2016/07/03 のログ
ご案内:「みことや」に久藤 嵯督さんが現れました。
久藤 嵯督 > 猛暑の最中の警備帰り、風紀委員の久藤嵯督はとある場所へ立ち寄る。
足を運んだ先にあったのは、小さな木造の二階建て。

ちりん ちりん

風鈴の音を辿って正面玄関を見上げると、大きく『みことや』の文字が描かれた看板が目に映った。

みことやは朝から夕方にかけて駄菓子を販売しており、夜はバーとして看板を掲げている。
経営者自身は現世出身の人間だそうだが、異邦人の子供や大人にも好評を博しているそうだ。
同時に、以前歓楽街で喧嘩していたため補導した二島充《フタシマ ミツル》―――一年生の実家でもある。
今回は別に、風紀活動の一環で訪れたわけではないのであるが。

久藤 嵯督 > ―――
■二島母 > 「いらっしゃい」

カウンターに座って、風紀委員に対しても物動じせずに出迎える女性が一人。
後ろに束ねられた黒い長髪に、混じりっ気のない黒眼、うっすらと浮かぶほうれい線。

―――嵯督その顔を見た時、わけもなく懐かしいような気持ちに駆られた。


■二島母 > 「……どうかしたの? やっぱり息子が何かご迷惑を?」

声をかけられてようやく、我に返る。直後、店の奥からばたばたと床の上を走る音。
私服姿の二人の子供が顔を出した。

久藤 嵯督 > ―――
■二島 充 > 「母ちゃーん、晩飯出来たぜ…って、げぇ! テメーは!」

黒髪黒瞳―――なるほど、確かにそっくりだ。

視線が合うなり、「こいつにだけは会いたくなかった」と言わんばかりの苦い顔を見せる。
補導の際、ちょっとだけ殴られたことをまだ根に持っているのだろうか。
発現させたばかりであろう斥力の異能をふんだんにぶつけてくるものだから、それぐらいは必要だったのだが。
番犬のように唸りながら嵯督を睨み付ける充の後ろから、双子の妹が背伸びをして、嵯督のいる店内を覗き込んだ。

■二島 燈火 > 「あ、久藤先輩来てる。なに? バカ兄ぃまた何かやらかしたの? また殴られんの?」

肩まで伸びた黒髪を揺らしながら、口元に手を当ててあざ笑う妹―――燈火。
兄とは反対に、引力の異能を持つ。

■二島 充 > 「してねーよ! 何でコイツがここに……!」

嵯督の立ち位置が完全に悪役のソレになってしまっていることは置いておいて、頃合いを見計らって嵯督は口を開く。

「……ここには駄菓子を買いに来た。巡回も終わったからな。
 それとも、風紀委員が駄菓子を買ってちゃ可笑しいのか?」

■二島 充 > 「テメー絶対そんなキャラじゃねーだろ……」
■二島 燈火 > 「風紀の鬼さんの意外な一面ってトコ…かな」

ごもっとも、とはいえ違うと言い切れられるような”建前”でもない。
ここに来た時点で本来の目的の半分は達成されたようなものだが、もう少し探りを入れてみるのも悪くない。

久藤 嵯督 > ―――
■二島 明里 > 「これはどうも、息子と娘がお世話になっているようで……
 わたくし、母の明里《アカリ》と申します」

「風紀委員の久藤 嵯督だ。なんてことはない、当然の事をしただけに過ぎん。
 事が大きくなる前に手を打つのも、風紀の仕事だからな」

■二島 明里 > 「ふふ、頼もしい限りで。
 この子ヤンチャだから、またお世話になるかもしれません。
 その時はどうかよろしくお願いしますね」

■二島 充 > 「ならねーよ! こんなヤツの世話になんか……」
■二島 燈火 > 「はいはい、バカ兄ぃは私と晩御飯の準備をしましょうねー」

喚き散らす充を、燈火は異能を駆使して店の奥まで引き摺っていく。
さながらそれは、首根っこを掴まれた小動物のように。
店の中に取り残されたのは、嵯督と明里だけとなった。

久藤 嵯督 > ―――
■二島 明里 > 「息子は……学校ではどんな様子でいるのか、存じておりますか?」

それから二人は随分と話し込んでいた。
買ったアイスバーを片手に、バーに使うであろう席に座って、双子の学校での様子を知る限りに語った。

「充は、ハッキリ言って成績がよろしくないな。風紀委員としてはこれを是とするワケにもいかん。
 もっと勉強するよう、貴女から言ってやってくれると助かる」

■二島 明里 > 「しなさい、とは。いつも言っているんですけどねぇ……困ったものです」


「燈火はよく歓楽街に行くのか? この前遅くまで出かけていたから、注意しておいたが」

■二島 明里 > 「ええ、たまに。家族で食卓を囲む機会も、段々と減ってきてて」

息子と娘の様子に一喜一憂する明里を見て、嵯督はそれを―――『二島家』という存在を羨ましく思った。
しかし不思議と嫉妬心はなく、嬉しいような、寂しいような、そんな笑みを浮かべていた。

