2015/07/07 のログ
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」にイヴェットさんが現れました。
■イヴェット > (───ええと。学校に行かないと)
きょろきょろと腰まで伸びた金髪を靡かせて帽子を押さえながらスタスタと歩みを進める。
目深に被ったキャスケット帽にちらりと覗くヘリオトロープ色の瞳。
人間とは異なるつんと尖った耳。
ふんわりと揺れるスカートから見えるのはまるで魚のような鱗。
「あの、学生街に行かないといけないのですけれど───」
すれ違う人々は皆足早に歩き去っていく。
自分と同じ人間と異なる見た目に少しの安心感を覚えながら、大通りをぼんやり歩いていく。
(みんな忙しいのかな)
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」に湖城惣一さんが現れました。
■湖城惣一 > 異邦人街。様々な文化の交じり合うそこでは、様々な服装で歩くものが多い。
しかし、その中でも一際珍しい風貌をしている男が居た。
和装ベースのジャケットに袴を履いた姿は奇妙だが、何より腹を露出し、そこに真一文字に残るきれいな傷跡が目に入る。
引き締まった長躯の男がさっそうと歩く。
「…………?」
その中、その男がふと視線を映した先。
そこにはぼんやりとした視線で大通りを歩く者がいる。
やや危なげにも感じる足取りに注意を向けた。
■イヴェット > ゆらり、ゆらりと歩みを進める。
近くを通る者に片っ端から声を掛けていくも、生憎立ち止まってくれるものはいない。
じわりと涙を滲ませながら、めげずに声を掛けていく。
「あの、わたし────」
幾度目かの無視。
この街は全く優しくない、と少々憤慨しながらも諦めずに声を掛ける。
───またダメだった。
しゅん、と俯いたあと暫くして顔を上げる。
(………あれ、サムライさん…?)
些かちぐはぐな服装に身を包んだ男性の姿が目に入る。
腹部の傷を認めれば、ふっと視線を逸らした。
■湖城惣一 > かつん。
路上の小石を蹴り飛ばす音と、同じ程度の大きさで。
少女のか細くも響く言葉が耳に届いた。
「…………」
こちらから顔をそむける少女。だが、それは男にとってはいつものことだった。
無表情に、淡々と、ゆっくりそちらへ向かっていく。
ともすれば威圧的な風貌で、少女の四歩手前で立ち止まる。
「君。……何か困りごとがあるのか」
男の表情は変わらない。目つきは鋭く、ただ淡々と問うように。
■イヴェット > 「あ、ええと、すみません」
目を逸らしてしまった罪悪感から先ず口から出たのは謝罪だった。
困りごとがあるのか、とひとつ問われれば驚いたような表情を浮かべる。
「わたし、学生街に行かないといけないんです
でもちょっと来たばかりで、その──………」
帽子の鍔をぎゅうと引いて目深に被りなおす。
同時にふ、とヘリオトロープ色の双眸を伏せる。
スカートの裾をそっと握って、ぽつりと小さく言葉を溢した。
「まいごに、なりました」
■湖城惣一 > 相手の小さくこぼした言葉。そこまでじっくりと黙ったまま聞き届けると、
「そうか」
端的に応答した。
彼女の、怯えているような、恐れているような、恥じるような。
そういった様子に男は頓着しない。
ただ、キャスケット越しに少女の瞳を見つめるかのようにただ無表情に視線を向けている。
「新入生か。……俺は二年、湖城惣一だ。案内しようか」
淡々と。無表情に。男の声色は変わらないし、表情もまるで鉄のようだ。
四歩の距離を守り、ただ相手をじっと見つめ。
相手の言葉を待つ。
■イヴェット > 「………え?」
自分より身長の高い和装の男性の目を見ようと頭を上げた。
遠目で見るよりも随分と長身な彼を見上げれば、嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「ほ、ほんとですか……?ええと、コジョウさんが案内してくれるんですか?」
矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。
大通りで初めて声を掛けてくれて尚且つ案内をしてくれるというのだ。
思わず声が上擦った。
「はい、ええと、新入生です。
わたしはイヴェット・ダリア・メレディス。長いのでイヴ、とでも」
恥ずかしそうに顔を赤くして鍔を引く。
口元は嬉しそうに緩んでいた。
■湖城惣一 > 「ああ」
相手が顔を上げれば、その視線がぶつかり合う。
目はそらさない。彼の話をする時の癖だった。
無表情のまま、眉を微動だにせず相手の言葉を待つ。
……。
「なるほど、イヴ。俺のことも好きに呼べ。
