2015/10/19 のログ
ご案内:「小さな祠」にサヤさんが現れました。
■サヤ > 夜の帳がすっかり落ちた異邦人街の宗教施設群、その一角にある人刃一刀流の神祖を祀った小さな祠の前で、サヤは鍛錬を行おうとしていた。
祠に向かって一礼してから背を向け、土の上で素足になり、刀を抜く。
左手を体ごと前に出して半身になり、右手と刀身を体の裏に隠す。基本の構え。
目を閉じて、相手をイメージする。刀を両手で持ち正眼に構える剣士。
■サヤ > 人刃一刀流は守りを主眼に置いた剣術だ、基本的に自分から手は出さず、反撃が主となる。
斬撃を左手の力場で逸し、末端の血管を狙う。深手を負わせる必要はない。流れ出した血が敵を倒してくれる。
次々と襲い来るイメージ上の攻撃を、実際に体を動かして避け、いなし、執拗に手首や太腿、足首や首筋の血管を狙い続ける。
最初こそ上手く行っていたが、段々と精度が落ちてくる。力の入れ方、抜き方、手の角度、それらが少しずつ狂い始め。
イメージする自分が手傷を負うたびに、その表情が曇る。
浅い傷は出血を、出血は焦燥を呼んで、技を乱す。
ついに、左肩に刃が深々と食い込んで、イメージ上のサヤは死を迎えた。
■サヤ > 「……はぁ。」ため息をつきながら、左肩に手をやる。全ては想像上のことだが、痛むような気がした。
腕が落ちている。それがため息の原因である。先日の据物斬りでも実感した。
以前ならいくらでも、それこそ一日中続けても技が乱れるようなことはなかったのに。
剣術は自分の唯一の取り柄なのに、それすら無くなってしまったらどうしよう。
■サヤ > 石蒜も多分、私と同じぐらいの腕のはず。でも石蒜は投げた刀を自由に操れるだけ私より強いだろう。それに、怪我をしても動きは鈍らない。
石蒜には恋人が居る、私には居ない。友達は、二人で共有している。
「……。」私にしかないものはなんだろう、例え今この場で私が消えても、石蒜が私の代わりをすべてやってくれるようにさえ思える。
ぐるぐると否定的な思考が頭を駆けまわる。
■サヤ > 螺旋状に、同じ考えを繰り返しながら、どんどん落ち込んで悲観的になっていく。
立っているのも辛くなって、その場にしゃがみこんだ。
「……。」苦痛をこらえるように、顔をしかめて。思考の循環に耐え続ける。
ご案内:「小さな祠」からサヤさんが去りました。