この時ばかりは、鬼も笑っていたのだ。

久藤 嵯督 > ―――
■二島 充 > 「母ちゃーん! いつまで話してんだよー!味噌汁冷めちまうぞー!」
■二島 明里 > 「ごめーん!もうっちょっとねー!
 ……ごめんなさいね? 充ったらやきもち焼いてて」

「いや、気にする必要はない。丁度俺も、もうそろそろ―――」

久藤 嵯督 >  ―――『門』が開く―――

―――三十分後 現在地より3km圏内―――

―――白金の人型・Type:レフコクリソス―――

久藤 嵯督 > ―――



■二島 明里 > 「あなた……その、目……!」

嵯督の眼を見た明里は、驚愕の表情を浮かべた。
眼には涙を浮かべ、その両手は空を手探る。

門の予兆を感知した時に現れるこれを、前にも見たかのような。そんな反応。

「やはり貴女は、この『眼』を見たことがあるようだな」

あの日、親友―――『   』のしていた眼と同じ。虹色に輝く眼。
何故このような眼を持っているのか、まだ誰にもわからない。

■二島 明里 > 「あなた、もしかして『  』な―――「……奥さん」

不意に、言葉を遮った。
彼女が真実に辿り着く必要はない。やっとの思いで戸籍を得て、ようやく手に入れたであろう平穏を
自分のエゴで壊すワケにはいかない。

後はこれだけ言って、この物語を終わりにしよう。
何も悔いはない。何も。

会えてよかった。元気にしてくれてて良かった。
自分には、それだけで十分だ。

久藤 嵯督 > 「―――親友からの伝言を預かっている」
久藤 嵯督 > 「―――『僕を産んでくれてありがとう』」
久藤 嵯督 > ご馳走様と言いながら、「ざんねん賞」と書かれたアイスの棒をくず籠に放り込む。

開かれっぱなしの入り口をくぐる。

背後から聞こえてくる慟哭を、頭の中で噛みしめながら。

自分のあるべき場所へと走り出した―――

ご案内:「みことや」から久藤 嵯督さんが去りました。
ご案内:「異邦人街」にレフコクリソスさんが現れました。
レフコクリソス > ―――本来であれば、『門』の出現時間は予測通り30分後であったことだろう。
しかし今回は違う。侵略者側は今回、門の顕現を途中で早めることに成功していた。
これにより久藤嵯督の予測から外れ、三十分が経過する前……門を立ち上げて三分が経った頃にソレは現れた。

翼を広げ、裂かれた空より舞い降りる白金鎧の異形。
ほのかに赤く光る羽をしゅっと畳んで、大地に降り立つ。
羽が畳まれたところを、広がっていた背中の外殻がカバーした。

レフコクリソス > 周囲を見渡す。
文化的な建物がいくつか並んでおり、生体反応が細かく確認される。
ターゲットの不在を確認し、第一試験は成功であることを”向こう側”に通達する。

前回の出現よりも接続知能は大幅に強化されており、ある程度複雑な判断も可能となっている。
それに加え、前回遭遇した”魔王”用いる魔術に対する完全な耐性も得ることにも成功している。
ならば最大の脅威である、”門にして鍵”『大無名者』への抵抗力を得ることも可能であろう。
標的に関しては不可解なことも多く、小競り合いを繰り返しながら情報を集めなければならない。
人の姿で人に紛れるには、接続知能の大幅な改良も必要になってくる。
今は、これが限界だろう。

今はただ、ターゲットの来訪を待つ。

レフコクリソス > ―――
■異邦人の子供 > 「すげー、おめんサイダーがおるー」

異形に接近する生体反応。
消化器官の試験にはうってつけであろう、人間の子供のオスだ。
捕食した結果の情報送り、今後に役立てていくことが今やるべきことだろう。

■異邦人の子供 > 「あくしゅしてー。あくしゅ」

手を伸ばしてくる子供に向かって、異形はゆっくりと手を伸ばし―――

レフコクリソス > ―――音速を越えて飛来した苦無が、伸ばした方の腕に深々と突き刺さった。
ご案内:「異邦人街」からレフコクリソスさんが去りました。
ご案内:「異邦人街」にレフコクリソスさんが現れました。
ご案内:「異邦人街」からレフコクリソスさんが去りました。
ご案内:「異邦人街」にレフコクリソスさんが現れました。
ご案内:「異邦人街」からレフコクリソスさんが去りました。
ご案内:「異邦人街」に久藤 嵯督さんが現れました。
久藤 嵯督 > 「―――落第街《ヒガシ カンラクク》で目撃されたタイプか」

