2015/06/18 のログ
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」に岡部 吹雪さんが現れました。
岡部 吹雪 > 「そこに掛けていただけませんか。」
「行政の介入までまだ少しあるでしょう?」
「お話、したいんですよ。」

振り向けば見るからに異質な出で立ちの男が立っている。
頭部から胴体のラインが一直線で首はなく、その点では魚に似ているとさえ思えた。
二人は壊滅したオープンカフェで、奇跡的に残ったテーブルにて対面する。

「何だってこんなやべえモン街に流した?」
「『文化の違い』ってヤツでも、見過ごせねえ事だってある。」

「明確な侵略なわけですから当然でしょう。」
「我々メイビアンは今回の進出において、この島を平定する必要があった。」
「しかし暴力で解決しては被害が大き過ぎる。」
「我々の個体はそう多くないのです。」

「だから島民を暴走させたのか。」

「ええ。丁度良かったのです。この島の住民は野蛮過ぎるために。」
「毎日暴動が起き、死傷者も出ている。」
「混迷期とは理解しているつもりですが、あまりにも生命体として程度が低い。」
「そうは思いませんか?」

メイビアンの男は残されたワインボトルの封を切り、そのまま呷る。
氷の上でよく冷やされたままになっていたのだから、味も鮮度も悪くない。
ただ死肉と黒煙が揺らめく世界では、あまりにも異質な情景であった。

「少しタガを外しただけで、勝手に自滅してくれるのだからありがたい。」

岡部 吹雪 > メイビアンの男が言うように、島の秩序は非常に不安定だ。
島民同士の諍いならまだ可愛げもある。

しかしながら現実は犯罪組織の横行や、異能に呑まれた個人の犯行。
日々公安や風紀が処理している案件だけでも、生徒会の頭痛の種だ。

「肩肘張って生きてきたら、道で誰かとぶつかるのは当然だろうさ。」
「だけどそれでも、この島で生きていくしかねえのだってゴロゴロいるんだよ。」
「程度が低いから必死になってんだ。」
「それを後からやってきて、害虫駆除のノリで荒らされちゃたまんねえんだよ。」
「何故共存の道を選択しなかった?」

煤に汚れた顔を拭う。

「その価値を見出せなかったから―――。」

行動を起こす切欠として十分すぎる言葉だった。
言い終えるのを待たず、岡部は身を乗り出し銃口を突き付ける。
メイビアンの男もまた、岡部の胸元に銃口を向けていた。

「―――なので、掃除を始めようかなと思いまして。」

遠くからサイレンの音が近づいてくる。

岡部 吹雪 > 「貴方は見たところ、行政側のエージェントでしょう?」
「これ以上の介入はこちらとしても良い状態とは言えません。」
「なので……協力者という形で鞍替えをしませんか。」

「断る。」

発砲音が重ねて二つ。
両者の腕を裂いて、血の華が空へと咲き誇る。

岡部 吹雪 > 互いに飛び退いた勢いで地面を転がり、瓦礫に姿を隠しては銃撃を見舞う。
致命傷を与えることができないまま、戦地を転々としていく。
飲食街からブティックが立ち並ぶ服飾街へ。
華やかな日常からは想像できないほど、人の気配というのがまるでない。
岡部がショーウィンドウに飛び込んだところで、現実感はより希薄となった。

「店ごと焼いて差し上げましょう!」

メイビアンの男の目に妖しげな光が灯り、怪光線が放たれる!
末尾0が5つは下らないブランド用品もただの布。
瞬く間に店内は焔に包まれる!

