2016/09/30 のログ
龍宮 鋼 >  
鍛えろ。

(おっぱいを。
 バカらしいので適当な事を言っておいた。)

なんでそんな適当に仕事請けんだよ……。

(頭が痛くなってきた。
 依頼と言うからには仮にも仕事だろうに。
 名前も知らない、見た目も知らない、確定情報は紫の髪だと言う事だけ。)

あのなぁ、ただ髪が紫っつーだけで見付かる訳ねーだろ。
写真とか似顔絵とかねーのか。
奇抜な髪の人間なんて、この島にゃ掃いて捨てるほど居るぞ。

(自分だって銀髪だし。
 適当にあしらって帰ろうと思っていたのだが、ここまで来ると最早立ち上がる気力も失せる。)

音原 結奈 >  
「無理じゃない!?」

さすがの能天気でも胸は鍛えられないとわかります。

「んー、だってお世話になってるお城の王子様のちょくめーだし。
 その人適当な事……は、まぁ結構言うけど……
 このドラゴンさんの話に関しては冗談言わないから」

そこは自信満々である。
それなりに信頼できる相手からの依頼なのだ。

「わたしが近寄ったら絶対わかるんだけどー……
 写真も似顔絵もないよー。
 だって、急にこの世界で『発生』したんだもん」

この世界に降り立った、とか現れた、とかではなく、『発生した』という言葉。
結奈の表情は割と真面目であり、言葉を間違えたということはないだろう。

龍宮 鋼 >  
やりゃあ出来る。
がんばれ。

(顔も見ずに言う。
 適当。)

――王子様ァ?

(えげつないものを見た顔になった。
 いや違う世界ならそう言う事もあるだろうが、あまりに突飛な発言に思わず変な声が出た。
 自分の頭に浮かんだ光景は、絵本とかに出てくるあんな感じだ。)

じゃあ諦めろ。
見つかりっこ――発生?
何の話だ。

(顔も名前もわからないのでは話にならない。
 金にはならないと判断して追い返そうとしたが、違和感に気が付く。
 発生とはどういうことだ。
 何が発生したと言うのだ。)

音原 結奈 >  
「絶対無理無理!
 無理無理無理無理!」

無理を連発してるけど舌は噛んでない。
滑舌がよい。

「王子様。
 わたし、エルフの国の王城で宮廷料理人してるんだー」

えへへーと笑ってみせる。
王子様はともかく、宮廷料理人、しかもエルフの国である。
余計絵本ちっくになってくる。

「だから『発生』したんだよ。ドラゴンさんが。
 急に、この島で、何もないところから、何の前触れも無く。
 卵から生まれたわけでも、人のお腹から生まれたわけでもなく、突然発生したの。
 だからさすがに異常過ぎて、その王子様に、ここまで来るように言われたんだ」

まっすぐな目。
これまた冗談も何もありえない、真剣な言葉だ。
持ってた懐中時計みたいなものをパチンと閉じて、胸元にしまった。
異次元のおっぱいホールである。

龍宮 鋼 >  
良いか、無理かどうかはやらずに決める事じゃない。
やってから決める事だ。
そして、諦めなけりゃそれは無理じゃなくなるんだ。

(言っている事はカッコイイが、話題はおっぱいを鍛える事である。
 しかも言葉とは裏腹に顔はやる気の無い感じだし、セリフも棒読み。)

なぁおい、いつからこの島はメルヘンの住人の収容施設になったんだ。

(頭を抱える。
 出てくる単語がことごとくメルヘンで、今の自分には耐えられない。)

――意味がわからん。
生きてんだろそいつ。
どっかから流れてきて、それが急に発生したように見えたんじゃねえのか。

(生まれたのではないという。
 しかし自身が知る限り龍と言うのは生き物だ。
 ならばどこかから転移してきたのではないのか。
 それが常識的な仮説じゃないのか。)

