2015/06/17 のログ
九十九 十六 > 十六自身にもこの興味がどこから湧いたのか少々疑問だった。
この区画に訪れる人間に理由を訊くのは野暮な話だから。
(……たぶん)
まつろわぬ馬の骨としてその日暮らしのバイト生活をしている自分を、朧げにも憶えてくれていたのが。
なんだか嬉しかったのだろう。

「そ。……わかってるだろうけどあんまり深入りしちゃだめだよ。ホドホドがいいよ、ホドホドが」
「僕については、今いっこ貰ってくれたおかげでまた一歩ちゃんとした食事に近づいたから、心配はご無用です」
「そんじゃま……上澄みの甘露でほろ酔いの一時をどうぞお楽しみくださいな」

手を軽く振って見送る。
“瞳”は真実を語る。
それを見せずに語った彼女は何を思っていたのか。
そんなのは、ただの興味本位で踏み込むには重すぎる。
歓楽区と同様で、人付き合いもホドホドが良いのだ。

松並 和紗 > 振り返らないまま、少年に手を振った。
「ええ、溺れない程度に楽しむわ。」

歩きながら、少年のしどろもどろの人違いだという主張を反芻する。
(やっぱり、いつもアヤシイ仕事をしている子だ。フード被っていたって、赤・青のオッドアイなんて目立つわ。一度見かけたらそう忘れないわね。)
くすりと笑って、闇に消える。

ご案内:「歓楽街第六大通り『神室』」から松並 和紗さんが去りました。
九十九 十六 > 褐色の髪の毛がふわりと靡いて、人混みへ隠れていく。
「はーっ、ビビったビビった」
胸中から息を絞り出し、深呼吸。
「風紀の探りでも入ってんのかと思っちゃったよ。びっくりしたなー……」
また、身体の動きを半自動化させたティッシュ配りは再開する。
例によって受け取る人間は、たまたま風邪気味の人間程度しか居ない。

九十九 十六 > 不意に、人が途切れた瞬間に、ティッシュを為舞って動きを止める。
「……」
掌で自分の瞳を覆う。
「…………あの娘は、表から時折こちらへ覗きに来るのだろうけど」
「僕はなんでずっと、こっちに居るんだろうな」
表情は伺えない。
通行人も十六に気を留める者は居ない。

九十九 十六 > 「《ホワイトビースト》」
「ドロ啜っても、枯れ草食んでも、あいつだけは……………………」

呟きは夜闇に紛れて消えた。

ご案内:「歓楽街第六大通り『神室』」から九十九 十六さんが去りました。