2015/10/12 のログ
ご案内:「特殊警備一課棟」に五代 基一郎さんが現れました。
五代 基一郎 > 特殊警備一課の本部。
そこは名ばかりの本部であり、特殊警備一課棟とはあるものの
実際はその場所にあったまだ異邦人住宅街が建設されている最中にあった
民間の車輛整備工場を再利用したものである。

名ばかり、とあるのは実際ここには重要なものは何一つなく
書類上必要であるから置かれているに過ぎない。
その組織の公的業務の性質上から隊員の個人情報や装備等も秘匿されており
主たる組織拠点もまた同じくして秘匿されているからだ。
そもそも住宅街の中に特殊部隊の基地があること事態有り得ない話で、創設の時に余っていた土地を借用したに過ぎない。

加えて言えば公的な意味での訪問者や来訪者もいるはずがなく、また非正式な来訪者であっても
だから何かをするような場所でもない。
なぜなら今隊長室に向かう階段から見下ろせば、そこにある多くは自動車であったり
試験中の二足歩行機械だったり、それを弄る整備員やら開発者であり
様相の通りただの車輛整備工場としてしか機能していないからだ。

五代 基一郎 > ただ一応の書類上、とはしておいてもそのまま野ざらしの廃墟にしておくのも
という都合もあったためその元の整備工場の性質上、自ずと車等と遠ある者達が
集まり始めて使うようになった結果このような形に落ち着いている。

最も彼らは高速機動隊やら車関係の縁故の者やらロボット研究の者らで揃っているがために
私的に公的施設や予算を使っていると言われたら適当にはぐらかすしかできない有様なのだが。

実際ガレージにはこのご時世にマニュアル・トランスミッションしかない
特に四輪駆動のスポーツライン車が並んでいたり、ひどく趣味的な二足歩行機械の部品や
どこか漫画やアニメ的に見える巨大な整備機械そのものまである。
その中で災害救助や巨大生物の対処を任せている巨大ロボット……メガマトンの類にある鉄の巨人がいるのも
ひどい公私混同というかなんとも趣味的な世界であり、ここが男の夢の世界であるのか、とあきれられてしまいそうな風景を作っていた。

五代 基一郎 > この島では馴染みが薄いだろうが、巨大二足歩行機械の需要は確実にあった。
あった、というかある。

あの日から災害はもちろん、脅威は人類の想定以上のものが訪れたことを確かに歴史が物語っている。
異邦人という想定の範囲外。人間の、人類史上のスケールでは計り知れないものは
価値観や宗教、文化らもあるが質量的なスケールという直接的なものがわかりやすく出現した。

その彼らが出現した際の”被害”を食い止めることを想定したものもあれば
また”対処”を必要としたものもあるし、またそれらが犯罪や戦争に使われることを想定して作られたものもある。

蟻に獅子は止められないし、明確な殺意を持った獅子に食い殺されないようにと。
獅子と獅子が縄張りを争う様に人がそれを用いるのならば……ともある。

かくしてこの島も例外ではなく、異能者任せではなくより効率的で周囲への安全をという
防災の意味もあり、必要性があるため配備され今も研究されている。胃能力者だけでも対処できるが
それは個人の裁量や才能に大きく影響されるし、卒業という社会上の制約があるため技術の連続性に乏しい。
故に継続して対処研究を出来る組織と場所が必要であった。
ここには二足歩行機械運用準備研究会等とかいうものが集まっているのもそういった事情がある。
ガレージで一等場所を取っている……今”本体”が茶を入れているだろう
鉄の巨人も例外ではなくたいした武装もなく頑強な装甲と強力な出力を求められてここで製造された。
日本企業の敷島重工業の技術が関わっているらしいが、詳しいことは知らない。
だがわかるのは、見た目の通り防災に武装は必要ない……加えて言えば、この島で公的機関の巨大なロボットが武装しているだけである種の政治的非難を受ける。
そうした特殊な”事情”が絡んでいるもので、その辺りをうまくクリアした企業であったり
その事情があれど国内の一島に必要とされるのもまたこの島の特殊な件だろうなということだ。

さておきそういった事情もあり”ここ”に武装の類はなく、本当に機械類とそれを整備したり
好むとか嗜む人間しかいない。

自分といえばそれらに積極的にかかわるというわけではなく。
ここにはあまり訪れることはなく、大体うちの黒猫がいたり
時折静かに仕事が、とか最近だと一人でごく私的な業務をするときなどに使っている。

今回はその、極めて私的な事の為である。

五代 基一郎 > 整備員がレシプロ機のエンジン回し始めたあたりでガレージを見下ろすのをやめて
隊長室に入る。そこは自動車整備工場の工場長の、事務所のような場所というより
そこをそのまま使っているだけにすぎない簡素な部屋だった。

全く使われていない二つのデスクのうち一つには先に来ていた黒猫が陣取り
片方にはお茶くみロボットが、淹れたばかりのコーヒーのマグカップを置いて掃除を始めた。

一応の第二小隊長席の椅子を引いて腰掛け、鞄の中から書類を取り出し
低俗な週刊誌でも読むかのようにゆっくりと中身を確認し始めた……

五代 基一郎 > 一つはこの島の建築計画と公的予算の書類。
もちろん自分の権限と職務上の立場で手に入れられる範囲と、多少の越権を交えた繋がりからのデータ。
管理し残されている範囲と、それらを精査した結果に出るもの。
そして落第街や公的な管轄を外れた区域の映像写真等……それらを精査して
統合しまとめたものだ。