音原 結奈 >  
「だいぶ無茶苦茶言ってない!?
 おっぱい鍛えようとしても、大胸筋しか鍛えられなくない!?」

割と知識はあった。
どのみち無理そうだ。

「えー、だって本当のことだし。
 お友達がその城の王女様なんだもん。
 あ、でも王女様は人間の国のお城に嫁いじゃってて居ないんだけどね」

メルヘン度アップ。
でも本当のことだから仕方ない。

「もしそうだとしたら、ちゃんとルーツがわかるんだよね。
 その王子様、このことに関してはすごく真面目だし。
 ……だからこそ、今回のことが不気味で仕方ないの」

目を忌々しげに細めた。
同時に、結奈の纏う魔力が、少しだけあふれ出る。

まるで  月すら  覆い尽くすような  巨大な  黒紫の鱗の  竜の  荒れ狂う

「ま、でも仕方ないか。
 また一から探し直すしかないかなー」

ぱちんと手と手を合わせてそう言いました。
同時に、彼女から少しだけ漏れた魔力も無かったことになりました。

龍宮 鋼 >  
気のせいだ。
大胸筋鍛えりゃおっぱいも鍛えられんだろ。
多分。

(気のせいではない。
 思いついたことを適当に言っているだけだ。

 そうしてどんどんあがっていくメルヘン度に最早言葉も出ない。
 げんなりと難しい顔をしているだけだ。)

つーかよく考えりゃおかしい話だ。
テメェここの奴じゃねェよな。
何で違う世界の事を――っ。

(魔力。
 自身の持つそれとは比べ物にならない、バケモノのような。
 思わず大げさに飛びのいて距離を取った。
 抑えなければ、そのまま逃げ出していたかもしれない。)

――今に、始まった事じゃ、ねェけどよ。
どいつもこいつも――クソ。

(額の汗を拭えば、袖に何か引っかかった。
 触ってみれば、自身の角で。
 無意識の内に龍の力を使おうとしていたらしい。
 悔しそうに呟き、それを握り潰すように解除する。)

音原 結奈 >  
目を細めて、笑顔を浮かべた。
今までの子供のような様子から一転、まるで母のように、優しく。
鋭い子だね、と。

「んー、そのエルフの国では、世界間移動の技術が……
 って、そういえばコレ言っちゃダメなんだっけ」

口の前で人差し指でばってんを作った。
これ以上はきんそくじこーです。

「えへへ、わたしのこれは力の残りなんだけどね。
 私も元々、魔竜っていうドラゴンさんなんだー。
 今はほとんどの力を失くしちゃって、ほぼ完全に人間だけど」

だからとってもか弱いんだよー、と手をひらひらさせた。
実際力は溢れこそしたが、今の結奈からは魔力の欠片も感じられないし、鍛えた様子も全く見られない。
言葉通り、本当に一般人なのだろう。

龍宮 鋼 >  
(その笑顔にも、不気味なものしか感じない。
 確かに母親のような笑顔で、敵意も害意も感じないのだけれど、それが逆に圧力に感じる。
 得体の知れないものへの、恐怖感。)

――っとに、どいつもこいつも。

(先ほどと同じ言葉をもう一度呟く。
 世界観移動の技術なんて、こちらの世界では聞いたことも無い。
 自分の世界に帰りたがっている連中に聞かせたら泣いて土下座でも何でもするだろう。)

力の残りでそれかよ。
自信無くすぜホント。

(一度負けて、血反吐を吐いた。
 そうして少しでも自分を負かした奴に近付いたかと思った矢先にコレだ。
 一体あとどれぐらい血反吐を吐けばそこまで辿り着けるのか。
 一体血反吐の代わりに何を撒き散らせば追い抜けるのか。
 こうしてみている限りは、普通の弱っちい人間にしか見えないのに。
 それでも、さっきビビッて飛び退いた自分が情けなかった。)

音原 結奈 >  
「元の竜の力があんまりにも大きすぎるんだ。
 ほとんど吸われてるのに、こんなにも残っちゃってるんだよね。
 それでね」

それなりに距離を取っていた彼女に、一度言葉を切って。
告げるべきかどうか考えるが。

「わたしが探しているのも、その魔竜」

さっと、風が吹き抜けた。気がした。

鋼竜とはまた似て非なる竜の双眸が、結奈の後ろに浮かぶイメージ。

嘘偽りなく、危険を知らせる言葉。

何故捨て置けず、わざわざ調査しに来たのか。

それが彼女には、一言で伝わってくれると信じて。

龍宮 鋼 >  
(殆ど吸われている。
 逆に言えば、彼女の力はあんなものではないと言うこと。
 そして、)

――っ、!

(例の発生した龍とやらも、その類。
 脚が震える。
 同じ龍とは言え、こちらは混ざりものの半端モノ。
 対するあちらは、不純物無しの百パーセント純血、
 普通に考えれば首を突っ込むべきではないのだろう。
 そんな事、命がいくつあっても足りない。
 思わず一歩後ずさり、)

――っけんな。

(――かけたその脚を、無理矢理前に踏み出す。
 恐怖を踏みつけるように。)

上等だ、魔龍でも神龍でも全部まとめて持ってきやがれ。
そいつら全部ぶっ倒して、残らず綺麗に喰い尽くしてやる――!

