2015/06/24 のログ
■虞淵 > 「憤ッ!」
手刀一閃、威嚇射撃として放たれた弾丸は両断され、路地裏のアスファルトに転がる
更に遠ざかったウィリーを眺めて、構えを解く
「さァなァ…?仕掛けてきたのはテメェだ。
尻尾巻いて逃げるヤツ以外は、基本的には俺ァスッキリするまでブン殴らねェと満足しねェんだワ」
■ウィリー > 「その辺の料理屋でキッチンに入ったらどうだ? 下ごしらえに喜ばれるだろうさ」
いともたやすく鉄くずにされた弾丸を視界に収めながら、苦々しげに。
「それならこの辺で尻尾を巻かせてもらおう、とはまだ行かないわけか
もう少し情報がほしい」
何の情報だろうか? 虞淵について? それとも……自分自身の力についてか。
姿勢を下げ、ぬるりと、駆けだす。
虞淵とは対照的だ。まるで這いずるように、ひとつの流れとなって
間を詰める。
「鉄の魔法<変質>」何かを呟きながら、左拳、右拳、左手刀、右膝蹴りと一呼吸の打撃を叩き込もうと試みる。
仮にあたっても、ダメージにはならなそうだが。
■虞淵 > 「つまらねェ冗句だなオイ。 ───情報ォ?」
なんのこった、と肩を竦めたのも束の間
なるほどやはりこいつは一応腕に覚えがあるらしい
左拳、巨腕で持って薙ぎ払い、打ち払う。その際に感じた手応えは人体の硬さではない。───成程
右拳、六合の型を用いて受ける、右腕に確かな衝撃。───つまりこいつぁ…
左手刀、腕が伸びきる前に関節を押し返して威力を殺す。───銃器や格闘戦、自らがもった戦闘技術に
右膝蹴り、理合を使って受け流し、最初のポジションへと戻す。───魔術による強化を施すタイプ。
「単純な身体能力の強化じゃねェ……。
珍しいタイプだな。異能と魔術のハイブリッドを器用に使いこなしていやがる。
大体はどっちかに傾倒するもんだが」
■ウィリー > 「……こちらの話だ。単純に取り締まりに来ただけだったが……
俺は知りたくなった、あんたみたいな力を持つに至った人間の事を。
そして、俺の鍛錬の果てに、その世界があるのかどうかを」
一拍四撃、全て有効となる前にいなされた。
これだ。おそらくこれこそが、面白みなのだ。揺るぎない緊張、
張り詰めた空気の中に、ウィリーは知らないはずの闘争の影を見る。
「あんたは……あんたからは異能の臭いが全くしないな。
何故だ? 使えるなら使うに越したことはないだろう。魔術だって」
打撃を放たせる前に、次々と流し打つ。
鞭のような手刀と、刺のような貫手。ジリジリと押しやるように放つが、けして有効打には成り得ない。
そして隙は大きい。まるで、相手の攻撃を誘うように。
■虞淵 > 「ふゥん……そういうことか」
にぃ、と口の端を吊り上げる
おそらく、こういった手合いが、男は好きなのだろう。
「俺ァ生まれた時からこうだった。力が莫迦みたいに強ェ、体が阿呆みてェに硬ェ。
親ァ医者に見せたが病気でもねェ、仕舞いにゃ気味悪がって俺をスラムに捨てた」
繰り出される手刀や貫手を簡単にいなしつつ、男は饒舌に語る
「ガキ一人で生きていたそんな時だ、この学園都市の話を聞いてなァ。
俺の力に興味を持ったヤツのツテで、このガッコにやってきたってわけだ。俺の力が何なのかを知りたくてな。
───なんてこたァねェ。
俺には異能なんてモンはなかった、魔術?そんなモンの素養もねェよ。
ただこの宇宙開闢以来人類史上初めて完璧な肉体を持って生まれた、それだけの人間だったわけだ」
男は自嘲気味に笑う
「悪ィが、鍛錬なんて生半可なモンじゃ至れねェよ」
特大の震脚と共に、諸手に気を練り上げ撃ち放つ
心意六合拳が奥義の一つ
猛虎硬爬山───!!
■ウィリー > 「さて、どういうことだろうな」
ふふ、と笑った。恐ろしい場だからこそ、試したくもなる。
わからないからこそ、知りたいと思う。
力を。
「先天性か……そりゃあ親御さんも医者も匙を投げたろう。
得体が知れないものを恐れるのは、道理に適っている。
俺も、昔はそのクチだった」
周囲の地面が砕ける。安普請の建物は崩れていく。
だがこれは、次にくる必殺の一撃の前触れでしかない。
「……この学園都市にあって、異能を持たず魔術も使えない、
だがどんな能力者をも超える、天賦の『肉体』、面白い奴が
いたもんだなッッ」
「鉄の魔法<錬成変異>ッ!」銃だったもの――強化合金が、水のように流動してウィリーの身体を伝う。
「ッセエエエエエエッッ!!!!!!」
ついに鉄に包まれた左掌を、勢い良く虞淵の奥義へと叩きつけた。
「異能発現、《転化》ッッッ!!!」
破れかぶれの、自殺行為か。
その一撃の残心が終わる前に、ウィリーは膝をつく。
だが、彼にはまだ、最後の一撃がある。
■虞淵 > 「クックックッ。馬鹿言うなよオマエ」
たかだか力が強いだけ
たかだか体が硬いだけ
「それだけでこの島で大手振って生きていけるワケがねェだろう。
物理攻撃が通じない異能者がいたらどうする。
物質の強度を無視する異能者がいたらどうする。
こうやって腕力で遊びまわる以上は、俺も俺で色々やってンだよ♡」
天賦の肉体、それは間違いではない
だがこの男は決してそれに胡座をかかない
「てめェはまだ若ェよな、だから教えといてやるよ。
天恵、才能、経験、努力、鍛錬、覚悟、強くなる為にゃあ色々あるよなァ。
だがそんなモンだけじゃ境地ってヤツには至れねェんだわ、めんどくせェことに。
───闘争の境地に至るにゃそんなモンは全部手中に収めているのが至極当然!!
