2016/05/21 のログ
ご案内:「歓楽街」に綿潟からめさんが現れました。
綿潟からめ >  金曜、午後八時、歓楽街。
 身長150cmに届かないくらいの少女が、賑わう歓楽街の道端の、腰を掛けられそうな段差に座っている。
 やせっぽちなせいで尚更小柄に見えるが、中学か高校生だろう。
 血色は悪く、くすんだ茶髪を雑に伸ばし、顔の両脇でリボンでくくっている。
 無愛想な表情でざっくりとハーフパンツとパーカーを着た姿、「ファッションとか基本興味ないんで」と言わんばかりだ。
 その辺の店で買ったソフトドリンク風のアルコールを啜りながら、ぼんやりと週末の人々を眺めている。

綿潟からめ >  人を待っているにしては茫洋とした表情。
 遊びに慣れたものなら、少女が来るとも来ないとも知れないものを待っているのだと察しが付くだろう。
 たとえばナンパ待ち、或いは神待ち、でなきゃもっと刺激的な何か。
 退屈そうな少女、綿潟(めんがた)からめは、ズズ、とストローでアルコールを吸いながらそれを待っている。

ご案内:「歓楽街」に一樺 千夏さんが現れました。
一樺 千夏 > 煙草を咥えながら大股で歩く。
人混みから頭一個分は浮いてるだろうか。
周囲に探るような視線を少し飛ばして、面白い事がないかをチェックするのはもはや癖のようなものだ。
ふと、自分より明らかに小さい女子に目を引かれる。

「顔色悪いわねー ちゃんと食べてるー?」

ちなみに自分はちゃんと食べてない。

綿潟からめ >  最初に目についたのは、人込みから抜ける高い身長を飾る赤髪。
 それから、威圧感のあるサイバネティックな右手。
 つぎに顔立ちと胸の膨らみを同時にチェック。
 そこまで見てとってから、綿潟はくすんだ色の視線を女に合わせた。

「ごはん……もう、三日も満足に食べてないんです――」

 上目づかいで哀れっぽく囁いた声は、それでも雑踏に負けず聞こえるボリュームはあった。
 ハスキーとまではいかないけれど、少し掠れた声質。

「――って言ったら、美味しいものおごってくれますか、おねーさん」

 続けた言葉はあまりトーンが変わらないので分かりづらいが、少し上がった口の端が冗談だと示している。

一樺 千夏 > よく見れば左右で瞳の色が微妙に違うのにも気づけたかもしれない。

「あら、それは大変ねー。
 今は懐具合がそれなりに暖かいから少しくらい奢るのは構わないけど」

ちなみにこちらの声ははっきりとハスキーボイスである。

「違法性がないモノだったら一緒に食べるくらいは構わないわよー?
 声をかけたのはこっちだしね」

煙草の煙を空中に吐き出す。
アルコールを飲んでいるし、何かしらの暇つぶし……ついでにお金が稼げればラッキーと思って行動してるタイプかしらん と当たりをつけた。
順法精神だとか、そういうものを守る意識は限りなく薄い。

「で、腹ペコちゃんは何が食べたいのかしらん?」

綿潟からめ > 「えっ」

 目を丸くする。ぼんやりした顔つきだったのが、はっきり驚きの色になる。
 その表情がゆるゆるとわずかな笑みに緩んでいって、

「……中華料理か、タイカレーがいいな。おねーさんの好きな方でいいよ」

 言って立ち上がると、パシパシとお尻をはたいてほこりを払う。
 40cmほどの身長差を見上げるのは、まるで寓話の1シーンみたいだ。

「合法なお食事も好きだよ――お食事ですむ限りは、女の子拾っても合法、健全、素晴らしい」

一樺 千夏 > リクエストをうければ、あー……と視線を中に迷わせる。
店舗の心当たりを探しているらしい。
数瞬後にからめと視線を合わせる。

「そーねぇ、タイカレーにしとこうかしら。
 ……店には心当たりがあるのかしら?」

自身には心当たりはなかった。

続く言葉にはうんうんと頷く。
「ええ、まったく。
 ……食事以外がしたいなら、そう言っといてねー?
 予算額を増やしたりしなきゃいけないからさー カジノとかから引き落とししなきゃいけないし」