(右手を伸ばす。
 額には、鋼色に鈍く光る、龍の証。
 挑戦的な赤く輝く龍の瞳。
 歯をむき出しにして口を吊り上げて。)

龍宮鋼を――

(伸ばした右手で拳を作る。
 僅か、ほんの僅か。
 人間であっても取るに足らないほんの僅かな量ではあるが、彼女の魔力の一端の更に切れ端。
 それを「奪って」、龍宮鋼は。)

――舐めんじゃねェぞ!

(暴力的な笑みを浮かべる。)

音原 結奈 >  
ぱちぱちぱち、と満面の笑みで拍手した。
素晴らしい闘志だし、すごい心がけだ。

「あ、でも荒事はダメね。
 本格的に暴れたりしたら、ホントに世界がいくつあっても足りない……かもしれないから。
 ぶっちゃけ性能がピンキリだから、弱ければほんとに弱いんだよね、ドラゴンさん。
 でも強かった場合、世界があぶないとかありうるし、おもいっきり刺激はしたくないんだ」

ヒートアップしてる鋼ちゃんをよそに、ほっぺをかりかりしながら呟く。
わかいなーげんきだなーとか思ってる。

そして結奈ちゃんから漏れた力、そのさらに残滓を掴んでも、きっと『龍宮 鋼』にはなんの力も与えないだろう。
食ったとしても、どこかへすり抜けて飛んでいくような感触だけを残して消えていく。

そういう契約なのだ。

「と、ゆーわけで!
 もし見つけたらご一報お願いします!」

ぴしーっ!と敬礼のポーズ。

龍宮 鋼 >  
――オマエなぁ。

(いちいち気が抜ける。
 せっかくバシっと決めたのに、反応がコレでは恥ずかしくなってしまう。
 もはやそこも通り越して完全にがっくりしてしまったわけだが。

 元より魔力を喰っても強くなる訳ではない。
 奪う事には特化しているが、それを保持するわけではないのだから。
 それよりも、僅かでも奪ったと言う事実の方が重要だ。
 奪うと言う行為は、要は力の奪い合いだ。
 自分より格上の相手から、僅かでもその力を奪ったと言う事実が、何よりも自身に力を与える。)

――報酬は。

(妙に子供っぽい彼女に半目でそう返す。
 人に何かを頼むのならば、それ相応の何かを与えなくてはならない。
 落第街――少なくとも自身の周囲では鉄則だ。
 なので彼女の言葉を人探しのそれと解釈した。
 さぁ仕事の話をはじめよう。)

音原 結奈 >  
「えへへー、ごめんねー。
 でも強い人と戦いたいとかなら、そのエルフの国の女王様の旦那様がとっても強いから。
 いつか紹介してあげるよ」

などと、当人が居ないところで安請け合い。
ただ多分、強い人と戦いたいって女の子が居るって言えば、すぐに来てくれそうな気がする。
そういう竜だもん、あの人。

「ふっふーん、じゃあとっておきを前払いであげちゃおう」

待ってましたと言わんばかりの悪い笑顔で、胸元をごそごそする。
たわわの隙間にあるものを探して。

「あれ、どこいったの?
 これじゃない、これでもない……」

ハンカチとかティッシュとか、挙句に風呂に持って入れそうなアヒルちゃんのオモチャとか出てくる。
今から早速心配になっても、きっと世界は鋼ちゃんの味方だ。

「あった!
 私が食堂に出勤してるときは特製ハンバーグ一日一食タダ券をあげちゃおう!!!」

びしーっと掲げて見せた。
白い紙に、手書きで「ユナちゃんハンバーグタダ券」と書かれている。
一応食堂ではちょっと有名になってきた絶品ハンバーグだが、それに価値を感じるかは人それぞれだ。

龍宮 鋼 >  
――、……王様じゃねーか。

(エルフの国の女王様の旦那様、と虚空の家系図を辿ってみればつまりそう言うことだ。
 厳密には王様は女王様だから旦那様は王様じゃないのかもしれないが、王様やら女王様やらごちゃごちゃしてわからなくなりそうだったので王様と言うことにしておいた。)

どうなってんだその谷間。

(明らかにそこに入れてしまうようなものじゃないものも出てくる。
 何でアヒル持ち歩いてるんだ、と言うツッコミは耐えた。)

