2015/10/13 のログ
ご案内:「異邦人街」にステーシーさんが現れました。
■ステーシー > 放課後の異邦人街の街並みを眺めながら歩く。
少し退屈、でも少しドキドキする。
雑多な街。私が踏んだ街。私が踏まれた街。
私が住んでいる街。
ご案内:「異邦人街」にチェシャさんが現れました。
■チェシャ > いつものコンビニで いつもの学生通りで、通りがかりの人から餌を貰う
……そんな日常から離れて、普段は訪れない様な異邦人街へと、今日は足を踏み入れてパトロール
小さい前足で歩んで行けば、首についてる貯金箱のお金の音が鈴の代わりにちゃりちゃりと音を立てながら
一人の少女の後姿を見かけて――……
「あっ……」
振り向いて、懐かしさのあまり 思わず声をかけた
「……久しぶりね。髪、切ったの?」
■ステーシー > 異邦人街を帯刀したまま歩く猫耳少女は、後ろから声をかけられて振り返る。
「…………髪?」
振り返ると、そこには猫。
「あれ………今の声の位置、すっごく低かった……」
耳は良い。それであっさり気付く。
「ね、猫が喋った!?」
ビックリしながら仰け反る。
まさかね、とか思いながら周囲を見渡す。
でも自分に声をかけたような素振りの人はいない。
■チェシャ > 帯刀した刀とその後ろ姿は、街並みのせいもあったせいか
……少しだけ、過去に戻ったかのような錯覚を受けたほどだった
けれど。
発せられる声は、あの子のものではなくて
振り向いた少女の容貌は、その子の面影を持ちながらも、別人だった
『ね、猫が喋った!?』というリアクションも、本来なら聞きなれている筈なのに
……何処か寂しいのは、何故だろうか?
小さい声で「……私よ」と、少女に返せば、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめ返す
「驚かせちゃったみたいね
……ちょっと、知っている人に似ていたから……でも、人違いだったみたい」
そう言いながらも、彼女の刀から微かに残る香りは――……
■ステーシー > 「…………?」
確かに猫が喋っていた。
猫が喋っていたけれど、最初のような久闊を叙する雰囲気ではなく、どこか寂しそうな声音。
自分を誰かと間違えていたのだろうか。
「知っている人に似ている………って…」
思いつくのは、師匠――――リルカ・バントラインのこと。
そういえば師匠は禁呪『天封呪』を受けて平行世界に多数の『自分』が存在する、という話をしていたっけ。
放浪者。渡り鳥。剣の英雄。
様々な名を持っていた師匠と私は他人なのに何故か似ていた。
つまり、この子は私の師匠のことを知っている?
「あなた……私の師匠を………リルカ・バントラインを知っているの?」
腰の刀を見せる。旋空。紛れもなく師匠が持っていた刀。
■チェシャ > 「……弟子だったのね。似ているから思わず、妹さんでも居たのかと思っちゃった」
そんな彼女と会った時も、私は猫だった
魔術を解いて、人の姿へと戻ればそこに
『きっと、ペルシャ猫が人の姿をしたら、そんな少女の姿』になりそうな
ふんわりと長いウェーブの銀の髪と純白のドレスを着た少女が佇み
彼女の問いに、小さく笑顔で肯定した
「ええ……といっても、本当に少しだけだけど」
刀を見せられれば、柔らかい笑みを見せる
今はもう、殆ど『彼女』の香りに包まれているけれど、所々から微かに残る香りに懐かしさを灯す瞳で見つめて
「昔と変わっていないわ、これ。大切に手入れをしているのね、貴方
……ねぇ。良かったらちょっと私とお話しない?
少しお話を聞きたいし、私もほんの少しだけれど『昔話』をしたい気分なの
もしかしたら、貴方の語るリルカ・バントラインと
私の語るリルカ・バントラインは別人かもしれないし
もしかしたら、私の事を知らない可能性もあるかもしれないけれど――……
そうね。私の名前はチェシャって言うのだけれど
……貴方には『ブランシュ』って 伝えておきたい気分かも」
■ステーシー > 「………師匠は、フェルパー(猫獣人)の孤児だった私を拾ってくれた人、母親代わりよ」
目の前に人の姿をした少女が現れる。
目を細めた。師匠も猫の姿と人の姿を切り替えられた。
なんだか、懐かしい。師匠の知り合いであるなら尚更。
ほんの少しホームシックな気分。
「……そう、でも師匠の知り合いなら縁は十分」
クスリと笑って風に靡く髪を撫でた。秋の風は少し冷たい。
「……師匠の刀だから…ぞんざいに扱う気にはなれないの」
「ええ、話をしましょう。私の知っているリルカ・バントラインとあなたの知っているリルカ・バントラインの話を」
手を差し出した。握手を求めて。
「ブランシュね、私はステーシー。ステーシー・バントライン」
「こちらの世界でもらった名前は星薙四葉、でもあなたにはステーシーって呼んでもらいたい気分」
■チェシャ > 「そうだったの……母親代わりか。妹って言うより娘みたいなものね
けれど本当に、血が繋がっている様に思う程似ているわ、貴方」
髪の毛を短くした彼女だと思ったほどだもの、と懐かしそうに付け足して
ホームシック気味な表情の彼女……ここに居るのは、何か理由でもあるのだろうか?