左手をそっと差し出す。握手のつもりか。
「それじゃあ、エスコートはするけど道案内は頼むわよ。
 血色の悪くてドレスを着てないお姫様」

綿潟からめ > 「私が決めていいなら、たまーにいける好きなお店が一つあるよ。
合法スパイスの沢山入ったカレーのお店が、ね」

 差し出された左手に、左手を出そうとして、ちょっと迷って右手を動かし、少し止まってやっぱり左手を出して、握手をする。
 軽く握ったからめの手は軽く小さい。アルコールのせいで少し汗ばみ、爪は深く切りそろえられていた。

「私は綿潟からめ。あなたはジェントルマン? ロボ? 魔法使い? 腕長おねーさん?」

 言いながら女の左側に並んで、今度こそ右手で女の左手を握って、つまり、手を繋いで歩く姿勢で、どこかへ進み出す。

一樺 千夏 > 「チカよ、一樺 千夏。
 まー好きに呼んだらいいわ」

迷ったのを見れば、言葉を続ける。

「あはは、ごめんねー。
 ほらアタシの右手ってコレだからさ。
 握りつぶすのは得意だけど、ソフトタッチって苦手なのよ」

ニギニギと動かしてアピールする。
握手すれば、左手の感触が生身のそれより硬い事に気がつくかもしれない。
素直に進む方向についていく。

「あ、美人局なら気をつけてねー」

綿潟からめ > 「…………」

 気をつけてね、の言葉にしばらく無言で、反応を返さず人込みを泳いでいく。
 信号か何かでちょっと足が止まったときに、千夏の顔を見上げた。

「――千夏さんって、セックスのとき抱くよりも抱かれるのが好きなタイプなの?」

 唐突のような発言は、少しだけ笑った、からかいの入った声色。
 繋いでいる手で、千夏の手の甲をからめの指先がくすぐるようにかりかり弱くひっかいている。

一樺 千夏 > んー……と少し考える。

「相手次第かしらねー?
 個人的な好みの話だったら、ガツガツ行くほうだと思うわよ」

信号が変わったので再び歩を進めはじめた。

「キモチイイ事は大好きだけどねー?」

からめの方を向いて屈託なく笑う。
……どこか野良犬めいた笑みだと思うかもしれない。

「食べて、飲んで、ギャンブルして、体動かして。
 スカッとするような事は全部すきよー」

綿潟からめ > 「へえ……」

 笑顔、もしくはむき出した歯。
 それを向けられて、喜ぶでもなくひるむでもなく、興味深げに口を尖らした。

「その割に、私から美人局をしかけられたなら、罠にハメられたうえで堂々切り抜けてやる、みたいな姿勢とか。
私に求められたなら春を買うのも考えていいかも、って態度とか。
受動的、受け身、抱かれ側、って感じすると思ってたんだけどな、さっきから」

 歩く一歩ごとに合わせて、節をつけるように単語を繋ぐ。

「受動的、誘い受け、ネコ、カウンター、スーパーアーマー、パーミッション……」

 そのあたりで語彙が尽きて、言葉が止まり――もう一個思いついて付け加える。

「私のワガママを受け止めてくれるって意味じゃ、母性的でもある? 胸大きいし」

一樺 千夏 > 「だってさぁ」

牙があれば、きっと見えるほどの笑顔。

「ちょっとくらいのピンチじゃないと、ツマラナイじゃない?
 勝負ってのは先がわからないくらいじゃないとゾクゾクしないし燃えてこないじゃない」

ああ、でも と言葉を続ける。

「横綱相撲してるのかもよ?」

受け切った上で相手を叩き潰す。
しかし、母性と言われると少し苦笑した。

「……母性だけはしっくりこないわ。
 以前にアンタと同い年くらいの子達の面倒を見てた事はあるけど」

綿潟からめ > 「やれやれ、アドレナリン中毒ですね、おねーさん」

 そんな中毒あるのか知らないけれど。

「以前ってどれくらい前のことなの? この島に来てから? それとも、千夏さんみたいな長い耳の人が回りにいっぱいいたくらいの頃?」

 と、問いかけてから足を止める。
 タイ料理店、サワディー。ベタな名前の店だった。
 外観にとりわけて胡散臭い様子はなく、お酒を出す店であり、エスニック料理店であるゆえのエキゾチックさがあるくらい。

