2016/06/13 のログ
ご案内:「歓楽街」に霧依さんが現れました。
ご案内:「歓楽街」に天霧和久さんが現れました。
■天霧和久 > ……ふらり、
………ふらり、ふら、ふら……
ふらふら、ふらり……
■天霧和久 > それなりに自己主張のある陽射しの下、黒いロングコートを纏った男が、おぼつかない足取りでふらふらしている。
■霧依 > 歓楽街。好奇心は猫をも殺すとは言うものの、実際に命の危険を感じることは稀だ。
この歓楽街も、どうやら表通りはそういった町並みが続いているようであった。
裏通りに行けば、当然その限りではないことは間違い無いのだろうけれど。
「……思ったよりも綺麗というか、しっかりしている、かな。」
ショートカットの女が足取りも軽やかに、歓楽街を歩く。
好奇心で殺される猫を自認する彼女は、危険だと言われても足を踏み込みたがる節がある。
歓楽街になかなか行けないというクラスメイトの話を聞いて、1時間後にはたどり着いていた歓楽街。
変わったことといえば………ロングコートの男がいるくらい?
■天霧和久 > 「……ははは」
顔だけは余裕のある柔和な笑みを浮かべながら、ふらふら、歩く。
なぜ歩くかといえば
「……ここ、何処なんでしょう……」
迷子だからである。
■霧依 > 「そちらは行かない方がいい。」
特に人一倍親切心を持ち合わせている女ではない。
けれども、しっとりとした声で通りすがりに囁いた。
「そちらの路地で、言い争う声が聞こえたからね。
目的地があるとしても、急がば回れをオススメしておこうか。
関係者なら、僕の言葉を忘れてくれればいいよ。」
視線を送りながら、さらりと笑う。
鋭くも、湿った気配も無い微笑みを向けて、気をつけて、と声をかける。
危機察知能力は高いらしい。
■天霧和久 > うっかり地図も、あまつさえ財布も携帯も荷物に纏めて、身につけずに来てしまうとはどういう了見なのか。我がことながら呆れる。
自分にとって地図がないのは、もっと言えば携帯がないのは死活問題である。
何故なら方向音痴だからだ。
目的地にして新たな拠点である宗教施設軍を目指してるはずなのに、清貧とかそういうのを売っちゃったような派手な地域に足を運んでしまったのは故意ではなくそういうわけでなのである。
困窮は顔には出ぬまま彷徨っていると、しっとりとしながら強かな声に呼ばれた。
「おや、そうでしたか。親切にありがとうございます。」
声の方へ向くと背の高い灰色の髪の女性が微笑んでいた。
なんの気配も感じられないが、どうやら彼女の識覚は喧騒を察知したらしい。
昼下がり、空腹でふらつく身としてはありがたい忠告だ。
■天霧和久 > 「いえ、私はここに用事はなくてですね……」
自然と関係者である可能性を視野に含められるあたり、自分が怪しいなりをしてるのか、それともここは"そういうところ"なのか。
ともあれ、今はあまり長居したくない。
この女性の親切心に、もう一つ甘えることにした。
「教会とかが密集してる地域がこの島にはあるそうなのですが、何処にあるか存じ上げませんか?」
■霧依 > 「何、この暑い中コートで歩かれる御仁だ。
きっと大切な目的があるのだろうけれど、目的が大切であればあるほど、この足場の悪い地面だと都合がよろしくないからね。」
蹴躓く、と石を軽く蹴って言いながら、ふむ、と顎を撫でる。
「………僕もこの近くには初めて来たけれど、宗教の施設か。
この街には無いかもしれないね。
僕が知り得る限りでは、もっと南だったかもしれない。
……ただ、結構離れているから、徒歩で行くとなると大変かもしれないよ。」
相手の言葉には少し考えながら、誤りにならないように言葉を選んで、慎重に伝えていく。
■天霧和久 > 「ここより南ですか……ありがとうございます。方角さえ分かれば、歩いて行くことだってできます。」
そう言って彼は思いっきり北を見上げた。
■霧依 > 「東西南北を、何も見ずに決めてしまうのはなかなか上級者向けだとは思うよ。」
そっと、方位磁石を取り出して確認。
生徒という立場にいても、やはり根は旅人である。
放浪の友とも呼べる方位磁石を、苦笑とともに渡そうと。
■天霧和久 > 「あぁ、申し訳ありません。ありがとうございます。
これはこれは、お恥ずかしい。私が向いていたのは北でしたか。」
渡された方位磁石を受け取り方角を確認する。
「親切な方、大変お世話になりました。私はもう大丈夫です。」