三点着地。
開いた方の手から強化ピアノ線を飛ばし、少年の体に巻き付けて、さっと引き寄せる。
糸に巻かれた少年を横抱きに受け止めてすぐ拘束を解き、その場に下ろす。

「ここから離れてろ。いいな?」

■異邦人の子供 > 「……おまえ、サイダーいじめてるし。
 だめじゃん! おとうさんとおかあさんにいうぞ!」

ああ、もう、こういう展開には慣れっこだが。やっぱりめんどくさい。
かといって弁明している余裕もなく、こういった場合に取れるもっとも手っ取り早いやり方は、こうだ。

久藤 嵯督 > 「いいから失せろっつってんだろうがクソガキ!
 テメェから先にぶち殺してやろうか!? あぁん!!!?
 踏みつぶすぞコラァ!!!!」

久藤 嵯督 > ■異邦人の子供 > 「びぇぇぇえええ!!」

少年が大泣きしながら逃げていく。インベーダーに少年を追っていく様子はない。
許せ。それ以外に冴えたやり方を知らんのだ。
あとは、自分が被害を抑えるだけだ。風紀にも応援を呼んでおいたし、最悪時間を稼げればそれでいい。

また始末書モノなんだろうな、と。
心の中でぼやいている間にも、糸を構えて臨戦態勢。
インベーダーの動向を探る。

久藤 嵯督 > 腹の四本の角からは電撃および荷電粒子砲が放たれ、
羽から漏れる赤い粒子は航空燃料をも凌駕する爆薬、
身に纏う殻はすこぶる頑丈であり、基本スペックだけでも凄まじい膂力を持つ。
まだまだ知らない機能を抱えていそうではあるが、最も警戒すべきは腹の角と赤い粒子。
それらはまず真っ先に封殺しなければならない。

あの角を持った龍とは何度か交戦した経験があるが、27mm口径の機銃を何発か当てなければ角は破壊出来なかった。
常備している”豆鉄砲”程度では傷一つ付けられないだろう。

あの蝙蝠の羽は衝撃を吸収するため、斬撃が効果的だ。
ただ巨大蝙蝠と違って赤い粒子を含んでいるため、斬った箇所からそれが漏れてくることにも気を付けるべきだろう。

指をよく観察してみると、それはどこか蜘蛛の脚に似ている。
先端のかぎ爪には極力触れない方がいい。
また、”糸”を使ってくる可能性も考えるべきだ。

白金の殻は、”限定《タガ》を一段階外した状態での全力投球”でようやく一枚貫通する。
もっと威力のある攻撃を叩きこまなければ、討伐は不可能だ。

転移魔術で大気圏外に飛ばしてしまうことも考えたが、どうしても隙が出来てしまう。

―――極力、倒してしまうよう心がけるべきか。

久藤 嵯督 > 睨み合いが続く中、先に動いたのは白金の異形。
大地を砕きながら踏み込んで、構えた拳を振り下ろす。
それら全ての動きを見切っていた嵯督は、難なく回避。
異形は勢いのまま、嵯督の横を過ぎていく。

人ならざる肉体を持っているため、筋力値の目測は不可能に近かったが、これで大体理解した。
真正面から取っ組み合うことはまず危険であり、第三段階の封印を解いたとしても力負けする可能性がある。

「……馬鹿力めッ」

背中を向けた状態の異形の背中がばっくりと割れて、蝙蝠の羽が露出する。
赤い粒子が嵯督の足元にちりばめられて、一斉に起爆。
飛び上がって回避する嵯督―――その頭上に、異形が飛行して回り込む。
腹からの放電を、嵯督はモロに受けてしまう。人一人ならば容易に黒焦げになるほどの電力だが……

ご案内:「異邦人街」に上泉 和正さんが現れました。
久藤 嵯督 > 「―――フンッ!」

嵯督は空中から、体のバネだけで異形を蹴り落した。
着地した後、チリになりかけている上着を乱雑に脱ぎ捨てた。

「……生憎、その程度の電流なら散々受けてきたんでね」

自分で電撃を使えるようになるまで、何度も自分で電気を受けていた。
ちょっとやそっとの電気……ではないのは明らかだが、これ位ならば耐えられなくもない。
がくがくと立ち上がる異形を見下ろしながら、右手の糸を繰り立体魔法陣を構築する。その術式は転移魔術。
座標指定のものだと二工程必要になるが、物体指定の場合は一工程で済む。
カートリッジの消費は一工程ごとに行われるため、これが効率のいい方法だ。
左手でポケットからマジックカートリッジを取り出して、右腕に刺す。

