2015/06/21 のログ
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」に遠峯生有子さんが現れました。
遠峯生有子 > 色の洪水に圧倒される。天井まで重なる日用品の塔に目を見張る。
香料のきつい匂いに眩暈がする。
初めて訪れた異邦人街で、生有子が迷い込んだ場所は
分かりやすくいえばマラケシュのスーク。

異邦人街にいくつかある商店街のひとつで、
1kmの半分にも満たない短いものであったが、
途中で一度折れ曲がり、裏通りとそれにつながる裏の裏通りまで備えているとなれば、
それだけで小さな迷路と言えた。

遠峯生有子 > 「あれ、どっちから来たんだっけー?」
 ぽやーっと口をあけて前後左右を見回す。
 どちらにでも進んでいけば外には出られそうだったが、
 その外すら初めて来た場所だったので、
 出た後に間違いなく進めるかどうかも自身がなかった。

 目が合った店主に声をかけられる。
 ターコイズと鈍い金のパーツが重いくらいに連なった
 ネックレスを示されるが、顔を赤らめて手を左右に振る。

遠峯生有子 >  蜥蜴が直立したような男がさらに横合いから声をかける。
 話の調子から想像するに彼は笑っていたのだが表情から見て取るのは難しい男だった。
 どうやら飲料類の販売者らしかったが店先に並ぶバケツ大の瓶には
 端から順に角、爪、幼虫、ヘビに、黒焼き(!)
 断ることも出来ずに後ずさる。

 ただし道幅がそれほどあるわけではないので、
 後ずさった先にも店があり、こちらは卵の専門店だが、
 アイスを売っているらしかった。

 とにかく喉も渇いたし落ち着きたい。
「ええと、日本円で払えますか?」
 アイスは100円だった。
 ほっとした。

遠峯生有子 >  店先の小さい椅子を借りてやっと座ってアイスを一口。

 アイスも販売する卵屋は、
 最初陰になってよく見えなかったが瞳が横に長かった。
 ターバンを巻いた頭が不自然に盛り上がっていて、
 隙間からは角のようなものが見える。

 椅子を借りている手前、逃げられないでいるうちに
 どこから来たのかとか、ここは初めてかとか、
 他愛ない話題を振られて答えているうちに調子がよくなってきて
 話は弾む。
「…それで、ちょっと奥へ入ってみたら入り口が分からなくなっちゃって。」
 えへへと笑う。

遠峯生有子 >  店主の情報は残念なものだった。
 生有子が目印にと考えていた店の特徴は、
 この小さな迷路のどちらの出入り口付近にもあるものだったのだ。

 しゅんとする少女に、どちらからでも駅へは出られるからと慰めて、
 店主は何気ない様子で手元においていたノートを一枚、ちぎってもしゃもしゃ食べる。

遠峯生有子 > 「た、卵を食べるんじゃないんですか?」
 思わず尋ねる。

 商品に手をつけるわけにはいかないもんでと答えが返ってきた。
 そこからしばらく話が弾む。
 どうも、この男は雇われで、商品に手をつける恐れが
 ないことを買われて、もう5年程ここを切り盛りしていること。
 その前はしばらく病人のように、ただ窓の外を見て暮らしていたこと。
 故郷の邦からここへ飛ばされて、もう戻れないと受け入れるために3年かかったこと。
 もともとは山間の村で牧羊をしていたこと。娘がいたこと。
 娘はどうも生有子ぐらいの年齢であるらしいこと。

「あはは、会ってみたいなー。
 その子、手芸ってどんなのを作るんですか?
 刺繍するの?すごいなー。
 私ティッシュケースにぶたさん入れるだけですっごく時間かかりましたよ。」

遠峯生有子 >  ほやほやと笑う生有子に店主が目頭を押さえる。

「あ、ええと…。」
 ある日突然飛ばされてきた異邦人に、
 過去の話はよくなかったかと思い至る。
 そういえば、母もそれほど、もとの邦の話を聞かせてくれたわけではない。
 いつも何となく話をはぐらかし、
 しかし、いつか見せてあげるねと『約束』をしてくれた。
「そのう…その子、今頃お父さんがぶたさんの刺繍の話してるって思わないかもしれないね。」
 我ながら、取り繕う言葉としてこれはどうなのだろう。
 落ち込む気持ちを曖昧な笑顔で覆い隠して横長の瞳を覗き込む。