風に靡く髪を撫でる仕草も、語る彼女の言葉も あの子から譲り受けたもの、そのもので
冬の訪れを刻々と感じさせる秋の風は冷たいけれど
心の中は、ほんのりと温かくて 少し冷たい夜風が心地よい
「私は刀とか良く分からないけれど、その気持ちは見るだけで伝わるわ
……それに、そうよね。師匠でありお母さん代わりの人の刀だもの。大切なものよね」
「ありがとう。嬉しいわ」
手を差し伸べられれば、満面の笑みで手を返す
白い手は少し冷たくて、ブランシュの名の通り 何処か雪の様な、或いはそんな冷たいお菓子を連想させた
「ステーシーって言うのね……そっか、貴方も二つ名前があるのね
異邦人かしら?私もなんだけど……」
と、お喋りや聞きたい事が止まらなくなりそうなのを抑えて
「立ち話もアレだから、何処かお喋り出来そうな所はあるかしら……?
折角だし、多分私の方がおねーさんだし 何か御馳走するわ」
彼女は何が好きなのだろうか?と思いつつ
喫茶店みたいな場所とか、クレープ屋台とか公園とか、何処か落ち着けそうな場所無いかなぁと
周囲を軽く見渡して
■ステーシー > 「ええ、師匠には名前と人間らしさと剣の技をもらったの」
「……師匠も、私が自分に似ているから引き取ったのかも知れないわね」
自分の髪に触れる。耳だけ隠れた短い髪。
師匠は髪が長かった。そして、白と黒が混じった不思議な髪色をしていた。
私を見るブランシュは、温かな感情があった。
それは彼女生来の優しさによるものだろうか。
ただの知り合いの弟子を見るものより、ずっと心地よい視線だった。
「ええ………その…師匠から黙って持ち出してきたものだから粗末にしてると1024回殺されるっていうか……」
耳を伏せて項垂れる。想像しただけで血が凍る恐怖を感じる。
そのままブランシュと握手を終えて手を離した。
冷たい手を持つ人は、心が温かいという俗説を思い出した。
「異邦人、この近くに住んでいる……その、この世界に来て数ヶ月という迷い猫で…」
「……あなたも迷い猫なのね、何から何まで親近感のある人だわ」
周囲を見渡して、時々通っていた喫茶店『永遠の薔薇』を見つける。
あそこのフォンダン・オ・ショコラは絶品だ。
でも。
「フッ………私は誇り高き野良猫、人から施しは受けな(グゥー)」
お腹が鳴った。真っ赤になって反射的に自分の腹を殴った。
痛かった。バカか私は。バカだった。
尻尾が力なく垂れたまま蹲り、情けない表情が張り付いた顔を上げた。
「あ、あそこの喫茶店でお願いしますお姉さま……」
ふらふらと喫茶店に向けて歩き出す。
■チェシャ > 「……そうだったの」
彼女の生い立ちを聞きながら、小さく頷く
自分自身も、深く彼女の師匠を知っている訳ではないけれど――……
『自分に似ている』という事は 彼女の師匠自身の生い立ちも、似たものなのかもしれないなと
昔を思い出しながら、思うのだった
爽やかなオレンジの瞳は、昔の彼女が目の前に居るかのような生き移しにも見えるのだけれど
白と黒の混じる、彼女の師匠の髪は独特で
黒猫を思わせるステーシーとは、やはり別人である事を再び思わせられるかのよう
「勝手に持ち出しちゃったの!? 粗末を差し引いても見つかったら殺されかねない事してるこの子!?」
ひぃっ!と、
此方まで血の気が引く思いだった
耳を伏せて頭を垂れる彼女の気持ちはよく分かる
……だって、もし彼女の語る師匠と、自分の語る師匠が別人では無ければ――……
拍手を終えて、手を放す
剣の道に生きたものの手は、目の前に居る可憐な少女の姿からは想像が出来ない物なのだけれど
そこから、彼女の剣に向かう真摯さや姿勢を少しだけだけれど、感じとる事が出来た
「成程……この街に来て数カ月の迷い猫なのね
……私も近い所があるわ。前に居た所が暇で……気付いたら常世の場所に入っていたのよね」
似ているなぁ、とか思いつつ
……彼女は、前に居た所に戻りたいと思うのだろうか?