ここまで島の履歴を纏めるにはそれなりに時間がかかった。
申請やらデータを集めるのだけでもだ。
もちろん公的には開示されないデータもあるので、そこは予測し補足するしかないのだが。

この島に来て既に三年経過している。
当初の目的の通り、それを探しているが見つからず。
大体のを、予測しては調査を派遣したりまた二年前からは自分の足で捜査をしているもの。

ここにあると知った時より、既に短くないの時間が流れていた。
それでも調査を進めて分かったものがやはりその隠匿にはウィルマースが関わっており
その遺産を暴くか、となれば安くはなかったと言える。

地下。この島の物理的表層的世界には存在しないだろう。
彼の者の力が影響しているならば、それはウィルマースの遺産が匿っているだろうことは察せられる。

故に落第街等もだが公的機関も含めて地下世界<アンダーワールド>の情報を仕入れ続けてきた。
鉄道網から、公的機関が感知しない世界まで。
ウィルマースのかつての経歴から考えれば地下交通機関に何かしら工作していたのは間違いない。

現状それに対処できるのが自分一人しかいないのは正直不安な部分もあるが
そうも言ってられない。これはほぼ私的な介入なのであるから。
仕事でも任務でもない。自分がやらねばならないことなのだ。

だからこそ”ナイト”を運ばせた。どのような障害が立ちふさがろうと
破壊するために。
運用するならば、ある程度風紀の寛容さに甘える形になるだろうが
何度も出来ることではないし、都合上公的記録には残らないこととなる。

いつもやってきたことではあるが。

五代 基一郎 > 彼らがいれば、と思う。
だがそれは許されるものではない。
それを外れれば、自分がどのような存在になるかは理解している。
アウトローとなることも。
なること事態に恐れはないが、それによりどうなるかを想像できないほど幼くはない。

もう一つの資料はある人物の捜索と、特定の波動出力の調査報告。

人物はかつての部下<エキスパート>の一人。
特定の波動とは、その彼が手にしていた<神器>と呼ばれる神代の代物の波動。


神代の代物に人が正式に、本腰を入れて着目したのはあの日以来のこと。
突然現れた異邦人らに胃能力者……かつて存在しただろう怪異。
それら”混沌”に立ち向かうにはどうしればいいか、と藁にもすがる思いで手を出したのが神器。

かつてあった存在、怪異と戦っていた者達の持つもの。
竜殺しの剣であったり、聖なる剣であったり投げれば必ず帰ってくる槍など。
それら空想上の産物であったものも、またいくつかは実際に出現し存在することになった。
故にこの混沌とした状況に対する一つの力として、用いるようそれら伝承がある国は多かれ少なかれ研究を始めた。

五代 基一郎 > しかし大きな壁があった。
ものはあれど使う人間がいない。
伝説の武器はあろうと、持っていたものの多くは人間であったため何かしらの要因でこの世の存在ではないし
そもそも神のいた世界でその神はいないが、なぜかものはある状況が殆どだった。

普通の人間に扱うことは不可能だった。
人の手に余るものであったのは明白だ。
様々な説があったが、結局何故はか解明されていない。
それでも研究していた者達や、それを実際に運用しようとしていた者達は諦めず
一つの答えに行きつく。

遺伝子治療<ジーン・セラピー>だ。
本来遺伝子の欠損を埋めるためのそれは、ただの人間をかつていた神代の時代か
そのかつての存在に近づけるために用いられた。

それらは無理な、無茶苦茶な話でもなく
ある国では王家の遺伝子は国民の何分の一かに流れていると解析されているし
遺伝子工学の技術、解析を用いれば100ではなくとも、限りなく近似値に持って行くことはできる。
それらを注入することで、使用することが可能になるのだと。
もちろん負荷はあり、命を脅かすものでもある。

またそれを扱うに適した、かつて使っていたものの遺伝子構造の人間を逆から演算して生み出す研究もされていた。
現代の人造人間技術はこういうことにも用いられている。

米国にある諜報機関主導の計画に屍者の帝国が協力していたのも、覚えがある。
それらが行われているところを自身が見ていたわけだし
それらを運用してそこにある危機に対抗しなければならない、という意図も理解していたから。

故に公ではなくとも、一定数それをどうにか扱える人間は存在し続けている。

特にこの常世という島では、というより日本に遺されている神器がそれなりにあり
運びだし、秘密裏に実働として使うという目的に適していたため
業務上、かつても今も見かけることは無くは無かった。

自分の部下も、地下世界や非正規の世界<アンダーワールド>に送り込まれ
その力で怪異と戦っていた。
怪異と戦う一振りの刃、剣と自称していたのを覚えている。

五代 基一郎 > 「まぁなんとかなるか」

ひと息ついて、不味い安物のインスタントコーヒーを流し目を閉じる。
一応、というのもだが頼りになるものはいる。
14の目覚めた時よりいる者達が。

最もなんとかなればよい、と思うだけでどうなるかはわからない。
確定できる保証も絶対的な力を持つわけではない。
それは”二年前に”思い知らされた。

それでもやるしかない。時間はない。
成ることを許してはならない。

眠気が来た。
最近考えることが増えてきたためか、寝ている時間が少なくなっている問題がある。
今は食事を取ることも寝ることも普通になっているためこの辛さは難しいものだが
生きている実感があるのは、まぁいいものだ。

”ナイト”の搬入が始まれば起こされるだろうし、しばらくは寝ておこうと
安い椅子に身を預けたままに眠りにつく。
着いたらついたで、また忙しくなる……

ご案内:「特殊警備一課棟」から五代 基一郎さんが去りました。