2015/09/13 のログ
■蓋盛 椎月 > 「やだ、ヨキ先生のスケベ。残り107は後々考えておきますね」
愉快そうに予定調和の笑いを浮かべる。
「まあ、そこまでは練習さえ重ねればなんとかなるんですよ。
弾幕シューってのは基本的にはパターンをこなすゲームですからね……。
そこ以降がいろいろと人間のハードウェア性能に挑戦しにかかってるんですけど。
……お、やる気で?」
『紅蜻蛉』に向かうヨキをほう……と顎に手を当てて見守る。
開幕の虚仮威しの弾幕に惑わされないように――
などと助言のひとつでもしようかと思ったが、余計だろう。
■ヨキ > (蓋盛の言葉に、くっと愉快そうに喉で笑う。
筐体の前に腰を下ろした横顔は、歳相応に若い遊び人のひとりに見える)
「君、そういうパターンを読み取るゲームが好きそうだな……。
ふふ。これが終わったら、他のゲームにも付き合ってくれたまえよ。
教師二人が、ゲームセンターで揃ってデートだ」
(正面のゲーム画面を見据えたまま、言葉を続ける。
ヨキが選んだキャラクタは、他ならぬ『白蛇』だ。
レバーを握る手もボタンに宛がわれた四本指も、ゲーマーの手付きをしている。
眼鏡を一たび押し上げて、最初の弾幕を迎え撃つ――
それはまるっきりプレイデモ画面のようだった。
弾幕を擦り抜け、ドット単位の安全地帯を選び取り、緻密に撃ち落とす。
アイテムを使うタイミングも、迷わず躊躇がない。
雑魚敵を薙ぎ払い、ボスを迎え撃ち、一面を越える頃に唇を小さく舐めた)
■蓋盛 椎月 > 「なんかここで顔を合わせる知り合いは
教師ばっかりなんですよね……不思議不思議。
構いませんよ、一人の暇つぶしは退屈だし」
画面を覗きこむ。悪巧みをするような表情が神妙なものに変わる。
『白蛇』が残す流麗な光の筋がまさに蛇のように画面を踊っていた。
「なるほど、流石だ」
獣の神経伝達速度か、やりこんでいるのか、おそらくはその両方。
だが一面は所詮は『チュートリアル面』だ。
弾幕は派手なだけでパターン性が強く目さえ慣れれば簡単だ。
蓋盛とてヨキほど鮮やかではないがさしたる損失はなく一面は越えられる。
二面に入れば殺意は途端にむき出しとなる。
(見せてもらおうじゃない……!)
蜻蛉のようなシルエットが画面を切り裂くように横切って、二面が開幕する。
■ヨキ > 「この間、ヨキは向こうの店で生徒と対戦が出来てなあ。いい試合だったぞ。
君の場合、類は友を呼ぶ、とかいうやつではないのか?