天才で、努力家で!運にも恵まれ、鍛錬は欠かさず、飽きず!満たされず!
その上で貪欲に重ねた勝利の数こそが頂きへの階段ってヤツになる!!
………少しでもオマエの感情が今の言葉に揺り動かされたなら、素質ァあるぜ、最後の一発。何か隠し持ってんだろ?見せてみろよ」
心底楽しみだと、笑みを浮かべる男
目の前の若い自警団員をその獰猛な視線にて見下ろす
■ウィリー > 「……」聞こえているのか、いないのか。
膝をついたまま、それこそ口や鼻から流れ落ちる血の音だけが返事を返すさま。
天才であり、努力家である。
それは恵まれているというよりかは、そうあれと世界に祝福されているのかもしれない。
だというに、全てに対して貪欲であるその在り方はまるで餓鬼のようだ。
足りぬ、足りぬと。
故に満たされるための闘争を繰り返す。滅びるまで、果てもなく。
「いや……ゲホッ……後半部分には感じ入った……
確かに、そうだろう。望むのなら、勝ち続ける以外に術はなく
勝ち続けるためには研鑽を詰むほかない」
よろめきながら片膝をつく。
顔を上げて、そして言う。
「大いに、励みになった」
少しだけ上がった左腕が、鉄に包まれていることに気づくだろうか?
そして、それが尋常ならざるエネルギーを放っていることにも。
目一杯踏み込む。膝が笑っているが、この際どうでもいい。
彼の異能は、物体が保持する・もしくは放出したエネルギーを別のところに移動させておけるものである。
銃撃時の余剰熱と、魔力と、腕一本と、そして--―受け止めることのできた「奥義」のエネルギーが、鉄の腕に渦巻く。
「……《転化》解除、フルバースト」立ち上がる勢いで、左拳を虞淵の顎へと。
ウィリーの瞳が黄金に輝く。自分への反動を抑え、全てのポテンシャルをエネルギー――熱であり、衝撃であり、光でもある――として与えるための演算が、一瞬の内になされて――
ここに正しく、戦いは決着を迎える。
恐らくは、ウィリーの敗北という形で。
■虞淵 > 「───そうかい。嬉しいぜ、オマエみたいなヤツがまだいることがよ」
心意六合の世界で学べたことの中で、最も男にとって有要だったことがある
それは、力には必ず流れが存在すること
「ちっと、まっすぐ過ぎたな。───けどまぁ、嫌いじゃないぜ」
不意打ち気味ではあったが、余裕を持って躱そうと思えば躱せただろう
しかし
「吼ォッ!!」
真下から迫る激拳に、己の額を叩きつける
路地裏に疾走る閃光と、轟音
男のとった行動は結局回避でも防御でもなく、同じ威力を生み出し叩きつける、力比べ
相殺と言うには余りにも乱雑な衝突だった
「……クゥ、さすがに効くぜ」
額から一筋流れる朱
■ウィリー > 轟音、閃光。流れと流れが相対して、ぶつかり合ったその証拠。
だがその余韻を楽しむ余裕はない。
集まり始めた野次馬を縫って、自警団員、風紀、公安が顔を見せている。
「……しみじみ……あんたは大したやつだ……」
今ので、それも相殺させて血一筋。尋常ではない。
鉄が癒着し、その上複雑に砕けた左腕を地面につく。
血を失いすぎたし、傷も多い。一歩間違えれば危ない状況だということはわかっていたが。
最後に言っておかなければ。
「……楽しかったよ。あっちからなら、人目につかず抜けられるだろう。
あと、やっぱり賭場のオーナーには支払いを…しろって……伝えr……」
ドサッと倒れて、そのまま意識は暗闇に落ちる。
圧倒的な力と、圧倒的な技術から繰り出された『真の流れ』が
リフレインしながら脳に深く焼き付いていった。
■虞淵 > 「オウ、俺も大満足だ」
ぐい、と割れた額から流れる血を腕で拭って
まぁ、そりゃこれだけやればギャラリーも湧いてくるか
「聞くかどうかはわかりゃしねェが、言うだけ言っといてやるよ。
楽しませてもらった礼だ」
聞こえているかどうかはわからないが、ウィリーへそう応えて、踵を返す
男は再び闇へと消える
ご案内:「歓楽街路地裏」から虞淵さんが去りました。
■ウィリー > ――彼は自警団員の手で病院へと運び込まれた。
全身打撲、重度の裂傷、左腕複雑骨折、熱傷等でかなりの治療が必要であったという。
ご案内:「歓楽街路地裏」からウィリーさんが去りました。