットホルダーの中の工具を使って、メモ通りに慎重に作業を進める。
命を持ってよかったとおもうことが幾つもある。
その一つがやったことのない何かへの挑戦だ。
飾られて、愛でられるだけの人形では知ることのできなかった楽しみだ。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」に三千歳 泪さんが現れました。
■三千歳 泪 > ガタンッ!と。
マンホールの蓋が持ち上げられて、ヘルメットを被った頭と大きな工具がにょっきり出てくる。私だ。
暗闇に慣れた目には日差しがまぶしすぎて手をかざす。見知らぬ場所に、見知らぬ生徒の姿をみつけた。
「はーっ…新鮮な空気だ! おいしい!! 空気がおいしい! さてさてどこだろうねーここは…」
■シャーロット > 「あ、出てきた出てきた。えーと、先にマイナス、次にプラス。付ける時は逆順で、端子の接触に注意。」
何度も繰り返しながらバッテリー端子を指で指して確認する。
黒がマイナスで赤がプラス。
『スクーターのバッテリーだ、感電しても大したこたねえよ』とおじさんは言っていた。
それでも慎重にドライバーでネジを回し、両方の端子を外し終え、バッテリーを持ち上げ笑みをこぼした瞬間
急な重い鉄が落ちるうような物音にバッテリーを取り落としそうになる。
振り返るとマンホールから顔を出す女の子が一人。
「え、何……?下水工事とか回覧回ってきてないんだけど」
■三千歳 泪 > 「なになに? 修理してるの? どっか調子がわるいなら私の出番かな!」
モンキーレンチを先に放りだして、地上へのはしごを上りきる。よっこいしょとは言いません。
ぱぱっと埃を払ってかちこちに固まった身体をひねる。さんさんと降りそそぐ日光を浴びた。
思うさま身体を伸ばせるのがこんなに気持ちいいなんて。嬉しくなって思いっきり背伸びをした。
「んー!…っと、下水じゃなくて、通信回線の方だよ。今朝からずっとつながりにくくなってなかった?」
「それにしてもヘンなとこにでちゃったなー。ここはどこ? 私はだれ?」
■シャーロット > 「あ、いや、バッテリーが上がってるだけだと思うから大丈夫。ほら、替えのバッテリーも用意してあるし」
この街に住んでからいろんな人を見たが唐突にマンホールから這い上がってくる人は初めてだ。
モグラ人間の世界から来た人だろうか。
その上記憶喪失らしい。どうしよう。
「あー、私、家に電話置いてないから気付かなかった。必要なら3軒隣で借りるから。
で、ここは異邦人街の花屋の前。あなたは多分……、モグラ人間かな?」
■三千歳 泪 > 「ばれたかー。なにを隠そう君たちの世界を制服しにきたモグよ。このヘルメットこそ何よりのあかしモグ」
「モグラ人のモグラ人によるモグラ人のための地底帝国モグ。われらこそ地上の混沌に終止符を打つものモグ」
「このビッグウェーブに乗りおくれるな!モグ。モグッモグッモグ、悪いようにはしないモグぞ。市民よ」
「…ううっ、この語尾やりづらい!!」
「安全第一」とペイントされたヘルメットを脱いで首を振る。汗ばんだ髪に風が通り抜けていった。
日陰に入ればひんやりとして、さわやかに汗が引いていく。とても気持ちがいい。
女の子のとなりに片膝をついてマシンを見つめる。精一杯手入れをしたようなあとが見てとれた。
「異邦人街。どおりで。この街並みはそうだよね。君はそのお花屋さんの人かな!」
「私は三千歳泪(みちとせ・るい)。ついさっきひと仕事終わったばかりの《直し屋》さんだよ」
■シャーロット > 「嘘!本当にそんな侵略帝国とも門がつながってしまったの!
ああ、どうしましょう!平穏な生活が壊されちゃう!