ここでは年齢はあまり意味を持たんし、君と俺は同じ学友ということになる」
同級生ではないにしろ、学友である相手に敬った言葉を使う気もなければ使われる気もない。
だから、少女の好きなように呼べばいい、と思っていた。
男の表情は読むことは難しいが、湖城惣一という男は、目の前で話す相手に対して真摯で居ようと務めていた。
■イヴェット > 「ありがとうございます、コジョウさん」
真っ直ぐと少女を見る彼に対して人の目を見るのが苦手な少女。
少女も彼の真面目さには気付いていたからか、必死に顔を上げようと努力する。
病的なまでに真っ白い肌を赤く赤く紅潮させて帽子をちょん、と僅かに浅く被りなおした。
「ええと、はい。
学友………ふふ、ありがとうございます。
けどこれは癖みたいなものなのでお気になさらず、です。
職員室に先ず来なさい、と手紙が来ていて」
あわあわと慌ただしくリュックから封筒を取り出す。
封筒を開いてB5大の印刷された文書を広げれば『学園地区・職員室に来ること』との文字。
必死に彼の目の前で紙を広げた。
■湖城惣一 > 「礼には及ばん。…………」
赤く頬を紅潮させるイヴの姿を見て、湖城は自分の顎を撫でるように手をやった。
あまり、日常での人の機微を読み取ることは得意ではない。
だからこそこうして自分なりの誠意を貫いている。
「そうか」
癖というものならば特には気にせず、ひとまず少女の広げたプリント をじっと眺めて。
「なるほど。確かにそう書いてあるな。案内しよう」
あまり必要以上のことは喋らない。自分から話すのはあまり得意ではなかった。
だが、彼女の、ここでの生活への不慣れさを感じ取って、懐から一枚の名刺を取り出し。
「行く前に一枚。俺の連絡先だ」
と、まで言って――それはまるで本で見た"ナンパ"のようだと思い直し。
その後から、
「俺は治安維持の役目を依頼されている身でな。
学生間のトラブルで困り事があったらいつでも連絡しろ」
と付け足して連絡先を差し出した。
■イヴェット > 「治安維持………?」
はて、と首を捻った後にぽんと手を打つ。
正義の味方。確かそんな説明を雑にして貰った記憶がある。
「えっと、ありがとうございます。
困ったらコジョウさんを頼りにさせてもらっちゃいますね」
あまりトラブルに巻き込まれることはないと思いますが──と付け足して。
ゆったりとした所作で受け取った連絡先を大事そうに財布の中に仕舞った。
ふんわりとした柔らかい笑顔を浮かべてまたありがとうございます、と。
「それじゃあお願いします、此処から近いんですか?」
寡黙な彼に反して間が持たなかったのか、幾つか質問を投げかける。
必死で喋りながら、耳まで真っ赤にしていた。
■湖城惣一 > 「ああ。どうせ暇をしている。遠慮はするな」
授業か、鍛錬か、或いはこうして歩きまわっているだけだ。
相手の言葉の懸命な仕草には、少しばかり唸った。
己はもう少し多弁であったほうがいいのではないか、と。
「近いといえば近いが……」
顔を上げて、やや上の方へ向けて指を伸ばして。
「遠くに、大きな建物が見えるだろう。あれが学園地区の象徴である時計台でな。
体力に自信がないなら、電車を使った方がいい。……ついでだ、使い方も教えておこう」
少なくとも彼女はこちらに問いを投げかけてくれている。
何度も繰り返される質問、それの一つ一つになるべく丁寧に答えながら彼女のすぐ近くに。
普段であれば、人の後ろから付き従うように背後を守るのが男のスタンスであったが、
案内も兼ね、また相手との話を続けようというのならば、近くでなければならないと思ったのだった。
■イヴェット > 「よかった、お陰で助かりました」
幾らか慣れてきたのか、先刻よりは落ち着いた様子で笑う。
時計台を指させば、つられるように少女も目で指先を追う。
「アー、体力、ですか………自信はないので電車、頼りになりそうですね」
困ったように小さく笑いながら鍔を引く。
名前だけは知っている単語である電車。話の様子だときっと交通機関だろう、と思案する。
便利だなあ、と独り言ちながらぱたぱたと歩みを進めながら彼の表情を覗き込む。
自分一人では時計台など目に入りすらしていなかった。
目の前の学生生活に思わず心が躍る。
「大きな島なんですねえ、ここって」
■湖城惣一 > 「一度覚えてしまえば単純なものだ」
歩きながら軽く電車について説明を交えながら。
相手の仕草に、ほんの僅かに笑みを浮かべる。
この所、様々に交友関係が広がってきている。
その中での出会いは、おそらく無駄などではなく。
鉄面皮とも揶揄されかねない男の表情の、ほんのわずかにだけ、色が混じっている。
「ああ。だからこそ、色々な者が居る。良いものも、悪いものも。
だから君にも良き縁故が巡ることを祈っておこう」