ヨキは不良教師をやっているつもりはないんだがなあ」
(ステージ後のリザルト画面の間、蓋盛へ顔を向ける。
笑って話していたのは、その数秒の間きり。
紅蜻蛉のカットインが過るのを合図に、唇を引き結ぶ)
「とくと見るがよいぞ、蓋盛」
(一度深く瞬きして、画面に向かう。
弾幕は複数のパターンが交差して、視覚を掻き乱す。
よほどのSTGゲーマーでなければ、瞬殺されてもおかしくない。
常世島ならではの、鬼門と呼ばれても過言ではない難易度。
不文律のように、ヨキは蓋盛と同じ攻略法を取った。
避け方。撃ち方。ボムで一掃するタイミング。
蓋盛に似て突き詰められた戦略は――
件の蓋盛を打ち負かしたボス戦で、その方法を違えた。
避けることがとても叶わないように見える、画面を埋め尽くす極大射程。
その光の中に、およそ人間の動体視力では捉えることの困難な一瞬の隙があった。
蓋盛が操る『白蛇』を呑み込んだ攻撃のうちに、それは生き残った。
擦り抜ける。撃っては擦り抜ける。機を測り、再び撃つ。
焦れるほどの攻防ののちに、ボスは蓋盛が目にしたことのないであろうエフェクトを放つ。
ヨキが声もなく笑う。
一面と同じ、ステージクリアのロゴが画面に躍った)
■蓋盛 椎月 > 「は、あたしだって善良な教師のつもりですよ。
ヨキ先生に負けないほどには」
ヨキに倣うようにして、背中越しに食い入るように画面を見つめる。
「……それ可能なんだ」
息を呑む。
画面を喰らい尽くすが如くの密度の暗黒の輝き。
それを縫うようにして蠢く蛇。
情報としては知っていた正当な攻略手段――
高速起動に長ける『白蛇』で、やれる、とは。
その動きをどうすれば再現できるか――考え始めている自分がいた。
ゲーマーの血が喚び起こされたのだろうか。
黒蝿の群れが散るように巨体が崩れていったのを見た。
(どこまでいける……?)
ひゅう、と口笛を鳴らす。
この鮮やかな手管、完全征服も可能ではないかと錯覚させられてしまう。
三面。まだゲームの半分も終わっていないが、蓋盛にとっては未踏の領域となる。
いよいよもって形振り構わぬ奇想天外が始まる――
■ヨキ > (やっぱり類友だ、と短く笑う。
再びのリザルト画面が挿入されるや、長く息を吐き出す)
「…………、ッは。運がよかったな。
君の目があったお陰だ。いい格好ができた」
(両手を擦り合わせ、握ってはまた開く。眼鏡を外して、目頭を柔く拭う)
「このやり方なあ……『白蛇』は速すぎて向いてない、とは聞いていたがね。
一瞬でも止まり損ねるとやられるから、皆やりたがらないだろう。
だが『白蛇』でないと、逆に攻撃に出るときの移動が間に合わんのだ。
慣れると、『白蛇』以外ではやれなくなるぞ」
(座学の授業と同じ声のトーンで、ゲームの攻略について淀みなく語る。
『賽銭をつぎ込んだ甲斐があった』と笑って――
ステージが移り変わる。
ヨキが喉を鳴らして唾を飲んだのは、当人にとっても正念場ということらしい。
初撃を迎え撃つ。
それは弾を避ける、というレベルではなく、もはや弾幕の隙間に沿って動く、という方が正しかった。
キャラクタが埋まるほどの光の螺旋。
万華鏡のようなエフェクトの中を、両手が慎重に『白蛇』を操る。
二面を遥かに超えた死地。
いつ瞬きをしているのか判らないほど、ヨキの目は真剣に画面を見据えていた。
優美にさえ聴こえるBGMに反して、あまりに苛烈な攻撃。
猛攻をじっとりと潜り抜けた先で、ボスを迎え撃つ。
ヨキが二面を抜けたとおり、『白蛇』はシビアな移動を要求される代わり敵の懐に素早く踏み込んだ。
ごく一瞬の隙を逃せば終わる。張り詰めたように長い時間――)
「……――ッ」
(ヨキが息を呑む。
傍目には、ミスらしいミスはない。それでも『白蛇』は、その一瞬に爆ぜて姿を消す)
「………………。ッッくあーーーーーーッ……!」
(糸が切れて、声を漏らす。
常にない悲鳴を上げて、筐体に突っ伏した)
■蓋盛 椎月 > 「む、言われてみれば……」
真剣な調子でヨキの講釈に頷く。