ぷふ……、ノリいいね、あなた。」
昔誰かの膝の上で見た舞台を思い出して大きく身振りをつけながら驚いてみる
でも、変な語尾の途中で音を上げてしまう目の前の女の子を見て、思わず笑ってしまう。
眩しい日向から、私のいる日陰へ移動し、涼みながらスクータを眺める姿を見て微笑ましい気分になる。
ここ数日風の通りが悪かったけれど、今日はよく風が通る。
汗をよくかいた彼女にはとても心地が良いだろう。
「そう、お花屋さんの人よ。商店街のメインから外れた端のほう、散歩好きしかこないような場所に店を構えたヘンテコなね。
ミチトセさんね、私はシャーロット。リビングドールのシャーロット。よろしくね。」
持ったままだった古いバッテリーをひとまず降ろし軽いおじぎをする。
《直し屋》に、通信回線、さらにそれの修理。
こんなだだっ広い地区の地下でそんなことをする労力を考えると頭がさがる思いになる。
この街や世界はまだ知らないことばかりだ。
■三千歳 泪 > 「ふっふっふ、気に入ってくれた? どういたしましてモグー」
「地底帝国ってね、すぐに距離感わかんなくなっちゃうんだ。目印になるものもあまりないし。似たような光景ばっかりだし?」
「ちょっと歩いただけのつもりが全然違う場所に出ちゃったり。百聞は一見にしかずっていうけど、迷路みたいなんだよ」
「私の方向音痴もあるにはあるけど、どうしてもさー慣れてないとさー」
「さっきここ通らなかった?みたいなお約束。まさに鉄板って感じだけど…あれね、ほんとにやっちゃうんだ!」
びっくりでしょ、と言って笑う。
ちょっと煤がついてるかもしれないけど、女の子同士だから大丈夫。気にしなくていいよね。
めずらしげな単語が聞こえて長い耳の先がひょこっと動く。ミチトセイヤーは地獄耳。面白そうなことは聞き逃さないのだ。
「リビングドールって言った? 直訳すれば生きてるお人形さんだね! シャーロット。シャーリー?」
「うん、シャーリーの方が好き。お人形さんみたいに可愛いからリビングドールって呼ばれてますとかそういう…わーメルヒェンなんだー」
「でもほんとかなー。ほんとにお人形さんなら首がはずれちゃっても平気なはず! そこんとこどうなのさシャーリー」
わかってます。こういうの無茶振りっていうんだ。でもこの島にはいろんな子がいるから冗談とも思えない。聞いてみるくらいはいいよね。
■シャーロット > 楽しげに話す内容を聞きながら地下の帝国について思いを馳せてみる。
どんな感じだろうか?
身近で近そうなのは4ブロック先のバザールだろうか。
屋根のある通りの下、雑多な店と雑種な人々がひしめき合い、迷路のような様相を呈する。
行く度に毎回もみくちゃになって道に迷う。
きっとあんな感じなのだろう。
「ちょっと感じわかるかも。
あっちにバザールがあってさ、よくそんな感じで迷ったりするんだ私も。
ちなみにその地下帝国は一般の人は入れるの?」
百聞は一見にしかず、さっき彼女が言ったばかりの言葉だ。
実際はどうなのだろう?
地下なのだから静かで暗くて怖いものなのだろうか?
それとももしかして地下にも沢山の人が住み着いていて本当にバザールのようになってしまっているのだろうか?
