2015/09/06 のログ
ご案内:「異邦人街大通り/商店街」に佐伯貴子さんが現れました。
佐伯貴子 > (本日は珍しく異邦人街を見まわりである)
(ここは何度来ても新鮮な驚きで満ち溢れている)
(建築物かどうか分からないモノがあったり)
(何やら特殊な「空間」まである)
(講義で少し触れたとはいえ、百聞は一見にしかずである)
おおー…
(少しワクワクしながら歩く)
(すれ違う人?たちも様々である)

佐伯貴子 > (前から大きなナメクジが近づいてくる)
(視線を離せないでいると)
「何見てんのよ!風紀に厄介になることなんてしてないよ!」
(と人語が帰ってくる)
(表情がわからないのでとりあえず謝るように頭を下げる)
(極端な例だが、こういうこともある)

佐伯貴子 > (学生街とも落第街とも違う文化圏である)
(これからますます発展して、そしてあるいは一部は衰退していくのだろう)
(住人によって作られた街)
(その住人たちは、ホモサピエンスより弱いものもいれば)
(ドラゴンより強いものもいるのだろう)
見回りする必要があるのだろうか…
(治安が悪いという話はあまり聞かないし)
(住人同士がぶつかるという話もあまり聞かない)
(うまく共存しているように見えるが裏側まではわからない)

佐伯貴子 > (商店街を見てみれば、何を売っているのかわからない)
(衣類はともかく、食品は何やら得体のしれないものばかりだ)
(アクセサリーのように見える小物類でさえ、本来の用途は不明だ)
(つくづくこの世界の外側は広いのだなと実感する)

ご案内:「異邦人街大通り/商店街」にリヒットさんが現れました。
リヒット > 通りの向こう。地面から2m程度の高さを、ぷかぷかとビニール製のレインコートが浮かんでいます。
……レインコートだけではありません。中には一応、人型生物が入っているようです。そのサイズは人間の子供にしてもかなり小さめですが。
さらに、そのレインコートの周囲にはいくつものシャボン玉が浮かび、風に流されも破れもせずに付き従っているようです。

商店街で陳列物を眺める女性の姿を見ると、くるりと一回転して風を受け、高度を下げつつ近づいてきます。

「……おねーさんは、人間?」

男の子とも女の子ともつかぬ、性徴の感じられない声で問いかけてきます。

佐伯貴子 > うん?
(声をかけられるとそちらを振り向く)
(奇妙なものに見慣れたのか、大して驚きはしない)
ああ、人間だ。
「この世界」のな。
ここは面白いところだな…
(視線を回し、相手に定めると)
私は2年の佐伯貴子という。
君は?

リヒット > 「このせかい……」

その言葉には、きょとんと目を丸くしながら首を傾げます。そのまま名乗られれば、

「さえきたかこ……2ねん? 2さい? おとなにみえるけど……。
 これはリヒット。シャボン玉のリヒットだよ」

自分の鼻っ面をクイッと指さしながら、自らも名乗ります。

「たぶん、リヒットは『この世界』じゃないとこから来た。でもよくわかんない……。
 まっくろい魚に飲み込まれて、気づいたら、からからに乾いた場所に倒れてた」

大雑把に北西のほうを指差します。おそらく、転移荒野のほうでしょう。

佐伯貴子 > 2歳じゃない、この島に来て2年目ということだ。
年齢は16歳だ。
(異文化コミュニケーションである)
(これは大変勉強になる)
リヒット…だな。
入学手続きはしたか?
(「この世界」の言葉を話すようだが、システムはよくわかっていないようだ)
(視線をそちらにやる)
転移荒野か…
なにか困ってることとか、大変なことはないか?
(相手の様子からは感じられないが、それは自分が人間だからであろう)