あのパターンは何度も繰り返していいものではない。
それはヨキの消耗を見ればわかる。
兵は拙速を尊ぶ。少ない攻撃チャンスは有用に活かさねばならない。
そのセオリーを忠実に実行した、ということだ。
弾幕が和音に合わせて波打つように色が遷移する。
二次元シューティングの表現が破綻するギリギリを攻める光の渋滞。
ダンスのステップを踏むような『白蛇』の動きだが、
現実はそう優雅なものでもない。
「――っ」
我知らず拳を握りしめていた。
画面端の残機を示す数値が一つ減る。
「――ヨキ先生、冷静に!」
叱咤する。『紅蜻蛉』は残機制だ、一度のミスでは終わらない――
が、このミスは厳しい。
このボスは部位に受けたダメージによって細かく攻撃パターンを変じる――
プレイヤーのインプットが途切れることは即ちそのリズムまでもが崩れるということだ。
格ゲーに例えるなら――“足を浮かされた”。そんな段階。
■ヨキ > 「くッそ、」
(よほど気を張っていたらしい。素早く顔を引き戻す。
自機が復活する一瞬の合間に、前髪を掻き上げる。
予め指輪だけを外していた指先を小さく弾く。
その瞬間、首のネックレスが、手首のバングルが、筐体の隅に置かれたリングが、一瞬にしてその輪郭を蕩かせた。
銀のアクセサリーが、蝋のように溶けて掻き消える――それらはどうやら、ヨキ自身の異能で作り出したものであったようだ。
いつもの鋼の首輪だけを残し、あとは素肌に素手)
「――蓋盛。これに勝ったら、今晩付き合え」
(画面を見据えたまま、歯を剥いて笑う。
言うが早いか、返答を待たずして『白蛇』が画面上に躍り出る。
その指先に、墜とされる前の集中が戻るのは早かった。
一度切れた緊張の糸は――うまく縒り合わされたらしい。
ある種の文様めいた光の渦が、弧の角度を変えて迫り来る――
寸でのところで再び撃墜されたが、手を放しはしなかった。
片目を小さく強張らせただけで、最後の残機を迎える。
敵が選び出す、無数の攻撃パターン。
そのひとつが――ヨキの手癖と噛み合った。
結んだ唇の奥で、歯を噛み締めて小さく笑う。
薄い頬がぐびりと動く――)
「…………ッた!」
(『来た』。その一撃。
――巨大に蠢く敵が、爆ぜる)
■蓋盛 椎月 > 「……やれやれ、子供みたいなことを言う。
ま、構いませんよ」
手をひらひらと振って、白衣のポケットの煙草に手を伸ばす。
火を灯さないそれを咥える。
百度のうち九十九度死する定めに、ヨキの繰る『白蛇』は抗う。
一度地に叩き伏せられた蛇が、
その勢いを利用するようにして再び宙を舞う。
その不死性と神秘性を証明するかのように――。
(……そこから持ち直すか!)
蓋盛の目が感嘆に見開かれる。
天運の秤もヨキへと傾いた――否、意志が引き寄せた。
蜘蛛を思わせるシルエットが千々に砕かれて、燃え落ちた。
ふう、と溜められた息が漏れる。
「見上げたもんです」
小さく拍手。横切る紅の蜻蛉の影。
■ヨキ > 「子どもだ、ヨキは」
(褒美がなくては、と。
それは巡り合わせだ。ヨキの腕前は元より、運がよかった。
三面まで辿り着いた指先は解されて、いよいよ柔軟さを増していた。
背後から向けられる小さな拍手の音に、ふっと息を零して応える。
画面を翻る紅蜻蛉。
人を超え、獣をも凌駕して、もはや異能を持たずば敵わぬだろうと思われる神域。
一切の驕りも、油断もなく立ち向かい――)
(――『紅蜻蛉』のプレイヤーにとって、もはや馴染み深いゲームオーバーの画面。
四面の序盤で、最後の『白蛇』は成す術もなく敗北した。
コンティニューはせず、蓋盛へ振り返る。
四本指のピースサイン)
「…………。と、いう訳だ。
少しはヨキを見直したか、蓋盛よ」
(へらりと笑う。
それもまた、あの学び舎においては見せることのない――左右非対称の、緩んだ笑みだった)
■蓋盛 椎月 > ゲームオーバーの文字に、緊張が解けたように肩をだらんと落とす。
そう落胆することはない。
そもそも先ほど見せた死の舞踏が奇跡に等しいものだったからだ。
手のひらの中にじっとりと汗をかいていた。