■イヴェット > 「はい、頑張って色んな方とお話できるようになりたいです」
にぱっと明るく笑顔を浮かべる。
説明してもらったことを必死で頭に入れながら彼の横をついていく。
ゴトリ、とブーツの底が何度か石に引っ掛かって転びそうになりながらもはやる心に比例するように足も早まる。
彼の口元がほんの少し緩んだのをしっかりと目に焼き付ければ、少しばかり頬を赤くする。
「良いものも悪いものも知ってやっと立派になれると思いますし頑張ります。
───ありがとうございます、
コジョウさんとのご縁みたいに素敵な縁が沢山待ってるといいなあ」
悪いものに当たってしまったら治安維持、してもらってもいいですか?と。
悪戯気に笑えばちらりと八重歯が覗いた。
■湖城惣一 > 「同感だな」
なりたい、とまで積極的な意欲ではない。だが、相手を困らせることが常であり。
せめて目の前の相手ぐらいは気持よく話をさせたいものだった。
彼女が転びそうになる度に、わずかに湖城の重心が動く。
しかし持ち直すたびに、そっとそれは戻っていた。
「――――」
今の言葉は、自分との出会いが素敵だと言っているという意味であり。
この一年で出会う者たちは、快く感じることが多い。
目の前の少女も例外ではなく、
「……そうだな」
懐に手を入れ、一つの、手に握り込める程度の、小さな包みを差し出した。
「これを。……縁を結ぶかは分からないが、君に何か災厄が降りかかった時、一度だけなら引き受けてくれるだろう」
こう見えて彼は宗教――古神道の流れをくむ術者であり。差し出したのは小さなお守りだ。
戦いに身をおく彼のいわば隠し札のひとつであったが、それを意にも介さない。
常世島は少し裏を覗けば危険な場所で。一度の危険であったら振り払ってくれるはずだ。
■イヴェット > 「お守り………?」
首を傾げながら差し出されたそれを大事に大事に受け取る。
彼女は常世島の危険については何ぞ知らない。
それ故に不思議そうにお守りを何度かちょんちょんとつついて遊ぶ。
ゆらりゆらりと孤を描くそれは彼女にとって初めて見る古神道の文化。
嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます、コジョウさん」
学生街に向けて寡黙な武人に導かれながら、彼女は未だ見ぬ学生生活の一歩を踏み出した。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」からイヴェットさんが去りました。
■湖城惣一 > ひとまず。引き受けたからには最後までつき従うことは間違いない。
彼女に今、この島の危険性を説いても不安を抱かせるだけで得にはなるまい。
だからこそ、ただ行動で示すように、小さな少女を学園まで送り届けるのであった――。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」から湖城惣一さんが去りました。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」にシャーロットさんが現れました。
■シャーロット > ずっと開けていなくて錆び付いていた屋根裏の窓を蹴破る。
これはあとで直すとして、屋根の上に出て、腰掛ける。
お茶の入ったポットと剪定した紫陽花の花の山の入ったお皿を傍らに置き、空を見上げる
今日はこっちの世界では七夕という行事の日らしい。
川に阻まれたオリヒメとヒコボシという人たちが年に一度だけ出合う日。
中々ロマンチックだ。
■シャーロット > 街明かりで少し見づらいが、空には星の川。
好きあった二人が何故別れて暮らすのか、ちょっと調べてみたが、
好きあいすぎて仕事をしなくなってしまい怒られてしまったんだとか。
何事も程々が一番なんだなあ、と思いながら紫陽花の花を齧る。
……しまったな、もうちょっと星が綺麗に見えるところに行くべきだったかな。
■シャーロット > 蹴破った木窓の破片に気をつけながら、寝転ばる。
目を凝らせば天の川の他にもいろいろな星があるのに気づく。
自分が生まれた土地とは全く違う星々。
目を閉じ、瞼に焼き付いた星を楽しむ。
そして、誰かの腕に抱えられ、見上げた星々を思い出す。
■シャーロット > しばらくそうして過ごし、お茶も紫陽花の花もなくなり、のろのろと起き上がり、あくびをする。
おやすみなさい。
年に一度の再会、ゆっくりと睦まじくすごしてね、と天の川に手を伸ばしてから、窓から屋根裏に戻る。
……窓はとりあえずシートで塞いで明日直そう。
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」からシャーロットさんが去りました。