――隣の世界覗き見出来ても、ここのルール知らねェようだから教えといてやるがな。
そう言うのはナシだ。
報酬は現金一括、もしくは前金と成功報酬。
払えねーっつーなら諦めるか、貸し一つ。

(この場合の「貸し」と言うのは労力に見合ったものではない。
 「こちらが一度タダ働きする代わりにそちらも一度タダ働きする」と言うの意味だ。
 当然、その内容に文句は付けないのがルール。
 道を聞いた見返りに「戦争」の兵隊になる事もある、それも落第街だ。)

音原 結奈 >  
「王様じゃないよー。
 女王様の旦那様だよー」

そこは細かいらしい。
彼は王様ではないから事実だ。

「ええー……しょーがないなぁ。
 ハンバーグおいしいのに」

唇をまたとがらせて、ぶつぶつ言って券を胸元に突っ込んだ。
ついでにアヒルちゃんとかも全部突っ込んだ。
代わりに胸から出てきたのは電卓。
そこにぺぺぺぺーっと叩き込む。

「じゃあこれだけ前払い」

ちょっとむすーっとした顔で、電卓を向けた。
中古車が買えるくらいの額が表示されてる。

龍宮 鋼 >  
場所的には似たようなモンだろ。
ま、いつかな。

(とりあえず今はまだ例の魔龍の事で忙しいだろう。
 時間が空いたら紹介してもらう事にした。)

アホか。
ハンバーグぐらい金だして食うわ。

(メシ代も出せない貧乏人ではないのだ。
 どんどこ胸に色々しまいこむ光景は何かの異能かとすら思えてくる。)

わかった、ならそれで――あー、いや。
その半分で良い。
代わりに……あー、さっきの奴、渡して欲しい奴が居る。

(あちらがその価格を提示してくるのなら、それはきっと適正額なんだろう。
 頭の残念さからケチって少なく出すとは思えないし、価値観の違いとかで適正額より多いのであれば、それはそれで良い。
 それで手を打とうとしたが、少し考えて条件の変更を申し出る。)

音原 結奈 >  
「まー学園の食堂で、一食おやすく作ってるから、食べにきてね!」

ちょっと興味出してくれたかな、とか思ってにっこり笑顔で宣伝しておく。
自分のスペシャルメニューが知れ渡るのは嬉しいもの。

「えー、半分?
 この件に関しては、割と出費の許可が出てるから気にしないでも……
 ほえ、さっきのってもしかしてハンバーグタダ券?」

電卓をしまい、再び胸元から白い紙を出した。
相変わらず手書きでタダ券って書かれてる。

ただちょっと筆跡が違うので、多分これ手書き。

龍宮 鋼 >  
気が向いたらな。

(食事は外食で済ます事が多いが、学食にはあんまり近付かない。
 というか学園地区にあまり近付かないのだ。
 なので、気が向いたら、と言っておく。)

くれるっつーなら全額貰うがな……ああ、それだ。
――風紀の、そうだな。
「校則絶対主義者」って言えば、知ってる奴は知ってるはずだ。
そいつに渡せるだけ渡しといてくれ。
俺の名前は、出すなよ。

(その呼び名は一部であまりにも有名だ。
 報酬が半分で良いというのは遠慮のようなものであり、貰えるのであれば貰うつもりで。
 そのさっきのと微妙に文字の形が違うタダ券をじっと見て、踵を返し。)

んじゃあ、頼むわ。

(歩き出す。
 そうしてスマホを操作し、なにやら電話を掛けながらその場を後に――)

――よォし良い度胸だそこに居ろよ逃げんじゃねェぞゴルフボールみてェにぶっ飛ばしてやるからな!!

(――叫んで、駆け出していった。)

ご案内:「歓楽街」から龍宮 鋼さんが去りました。
音原 結奈 >  
「うーん、でも多分あんまり使い過ぎちゃうとすっごい怒られるから、半分でいいなら半分で。
 ……こうそくぜったいしゅぎしゃ、と……」

今度は胸元からメモとペンを出してさらさら。
いらい主の名前をしゃべらない、と書いておいた。

「はーい、任せなさい!
 気を付けてね~!」

背中を見送り、ぶんぶん手を振った。
さて、ひとまずの協力者も得たことだし。

(……お兄さんに請求しとこ)