「着いたよ。私が言っても信用ないかもだけど、美人局じゃないから」

 そういって、手を引き店内に入っていこうとする。

一樺 千夏 > 「せめてスリルジャンキーって言って欲しいわ」

ランクが下がっていませんか。

「この島に来る前かしらねー。
 アタシの故郷なら、エルフだけじゃなくてトロルにオークもいるわよ。
 だいたいどこか機械化してるけど……っと、いいお店じゃない」

手を引かれながらも、周囲に視線を飛ばして退路を考える。
もはやある種の病気である。

「あら、それじゃあアタシに本気になっちゃうの?」

冗談めかしてこちらからも質問を。

綿潟からめ >  サワディーは、歓楽街の一番煌びやかな場所からは1ブロックほど離れた場所にある。
 入口が面している道はそれほど細くもなく、車二台がなんとかすれ違えるくらい。
 中心部に比べて多少暗く、人が少ないことが荒事でプラスかマイナスかは考える人によるだろう。

「褒められてきっとお店も喜んでるわ。味も、千夏さんのスリルジャンキーな舌に合うといいけど。
すいませーん、ふたりなんですが」

 特に顔なじみという雰囲気でもなく店員に声をかけ、席に案内される。
 千夏の問いかけに、指を口に持って行って返答に迷うような表情になる。
 カリ、と小さく爪を噛んでから、唇を開いて周囲に聞こえないよう囁いた。

「……寝るかどうかは、まだ保留。
とりあえずごはんとおしゃべりに全力ってことで。
千夏さんが私にムラっときたなら話は早いけど」

一樺 千夏 > 「まぁ、そーね。
 お腹が空いてちゃ、何もできないわー」

対してこちらはいつもと変わらぬ堂々とした声量である。
席にどかっと腰掛けて、背もたれに思いっきり体を預ける。
ソファタイプなら大丈夫だが、普通の椅子なら少し嫌な音を立てるかもしれない。
見た目以上に重いのだ、この機械の体は。

「おススメあるなら、素直にそれにしておくわ。
 最初から外れたら嫌だもの」
でもボリュームあるものにしてね なんて注文はつけている。

「食事が来るまで、何を話そうかしらねー。
 カラメは自分の事は秘密にしておきたいタイプ……というより、聞かれなかったからで自分から話さないタイプっぽいし」

うーん と 考えて。

「ああ、そうだ。
 この辺で車を扱ってるお店しらない?」

綿潟からめ > 「…………」

 椅子がミシッと音を立て、からめは不安そうな顔で眺めたが、壊れはしないようなので気にしないことにした。

「食事の注文も横綱相撲だね。悪戯心で滅茶苦茶辛いのとか食べさせたくなる。やらないけど」

 肩をすくめて、千夏にはグリーンイエローレッドのカレーを食べ比べられるセット、自分にはグリーンカレーを選び、あとは肉を焼いたのや野菜類を適当にチョイスして注文した。

「さて」

 一息。

「まあ……私は誘い受けどころかマグロ気味だから。自分から話すのも苦手かも。
私が抱くモードとか、私から話すモードになっちゃえばできるけど」

 細い指を空中で動かし、スイッチをひねるような真似。
 と、質問されて眉を寄せる。

「……車? …………。テレビとかのCMくらいなら見た記憶もぼんやりあるけど。
うーん、悪いけど、自分で運転もしないし、紹介できるほど詳しくないよ。
千夏さん、車好きなの?」

一樺 千夏 > 「自分の事を話したくやつからは無理に聞かないのが、アタシの故郷でのルールだったのよ」

脛に傷持ってるやつが多かったしねーと笑って。

「あ、あとビールもお願いねー」

ちゃっかり注文を追加しておいて。

「だったら、無理やりにでも反応を引き出したくなっちゃうわ。
 と、そうその車。
 あると仕事の幅が広がるのよ、色々と運べるし。
 お金ないときはそこで眠れるし。
 暇つぶしにドライブもできちゃうわよ?

