2016/10/16 のログ
ご案内:「歓楽街」に斉藤遊馬さんが現れました。
斉藤遊馬 > (眠らない街の夜の中。人々は行き交い喧騒が覆う道。)
(店の中から溢れる歓声と、時に聞こえる罵声。)
(金のある者とない者、明るい顔の者と暗い表情で俯いた者。)
(天国と地獄、日常と非日常。常世の島中でも特に混沌とした歓楽街。)
(少年は風紀制服ではなく、通常生徒の制服を着て。)
(酒場の脇、置かれた大型花壇の縁に腰掛けて、それを眺めていた。)
(視線の先、人通りの向こう側。大道芸人が集まる場所。)
(そこはカジノの近く。一夜懐の暖かい者たちのおこぼれを求めているのだろう。)

斉藤遊馬 > (手の中でボールを消し、火を吹き、鳩がハンカチに代わり、ステッキが宙を舞う。)
(観客は驚き、冷めて、小銭の触れる音がし、拍手が鳴って。)
……あ。あれは異能だ。
(この島にいれば、魔法も、超能力も、何もかもはあり得る話。)
(自称神も悪魔も精霊も、ごろごろしている。)
(特売で三人まとめて500円、と売られていてもおかしくないレベルだ。)
(であれば、21世紀レベルの大道芸など、教室で、或いは己自身で見飽きている者が多い。)
(つまり、大道芸で稼いでいる人間というのは、”それでもなお”他者に見せて金を得うる者たちだ。)
(生じる現象の、見た目の派手さを売りにする者。語り口に特徴がある者。)
(見る側の人間も、その大道芸の技術を評価し、或いは憐憫で金を落とす。)
……あのマジシャン、上手だな。
(少年は遠目に、それを眺めている。タダ見、と言われればその通りである。)

斉藤遊馬 > (とはいえ、見て、楽しむ様子はそこまで見受けられない。)
(観察するように眺め、演目が一段落すれば目を逸らす。)
(異能でおこなっていると思われる演目には興味を惹かれぬようで、長く眺めることはない。)
(一人ひとり、見定めるように視線は移り、視界の範囲内に映る相手一通り見た後。)
今日は三人ってとこか。
(呟き、緩く頷いた。)
(居並ぶ大道芸人達の中、何らかの選別をして。)
(その対象を見る目線の色。)
(似ているものがあるとすれば、食事を前にした人間の目。)

斉藤遊馬 > (少年の目は大道芸の始まりから終わりまで。)
(芸人と己の間を行き交う人々の姿など気に留める様子もなく。)
(時折の瞬きすら惜しいというように、眺めて―――)
……っと。
(酒に酔ったかふらふらとした足取りで、こちらにぶつかった相手に邪魔されて、初めて視線をそらした。)
(真っ赤な顔をした、恐らくはまだ未成年だろう相手。)
(本来であれば。着ている制服が異なれば、場合によっては補導すべきところであるが。)
あぁ。大丈夫か、あんた。……いや、俺は別に。
気つけろよ。道で寝たらスられるぞ。
(相手を心配する声一つかけて、少年は見送ってから。)
……あぁ、見逃した。
(拍手に対して頭を下げる、三人のうちの一人を見て、肩を落とした。)

ご案内:「歓楽街」に化野千尋さんが現れました。
化野千尋 > (少年の横で、ぼんやりと大道芸を見ている女子生徒がいた。)
(少年が肩を落としているのとは対照的に、ぱちぱちと拍手を送っていた。)

……見逃しちゃったの、勿体なかったですねえ。

(視線は大道芸に向けたまま、何の気なしに口から言葉が漏れる。)
(そうして、横の少年に体を向ける。)
(ただ、拍手の中の大道芸人を確りと視界の端に捉えてはいるが。)

こういうの、お好きなんですかあ。

斉藤遊馬 > しゃあない。顔だけ―――……うぇぁ。
(突然真横から掛けられた声に、間抜けな音を喉から漏らした。)
(首を捻れば声の主、少女の方向き瞬き数度。)
あ、あぁ。……丁度いいところだったんだけどなぁ。
(目前の相手に、見覚えは無かった。ほんの少しだけ、狼狽えた表情浮かばせて。)
(少年は、少女のように器用な格好するでもなく。)
(少女と大道芸人とを、視線が行ったり来たりする。)
(しかし、三往復の後。諦めたように、少女に視線をやったまま。)
お捻り入れない位置から見てる身としては、好きって言うと怒られそうで怖いな。
そっちは?好きなのか?
実はあそこの人らの関係者で、お捻り回収に来た、とか言われると俺は逃げるけど。