――……デジャヴ
完全な、見覚えのある風景
一瞬『本人が降臨』したのかと思う程に
驚いて硬直した後に、真っ赤になって自分の腹を殴る彼女を見て
……申し訳ないけれど笑いが止まらない。そして、それ以上に可愛い
私は末っ子だけれど、妹が出来たらこんな感じなのだろうか?
笑いを堪えながら
「うん、美味しいフォンダンショコラでも食べに行きましょ」
と、再び並んで喫茶店に歩き出す
……本当に昔に戻ったようで、可笑しさと懐かしさに心が満たされる
■ステーシー > 「昔の話。それから師匠の無茶振りに付き合ってる間に、それなりに強くなって…」
「でもまだ全然ダメだって言われてムキになって」
「師匠の剣を持ち出して家出したらこの世界に迷い込んで……なんかもう、グダグダです…」
あわあわと震える。
師匠を知っているブランシュのリアクションがこうだ。
もう師匠の下に帰った後、自分が死ぬのは抗いがたい事実。
いや本当に殺されはしないだろうけど。死んだほうがマシかも知れない。
「……ここに来て、川添先輩と言うヒトに親切にしてもらって」
「桜井先輩とか、三枝あかりとか、蒼穹とか、友達が増えて」
「……リルカ師匠の下に帰りたい気持ちと、この世界にいたい気持ちが同じ重さ」
尻尾が右から左にゆらりと揺れた。
「笑わないで頂戴!?」
必死に抗弁するもどう考えても今の一連の行動はアホだ。アホそのものだ。
喫茶店『永遠の薔薇』に入る。
この店はちょっと遠くの洋菓子店『ebullient future』から様々なケーキを仕入れている。
ここの紅茶と合わせ技一本で人気は高い。
「セイロンとフォンダンショコラをお願いします」
店員に注文してからハッと気付く。
「猫舌なのでぬるめで………」
誰がどう見てもわかるけれど。一応、そう言っておくに越したことはない。
「ブランシュ、ここのケーキも紅茶も抜群なのよ?」
と、メニューを渡す。
■チェシャ > 彼女の話を聞きながら頷いて。自身も、まだ魔術をやっていた頃の遠い昔の事を思い出した
……自分は簡単に諦めてしまったけれど
無茶振りに付き合って、強くなっていく彼女自身は強いな なんて思いながら
「全然駄目って言われると、ムカつくよねぇ」
わかるわ と頷きつつ
「……その気持ちは痛い程に分かるけど……そっかぁ
……上手くアドバイスできなくて、ごめんねしか言えないけど
とりあえずはこの街で探しながら、暫くは生活するしかないよね
いつか出られるかもしれないし、もしかしたらお師匠様が迎えに来てくれるかもしれない
……その時に、家出したときよりずっと強くなって
師匠と次に会った時に、素直に謝れば きっと許してくれると思うよ」
多分、としか言えないけれど
きっと、弟子であり娘の代わりでもあるのであれば……彼女の事を大切に思っているだろうし
もしかしたら今頃、必死に履いている靴をボロボロにしながらステーシーの事を探しているかもしれない
彼女の知っている師匠と、自分の知っている師匠という人物が一致するかどうかはわからない
……けれど、もし似通っているのだとしたら……
いや、恐らく彼女の話等から、通ずる所は幾つかあるだろう
殺されはしないけど、下手をすると死んだ方がマシな目に合いかねない可能性もあるけれど
……師匠の元々の性根を考えれば、きっと『懲らしめる』程度で「次からは赦さないから!」と釘をさす程度になるんじゃないかな
と、なんとなーくだけど予想を立てている
ただ、師匠の中の『懲らしめる程度』が、彼女にとって死んだ方がマシな目になる可能性も
互いの違いで生じてしまう可能性も否めないのだけれど
「あ!川添君ねー 知ってる!前五百円玉貰ったり、優しく撫でて貰ったりしたよ
良い人だったね、また会いたいなぁ……」
「桜井先輩は、お話だけ聞いて……」
「あかりちゃんは知らないけれど、ステーシーお友達なら会ってみたいな」等と、話を聞いて相槌を打ちながら 時々
知っている人の名前が出れば自分とその人のエピソードを話して
「……そっかぁ
だよねぇ。悩むよね」
ゆらりと揺れる尻尾を見ながら、自分も虚空を眺めた
元の世界に戻りたいという気持ちも、それと同じくらい新しい世界の楽しさや出会った人たちを大切にしたい気持ちが
ゆらゆらと揺れて、簡単に計れるものではないのだから
……けれど、今は計れなくても
いつの日か自然と答えが出たり
或いはどちらかの選択肢を、知らずのうちに選択したりしてしまったりするものだ
……果たして彼女は、どちらの道を選択するのだろうか……?