 車の中でシてもいいしね」

綿潟からめ > 「キナ臭い社会だと便利なルールっぽいけど、安全な世の中だと仲良くなりづらそう。
そもそも『表層的以上に仲良くなる』って選択肢がほぼ出てこないのがキナ臭い社会だから、問題ないのかもだけど」

 からめは自分の分にはジャスミンティーを頼んでいる。

「ふうん、お仕事で使うんだ」

 今の千夏の話題から、いくらでも話を広げられそうで、気を使ってくれたのかな、と思う。
 どの方向に突っ込もうかな、と唇を湿しながら考えて、

「――――」

 もう一度、今度は露骨にゆっくりと、唇を舐めてみせる。
 覗く舌は顔色に反して血の気のいいピンク色で、エキゾチックな間接照明を反射してらてらと光る。

「――前から不思議だったんだけど、カーセックスの後って、シートの汚れとか匂い、どうするの?」

一樺 千夏 > 「今日の同僚は明日の敵って場合もあるからねー。
 こっちの住人になっちゃだめよー。間抜けと迷うやつから死ぬからねー。
 影に入って遊ぶくらいなら火傷ですむかもしれないけど」

カラカラと笑っているその影の世界の住人。
舐める動作をみれば 口笛をヒュウと鳴らしておどけてみせた。

「あらセクシーね……ちょっとゾクッとしたわよ?」

冗談とも本気ともつかない言葉を発した後の言葉は。

「ファブリーズと天日干しと芳香剤。
 アタシは煙草吸うから、だいたいはそれで上書き。
 汚れは……まぁ、多少なら諦める」

実に夢のない回答である。

綿潟からめ >  口笛の喝采とセクシーという評価にも、むしろからめは渋い顔になった。

「本当にドキッとしたら、そんなこと言えないでしょうに……誘惑のきかなそうな人だね」

 悔しさと呆れ、それでいて好意も混じった言葉。
 不意に、テーブルの上にグッと身を乗り出す。
 座高で比べても見上げざるを得ない千夏の目を見つめて、はっきり聞く。

「ねえ、千夏さんはなんで私に声かけたの?
しかも無条件でご飯奢るなんて。
あなたの将来の車か、左腕か右腕か、服に染みをつけさせるため?
それとも、退屈な週末を楽しませそうなアドレナリンの予感がした?」

一樺 千夏 > 「ある程度の自制はするわよ。
 アタシも脛に傷ある身だし……しょっちゅう熱くなる性格だもの。
 それに大変な時に軽口を叩いてニヤリと笑うくらいが、人生で丁度いいのよ?」

OTONAだもの なんて笑っていたが、目を見つめられると真面目に見つめ返す。

「なーんか放っておけないオーラ出てたのよねー。
 染みつけるだけなら、それこそ最初から買えば済むじゃない?
 退屈な週末をアドレナリンだけで乗り切るなら地下闘技場か、そこらの違法部活だかなんだかを叩き潰すし」

たぶん、文字通りの意味で叩き潰す。
暴力という名前の絶対的な力でもって、嵐のように。

「細かい理由は、もっとお喋りするかベッドの上か夜明けのコーヒーが教えてくれるわよ」

綿潟からめ >  千夏の真面目な返答に、くっと息をのんだ。
 のんだ息はなかなか言葉として吐き出されず、乗り出していた体をゆっくり引くと、両手をふわっと顔の前に掲げた。
 その両手に視線を注ぐ。

「ほっとけないおーら」

 手から立ち上るオーラが見える、と本気で思っていたわけではないけれど、見ようとするような仕草をして、呟いた。
 もちろん、霊視だか幻視だかのできないからめにはオーラなんか見えはしない。
 そもそも千夏が言ってるのは具体的な、気功的な『オーラ』でないことはわかっていた。