帰って請求書をバリバリ書くのだ。

ご案内:「歓楽街」から音原 結奈さんが去りました。
ご案内:「歓楽街」にルチアさんが現れました。
ルチア > 「参ったなぁ」

歓楽街にあるベンチに腰掛け空を仰ぐ女性が一人。
見れば自分にも見覚えがあるような、華やかなビルのネオンが輝いている。
だが、これは初めて見る光景なのだ。

「一体ここは何処なんだろう」

“仕事中”にビルから飛び降りたはいいものの――気がつけば荒れた大地に倒れ込んでいた。
自分がいたのは廃ビル群であったはずであり、見渡す限りの荒野ではなかったのは確かだ。
訳がわからないのは確かであったが、取り敢えずは何処か人のいる所へと歩み続けてたどり着いたのがここである。
書かれている言語から、耳から聞こえる声から、ここが日本であるのは解ったのだが、一体日本の何処なのかが解らない。

ルチア > 『常世』と言う漢字が良く目に入るので、それが地名なのだろうと検討は付いたのだが、
常世という地名は来日して1年程の自分は知らなかった。
それに――

「これは一体どういうことなんだろうね?」

誰に言うわけでもなく呟きながら向けた視線の先には、客引きをしている男性に向けられている。
下半身が馬、上半身が男性の――所謂ケンタウロス。
野太い声で今なら飲み放題に30分サービス、と声を上げていた。
他にも身体の一部が動物だったり異形であったり、もしくは果たして君は本当に生物なのかい? と訊きたくなるような者が人間に混じって歩いている。
自分がいた日本であればそれらは大騒ぎであるが、ここではそれが普通らしかった。

「……まさかな」

異世界、なんていう言葉が頭を過ぎったが、そう決めつけるのは時期尚早か。

ご案内:「歓楽街」に櫛鉈 蛟さんが現れました。
櫛鉈 蛟 > 「あ~金も無いのに、こんな所ブラついてもしょうがねーとは分かってんだけどなぁ」

ボヤきながら歓楽街を歩く。時折り、風紀委員の巡回があるのを見掛けるがそこは見事にやり過ごす。
流石に、見掛けられる度に職務質問はされたくない。特別監視対象というのも面倒なものだ。

「……あン?」

と、何となく視線を向けた先、ベンチに腰を下ろして途方に暮れた様子?のロングコートの女が居た。
別にその姿が特別珍しい、とかそういう訳ではないのだが…。

「ん~……ま、悩むまでもねぇわな」

こういうのはさっさと行動するに限る。と、いう訳でそちらへと歩み寄るグラサン男。

「おーーい、そこのベンチで黄昏てるお前さん。何か辛気臭い顔をしてっけど困り事か?」

と、物怖じも遠慮もせず、気さくな態度と飄々としたノリで声を掛けていこうか。

ルチア > 「いい加減ここにいても仕方がないな……。
どうしようか」

見知らぬ場所に行き着いたこと自体はもう仕方がない、と諦めるように首を振って、
日本であれば通貨くらいは同じだろうと自販機を探した所で、
近寄ってくる男性の姿。
それに疑問符を浮かべるように見ていたが、話しかけられれば、口元にバツの悪そうな笑みが浮かんだ。

「困り事と言えば今の現状全てに困っているんだがね。
辛気臭くもなるというものだよ」

全く、参った参った。
そう続けると肩をすくめた。
特に警戒はしていない。
雰囲気から敵意は無いようだと取り敢えず判断した為だ

櫛鉈 蛟 > 「ん?現状の全てに困ってるって……あ、あ~”そういう事”か…」

気さくに声を掛けた先、ロングコートの女の口元にバツの悪そうな笑みを浮かべながらの返答に。
最初こそ疑問符を浮かべていたが、元より直感に優れ観察眼もあるのもあり。
大まかにどんな事情かを悟ったのか、一人納得したように頷いてみせた。

「そうだな…お前さんの現状、つぅか今いる”この場所”の説明は出来るが…媒体があった方がいいか。
悪ぃ、ちょっと2,3分待っててくれや」

と、一度彼女に断りを入れてから雑踏の中に消えて…きっかり3分後。
手に一冊の本…雑誌?いや、この島についてのあれこれが載ったガイドブックを持ってくる。
無料であちこちに出回っているものだが、この辺りだと少し歩いた先のコンビニにしか無かったのだ。

「と、いう訳でほれ。これ見てみれば現在地とかは分かると思うぜ。
あーもし文字が読めない、とかだったら言ってくれ。俺が補足すっから」

と、そのガイドブックを彼女に手渡そうとしつつ告げて。

ルチア > 「“そういう事”……?」

疑問を浮かべた後に何かを悟って頷いた男に、こちらは更に疑問符を浮かべた。
一体何がそういう事なのか。
そも、この殆ど何も話していない、という状況で何を悟ったのか。
訝しげに男を見ていたが、続けられた言葉には一度頷いてから。

