2016/10/20 のログ
ご案内:「喫茶店 どんぐり屋」にルチアさんが現れました。
ルチア > ありがとうございました、と客を見送って女ははー、と息を吐き出した。
これで、店内に客はいない。

疲れたかい、と声を投げてきたこの喫茶店のマスター“おやっさん”に少しだけ、と答えると、
カウンター席に置かれた使用済みの食器を慣れない手つきでトレイに載せて片付けた。
綺麗に浚われた食器は、おやっさんの料理の腕前の証なのだろう。

昨日連絡を入れ本日足を運んで、そのまま即決でアルバイトに決まった。
講義をまだ選択し終わっていないため、本日は一日暇だと告げるとそれなら、とそのまま店に入って、
慣れないながらも昼どきを乗り切り、現在に至る。

シンクに食器を入れてスポンジを泡立て食器を洗う。
接客は慣れないが、流石に食器洗いくらいは慣れた手つきでこなすことは出来る。

「今日は忙しかったのかい?」

と聞けば最近近くに異邦人向けのレストランが出来ただかで、そのせいか少し客足が鈍いらしい。
それでも結構な忙しさだと自分は思ったわけだから、昼時の飲食店は中々大変だ。

ルチア > まあその内慣れるさ。

そんな言葉を掛けてもらいながら、食器を片付けていく。
泡々にした食器を流し、カゴへと移して、更にそれを拭いていく。
おやっさんは在庫かなにかをチェックしているようだった。

片付ける食器は、棚を見ればどこに入れればいいかは大体分かる。
それでも解らなければ逐一確認して――そうこうしている内にだいたいのことは終わってしまった。

「次は何を?」

客来るまで休憩だな、と返って来たのでありがたくカウンター席に移動して休ませてもらう。
思ってたより気を張っていたらしく、座ると再び出てきた息。
ため息というよりは安堵のそれだ。

「働くって大変なことなんだな」

そりゃあそうよ、それでおまんま食ってるんだから、と、そんな言葉が返ってきて、
それもそうだね、と笑うしか無かった。

ルチア > 後は何となくの雑談だ。
講義はどうするの、とか、この島には慣れたのか、とか、そんな話。

元々いた世界と似たところが多くあって――異世界というよりは並行世界と呼んだほうがいいような――慣れるにはそこまで大きな苦労はしなかったこと。
たまたまこの世界に来たその日に親切な人に出会って、様々なことが何とかなったこと。
先日ここで働いている青年にあったのも幸運だったとか、そんな話。

休憩と呼ぶにはいささか長い時間ではないだろうかと思った所で、店の扉が開く音がした。
立ち上がって緩やかに笑みを浮かべる。
営業スマイル、と言う訳でもないけれど。

ルチア > いらっしゃいませ、と声をかけると常連客だったらしく、新入りかい、と尋ねられてええ、今日から。と笑みのまま答える。
そんな今日何度か客と交わしたやり取りをここでもまた繰り返し、
やっぱりまだ慣れていない手つきと動作で席を用意する。

おやっさんと楽しげに会話する客にお冷とお絞りを出しながら、
ああ、こんな風に日々は過ぎていくのだろうか、とぼんやりと思って
それが案外悪くないような気がして、小さく笑った。

ご案内:「喫茶店 どんぐり屋」からルチアさんが去りました。