「……私は、暇だったから」

 手のひらに向けていた目を千夏に戻して、自分の話をする。

「ナンパでも、ゲリラライブでも、その他のなんかでも、暇を埋めてくれるものに出会わないかなって。
そこに現れたあなたは……なんだろうね、あなた。ライブでもないし、ナンパともちょっと違いそうだし」

 と、店員が飲み物を運んでくる。続いて料理も。

「少なくとも胃袋は埋めてくれそう」

一樺 千夏 > 「通りすがりの大人のお姉さんよ」

茶化して煙草を取り出して、咥えた。
咥えただけ。

「空いてるのは、胃袋と時間だけじゃないと思うわよー」

にししし という感じがぴったりとくる笑い。

「まぁ、連絡先は教えておくから 遊びたくなったら連絡よこしなさいな。
 くっだらないお喋りから、本格的な火遊びまでおねーさんが教えてあげちゃうわよん?」

ポケットから無造作に携帯を取り出す。
常世では見ない機種だし、何より通常のものよりやや大型。
何やら操作すると赤外線モードになったようだ。

綿潟からめ > 「ひたすら怪しい肩書き。……吸いたいなら吸ってもいいよ、煙草」

 千夏が携帯を操作するのを見て、からめも携帯を取り出す。
 あまり少女らしくはない、シックなそれを操作しはじめて、と、思いついたように手が止まる。

「……メモかなにかに番号とアドレス書いてくれないかな」

 そろそろと携帯から顔を上げて、申し訳なさの滲む顔でいう。

「私の携帯、結構、プライベートなあれこれが入ってて。
よく知らない携帯と、赤外線かなんかで通信するの、ちょっと怖い。ごめん。
特に千夏さんの出身は……機械が発達したところみたいだから」

一樺 千夏 > 「煙草は食後にしておくわ。今は口が寂しかっただけだし」

だから煙草は咥えたまま。

「文化レベル的には、そんなに変わらないんだけどね。
 多分、ここと比べても50年も変わらないかも。
 技術的にもすごい近いみたいだしね」

言いながらも、左手でナプキンに番号とアドレスを書き込んで渡す。
なんというか大雑把な字である。

「あ、字が汚くてごめんねー。アタシ、学はないからさ」

綿潟からめ > 「どーも」

 ナプキンを受け取って、携帯を操作して自分のアドレス帳に千夏の情報を登録し、そしてすぐにそのアドレスへ、自分の名前の綴りとアドレスと電話番号を記載したメールを送った。
 この場でメールまで送っていいかどうか迷いがなかったと言えば嘘になるが、その躊躇いはアドレス帳をいじっている間に済ませた。
 送り終わって、ジャスミンティーのグラスを手に取る。まだ口には運ばず、千夏を眺めている。

「千夏さんに学がないとしたら、私は節操がないかも。
今更だけど、私レズだよ。職業レズじゃなくて。むしろ男と寝る方が仕事でやってる感じ」

 秘密の告白という感じではなく、ローな平常テンションで口にする。

一樺 千夏 > 反応はすぐに来たようで、こちらもアドレス帳に登録しているようだ。

「これでよし、と。
 うん、別にいいんじゃない? 同性が好きでもなんでも。
 殺さないとデキないなんて性癖だったら大変だけど」

あっさりと言い切る。
だからどうした と。

「アタシだって、節操はあんまりないわよ?
 有り金全部賭けて負けるとかしょっちゅうだし、イライラしたら暴れるし」

運ばれてきたビールを一息に呷った。

「好いた惚れたはどうしようもないし、生きるのに楽な手段あるならそれでいいじゃない」

綿潟からめ > 「そう。千夏さんが構わないならそれで。今度メールするかも。
私も千夏さんの節操のなさは気にならない……いや……どうだろうな……まあ私に被害が及ばない範囲ならギャンブルも暴力沙汰もすればいいよ」