刺した箇所から紫色の筋が全身に広がっていき、肉体が猛烈な拒絶反応を引き起こす。
頭痛、めまい、吐き気、焦燥感……など。不調という不調が一斉に襲い掛かって来る。

この程度の苦しみなど、自分という存在を鍛え上げた”地獄”に比べれば生温い。

上泉 和正 > (人の拳ぐらいの大きさの光弾が異形の者に対して発射された。見れば上泉が符呪のついた銀糸を銃の形に変化させ弾を撃ったのだ)……やれやれ。ちょっと散歩をしていたら厄介ごとに出くわしてもうたわい
久藤 嵯督 > 強引に植え付けられた魔力の出口を指先に作り、糸に通していく。
魔力の制御権が自分の中に残っている内に、たった一言だけの詠唱―――

「来るがいい……第四装備『無断』ッ!」

立体魔法陣が自身の背中に回り込むと、その中から長大な弧を描く物体が現れる。
―――全長1.93m、重量44.4kg+鞘の24.7kg―――
巨大な機械の鞘と刃が、背中に装着された。
左肩から伸びる持ち手を、両手で力強く握り締める。


ガギィン!


二つ目の限定《タガ》を外し、全身に稲妻が迸った。
両手の内に電力が急速にチャージされていく……

(ギリギリ間に合うか……いいや、間に合わせるッッ)

その隙を見逃すまいと、異形が羽を広げた次の瞬間のことであった。
光弾は立ち上がろうとしている異形の殻にぶつかり炸裂するだろう。
よろめいた異形は老人に意識を向けて、手の指を構えて糸を発射しようとしていた。しかし

(誰だか知らんが……やり易くなった!)


ジ!ジ!ジ!ジ!ジ!ジ!ジ!ジ!

雷ともまた違った、密度の高い電機の音が鳴り響く。
機械の鞘から青白い光が漏れ出し、がこん、とカバーのロックが解除される。
さすれば後は、稲妻の如き踏み込み―――

老人を狙う異形の前に亜光速で立ち塞がり、鞘へ一気に電力を送り込む!

カバーが完全開放された刹那に、電磁加速された刀身が、一瞬で土の地面に食い込んだ。
異形の背後では貫通した衝撃波が、地面を深く抉り取っている。長大な刀身を鞘に格納して

ガコン……

外した限定《タガ》を、再び取り付けた。



■レフコクリソス > 「―――キ、キキ」

異形は白金外殻ごと真っ二つになり、切断面を露出しながら、ごとりと半身を落とした。
さて、ここからレフコクリソスと呼ばれる個体がどう動くのか。それはもう知っている。


「―――行くぞ、じいさん。こいつは爆発する」

早く離れるよう、善意の協力者を促す。

上泉 和正 > おっとそれは危ないのう(急いだ様子ですぐさま銀糸を形態変化させ今度は人一人乗れる巨鳥にする。それにすぐさま乗り上空へと避難する)
久藤 嵯督 > 老人が避難したのを確認すると、嵯督自身も十数歩離れたところへ下がっていく。

それから十秒も経たないうちに、レフコクリソスから赤い光の粒子が溢れ、大爆発を引き起こす。
異形の肉体は、跡形もなく消しさられてしまった。

こうなっては調査もままならない。
ひとまず、上空にいる老人に礼を言って、後から来る風紀委員に事情を説明しようとしていると

■二島 充 > 「ああっ、見つけたぞ!
あのヤロウ……人の母親泣かせて帰りやがって……!」

めんどくさいのがきた。
彼に粘着されたまま仲間を迎えると、業務に支障をきたす恐れがある。
それどころか、明里に余計な不安を抱かせることに繋がってしまう。
ここはさっさと退散するしかない。名も知らぬ老人にはせめて、言うべきことだけは言っておくこととしよう。

「風紀委員の久藤 嵯督《クドウ サスケ》だ! この度は協力に感謝する!
 お前が望むなら風紀に恩賞を与えるよう取り付けてやってもいいが! どうするよ!」

上泉 和正 > 久遠くんか……何、それには及ばんよ。わしは別に恩賞が欲しくてしたわけではないからの(下に降り鳥から降りてにっこりと笑みを浮かべて言う)あとわしの名前は上泉 和正じゃ。まあ、授業とかであったらよろしくな。ではわしはこれで(そう言ってその場を歩いて離れた)
ご案内:「異邦人街」から上泉 和正さんが去りました。
久藤 嵯督 > (久遠って……いや、耳が遠いのか?)

名前を間違えられるだけの理由はなくもない、と思ったところで
あの問題児が斥力全開で追ってくる前に姿を晦ます久藤嵯督なのであった。

ご案内:「異邦人街」から久藤 嵯督さんが去りました。