岡部 吹雪 > 「そう慌てなさんなって……。」

店内では壁の隅へと寄りかかる岡部の姿があった。
残弾の尽きた拳銃を放り出し、小型端末を操作している。
だが火の回りは非常に早い! 救援要請を送っていたのには遅過ぎる。
ただ一つを除いては。

岡部 吹雪 > 火花が燃え移り隣接店を侵し始めたその刹那、轟音を響かせて一台のマシンが突っ込んでくる!
EGX-9001 陽炎。岡部が駆る最新鋭の大型オートバイには、自動操縦機能が備え付けられたいた。

「なっ……!?」

市街地とは言え大通り。
爆発的な加速力を遮るものはない!
ガンメタルカラーの怪物は、メイビアンの男を巨体で捻じ伏せる!
それは意識を寸断させるには十分すぎるほどの一撃だった。

岡部は決断的に店先へと飛び出す!
陽炎に設置されていた愛刀を抜き放ち、呻くメイビアンの男に斬り付けた。
ただ一度の斬撃は無数の剣閃を生み出し、瞬く間に寸断!
切っ先を振るい滴る血を拭い去り、踵を返す。

「―――ったく、冗談じゃねえ。」

サイレンの音が停止した。
近場に止まったのだろう。物々しい足音が響いてくる。
岡部は陽炎に跨り、その場を後にした。

岡部 吹雪 > ―――後日。
今回の騒動は"いつもの異能犯罪"として正式に処理された。
凶器の断定も原因の特定も不明だが、異能であれば説明が付く。
それ以上の追求は、どの部署からも起こらなかった。
どの時代も世界というものは相互理解と妥協で成り立っているものだ。
この島とて例外ではない。
過程はどうであれ、ある程度の平和はこれで保たれたのである。

「『次元境界線が異常な数値を観測』……?」
「穏やかじゃないねえ、これは。」

人の気がないロビー。
報告書を読む"旦那"の声だけが、静かに響いた。

ご案内:「異邦人街大通り/商店街」から岡部 吹雪さんが去りました。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」にシャーロットさんが現れました。
シャーロット > 店の前、もはや自分の定位置となってしまった机と椅子のセット。
珈琲の入ったマグカップを両手で包み、ぼんやりと紫陽花の鉢植え達を見る。

「あー、そろそろ君たち剪定の季節だね。」

結局ご近所とバザーでの物々交換でしか捌けなかった紫陽花たちを見て嘆息をつく。
綺麗に咲いてるのになあ。

シャーロット > どうにも悲しい気分になってきたので
鉢植から視線を外し、ぐずぐずの空を見上げる。

雨は割と嫌いじゃない。
伸ばしたひさしに落ちる音
ひさしの外にはみ出てる鉢に当たる音
地面を打つ音
傘を打つ音
急いでかけていく人の足音

目を閉じて聞いているとまるで音楽のように聞こえてくる。

シャーロット > 音楽といえば、結局再生機の購入はやめにした。
好きな音楽をかけながら花の世話をするのも悪くないかなと思ったけれど
今はまだ街の生きている音だけで十分楽しめる。

もう少し、この音に飽きるまではお預け。
どうしても聞きたくなったらまたミュージックショップに出かけければいい。

そうすれば店主のおじいさんとお茶でも飲みながら話もできるし
帰り道を工夫すれば、また知らない風景を見られるかもしれない。

シャーロット > 背を伸ばし、コーヒーカップをてのひらで包んだまま、ぼんやり通りを眺める。

空から落ちる雨と歩く人達
彼らの奏でるいろいろな音
濡れた地面と手元のコーヒーと周りの花の香
てのひらを伝わる珈琲の熱
啜った珈琲の香ばしい味

五感全てでぼんやりとした時間を楽しむ。

シャーロット > 「次は何を売出にしようかなあ。やっぱり朝顔かな」

朝顔の鉢植えが並んでいるさまを思い浮かべてみる。

……うん、いいじゃない。
折角だし、入り口に売り物の朝顔とは別の朝顔で緑のカーテンでもつくろうか。

「そういえばこの前バザールで別の世界の花の種売ってるお店あった気がするな。」
違法なのか合法なのかわからないけれど興味がある。
どんな色でどんな華が咲くのか。

雨が上がったら一度店を閉めてバザールを見に行こう。
冷めかけた珈琲を啜りながらそう思った。

ご案内:「異邦人街大通り/商店街」からシャーロットさんが去りました。