「それは構わないから、是非お願いしたいところなんだが。
正直を言えば何がなんだかよく解らないんだ」

弱音を吐いていると言うには幾らか落ち着いた雰囲気でそう口元の笑みはそのままに軽く頭を下げた。
雑踏に男を見送って、戻ってきた3分後。
冊子を持って着た男の手元を覗き込むようにして、その冊子を受け取った。

「ありがとう。
ああ、日本語であれば何とか読めるよ。
だけど難しい漢字は解らないんだ、よろしく頼むよ。

――“常世島ガイドブック”……?」

書かれている言語は日本語だった。
喋るには不自由ないが、読み書きはそこまで得意ではない。
失礼するよ、と断りをいれてからそのガイドブックを開き、読み進めようと。
同時に、解らない漢字があればその都度質問する)

櫛鉈 蛟 > 「ん、まぁ直ぐに現状は把握できると思う。納得できるかどうかは本人次第だけどな」

と、そんな言葉を返してから雑踏へ消えて。で、現在ガイドブックを持ってきて彼女に手渡した所だ。

「おぅ、そのガイドブックは日本語だから問題ねーぞ。つぅか、日本語、ねぇ」

その単語が出てくるとなると、彼女の元居た場所は…日本?
だが、それでこの島を知らないでここに居るのは変だ。

(…異世界つぅか、並行世界みたいなトコから来たのかねぇ)

そこまでは流石に洞察力でどうこう分かる範囲ではない。
なので、彼女に言われた通り、難しい漢字の多い記述がある部分は補足しておこう。
ガイドブックには、常世島の大まかな全体マップや常世島の成り立ち、常世学園、財団の事などが載っている。
更に、21世紀初頭に起きた【大変容】の事なども記されており。
そして、異世界からの来訪者の事も詳細、という程ではないが記載されている筈だ。
彼女がある程度目を通した所で声を掛けよう。

「…で、どうよ?お前さんの知ってる日本に”この島”はあったか?
そもそも、お前さんはどうやってここに来た?」

確認するようにそう尋ねていく。別に尋問でも詰問でもない。ただの質問だ。

ルチア > 「ここは日本だろう?
あちこちらで書かれている言語は日本語だと思ったんだが。
ひらがなカタカナは独特だからすぐに解るよ」

そう答えてから、ペラペラと――は流石に無理で、ゆっくりとページを捲る。
隅から隅へと慎重に言葉を取りこぼさないように、読んでいく。
読めない漢字、解らない単語はその都度尋ね、
言葉少なげにそのガイドブックを熟読していたが。
流石に怒涛の様に溢れる情報量に頭痛を覚えて顔を上げた所で声を掛けられた。

「いや――無いな。
常世島も、このような学園も、当然財団も無い。
勿論大変容も無かった。
門、と呼ばれるものも――創作ととしての概念としてはあるが、実在するとはされていない。
少なくとも表向きには。
――いやぁ、恥ずかしい話なんだが。
ちょっと仕事中に高所から飛び降りる羽目になってしまってね。
そこから記憶が無いんだが、気が付いたらええと、移転荒野? にいたんだ」

一つ目の質問は首を横に降ってからそう答える。
こんな目立つ場所があれば知らないはずがないし、そもそも自分が知っている歴史とは違う。
それに、門、と呼ばれる存在――そんなものがあれば大騒ぎだろう。
自分の知らない世界と、今いる世界が交わってしまうのだ。
創作物の中でしか、存在しない話である。

二つ目の質問に関しては、素直に答えた。
どう取るかは彼次第であったし、嘘をつく必要もない。
尋ねる口調はきついものではなかったし――どちらかと言えば慣れているような響きさえ感じたものであったから、
取り敢えずこの場では信頼できる相手なのだと判断したのもある)

櫛鉈 蛟 > 「ああ、日本で間違いはねーな。うん。」

彼女の言葉にそう答えて相槌を打つが、正確には”彼女の知る日本と似ているようで違う日本”だ。
異世界か並行世界か、それはまぁ深くは考えない事にする。そこを考えるのは彼女自身だ。
取りあえず、男がした事はガイドブックを渡し、その都度解らない単語があれば解説する事。
流石に情報量が多すぎたのか、彼女も少し参っているように見えて。

