2016/06/07 のログ
ご案内:「宗教施設群」に迦具楽さんが現れました。
■迦具楽 >
「よ、ほっ」
【宗教施設群の一角、妙な祭壇とこじんまりとした一軒家がある土地で。
地面から数センチ浮いて、手足を広げてバランスを取っている少女が一人。
まあ、迦具楽である】
「ん、っとと……んー、だいぶ慣れてきたかしら」
【迦具楽が履いている靴は、普通の靴とは少し違う。
イメージとしてはスキー靴に近いだろうか。
ただ、スキー靴と違い、形状はやや鋭角的で、シンプルだがデザイン性が強く。
また深紅のように赤い色に黒いラインの入った靴だ。
見る人が見れば、それがエアースイムという競技で使われる【S-Wing(スウィング)】という魔道具であることが分かるだろう】
■迦具楽 >
【最初は上手く飛べず、天地がひっくり返って頭を打ってしまうような有様だったが。
今ではそれなりにバランスを維持して浮かんでいられるようになっていた。
……とはいえ、浮かぶのが精一杯でまだまだ動けるようになるには時間が掛かりそうだったが】
「うん、でも、手くらいなら動かせるわね」
【恐る恐る、急に動かすと反動でバランスが崩れそうなので、ゆっくり動かしてみる。
とりあえず、手をゆっくり動かすくらいならば、問題なく動けそうだった。
となれば後は、自然と無理なくバランスが取れるまで、地道に反復すればいい。
着実な進歩が感じられた】
■迦具楽 >
「でも、自由に飛べるまでは、結構長そうね」
【一応腕の補助機は用意してあるため、それを着ければもっと楽に動けるのかもしれないが。
最初に足だけで飛んでみようと思ったから、せっかくだしやれるか挑戦したかったのだ】
「よし、今度はもう少し高めに……っと」
【S-Wingに流し込む魔力を、それまでよりやや多くしてみる。
すると先ほどより高度があがって、数センチだった浮遊が十数センチと行った所になる。
これだけ浮けば、空中浮遊といって差し支えない程度の高さだろうか】
■迦具楽 >
「……う、案外怖いかも」
【迦具楽は別に、高所恐怖症というわけではない。
けれど、ビルや窓から見下ろすのとは違う、不安定な状態で浮いて地面を見下ろすというのが怖さを感じさせたのだ。
かといって、足元ばかり見ているわけにも行かない。
怖さからつい下に向きそうになる視線を、顎を上げて正面に向ける。
下を向いているとバランスを取るのが難しいのだ】
「下を見ない、下を見ない」
【正面の少し遠く。
向かいの施設の蛇と蛇が食い合う形の奇妙な紋章を眺めながら、懸命に姿勢を維持していく。
そして、徐々に力を抜いてなるべく自然な状態になれるように、ゆっくりと呼吸をしはじめた】
■迦具楽 >
【……が、突然ぐらり、と体が揺らいでひっくり返りそうになる】
「う――っ、わっ!?」
【危うく大回転、となる前に、S-Wingへの魔力供給を止め、しりもちをつくように地面へと落ちた】
「……っ、たあい。
後ちょっとなのになあ」
【やや四つ這い気味になって、強かに打ちつけた臀部を手で摩りながら惜しそうな表情をする。
目じりには少々涙が浮かんでいたが、それは尻餅をついたからだろう】
「んー、今日はこれくらいにしておこうかしらね」
【とりあえず進歩はあった。
昨日の今日でこれなのだから、まずまずと言って問題ない、はずだ。
S-Wingをはずして、普通の靴へと履き替える】
「あーあ、早くコーチみたいに飛んでみたいなぁ」
【あの咲雪と名乗った少女は、とても綺麗に空を舞っていた。
昨晩はその軌跡が夢に出るくらい、強い感動を受けたのだ。
早く並んで飛べるようになりたいと、逸る気持ちを抑えて、迦具楽は夕食の支度に取り掛かるのだった】
ご案内:「宗教施設群」から迦具楽さんが去りました。