 ちょっと笑ってからお茶を舌を浸す程度に飲んで、カレー用のスプーンを手に取ると、

「それじゃ、ご馳走になりまーす」

 ご飯にさらさらしたルーをまぶして食べる。

「……うん、うんうん」

 何度も頷き、頷きだけを残し二口目、三口目と頬張る。

「んんん~~、うんうんうん」

一樺 千夏 > 「もう、そういう生き方になっちゃってるのよねー」

あっはっはー と笑いながらこちらもスプーンを手に取った。
緑、黄、赤 さてどれから食べるべきかと少しだけ考えて。
結局全部食べるのだからいいか と思い至った。

そして一口。

「……言うだけの事はあるわね。
 この味、ちょっとクセになるかも」

綿潟からめ > 「「上質なココナツミルクのコクがありつつ十二分なスパイスの刺激が脳を覚醒させなんちゃらかんちゃら、柔らかく煮込まれた具が舌の上で崩れ、素材の味と吸い込んだカレーの味わいを一度に広げてうんたらかんたら……てのは半分レストランガイドの受け売り。
美味しかったらよかった、おごってもらって私だけ満足じゃあ、ちょっぴり気が咎めるから」

 そんなことを言うと、カレーも他のサイドメニューも食べる。
 からめの食べ方は、とりわけ下品な部分はないが上品でもなく、優美な食べ方、色っぽい食べ方とはあまり言えない。
 ただおいしそうに食べる。表情は仏頂面気味にもかかわらず、食を楽しんでいるのが妙に伝わってくる。
 ふう、と一息ついてお茶で口をさっぱりさせたところで、ふと千夏の顔を見る。

「……私、やっぱり千夏さんって母性的だと思う」

 それだけ言って食べるのに戻る。

一樺 千夏 > 「ちょっと それってオバサンくさいってこと!?」

流石に、それは色々とショックを受ける自称28歳。
なお、チカの食べ方はかっこむという表現が割りとしっくりくる。
男子高校生的な食べ方である。

綿潟からめ > 「そういう意味じゃないって」

 苦笑するも、

「でも自覚がないならいいよ」

 とほくそ笑むように言って、なんでそう思ったか今は説明しようとしない。
 最後のひとさじを食べ、汗のにじんだ体で満足げに息を吐く。
 と、気づいたように目を開く。

「……食べながら今夜のことを決める、って言ったけど、今日はやめたほうがいい気がする。
これだけ刺激的なものを食べちゃさ、歯を磨いたとしたって、舐めた場所がヒリヒリしちゃう」

一樺 千夏 > 「あら、残念ね。
 ベッドの上で無理やりにでも聞いてやろうと思ったのに」

くすりと笑う。
そして、右手を赤熱させて煙草に火を点けた。
ライターを探すのが面倒だったらしい。
美味そうに煙を吸って吐く。

「それじゃあ、アタシは行くわ。細かいのなかったからお釣りは小遣いにでもしておきなさいな」
無頓着にお札をテーブルに置いた。
結構な額がおつりになる。

「連絡、楽しみに待ってるわよ」
ウィンクと投げキッスを残して席を立つ。

ご案内:「歓楽街」から一樺 千夏さんが去りました。
綿潟からめ > 「胃袋じゃない場所を満たしてもらうのは、次の機会で」

 投げられたキスを唇でぱくりと捕まえるような仕草をして、

「ご馳走さま。またね」

 指先だけで手を振って、去っていく大柄な女性を見送った。
 空になった食器と煙草のにおいと若干多すぎるお金と共に残されて、椅子に深く腰掛ける。

「……気遣いの仕方が、大人びてるってだけじゃなくやたら優しいんだなあ」

 愚痴をこぼすような口調で、愚痴ではない独り言を言う。
 それから店員を呼んでデザートを追加し、ペロリと平らげてから店を後にした。

綿潟からめ >  ――その日の深夜、千夏の携帯電話にからめからメールが届く。

《からめです。今日はありがとう。美味しく食べられた。次に会うまで元気でね。》

 そういう短い文面に、髪を解いた状態でのあんまりやる気なさそうなVサイン写真が添付されていた。

ご案内:「歓楽街」から綿潟からめさんが去りました。