「ごっ……ごめんごめん」
笑いを殺しながら、徐々に冷静になりつつも
そのアホ可愛い所――……というと彼女は起こるかもしれないけれど
自分の知っている、彼女の師匠そのもので
何だか本当に、彼女自身とお話ししているかのようで 可笑しかった
『永遠の薔薇』の喫茶店へと足を踏み入れ、ショーケースを見れば
宝石の様に美しい装飾を施されたかのようなケーキ達が
その美味しさを静かに物語っていた
「……これは、美味しそうね」
甘い物は好きなので、目が光る
店員に『猫舌なのでぬるめで』と追加注文する彼女が可愛いのだけれど
心の中で笑いを堪えて押し殺す
……多分、きっと ぬるいながらも美味しい紅茶の温度で届く事でしょう
「ケーキも紅茶も美味しいと言うと悩むわねぇ……
実際に、ショーケースのケーキはどれも美味しそうだったもの」
と、言いながら渡されたメニューを見て、悩むのだけれど――……
「そうね。全部一つずつ注文して食べたい気分だけれど
折角ステーシーがお勧めしてくれるのだし、今日はフォンダンショコラと
ルフナの甘いロイヤルミルクティーがいいかな?」
といいながら、店員を呼べばそれらを注文して
「……ふふ。早く来ないか楽しみね」
と、笑うと
「……何を喋ろうかな」と、色々と昔を思い出した
「……私が彼女の事を知った時は、もう彼女が私の居る街に随分長い間居た頃でね
知ってから暫くして、旅立っちゃったのよね
……だから、少ししか知らないんだけど
私の居候していた家の人とも繋がりがあったみたいで……そんな事を知った時は、驚いたな」
と、何を喋ろうか、迷う様子で語るのだった
■ステーシー > 「そう! ムカつくの! 錆びた刀で岩を斬れとか剣気だけで滝を逆流させろとか無茶振りばっかり!」
「でも……優しいところもあって…時々、お母さんみたいで…」
ブランシュの言葉を聞きながら頷く。
「……うん…しばらく、この街で生きていく。それしかできないし」
「………次に会った時に、ごめんなさいって謝るために、生き延びる」
耳と尻尾が威勢をなくした。彼女にとってリルカの存在は大きい。
ステーシー・バントラインにとって師匠であり、母親であり、唯一の家族。
お互いを想っているからこそ、こうして人に話すことも多い。
「え゛っ、川添先輩チェシャも好きなんだ……マスコット系大好きねあの人!」
「桜井先輩はムッツリした人で、彼女がいて、ムッツリしてる人」
「あかりは時間と重力を操る能力者で、カラオケが上手くてねー……」
「うん、悩む」
師匠の真似事、クールっぽいフリももうしない。
なんだか彼女の前では取り繕っても形にならない気がして。
いつか、自分に二つの世界を選ぶ日が来たら。
その時は、必ず答えを出さなくてはいけない。
きっと、ブランシュにとっても同じ。
「ロイヤルミルクティー……ああ、甘美な響き…」
うっとりとした表情で。でも初志貫徹、今日は紅茶。
「そうね、楽しみ。フォンダンショコラのとろっとした部分が今から待ちきれないもの」
「んー……師匠はね、クールだけどちょっと抜けてて」
「正義感が強くて、独特の価値観を持ってて……」
「私はそんな師匠に憧れてるの」
二人の前にフォンダンショコラとティーカップが運ばれてくる。
フォークを片手に窓の外を見る。
雑踏の中に、師匠がいないか無意識に探してしまった。
いけない、完全にホームシックだ。
「師匠が旋空を持ってる時には不思議な現象がいっぱい起こるけど」
「私が持ってても何も起こらないのよ、旋空がまだ私を認めていないのかしら?」