2016/05/28 のログ
ご案内:「歓楽街」に夕霧さんが現れました。
夕霧 > 【深夜近く 歓楽街大通り】

―――寝れない夜もある。
ふむ、と独りごちて。

何時もの服装でふらりとただ歓楽街を歩く。
ただ歩くと言うのも中々楽しいもので。
目的も無く、宛も無い。
足が向くままに歓楽街を進む。

随分と慣れたもの。
その歩みに迷いは無い。
そもそも目的地も無いので迷いが無いのは当然ではあるが。
大通りを眺めながらゆっくり。
あちらこちら爛れたような空気はむしろ心地が良いものだ。

夕霧 > 喧噪もあれば、まだまだ開いている店もある。
それらを一望して、コツコツと歩いていく。

目的は無くても何らか、暇でも潰せればいいなと。
もしくは眠気が来てもいいのだ。
とにかく今はそういった―――変化が起きるまでの時間を潰していたい。


ふと目につくは一度入った事のある和食の店。
適当に何処かに入るのもまたそれはそれで乙なものなのだろう。

―――とはいえそうするのはもう少し後。
   本当に何も無ければ軽く何か食べて帰ろう―――

などと一人決めれば。
では何を食べようか、取りとめなく考えながら。

靴が軽快に一定のリズムを鳴らしてゆく。

夕霧 > ふと立ち止まる。

気配を感じた訳でも無い。
ただの気紛れ。

気が向いたから立ち止まり。
そして近くの壁へとよっかかりふう、と一つ息を吐く。
脚を交差させ、コートのポケットへ手を突っ込めば。
そこからまた、ぼんやりと街並みと喧噪を眺める。

勿論、こちらを見る者はいるけれど。
取り立てて関わろう、という者はそうそうおるまい。

「飲み物でも、買うておけばよかったですなぁ」

独特のイントネーションでそう呟く。
不幸な事に近くに自販機は見当たらない。
コンビニでも行けばいいがそのコンビニもこの辺りには確か無かったように思う。
少しだけ空を仰ぎ再度息を吐く。
ちょっと失敗したかな、とそんな気持ちで。

ご案内:「歓楽街」にアマデオさんが現れました。
アマデオ > ここに来るのも何ヶ月ぶりであろうかと自問する。
少なくとも半年ぶりなのは間違いあるまい。
島外からの依頼で離れていたが、ようやく戻ってくることができた。

相変わらずこの島は変わっていないと、考えつつ歓楽街を歩く。
何気なしに視線をやると島を離れる前だったか、路地裏で出会った女性を見つけた。

こんなところで出会うとは運命かね?と心の内で呟きつつ彼女の前を通り過ぎる。

──サイフを落とした事には気付かずに。

夕霧 > ふと、少しばかり視線を感じて何気なしに伺えば。
それは見覚えのある男性で。

足しげく、と言う訳でも無いけれど。
この辺りではついぞ見かけた事が無かった。

随分前に―――。
少し考えてくすり、と笑う。
とはいえ向こうが覚えているとも限らないか、と。
一人結論付けて。

目の前を通り過ぎて行くのをそのまま眺めているつもりだった。

ぽとりと、目の前にそれが落ちるまでは。
それが落ちて。
それを見た途端、そのかっちりとした服装とのギャップに。

「―――ふふ」

思わず元々零していた微笑が更に深くなってしまって。

凭れ掛かっていた壁から背を離し。
ゆっくりとそれを拾い上げれば。

「落としましたよ―――これ」

そう言えば、アマデオへと拾い上げたそれ、つまるところ彼の落とした財布を手に声をかけた。

アマデオ > 声を掛けられ振り返ってみれば件の彼女が自分の財布を手にしていた。
どうもこうも財布を落としてしまっていたらしい。

「おっと──これは失敬、ありがとうお嬢さん。」

サングラスを取り、しっかりと相手の目を見て、ニッコリと笑顔で礼を言うアマデオ。
本日はちょっと抜けているサラリーマン風を演じている。

「いや、お恥ずかしい……まさかこの歳にもなって財布を落としてしまうとは。」

ぽりぽりと頭を掻いて気恥ずかしそうに言った。
路地裏のそれとは全く違う人間であるとするかのように。

夕霧 > 「いえいえ」

真っ直ぐとした視線に視線で返せば。
その笑顔に同じく笑顔で答える。
とはいえ元々笑みを浮かべていたので余り変わらないが。
路地裏の、あの時とは随分と様子、というか趣が違う。
まあ恐らくそう言う事なのだろうし。
そこを特に詮索する必要も無い。

『久しぶり』
などと言う間柄でも無いのだから。
だから初めて、なのだ。
彼と彼女は。

「この辺も中々物騒ですし、運が悪いとすぐ無くなってまいますよ」

そう一言。
はい、と渡そうとして、ふと。
ちょっとした悪戯などを思いつけば。
渡しかけた所を中断し、ひょいと、手で財布を遊ばせる。
とはいえ中を覗くようなことはしない。
そしてわざとらしく。
それはそれは大根役者も吃驚なぐらいのわざとらしさで。

「―――そういえばうち、少し小腹が空いてたり、喉が渇いてたりしてましてなぁ」

笑みにちょっとばかり悪戯心が混じった表情で。
滲むその空気を隠そうとしないまま。
それはどうでるかな、といった顔で。

アマデオ > 「あははは! いやあ、これは困ったなあ。」

懐が寒くなりそうだ、と彼女の様子を見て朗らかに笑うアマデオ。
恐らく彼女も自分の事に気付いているのだろう、その程度見抜けないとは到底思えなかった。
あまりこう言った勘の良い人間と関わっては後々の障害となるかもしれない。
そう思いつつも不思議とアマデオは嫌ではなかった。

「歓楽街でしたか。実は初めてここに来ましてね。もし良ければご馳走がてらに案内して頂けませんか?」

丁度、私も空腹でして──と付け加えて。

夕霧 > ふふ、とまた笑う。

交渉成立だ、と言うようなしてやったりという笑顔で。
そのまま手を伸ばせば彼へと素直に財布を返して。

暫くの間の後、少しばかり口を尖らせて。

「困ったな、ってうちそんなに食べる様に見えます?」

心外だ、と言わんばかりにこれまた少しばかりわざとらしく不機嫌になってみたりして。
それもすぐに戻れば。

「えぇ。とはいえもう夜中ですし、とりあえずうちのお奨めのお店、行きましょ?」

そう言ってゆっくりと先導するように歩き出す。
先ほど行こうか、そう考えていたあの和食の店へ。

その途中で。
あ、と思い出したように。

「量より質って言葉もありますなぁ」

冗談です、とまた悪戯っぽく笑いながら付け足して。

寝れない夜はまだ終わりそうにないが。
少しばかり―――楽しい時間となりそうだ。

アマデオ > 「ははっ、大丈夫ですよこの程度で一文無しにはなりませんから。」

ウインクして、彼女へ言う。
さてどんな店に案内されるだろうか、まあ今宵くらいはこうして飯を食っても罰は当たりまい。
アマデオは柄にも無くそんな事を考えながら夕霧と共に人混みへと消えていった。

ご案内:「歓楽街」から夕霧さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」からアマデオさんが去りました。