方位磁石を女性へと渡し返す。
「それでは、ありがとうございました。また何処かでお会いできたら、その時は御礼をさせて頂きま——」
ふっ、と。
足から地の感触が無くなって、代わりと言っては過剰なほど、半身がどさりとアスファルトに接触した。
■霧依 > 「……お、っと。」
倒れた相手に手を伸ばし、コートを掴んで何とか引き留める。
長身の彼女は力が無いわけではない。
倒れこむ相手をちょっと抱き上げるようにして、はて、と少し困り顔。
「……参ったね、僕は特に人助けをするつもりはなかったんだけど。」
とは言え、このまま放置というわけにも行かない。
仕方ない、とお姫様抱っこのような姿勢になれば、そのまま抱いて歩き始めて。
日陰を探そう、とばかりに路地裏へ足を踏み入れる。
■天霧和久 > 「いやはや、本当に申し訳ない。」
女性に抱き上げられながら、相変わらずの笑顔で言う。
「ご心配をおかけしてすみません。ちょっと貧血で倒れただけですので、降ろしていただいて大丈夫です。」
空腹と陽射しが堪えているがこれ以上世話になるのはあまりに申し訳ない。自分の事はもう放っておくよう促す。
■霧依 > 「情けは人の為ならず。
これで放っておいてまた迷うなり倒れるなりされる方が、僕にとっては辛いもの。
人が道を歩く時には指針は何も無いから。
貴方のためではなくて、僕が満足するためにやっているのさ。
ただ、迷惑だというのなら……それはもちろん、尊重するよ。」
しっとりとした、それでいて穏やかな声。
けれども、芯ははっきりとしていて。
■天霧和久 > 「……成る程。それではもう少しだけ甘えさせていただいてよろしいでしょうか。」
改めて、この女性は強かだと思う。
人が歩む時に指針はないなどと言うが、彼女にはしっかりそれがあるように見える。
「持ち物や服装から類推するに、貴方は旅の人ではありませんか?もしも目的地も行くアテもないのであれば、一緒に目的地まで来ていただけませんか?是非とも御礼をさせて欲しい。確か島内には公共の交通機関もあったはずですから、それを利用したいです。
勿論無理にとは言いません、これ以上ご迷惑をおかけするのは避けたいです。」
■霧依 > 「……僕はこの島に住んでいる生徒だから、厳密には旅人ではないけれど。
でも、………自分の好奇心の赴くままに生きているのだから、旅人のような生き方はしているんじゃあないかな。
世の中皆、大小あれど旅人だと思うよ。
僕はそれが、少し人より露骨かな。」
なーんて言いながら、ふう、と汗を一つ落として。
「もう少しで着くよ。 そうしたら、……………そうだな、僕の旅に付き合って貰おうか。
それがお礼で構わない。」
何処に着くのかは口にしないままそんなことを呟いて………。
古びたシャッターを開けば、中型の黒いバイクがこっそりと保管されている。
■天霧和久 > 「アテが外れましたか。しかし承諾してくださるようでなによりです。
人は皆旅人……そういうものかもしれませんね。」
目的のある所を人は場所といい。
それ以外を道と呼ぶのならば。
人は死ぬまで旅人なのかもしれない。
「……と、おや。バイクですか。まさかコレに……?」
■霧依 > 「そういうものさ。 旅人なのに、一人だと困ってしまう。
そういう生き物だから、仕方ないね。」
しっとりとした、それでいて穏やかな声をかけながら……そっと彼の身体をおろし、
バイクに跨ってヘルメットを被る。
「僕の後ろに乗って、愛しているかのように強く抱きしめていてくれるかい。
そうでないと、落ちてしまうよ。」
なんて、くすくすと笑う。
■天霧和久 > 「流れに抗おうとするのが人の習性なのでしょうね。」
降ろされたバイクに跨ると、穏やかな声とはうらはらな大胆な比喩で、自分に捕まるよう促された。
「ははは、では私は普通に抱きしめさせて頂かねばなりませんね。」
シャッターの入り口に僅かに差し込む光が、首から下げた十字架を照らす。
■霧依 > 「流れに乗るのも人の常、逆らうのもまた人の常。
習性と呼ぶには人は多すぎるからね。」
十字架を軽く目にすれば、さて、どの建物かな、などと目星を頭の中でつけつつ。
「そんな状況で信じられるのは、肌を触れ合わせた相手だけさ。
……胸は触ったらダメだよ、僕は弱いから。」
なんて、ちょっと悪戯な声で囁きかけながら、ブォン、と控えめに音を鳴らして動き始め。