このゲームは後ろで眺めるほうも疲弊する。
「お疲れ様です。
いいもん見せて貰いましたよ」
振り返ったヨキにかける労うような言葉と裏腹に、
蓋盛はどこか呆れたような表情を浮かべていた。
「――ま、随分と印象が更新されたのは確かですね」
筐体の横に背を預けて咥えた煙草に安ライターで火を灯す。
心にさざ波が立つのは、その笑い方が似ていた故かもしれない。
「まったく、楽しそうに遊んじゃって。
子供だな、お互いに」
■ヨキ > (蓋盛からの言葉に、へっへえ、と笑い声を零す)
「ありがとう。
そう言って貰えると、ヨキも頑張った甲斐がある」
(顔を伏せて首を鳴らし、腕をうんと伸ばす。
煙草を吹かす蓋盛を見上げて、目を細める。
その決して良くはない顔色に、少なからず興奮の余韻を孕んでいた)
「ふ。君にとって、ありとある物事が遊びであるように――
ヨキにとっては、何もかもが真剣さ。遊ぶときは、本気で遊ぶ。
我々はどうしたって、同類なのだろうよ」
(空いた人差し指を、くるりと一回し。
その指の付け根に、唐草めいた意匠の指輪が現れて絡みつく。
はじめに着けていたものとは異なるデザイン)
「褒美はちゃんと貰うぞ。君を退屈にはさせないから」
(だから今日は、一日付き合ってくれ、と。
子どものような物言いと笑顔で、蓋盛を下からにんまりと覗き込む)
■蓋盛 椎月 > 「コインの裏表というわけ」
蓋盛もまた、保健室で生徒に見せるような笑顔を作らない。
目の前の彼が笑っているなら、自分がそうする必要などない、というふうに。
白けたような有様。沈鬱にも、高揚にも、表面上は同調しない。
「褒美ねえ。なんだか古風な考え方よね、それって。
まあいい。なら、あたしをせいぜいエスコートして御覧なさいな」
掌を上にして手を差し出してみせた……。
■ヨキ > 「表裏一体。悪くない。
似て非なるものでいて、根は一緒だ」
(その言葉のとおりに、蓋盛の醒めた顔つきにさえ半ば幸福そうにしていた。
差し出された手のひらから腕を辿って、視線が蓋盛の顔を見る)
「何を言う。犬は人から褒美をもらう生き物だ」
(『真剣な遊び』に熱を孕んだ左手が、蓋盛の手を掴む。
顔を緩く傾け、その手首に啄ばむような口付けを落とす。
相手を捉えたままの手を滑らせ、指を絡めて繋いでみせる)
「椎月。君の、仰せのままに」
(淀みない仕草のうちに立ち上がり、さながら恋人のように蓋盛の手を引く)
■蓋盛 椎月 > 「なら、封建的、って読み替えておいて」
口付ける一連の所作に身動ぎすることも、表情を動かすこともなく。
大した善良教師もあったものだと胸中で皮肉る。
校舎の外でまで分別ある大人を演じたいとは思わない。
けれどどういうわけか熱烈な恋人のように振る舞う気にもなれなかった。
「――軽々しく名前を呼ばないように」
声に非難の色はのぞかないし、絡めた指は固いまま。
貼り付けるべきペルソナは見つからず、ただ空疎なものとなる。
最低限の礼儀とばかりに薄らいだ笑みをとってつけ、引かれるまま後に続いた。
退屈しのぎとしては悪くないだろう、そう信じて。
ご案内:「歓楽街ゲームセンター」から蓋盛 椎月さんが去りました。
■ヨキ > 「悪いな。
ヨキの生はずっと、女を踏み付けた上に在ってきた。――封建で結構」
(低めた声でそれだけ言うと、さ、と短く相手を促して、歩き出す。
相手の一歩先をゆく顔が、正面を向きざまに視線を流して唇を歪めた。
昏く、揺らぐことのない――底から沸き上がり、深く染み付いたような笑みのかたち)
「……軽々しい?まさか。とっておきだ」
(恋人にしたって、それはあまりにちぐはぐな二人組だった。
貼り付けたような笑みをした女の手を引く顔は、不遜に満ちている)
ご案内:「歓楽街ゲームセンター」からヨキさんが去りました。
ご案内:「ゲームセンター”御門”」におこんさんが現れました。
■おこん > もういやじゃあー!! 小足が20連続でヒットして強制ダウンからの
ピヨリ確定のゲームなんぞやりとうない!!