「……成る程。そうなると確定かな。ぶっちゃけると、ここは日本だけどお前さんの居た日本とは別世界だ。
あぁ、それは転移荒野な?あそこは時空?が捩れてるらしくて、色々なモンが流れ着くんだと。
人であれ物であれ怪物であれ。お前さんは多分、その飛び降りた後にそのままこっちの世界のあの荒野に着いたって事だな」

と、彼女の言葉に変に疑う事も無く、むしろあっさりと信じながら補足を入れる様子で。
それだけで、手馴れているというか異世界の来訪者がこの世界では珍しくはないのが分かるだろうか。

「ま、一気に色々考えると多分頭がパンクするだろうから、ある程度落ち着いてからじっくり現状を纏めた方がいいだろうなぁ。
あ、今更だけど俺はクシナダってんだ。お前さんの名前は?」

と、飄々とした笑みで名乗りながら彼女の名を尋ねようと。
彼女からすれば、自分が一応は異世界人?第一号となるのだろうか。

ルチア > 微妙に含むもののある口調に首を傾げたが、すぐに手元の冊子に戻る。
書かれている内容は正直を言えば信じろという方が無理な話であり、
だがしかし――現状を顧みるに信じるしか無いことである。
日本でありながら、しかし、自分がいた日本とは違うそんな“世界”。
説明してもらえれば、理解は容易い。
何せガイドブックなのだ、異邦人――自分はそう呼ばれる立場である事は理解した――の自分にも読めれば解るように丁寧に作られている。

「――……。そうか。
私も流れ着いたものの一つなんだな……」

男の説明を聞いて返したのは、短い言葉だった。
慣れている様子から見て、こういうことはこの世界では珍しくないのだろう。
当たり前のように帰ってくる言葉と説明は、それが日常のことだと信じさせるには十分すぎた。

色々な思いが無いわけではない。
いきなり知らない場所――世界に飛ばされたと聞いて、それを信じるしか無く。
瞼を落として細く長く息を吐く。
ため息というよりは、気持ちを入れ替えるためのようなそんな呼気。

「ああ、そうだな。
正直を言えば頭が痛いくらいだ。混乱しているし、迷子のような心持ちだよ。
だけど、嘆いた所で仕方がなからね。現状、か……。
私はルチアだ。
ありがとう、クシナダ。君がいなかったらどうなっていたかと思うよ」

(その飄々とした笑みは何処か安心感を誘うもの。
この世界で初めて交換した名前に、笑みを浮かべて。
強張っていないと言えば嘘になるが、少しばかり先程のものよりは力が抜けている)

櫛鉈 蛟 > (しかし、最近異邦人と立て続けに遭遇してるな俺…しかも美女ばかり。まぁイイ気分だけども)

なんて事を暢気に考えつつも、彼女が只者ではない、というのはこうして会話しているだけでも薄っすらと分かる。
具体的にどう只者ではないのか、とまでは説明が上手く出来ないが。
短く呟かれた彼女の言葉に、少し考えるような間を置いてからこう答えよう。

「モノじゃなくて人だろお前さんは。あと、流れ着いたにしても原因が何かしらある筈だ。
案外誰かに”招かれた”って可能性もゼロでは無い訳だしな」

励まし、にしては淡々としているがそう言葉を返す。
異邦人であるのは間違いないが、流れ着いたモノという表現は少し引っ掛かる。
それに、辿り着くべくしてこの世界に辿り着いた可能性だってあるのだ。

(まぁ、まずは現状把握…よりも、一晩どうするかのが問題だと思うけどなぁ)

彼女の世界の貨幣がこっちでそのまま使えたらホテルとかに泊まる、という手もあるにはあるが。
しかし、この歓楽街だと…ラブホとかしかない。それは流石にオススメは無理だろう。

「あいよ、よろしくなルチア。まー実際、迷子みたいなもんだろうさ。
一応、暫くこの島で暮らしていくしかないのは確かだと思うが。
ちなみに、マップにある異邦人街にゃ、その名の通り別世界からの住人たちが中心で暮らしてるぜ。
それと、地元住民や学生、教師じゃないと不法滞在っつぅかそんな扱いになるから…
折を見て学園に入学するのも手かもしれんぜ。学生証あると便利だしな。
生活委員会の受付とかで、正直に事情を話して申請すれば案外すんなり通るかもだし」

(それに、学生になれば女子寮に住めるだろうから、衣食住の住は確保出来るだろーし)