リヒット > 「じゅうろくさい。おとなだねー。リヒットはまだ9さいだよ。おとななら、おしごとはしてる?」

リヒットは大人(故郷基準)相手にはとりあえずこう聞いているようです。そのせいで要らぬ反感を買うこともしばしば。
でも、『お仕事をしている人とは遊んではいけない』と言い聞かせられていたので、仕方がないのです。

「にゅうがくてつづき……うん、したよ。今度、『てすと』ってのを受ける。
 それで、どういうべんきょうをさせられるかが決まるんだって。でもリヒット、字も読めないし……」

ぷかっ、と袖を振ってやや大きめのシャボン玉を1つ、空中に浮かべます。
それもまた周囲のシャボン玉と同様、リヒットと貴子さんの間に静かに浮かび、風に流されることはありません。

「困ってること……うん、ある。あのね……」

困ってることを問われれば、リヒットは少し目を伏せ、小さく首を振って周囲に目配せをしたのち、

「……リヒットは『いほーじん』だから、『いほーじんがい』に居たほうがいいって言われたんだけどね。
 ここ……人間じゃない人のほうがおおくて、なんか、落ち着かない。
 リヒット、人混みはそんなに好きじゃないけど、人間のそばのほうが、ほっとする……」

佐伯貴子 > お仕事…お仕事なあ…
してるといえばこの服を着てここにいるのが仕事とも言えるし…
してないといえば、まだ就職などはしてないから、してないかな…
(相手の「おしごと」の基準がよくわからないので、答えもあやふやになってしまう)
手続きはして、テストを受ける、と。
多分大丈夫だ。
そうやって自然に浮かんでられること自体珍しいんだぞ。
(入学試験は筆記だけではもちろんない)
(入学に値するとなればすぐにでも入学を許されるだろう)
(シャボン玉は異能なのか、リヒットの種族特有の能力なのかはわからない)
そうか…
そうだなあ…
(相手の困りごとには腕組みをして考え)
入学試験に合格すれば、「寮」というところに行けるぞ。
ここよりずっと人間は多いところだ。
入学したらそこに住むといい。
しばらくは…我慢してくれ。
(いくらなんでもとりあえず落第街に行けなどとはいえないのである)

リヒット > 「ぷー」
口を尖らせながら首を何度も上下させ、貴子さんの容姿を舐めるように見つめるリヒット。
たしかに、この服装を着た少年少女は島のあちこちで見た気がします。

「……せーふく? たかこは、けいさつ?」

リヒットの記憶にある『ユニフォーム』は、大きな街で警邏を行っている自警団の服装くらい。なので、同一視しているようです。
その記憶に思い至っても、とくに畏まった雰囲気を見せるようなことはありません。

「……『りょう』。人間が多くて、すむところ?
 そこには、お水はある? リヒットは、お水がないと乾いてこわれちゃうから」

リヒットには集合住宅の概念はありません。本人が棲むのはもっぱら川や池で、人間の『お友達』が住むのもたいていは家族でこさえた小さな家。
そして、家をしっかり建てて維持して暮らすには、働く必要があるということも。

「……リヒットは、住めるの? おしごとする必要って、ある?
 リヒット、おしごとできるか、わかんない」

佐伯貴子 > ああ…似たようなものだ。
ちょっと違うけどな。
「風紀委員」という。
(制服の襟を正して見せながら言う)
人間でも誰でも住めるぞ。
水は、そうだな、普通の部屋なら…
食事に使う水と、体を洗うために浸かる水の部屋もある。
水に困ることはないんじゃないかな。
(女子寮ならかなりの融通は効くらしいが、男子だった場合は肩身が狭そうだ)
おしごとは…
仕事は、そうだなあ…
(特待生でもならなければ学費は払わなければならないだろう)
リヒットは、人間がなかなかできないようなことで、何か他にできるか?
宙に浮く以外で。
(この島では何が仕事になるかもよくわからないのだが)
(できれば一般的にまともな仕事を見つけてあげたいものだ)

リヒット > 「『ふーきいいん』……へぇ。聞いたことのないおしごと。でも、おしごとしてるんだね。
 じゃあ、お仕事中はたかことは遊べないね。おしごと、がんばってね」