化野千尋 > いいええ。わたしも同じようなものですよう。
好きとも、嫌いとも。でも、好きではあるのかもしれません。
お捻りを入れない位置からこうやって見てるだけですから。

(「どうぞ」、と大道芸のほうを指し示すジェスチャー。)
(視線は向こうで構いませんよ、と言外に示し、また自分も大道芸に視線を向ける。)

異能で大道芸なんて、昔の大道芸人さんが見たらもうびっくりでしょうねえ。
どれだけ努力したかわからないよな芸をぽん、ですものね。
一昔前の大道芸人に生まれなくてよかったとしみじみ思ってしまいます。

(恐らく懐が温かいであろう、少年少女より年上だろう学生がお捻りを入れる。)
(大道芸人と視線が合ったような気がして、そっと視線を背けた。)

斉藤遊馬 > 逃げる必要ないならよかった。前にもうちょっと近くで見てたら、
なんか明らかにカタギじゃない感じのやつに肩叩かれて、
そっと千円札三枚くらい出したからな……
(思い出したのか、げんなりした表情しながら。相手の勧め通りに、視線を大道芸に戻した。)
(先程目をつけていた残り二人の内一人も、既に演じ終えていて。)
(最後の一人へと、視線を向けたまま。)
種も仕掛けも、ほんとにないんだもんな。
理由もなく空を飛ぶし、トランプは消えるし、腕は切断されるし。
でも、だからこそ――
(少女と同時。少年も全く同じ動きで、そっと視線を背けた。)
(暫くそうしてから、再び目を戻して。)
だからこそ、異能が無くても異能と同じことを、それらしく見せてるの、俺は好きだ。
あぁ、そういう意味では、俺はやっぱり好きなんだなぁ、大道芸。

化野千尋 > それ、完全にカモにされちゃってません?
顔、覚えられてないとよろしいですけど……。

(千円札三枚。学生の立場からすればそれは言うまでもなく大金だ。)
(勿論、親からの仕送りだとか学園からの補助金とかが出ている学生であれば大したことはないのだろうが。)
(しかし、少女は残念ながらそのどちらにも当てはまらない。)
(割と貧乏学生だった。げんなりした表情が二つ、綺麗に並んだ。)

空を飛ぶのも、腕が切れるのも、火を吹くのも教室で見られますけど。
そういうのが、当たり前じゃないんだって思えるので、わたしは好きです。
なんていうか、自分の普通の基準を忘れないでいられる、と言いますか。

(「大道芸。」と言葉は続いた。)
(そうして、暫く口をぱくぱくさせて悩んでから、ひとつ質問を投げた。)

ただ、異能を使った大道芸って、どうにも苦手なんです。
理由はうまく言葉にできないんですけど。……おにーさん。
異能を使った大道芸と異能を使わない大道芸って、何か違うと思いますか?

斉藤遊馬 > 大丈夫。何度かの接近の後、この距離くらいが一番安全で見やすいと学んだ。
(少年は踵付いたまま、右の足先で、ぱたぱた、と地面を叩いて。)
多分、視線感知系の異能で範囲決めてチェックしてるんだ。
その範囲が多分そこら辺まで。だから、声かけられたときびっくりしたんだ。
範囲変わって、それで、あんたが……えーと、俺は斉藤。あんたが来たんじゃないかって。
(笑いながらそんな台詞。狼狽えた様子の原因はそれだったらしい。)
普通の基準。そりゃ中々、難しいこと考えて見てるんだな。
でもまぁ、あぁいうの、というか。異能が普通のことじゃないって、普段は意識しないもんなぁ。
(視線の先で、また一つ、物理法則が覆された。人の技術に依って。)
(だから、己の隣で少女が悩んだ様子で居たのには、気付かなくて。)
(結論として投げられた質問に対して、眉を上げた。)
違い?そりゃ違うだろ。やる側にしたら。
でも、見る側にしたら、違わないんじゃないか?
どっちも、大道芸って意味で言うなら、わくわくさせてくれるか。
カネを払うつもりになるか、のライン上にあるんだろうし。
(そこで、何かに気づいたように、口をぱたり、と閉じて。)
……そういう意味で言うなら、カネを払わずに見てる俺達にとっては、難しい話なのかもしれない。
俺にとって違いはあるけど、あんたにとっては、普通を思い出させるのに、種の有無で変わりはないだろ。