2016/06/18 のログ
ご案内:「万事屋「九十九」」に六郷泉一さんが現れました。
■六郷泉一 > カチャカチャカチャ。
異邦人街の端の方、あまり人通りの多くない通りの更に端。
目立たぬところに下げられている看板一つ。
『万事屋「九十九」』
その店の中でカチャカチャと音を鳴らしているのが、この店の店長(店員がいるわけではない)の、六郷泉一である。
「思ったよりガタがキてやがんなコンチクショウ。パーツの仕入れも楽じゃねーってのによぅ」
グチりながらカチャカチャといじっているモノ……それは、小学生くらいの子どもと同じくらいのサイズの人形だった。
■六郷泉一 > 「ったくよぉ。ひっさびさの仕事だってーんで張り切ってみりゃあこの様とかざっけんじゃねーぞバカヤローコノヤロー」
言いながら、子どもサイズの人形に手を加えていく。
どうやら、手入れをしているようだ。
「くそったりゃあ、カメラがイカれちまってんじゃねぇかコンチクショウ」
この子どもサイズの人形は、偵察型。
透明化の魔術と高性能なカメラを備えており、遠隔操作で情報を仕入れたり、調べ物をするのに向いているのだが……。
「風紀委員のガキンチョなんかが俺の事を頼るなんざ、なーんかおかしいと思ったんでぃ」
ブツブツブツブツ。
そう、先日風紀委員の学生が自分を見つけて、落第街の偵察を依頼してきたのだ。
見回りの手抜きかこんにゃろう、と思ったものの、仕事が少なかったため受けたはいいものの……
「チョーシに乗ってドンパチなんざしやがってよぅ。これじゃあ赤字じゃねーかコンチクショウ!」
違反学生を発見した、まではよかった。
それを人形越しに伝えて案内したところ、功に逸った風紀委員たちが、そのまま取締りと称して違反学生に攻撃を仕掛け始めたのだ。
■六郷泉一 > 「この『千里』は戦闘用じゃねぇってたのによぅ、こんなにしやがってバッキャロウめ!」
当然、違反学生側も応戦する。
その結果その場は小規模ながら戦闘になり、流れ弾のいくつかがこの人形……『千里』に命中してしまったのだ。
透明化と高性能カメラがウリの『千里』は、あくまで偵察用、こっそりと何かを覗き見る事に特化した作りである。
戦闘用の機能なんぞあるわけがない。寧ろ、機動性のために装甲を薄くしてるくらいなのだ。
幸い、双方腕前は微妙だったようで、一発大破とまではいかなかったが……。
「チックショウ、こんなんなら後払いで修理費まで請求してやるんだったぜバッキャロウ!」
全体の数割は破壊により紛失、透明化の魔法を仕込んだ機構は損壊し作り直し、カメラも故障。
『千里』はその機能の大半が壊れてしまっていた。
勿論修理にはそれなりのお値段がかかる。明らかに割に合わない仕事であった。
「クソガキャア、そんなんだから落ちこぼれになってんだって気付きやがれよバッキャロウ!」
功に逸って状況を観察できないから、成果を上げられず落ちこぼれて万事屋なんぞを頼る羽目になるのだ。
それに対して悪態を吐きつつ、カチャカチャと修理を進めるしか出来ない哀れなおっさんである。
■六郷泉一 > 流石に、アレがこの学園の風紀の標準レベルだとは思いたくない。
風紀は警察機構的に機能しているのだ、それがアレでは流石にこの学園都市に住んでいる身としては不安である。
……身分証は、偽造なのだが。寧ろ、その偽造身分証を使っているような相手に風紀の仕事の補佐を依頼する時点で色々とお察しである。
「ったくよぅ、これじゃあ偵察系の仕事はしばらく受けれねーじゃねーかクソッタレぃ!」
そうボヤくおっさんの周囲には、大量の人形。
万事屋「九十九」は、よろず数多の人形屋敷。
『千里』のように特殊な機能を持った絡繰人形を操り、様々な依頼をこなしていくのがこのおっさん……六郷泉一の営業スタイルであった。
……仕事の量は非常に少ないが。知る人ぞ知るレベルの知名度で、尚且つ売り出しもろくにしていないのだから仕方ない。
■六郷泉一 > 「ああチクショウ、コイツぁパーツが足りねぇや」
ぽいっとドライバーを後ろに投げ捨てる。
……後ろの方にあった道具箱に、綺麗に収まった。
「透明化のパーツが余ってたのはいいとしても、このカメラがなぁ……安いので誤魔化し、っつーのは俺の職人魂が許さねぇ」
高級なカメラを使っていたため、予備が無かったのである。
質の悪いカメラを使えば機能は低下するし、自身を持って使える人形ではなくなってしまう。
なので、そこら辺の妥協は出来ないのであった。
「つーこたぁ、チクショウやっぱり『千里』はしばらく使えねーじゃねーかクソッタレ!あのヤリョオ今度見たらとっちめてやる!」
言いながら『千里』を台の上に置く。
取り敢えずパーツが揃うまで、修理は後回しにすることにしたようだ。
「チクショーめ、商売道具直すために商売せにゃならんってのぁどーいうこってぃ」
椅子に座ってまたボヤく。
『千里』のパーツであるカメラを購入するには、それなりの金が必要になる。
それを稼ぐためには、別の人形を使って依頼をこなさねばならないのだ。
……あんまり食指が動かなかった依頼を、金に負けて請け負った結果がこの様である。
「あーくそー!だーれか払いのいい客は来ねぇかなぁ」
情けなくボヤくおっさん一人。
―――万事屋「九十九」、本日も閑古鳥と共に営業中。
ご案内:「万事屋「九十九」」から六郷泉一さんが去りました。