……と言いつつも、風紀委員が警察と似た職業であれば、リヒットのような『迷子』の面倒を見るのは仕事の一環でしょう。
あいにくリヒットにも『迷子』の自覚があります。子供ですし、ここはお世話になっておきましょう。

「リヒットができる、人間にできないこと。うーん……」

聞かれ、首を90度に至ろうかという角度で横に傾けます。実のところ、深く考えたことがない話です。

「人間にもできるけど、リヒットが簡単にできることなら、シャボン玉……」

初めはやや自信なさげに呟きつつ、くるりと宙に浮いたまま側転をはじめるリヒット。
すると、ところどころ破れた丈の長い雨合羽の裾から、無数のシャボン玉が放たれ、路地の空を埋め尽くさんばかりに広がりました。
同時に、清潔感のある石鹸の香りが、ほのかに漂い始めます。

「あとは、うーん、きれいにする」

続いて、リヒットが手を貴子さんの方へ突き出し、手首をくいっと軽く下げます。
すると、無数のシャボン玉の群れの中から数個が逃げ出し、貴子さんへと真っ直ぐ向かってくるではありませんか。
避けるのは容易そうです。触れてシャボン玉が割れれば、その箇所がまるで洗って干したかのように綺麗になることでしょう。
……もとから綺麗な服であれば、違いはわからないかも。あと万が一顔に触れると、化粧が落ちるかも。

佐伯貴子 > うむ、きっと君の思う「おしごと」とは少し違うだろうけどな。
ありがとう。
(そう言って微笑む)
(考える相手と一緒に考える)
おおー…
(無数のシャボン玉には感嘆の声をあげる)
(舞台演出などで使ってもらえるだろうが、これだけでは…と思ったところに)
綺麗に?
(抵抗せずシャボン玉を受ける)
(残念ながら、制服はクリーニングしたものを毎日着回ししており)
(普段はノーメイクである)
(とは言え、石鹸の香りのせいかもしれないが、「綺麗になった」という実感はあった)
ふむ…
君の能力が何をどこまで綺麗にできるのかは分からないが…
「生活委員」がいいんじゃないかな。
この島に住む人々の生活を良くするお仕事だ。
もちろん、「お掃除」も立派なお仕事だぞ。
(委員会に入ればよほど役に立たないかぎりこの島でお金に困ることはないだろう)

リヒット > 「『せーかついいん』かぁ。おぼえておくね。こっちにも『いいん』が付いてるんだね。
 おしごととは違う……でもたかこは今あそんでるんじゃないんだよね? あそびじゃないなら、おしごとだよ」

いつか故郷で大人に言われた言葉を反芻します。それが合っているか間違っているかはさておき、リヒットには飲み込みやすい理屈ではありました。

「リヒット、きれいなの、好き。でも、きれいすぎると、リヒットは住めない。ほどほどがいちばん。
『お掃除』も好きだから、それがお仕事になるならするけど……リヒットは力持ちじゃないから、うまくできないかもね」

そうして、今度は竹とんぼのようにくるりと空中で一回転すると、空を覆うように浮かんでいたシャボン玉の群れは、まるで戒めでも失ったかのようにあちこちへと散っていきます。

「リヒットの『しごと』は、シャボン玉を作ることだった……気がする。
 でも、人間の大人も子供も、それは『しごと』じゃない、『あそび』だって言うんだ。だから、リヒットは『しごと』がよくわからなくて……。
『とこよじま』で暮らすのにしごとが必要ならしたいけど、自信はない……」