なんで小足ささっただけでそのまま死ぬんじゃ!おかしいじゃろー!!
(ウワー!って叫びながら席を立つ。 画面では赤ピンクなロボットが、
しゃがみ小足連打→相手が喰らいモーションの間にダッシュ→
しゃがみ小足連打という悪魔の所業を繰り返していた。
コマンドをミスらなければ死ぬというやつである。現に死んだ。)
温まっても仕方ないからのう。 ほかのゲームするか…
(とぼとぼと店内を歩く。古い大型筐体の間をくぐり抜けてウロウロすると、
クレーンゲームのコーナーが目に入った。)
おお、こんなのあったかのー。なるほどなるほど。
(筐体にはデカデカと「超強力アーム!絶対保持!!」と
張ってある。 嘘だとしても、心を動かされなくもない。)
■おこん > 中はなんじゃろなー。 あのお菓子のなんだかわからん袋は、
あんまり嬉しくないからのー。 おお、あれは…!
(筐体の中を覗き込むと、ぱあっと目を輝かせる。
アクリル板の中に収まっているのは、大きなぬいぐるみだ。
うさぎであったりくまであったり、なんだかよくわからないもの、
緑色のタコのようなものや、蜥蜴のようなものもある。
自分がぎゅっと抱きしめるにはちょうどいいサイズだ。
周囲を見回す。 誰かに見られたら「おこん先生にぴったりですね」とか、
また子供扱いされてしまうに違いない。 注意深く観察してから、
財布に手を伸ばした。 1かい300えんである。)
人の心を掴むのは得意じゃが、ものを掴むのも得意なんじゃぞ。
(若干つらい独り言をつぶやきながら、コインを投入する。
超強力アーム故に、ヌイグルミの柔らかい部分を
掴んでしまうと偉いことになる。 注意せねばならぬのだ。
具体的には30より下を出さねばならぬのだ。)
■おこん > [1d100→13=13]
■おこん > あ、アイアンクローじゃ…フリッツ・フォン・エリックじゃ…
(がしっ。 クレーンはうさちゃんのこめかみに容赦なく突き刺さる。
めりめりという音と共に、うさちゃんの頭がすごい勢いで8の字に歪む。
若干怯えながらも様子を見守ると、そのままうさちゃんはクレーンに持ち上げられる。
だらんと垂れ下がる身体が、まるでアイアンクローで締めあげられて
落ちたみたいになって若干不憫だ。 タオルを投げ込みたい。
そうこうしている間に取り出し口にうさちゃんが落ちる。 慌ててそれを拾い上げ、
抱きしめた。)
うむ、抱き心地も上々なんじゃが……しまうところがない…
(かばんを持ってくるのを忘れていたので、とりあえず尻尾でうさちゃんを
保持し、両手を開けておくことにする。)
■おこん > 次はどうしようかのう、あの狸のぬいぐるみがよいのう。
(少し離れた格闘ゲームの筐体から「何本目に死ぬかなぁぁぁ~?」と
声が聞こえてくる。心情的はそんな感じである。このまま全部駆逐…
もとい、回収してやらんといった勢いだ。)
よし、狸じゃ狸、あやつに決めたぞ!