「そう、そのままの意味なの。元はただのビスクドールなのよ私。
ふふ、じゃあ、シャーリーって呼んで?愛でられるのは人形の至福だから。」
愛称を付けられて呼ばれるなんてどの位ぶりだろうか。
最後の持ち主の老夫妻は私には名前を付けなかった、「この子」と私を呼び、愛でた。
だから、最後に愛称なんて付けられたのはきっと遠い昔だろう。
少し、こそばゆい。
「もしかしたら、外れても平気かもしれないんだけど、私の命がこっちに宿ってるのか、こっちに宿ってるのかわかんなくて、万一が怖いから外せないんだよね。」
胸と頭を軽く小突き、笑う。
実際のところ自分でもわからない、どっちかが外れても平気なのか。
それとも平気じゃないのか。
だから、今はまだ試す気にはならない。
「あ、代わりにだけど。これで、わかってもらえるかな。」
生きている人形が目の前にいるという実感はなんとなく味あわせてあげたい。
そう思い、私はミチトセの手を右手で取り、左手で自分のの右手首をぐっと強く強く抑える。
ゆっくりと右手の感覚が遠くなっていく。
異能の影響を離れ、陶器に戻っていく。
ミチトセは手の中でどんな感覚を味わっているだろうか、冷えた陶器の手触りだろうか?
■三千歳 泪 > 「忍び込むだけなら大丈夫。セキュリティがない場所も多いから。でも、うっかり迷子になったらミイラになっちゃうかも?」
「ケーブルを通してそれでおしまいってわけにもいかないし、誰かが守ってあげないといけないから人はいるよ」
「誰も見てない場所でちゃんと働いてる人たちがさ。私たちの足元は謎のパイプでいっぱいなのだ!」
「シャーロットとシャーリーは別の名前。知ってるよ。でも私は私のまわりの子たちみんな、私だけの特別な名前で呼びたいんだ」
「そっちの方が覚えやすいっていう理由もあるけど…君は私の特別で、私は君の特別だから。ありがとねシャーリー」
結ばれた手が器のかたちを変えていく。色褪せてしまったり、精彩を失ったりするのではなく。
姿を変えただけ。本質はきっとそのままに。白磁のような肌が本当の白磁になってしまった。
置かれた右手は信じられないほどなめらかで、ひんやり感が癖になりそう。頬ずりしてもいいよね。した。最高だったよ。
「やってくれるね! ほんとにお人形さんだったんだ。すごいすごい!! 君みたいな子はじめて見たよ!」
「このまま連れて帰っちゃおっかな。シャーリーうちの子にならない?」
「もしもの話。お持ち帰りしたらどうなるの? やっぱり誰かお世話してくれてる人がいて、びっくりしちゃうのかな」
「捜索願いとか出てさ、風紀の人にみつかって、現行犯でタイホされて?…それから新聞の一面にスクープされちゃって!…退学コース?? きびしいなぁ!」
「へーきへーき。直せるよ。君のこと。君のマシンも。いつでもパーフェクトにさ! なんたって《直し屋》さんですもの。まかしといてよ!」
■シャーロット > 「じゃ、また今度案内してもらおうかな。ちょっと興味あるんだ。」
地下の世界とそこで働く人たち、遠いようでとても近い知らない土地。
一体どんな光景が広がっているんだろう。
「たしかにご同類は出会ったことないかも、似たような、別の感じの人は見かけたことあるけど。」
人を模した肌からただの白磁に戻った右手に頬ずるするさまを見て笑う。
この子はなんというか、考えたことをすぐにやってしまう子なんだな。
「うーん、一昔前だったらそれもよかったかなー。」
けど、と付け加え、店の脇、シャッターのスイッチ板を開き、シャッターを上げる。
店の入口の反対側の窓からの光で入り口からも中に並べられた花達がよく見える。
「今の私は、この子たちの世話をして、
自分の手で色んな事をやって、
色んな事を体感して
知らないことを知って
『生きている』、っていうのを楽しんでみてるんだ。
だから、ミチトセに修理を頼むとしたら、ただ直してって任せるんじゃなくて、一緒にやってもらう、ってことになるかな。
……と、いうことでお人形としての私ではなく、この場に生きている私とお友達になってもらえるかな。」
異能の影響下に戻り感覚を取り戻した右手で、黄色いバラを一輪手に取り、差し出して笑いかける。
知らないことを知るのはとても楽しい。
きっとそれを、誰かと共有できたのならもっと楽しいだろう、そう思った。