リヒットの語気は次第にしぼんでいきます。表情はさして悲しげではありませんが。

佐伯貴子 > ああ、委員とは委員会という集団に属する人間のことだ。
(あえて難し目な言葉を使ってみる)
遊びとお仕事しかないわけではないさ。
まあ、私の基準で考えればお仕事だけどな。
(相手は異邦人でそれも子供)
(コミュニケーションは難しくそして楽しい)
ふむ、それならやはり生活委員だな。
力仕事をしてくれる仲間もできるだろうし。
汚れを綺麗にする仕事を君がやれば良い。
(とりあえずの仕事が見つかりそうで何よりである)
「仕事」は、他人のためにすることだ。
「遊び」は、自分のためにすることだ。
だから、この島のみんなのために君がこの島を綺麗にすることができるなら…
それは立派な「仕事」だよ。
(そう言って微笑んで見せる)
(自分のやれることが仕事になるなんていいことではないか、などと考えながら)

リヒット > 「…………」

貴子さんの語る『仕事と遊びの違い』の話を、リヒットは口を真一文字に結んで聞き入っています。

……リヒットは、『自分のために』シャボン玉を振り撒いた覚えがありません。どんなときでも、他人を楽しませるため、あるいは綺麗にするために。
……では、かつて故郷で大人に言われた『遊び』の定義とはなんだったのでしょうか。

「……うーん、おしごとにも、いろいろあるんだね」

とりあえず『定義は人それぞれ』というところで妥協できた様子。
代わりに『リヒットとしての定義』を考える必要が出てきましたが。

「『いいんかい』は人がいっぱい集まってるんだね。じゃあ、リヒットができない力仕事は、他の人に頼めるんだね。
 よかった。リヒットはとりあえず、しまをきれいにするよ」

それが石鹸の精としての『役割』なのでしょう。石鹸はただシャボン玉を作るためだけの液体ではありませんから。

「……でも、学生になったらおべんきょうもしなくちゃ。おべんきょうとおしごと、大変」

佐伯貴子 > (相手の悩む様子に、文化の違いを感じる)
(遊びと仕事…言葉だけでなくその概念まで違う場所から来たのだろう)
(自分が言ったことが必ずしも正しいわけではないが)
(うまく馴染んでくれたらなと思う)
ああ、仕事にも色々あるし、色々な仕事もあるぞ。
(などと、多様性を示すような言葉)
そうだ、君は君の思うように島を綺麗にすればいい。
それが君のためにもなりみんなのためにもなる。
みんなが喜ぶ。
(微笑む)
お勉強は仕方ないさ。
君のような異法人向けのお勉強もあるから、大変すぎることはないんじゃないかな?
(ふと、通りにかかっている時計を見る)
(…見方がわからない)
(仕方なく携帯デバイスを取り出す)
私はそろそろ行かなければならない。
何かあったら、色々人に質問してみるんだぞ。
(そして手を振ると、異邦人街を歩いて行く――)

ご案内:「異邦人街大通り/商店街」から佐伯貴子さんが去りました。
リヒット > 「うん、とりあえず、『せーかついいん』、考えてみるね」

まぁ現実問題として、リヒットのような子供……否、幼児が委員会に属することができるかはわかりませんが。
できなくても、それはそれで、リヒットはリヒットのできることをするでしょう。

……実のところ、リヒットは『仕事』に憧れはしていますが、『仕事』をしなければいけないかというとそうでもなく。
異邦人の子供ということでお金の補助も生活委員から少なからずや出るでしょうし、寮に入れれば生活費も最低限で済みます(現状は池暮らしなのでそれ以下ですが)。

とはいえ、仕事は生活に彩りを加えますし、社会性を学ぶ機会ともなります。
妖精に社会性とは若干ちぐはぐな印象もありますが、そういう妖精がいてもいいのでしょう。
よい仕事に就けるといいですね、リヒット。

「たかこ、じゃーね。またね~」

時計を見上げ、去っていく少女を、リヒットは仏頂面のまま手を振って見送ります。
そして影が小さくなると、くるりと宙返りをし、リヒットもまた、現状棲家にしている池のほうへと、ふわふわ飛んで行きました。

ご案内:「異邦人街大通り/商店街」からリヒットさんが去りました。