(もう一回300円。 レバーとボタンに手をかけ、真剣な面持ちで操作する。)
■おこん > [1d100→22=22]
■おこん > (クレーンは己の意志にぴたりと従うように動き、ぬいぐるみの
両脇腹にめり込んだ。 みしみしという音と共にクレーンが獲物を挟む。
ハリウッド女優のダイエットもビックリな感じの素敵なウェストサイズを
手に入れてしまった狸は、力なく取り出し口へと運ばれていく。)
あわわストマッククロ―じゃ…キラー・コワルスキーじゃ…
(きっとあの狸に声があったら「ぽこー!!」みたいな断末魔を上げていただろう。
とはいえ、フィニッシュホールドを決められてはただでは済まない。
そのまま取り出し口にぽん、と無造作に投げ入れられる。
二つ目のぬいぐるみゲットだ。 しかしその表情は暗い。
このクレーンのパワーが強すぎることに気がついたのである。
そう、お腹やこめかみのような、比較的丈夫な場所ならよいが、
もし目標を誤り、首や四肢の付け根、尻尾の付け根にクレーンが…)
■おこん > じゃあ次はー、アイツじゃ!白くてピンクで耳が長いやつじゃ!
(新たな目標を捕捉する。 赤いつぶらな瞳とパステルカラーが特徴的だ。
一回両替機のところに赴いて、1000円を崩す。 お昼ご飯代だ。
いそいそと台の前に戻ってきてから、コインを投入する。
ぐいーんとクレーンが動き、白ピンクなやつに狙いを定めた。)
■おこん > [1d100→39=39]
■おこん > (がしっ。クレーンは正確にぬいぐるみを掴んだ。、否、正確すぎたのだ。
首にガッチリとハマりこんだクレーンは、そのまま圧力を増していく。)
や、止めるんじゃー!! それ以上はいかん!
タオル、タオルはどこじゃ! このままでは…!!
(首を捉えたアームが、力強く首を責め苛む。 ぬいぐるみの首が軋み傾ぐ。
この後に間違いなく起こるであろう惨劇を止めようとするも、
叫びながら目の前のアクリル板を叩く。おこんにはその手段はなかった。)
ウギャアー!!
(耐久力の限界が訪れ、胴体と首が泣き別れになる。
己の迂闊さを責めるかのように、アームから落っこちた首が
コロコロと転がって、取り出し口にすぽんと落ちた。)
ううっ、なんてことじゃ…ワシが至らぬばかりに…すまぬ、すまぬ…
(力なくアクリル板を叩き、うおーんと悔恨に泣き叫ぶ、
側に立つ人に気づくまでに、若干の時間を要した。)
あ、あなたは店員さんッ…!
(そう、エプロンをつけた店員さんである。 もしかしたら胴体とかを
うまく取れるように配置してくれるかもしれない。 希望に満ちた目を向ける。
菩薩めいた優しげな表情で、店員さんはゆっくりと口を開いた。
『当店、台パン禁止ですケド』)
はい、すみませんでした…
(悪いことをしたら素直に謝る。 とりあえずもう300円いれて、
胴体も回収した。後で誰かに直してもらおう。)
■おこん > まあこんなもんかのー。
(あらかた綺麗になった筐体内を見てご満悦の表情。
9本の尻尾は、8つのぬいぐるみ+1つの首ですべて埋まっている。
暴れてやったと言わんばかりの顔で、ゲームセンターを後にするも、
結局家に帰ってから、取り過ぎたぬいぐるみの処遇について、
悩むことになるのであった。)
ご案内:「ゲームセンター”御門”」からおこんさんが去りました。