2016/08/22 のログ
ご案内:「酒場「崑崙」」にクローデットさんが現れました。
クローデット > 夜もそれなりに更けただろう時間帯。
若い娘が、一人でカウンターでワインを飲んでいる。…ワイングラスの傍らに、しっかりとボトルを冷やしてもらいながら。

転移荒野での実験を無事引き上げたは良いが、問題はデータの検証である。
「門」の発生予測装置の観測データと、観測地点の映像記録がまるまる一ヶ月分。
このチェックを、クローデットは一人で行っていた。
脳と感覚器官を強化して、早回しの映像と時間軸を同期させた観測データを同時にチェックして時間を短縮しているが…当然、限界はある。
何より、非常に脳と目を酷使するのだ。
久々に頭脳労働から開放されたくなったクローデットは、こうして一人で酒を飲んでいたのである。
ハウスキーパーは、今日は休日で外出しているのだった。

「………ああ」

ワイングラスから唇を離すと、くたびれた艶を感じさせる溜息を一つ。
相当消耗しているらしい。

クローデット > 西洋人たるクローデットは、アルコール耐性がかなり高い。
普段ならワインボトル一本では全くと言っていいほど酔わないのだが…脳味噌と気力が非常に疲弊した今日は、ゆったりとした高揚感と開放感を感じていた。
まして、穴場であるこの酒場は静かだ。
カウンターに並ぶ酒のボトルが薄暗い照明をわずかに照り返す様を、少し眩しげに見やる。

(…一人で静かに飲むお酒も、悪くありませんわね)

そんなことを考えながら、ワインを減らしていく。
クローデットの故郷たるフランスでは「おひとりさま」というのはなかなか「あり得ない」ことなのだが、わざわざ「この地」でエスコートしてもらおうと考えるほど、クローデットは「使命」を捨てていない。
…それに、会話に気を遣わずにワインの香りにゆったりと浸る時間も、たまには悪くない。

「…申しわけありません、ワインを注いでいただけますか?」

ただ、流石に手酌は抵抗があるらしい。
グラスのワインが減ってくると、そう店員に声をかけて注いでもらっている。

クローデット > 「………ふぅ」

再びワインが注がれたグラスに口を付け…それから、満足げに一つ息をつく。
…が、いつまでも逃避してもいられない。

(…臨時の研究助手を雇う、というのも考えた方が良いのかしら?)

あくまで、ハウスキーパーはハウスキーパーだ。彼女には一応別の「仕事」も頼んでいるわけで、これ以上束縛するわけにもいかない。
…何より、彼女には複数の魔術系統や学問を修められるほどの素養は、流石に無いのだ。

(…「敵地」たるこの島で、信頼出来る研究助手を雇うのは骨が折れそうですが…
………「あの男」ならば、伝手があるかしら?)

自分よりも長くこの島で「生き延び」続けている、とある人物を思い浮かべながら、手元で軽く揺らすワイングラスを見やる。

クローデット > (………そういえば)

脳の疲労に適度なアルコールが加わり、少しふわりとした頭でとある掲示を思い出す。

(夏期休暇も残り一週間と少々になってしまいましたわね…
魔術研究や新しい魔術の修得で忙しくて、あまり休んだ気が致しませんが…

一日の「気晴らし」の時間くらいは、何とか工面出来るかしら?)

そう、心置きなく力を振るえる機会は、クローデットにとっては間違いなく「気晴らし」だ。
…もっとも、その「気晴らし」であれば、今回は「壊す」こともそうだが「直す」方にも気を払う必要があるが。

クローデット > ぼんやりと今後の楽しみを数え上げながら、ワインを飲み干す。
それから、店員を呼び止めてカウンター席で勘定を済ませると…

「今夜は御馳走様でした。
…ふふふ」

お酒が回ったのだろうか。楽しげな笑みを零しながら、挨拶をして立ち上がる。

それでも、クローデットはしっかりとした足取りで店を出て行き…
道に出てほどなくして、その姿を消してしまったのだった。

ご案内:「酒場「崑崙」」からクローデットさんが去りました。