「………では南に行こう。 喉が乾いて死んでしまうとか、そういうことはあるかな。」
運転をしながら声をかけてくれる女。そんなに速度を出すわけではない。
■天霧和久 > 「多かれ少なかれ人は流れに"乗らざるをえない"ものだとは思います。流れに身の全てを任せるには、人は自分の足が妨げになってしまいますが。貴女は背泳ぎが上手なのでしょうね。」
エンジンが控えめに震える音を聞いた。
「危険を敏感に嗅ぎ取る嗅覚を持ちながら、どうしてそのように危険を惹きつけるような事を言うのやら……。
私がとうとう熱で頭をやられて喉よりも何かに渇きを覚えてしまったらどうするのですか?」
目には目を。歯には歯を。悪戯な冗句には冗句で返す。
同じもので応えて返すことで人と人は善かれ悪しかれ調う。
■霧依 > 「よく分かったね、僕は泳ぎはそれなりに。
流れに乗っていることを忘れてしまうことが無ければ、上手くなくてもどうにでもなるものさ。」
エンジンを吹かせば、ようやく速度が上がって大きな道に出る。
安全運転ではあれども、轟々と風が鳴り、涼しさが全身を包み込む。
「好奇心旺盛だからね。どうしても手を突っ込みたがる。
火傷をしてから後悔して、治った頃にまた突っ込む。
救いようがないことは自覚しているんだけどね。
それよりも、渇きを覚えたらどうなってしまうのだろうね?」
相手の言葉を受けて、くっく、と僅かに肩を揺らして。
■天霧和久 > 「それもまた流れなのでしょう。
……風が気持ちいいです。やはりバイクはいい。私も持つものを持っていればさっさと自分のバイクにまたがっていたのですが。まぁ、などと言っても仕方ないのが、また流れというものなのでしょうが。」
バイクは道路を流れていく。流体が肌を撫でていく。
「渇きを覚えたら、ですか。それは、勿論、流れを塞き止めて、潤いを閉じ込めて独り占めするんじゃあ、ないですかね?」
■霧依 > 「それは困ったね。 僕は流れるものだから。
川の流れは塞き止められても、雲の流れは止められない。
独り占めをしたらダメだよ。 欲張りは良くない。」
バイクが風を切り裂きながら、十字架の見える場所までやってくる。
あれかな、と独り言を零して。
「僕は、独り占めされるような大層なものでもないさ。
行く先が偶然一緒だっただけの、通りすがりの村人その1。」
なんて、肩を竦めて。
■天霧和久 > 「ははは、天にいるのでは、ますます私には手の出しようが無いですね。私には。でもそうじゃ無い人の匂いもよく気取るでしょう。くれぐれもそうした向かい風には気をつけるべきです。貴女がそういうものを嫌うのであれば。」
ああ、ここです。
零した言葉を拾って返す。
目的地の教会についたようだ。
「ともあれ、そんな通りすがる風に拾っていただけて幸いでした。本当に助かりました。」
■霧依 > 「僕はどうだろうね。
向かい風の匂いも、危険の匂いも。 こうした落ち着いた街の匂いも。
全て好きだと、今は言えるんだけどな。」
たどり着けばそのままバイクを止めて、相手を降ろし。
「偶然同じ方向に用があってよかったよ。
それじゃあ、………ああ、これは渡しておくよ。」
ひょい、と投げられる方位磁石。
ヘルメットを被ったまま、手をひらりと揺らして。
■天霧和久 > 「……ええ、何から何までありがとうございます。それでは、また何処かで。」
方位磁石を受け取ると、ゆられた手を振り返す。
折角なのだからせめて茶の一つでも御礼のうちにして出そうかと思っていたが、彼女の場合は引きとどめるだけ野暮だろう。
■霧依 > 想像の通り、次の瞬間には音を少し控えめに響かせつつ、走り去ってしまう。
格好をつけすぎだと言われるけれど、世の中で、自分の格好をつけてくれるのは自分しかいないんだから、多少は大目に見てもらおう。
それじゃあ、道に迷わぬよう。
もう一度だけ手をひらりと揺らして、女は雲のように消え去って。
ご案内:「歓楽街」から霧依さんが去りました。
■天霧和久 > 「……流れるまま、全てを好きと言えるか。全く生きるのが上手な人ですね。」
残念な事ながら、人にはその生は得難く、誰もがそのように生きられるわけでは無い。
故に自分はここに来た。
「ともすれば私は、この島で助けてくれた人間の尊きものを、いずれ踏みにじるのか。」
首を横に振る。
否定の為ではなく、その命題をふるい落とす為に。
それもまた流れの行く先なのだろうから。
ご案内:「歓楽街」から天霧和久さんが去りました。