と、そこまで考えて首を傾げた。どうにも、人の身になってから甘ちゃんになっている。
まぁ、それはそれでいいかと割り切りつつ。

「あ、今回についての礼は…そうだなぁ、落ち着いたらメシでも一緒にどうよ?」

イイ女とのメシは普段のメシより美味いのが真理。気さくにそう付け加えて。

ルチア > 視線が自然と落ちてはいたが、その言葉にふと、彼の顔の方へと上がった。
その顔をまじまじと眺めてから、ふ、とそれこそ力が抜けたように笑いながら。

「いやそれはそうなんだが。そりゃあ勿論原因もあるだろうけれど。
――流石にそれはないよ。
私はヒーローにもヒロインにも向いていないんだ。
そんな上玉ではないよ」

淡々とした言葉に困ったように笑って。
励まされているようも聞こえたし、単純に事実を言っているようにも思えてくる。
然しながら、自分の程度は自分でわかっている、という様に、冗談めかした口調で答えた。

取り敢えず一晩の宿をどうするか、と言うのは自分の頭にもあったが、いざとなれば野宿でも、と思う。
出来れば光の当たらない場所を――とも思うが、それは流石に贅沢だろう。
貨幣に関しては期待していなかった。
一歩間違えば偽造と間違えられかねない。
ごく普通の紙幣と硬貨は、換金価値も無いだろうし。

「こちらこそ。
それもそうだった。
まあ、そうだな、異邦人に対して寛容な制度があるのは確かみたいだし、
それに甘えることにするよ。
住むところはまだ考えるには早い気がするな……。
不法滞在は拙いな、強制送還は無理だから何処かに収監されてしまいそうだ。
――そうだな、君の言うとおり、入学手続きを取ってみるよ。
君の様子を見るに、私のようなケースは少なくないみたいだし、
ダメならダメな時で考えるさ」

丁寧な説明と、今仕入れた知識を総動員しながら言葉を返していく。
取り敢えず、行動指針は決まったのだし
希望が持てる――とまでは行かないが、絶望するほどひどい環境でもない。
暫く、がどほどの期間になるかは解らないが、何とかやっていくしか無いのだ。
今は彼の親切心に甘えつつ。

「君はしっかりしている。私もそのほうが気兼ねがなくていい。
そうだな、じゃあ連絡先を教えてほしい。
取れる状況になりしだい、連絡するよ」

精々美人に着飾ってくるよ。
なんて冗談を交えてからガイドブックの空白部分を指差して。
どうせ自分の携帯端末は使えないのだ、それなら連絡先を保存する手段はアナログで構わない。
暫くはこのガイドブックにもお世話になりそうであったし。

櫛鉈 蛟 > 「ヒーローやヒロインなんてのは案外ゴロゴロ居るもんなんだぜ?
まぁ、それこそ原因不明の”神隠し”みたいな現象に巻き込まれたってオチも有り得るが
…つぅか、ルチアお前さん普通に美女だろ。アルビノっぽいのがまた神秘的?な感じだし。」

と、この男らしい一言は付け加えつつ。
この世界、この島に流れ着く者の経緯は様々であるし、原因を特定するのは困難だ。
だが、地に足を着けた考え方をするならば、まず今日の寝る場所をどうするか、という事を優先すべきだろう。
で、彼女の事だから野宿でも最悪覚悟していそうだ。なので…

「…しゃあねぇか。ルチア、取りあえず俺が使ってる塒の一つを貸してやる。
暫く…そうだな、学園入学して女子寮に住むなり、定住先が見つかるまでは仮の寝床にしとけ」

と、言いつつ懐から鍵の束を取り出す。…この鍵の数だけ拠点があるらしい。
ともあれ、その中からこの歓楽街にある塒の鍵を一つ取り出し、それを彼女へと軽く放り投げて渡そう。塒には後で男が自分から案内するつもりだ。

(ったく、昔から俺はどうにもイイ女には甘いって事かねこりゃ)

女好きではあるが、同時についついお節介を焼いてしまう面があるのは否定出来ない。
ともあれ、彼女が示したガイドブックの空白部分に手持ちのペンでサラサラと連絡先…携帯のアドレスを書いておく。

「んな、無理して着飾るなんてしなくても、普通でいーんだよ普通で。
お洒落な店で無理して気張るよりは、庶民的な店で飲み食いする方が気楽でいいだろ」

とはいえ、矢張りイイ女と食事をするならそれなりの店がいいのだろうか?
そこは微妙に悩みどころではある。ともあれ、ちゃっかりルチアと食事の約束を取り付ける男で。

「あ、ついでにこれさっき買ってきた缶コーヒー。まぁ出会い記念に一つ。どっちがいい?」

と、懐から取り出したのはブラック無糖とカフェオレの缶。