遠峯生有子 >  頭を撫でられた。
 何を言ったらいいかわからない。
「あのう、アイスおいしかったです。」
 頬を上気させながら(必死さで)、なんとかひねり出した言葉はそんなところ。

 店主はおかしそうに笑い、
 見た目には驚くだろうがここの住人はそんなに悪いのはいないから、
 いろいろ見て回って、気に入ったものがあれば買ってやってくれと、
 高そうなものは覚えて帰って次の機会に男にでも買ってもらえと、

 言われて気が緩んだ生有子は何も考えずに「そうします。」と笑ってから沸騰する。

「そ、そういうの買ってくれる人とかいないです!」
 わたわたと、焦ってその店はあとにした。

遠峯生有子 >  ぱたぱたと走っていった先にあったのは
 色とりどりの手芸商品を取り扱う店。
 先ほどのやりとりのことがあったので、なんとなく立ち止まって商品を眺める。

 赤いフリンジの付いたポシェット。
 空色とオレンジの糸を基本に鏡を縫いこんだストール。
 びっしりと、小花模様を刺し込んだ純白のクロス。
 20色のビーズ刺繍が虹のような帽子。
 トラが描かれたクッションカバー。
 うさぎ模様の室内履き。
 ビーズ細工のキリン。

 わりとリアルなビーズの熊が目を引いた。
「あんまりかわいくない。」
 ふふふと笑う。

遠峯生有子 >  それはお守りだよと声をかけられる。

「ええ、そうなんですか?くまが守ってくれるの?」

 悪いものから身を守ってくれるのだそうだ。
 店主の故郷のものかと訪ねると違うという。
 店の抱える刺し手のひとりの作品らしい。

 しかしどう見ても、あまりかわいくはない。
 直立しているが、頭がリアルだ。
 しかもちょっと曲がっている。
「えい。」
 なんとなく愛嬌を感じて鼻をつつく。

 それが気に入らないならとチューリップのハンカチを薦められる。
 同じ刺し手が作ったものらしい。
 それは生有子の気に入ったので、
「きれいですね」と笑みを返す。

遠峯生有子 >  悩んだ末に買うことに決めた。
 決めたが一応。
「おいくらですか?」

「あ、あのうこれもあわせて。」
 なんとなく咄嗟にくまも足す。

 値段は合わせて1000円也。

遠峯生有子 >  薄い白い紙に商品を包み、
 渡されるついでに、そういえばあんたは右から来たよ、と。

「見てたんですか?」
 はっと顔を上げる。

 商売柄ねと店主はそっけない。
 教えてやってもよかったんだが、あんた先へ行っちまったからな。

「ええ、ありがとうございます。
 よかったぁ、全然わかんなくなっちゃってて。」
 晴れやかな顔で笑ってお辞儀をする。

遠峯生有子 > 足取りも軽く来た道を帰る。
また来よう。
そして別の店主とも話をしてみよう。

そうそう、今日買ったハンカチはママにあげよう。
郵便局どこだっけ。学園内に出張所があったような気がする。
学生通りにもあったかな。

こうして少女の冒険(?)は無事終了したのである。

ご案内:「異邦人街大通り/商店街」から遠峯生有子さんが去りました。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」にシャーロットさんが現れました。
シャーロット > 緑のカーテンをつくろう。
そう思い立って、育てていたものをそろそろ店の前に並べてあげようと思った。

パッションフルーツの苗。

植え付けにはちょっと遅いし、もしかしたら一番暑い時期に間に合わないかもしれない。
それでも、ちょっと期待してしまう。

プランターを抱え、店の前に出る。

シャーロット > 楽しみとちょっとの不安を抱えながら、準備を始める。
店の前でも特に日当たりの良い場所にプランターを置き、一度店に戻る。

人通りを確かめ、店から工具箱と長い木材を三本持ち出す。
それなりに広い目の前の道、今日もいつものように人通りはほとんどなし。

「今日に限って言えばありがたいけど、もうちょっと中心街に近いところにすればよかったかなあ、店。」

情けない気持ちになりながらも、店の前をはみ出して木材をコの字に並べて釘を打つ。

シャーロット > ゆっくり、指を打ち付けないように釘を叩く。
通りに規則正しく音が響く。
こういう単純なリズムが私はとてもスキだ。
だから釘が打ち終わってしまうのが少しもったいない。

「よっし、と。」

釘を打ち終えて、コの字に固定された木枠の角、辺の二箇所くらいにフックを取り付ける。

シャーロット > 「あとは、これを立てかけて網を……」

片側を掴み、枠の開いた部分を下にして建てようとする。

しまった、重いし、長い。
どうやって店の前に立てかけよう。

少し悩む。

シャーロット > よし、決めた。
木枠の向きを変え、空いた部分を上にしてしまおう。
そうすれば持ち上げる力だけで立てかけられる。

立てかける位置まで引きずってから
フックに網を引っ掛けて、カーテンの土台を完成させる。

「よい、しょ、と。」

ぐっと力を入れ、枠を立てかける。
店の看板にガン、と当たる音がする。

長く作りすぎた。

ご案内:「異邦人街大通り/商店街」に雨宮 雫さんが現れました。
シャーロット > 枠の角があたった部分を見上げる。
よかった、凹んでない。

胸をなでおろして、プランターを木枠の前に置く。
あとはすくすく育ってくれるのを待つだけだ。

プランターの前に屈み、青々とした苗を見て思わずにやけてしまう。

「元気に育ってよー?」

雨宮 雫 > 足音も無く、というか、引き伸ばした縦長の8角形板に乗って極低い宙を……要するに浮いてるスケボーだが、に乗って滑るよう道を通り抜けかけていた。

横から聞こえた ガンっという音に、板を斜めにして急停止。

「ぉっ、え、何かな、今の音。
 事故かな、かな?」

きょろ、きょろ、と楽しそうに視線を彷徨わせる。

シャーロット > 立ち上がり、んー、と伸びをして振り返ると不思議な乗り物に乗った少年と目が合う。

何かに驚いたように、そしてそれを探すようにキョロキョロと。

「あー、結構大きな音だったもんな。」

顔を上げ、木枠の角がぶつかったままの看板に目を向ける。

雨宮 雫 > 最後に視線を止めた先で目の合った相手は、花屋の店員か。
そのまま目線を釣られたように上に向けていく。

「……あぁ、納得。
 なんだ、事故じゃないのか……残念だね、だね。」

まぁ、とはいえ折角だし。
板から下りて、それを片足で弾いて片手で掴むとそちらに足を向ける。

「何か、怪我とかしてないかな、かな?」

シャーロット > なんか物騒なこと言ってる。
この街には闇医者の人も多いし、そういうモグリのお医者さんの助手さんとかだろうか。

「残念。私も看板もほとんど無傷。
 というか私は怪我してもお医者さんとは無縁なんだけどね。
 立ち止まったのも何かの縁、ってことで鉢植えでも買っていかない?」

傷一つ無い両手のひらを広げて見せてひらひらとふる。
そしてついでにセールス、売れるに越したことはないもんね。

雨宮 雫 > 「あら、すぐ治ってしまう残念な系のお人かな、かな。
 保健委員の仕事が最近ない、なあ……  んー。」

広げられた手を見て肩を竦めて。

「鉢植えか、部屋に増やしてみるのもありかな、かな。
 何か異世界モノとかで珍しいのないかな、かな?」

シャーロット > 「私、リビングドールだから。怪我しても陶器が欠けるだけなんだ。」
だから残念、ともう一度繰り返し笑う。

保健委員なら学園の方でいくらでも怪我する人いそうなのにな、と思うけれど
彼の言うような異能の人もたくさんいるのだろう。
お客日照りの暇さはよく分かる。

「こっちに来る人って大体身一つで来ちゃうし、そもそも別の世界の植物がこっちの世界が生育に向いてなかったりするからなー。
 精一杯珍しいものはこれくらい?」

店に戻り、切り花のケースから青いバラを一輪持ってくる。

「こっちの世界の花だけど、ここまで青いのは珍しいよ。
 普通だともっと紫色っぽいんだよね。
 一輪挿しに飾るもよし、束で買って誰かに送るもよし。
 さあどうだ。」

雨宮 雫 > 「あぁ、無機物系なのか。
 ボクは生物かアンデット専門だから、無理だね、だね。」

残念そうに ふぅ っと溜息を一つ。
が、差し出された青いバラに途端、目を輝かせた。

「おぉ、凄い青い!
 青いバラって普通もっと確かに青じゃないのに、コレいいね、いいねだねっ
 これ、種とか売ってないのかな、かな!」

ずずい、っと顔を近づけていく。