2016/11/02 のログ
ご案内:「歓楽街」に竹村浩二さんが現れました。
■竹村浩二 > 「んご………」
目の前に猫がいた。白い猫。
真っ白な、猫。
そして頭痛がする。
「頭が頭痛で痛い……?」
三重に意味が重複した言葉を口にすると、目の前の猫はにゃあと鳴いた。
アタマガズツウデイタイ。
何とも間の抜けた言葉だが、独り言をしていると頭が覚醒してきた。
それとゴミの臭いがする。
自分が寝ていたのは、ゴミ捨て場だ。
■竹村浩二 >
体を起こすと、倦怠感。
そうか、自分は酔っ払ってゴミ捨て場で寝ていたのだ。
財布を確認する。
紙幣が残っていたので寝ている間に金を抜かれてはいない。
「クソッ……いくら何でも安酒飲み放題じゃなぁ…」
悪酔いの果てにゴミ捨て場で寝るとは。
自分への好感度が爆弾処理に失敗したギャルゲー並に降下した。
ボリボリと首の辺りを掻くと、ゴミ捨て場から腰を上げた。
「なぁ、俺んちってどっちだっけ」
酔ってどこまで歩いたのやら。
全く知らない場所に来ていた。
だから白猫に聞いた。
『にゃあ』
と、猫は鳴いた。
「そか、サンキュ」
それだけ聞ければ十分とばかりに、首を鳴らして大あくび。
■竹村浩二 >
「うう……寒…」
身を縮めて歓楽街を歩き出す。
男は寒がりだった。
夏場でも長袖の緑なスーツを着ていた。
冬場でも大して格好は変わらないが、寒がりな分ぬくもりを求めた。
多くの人が家族や恋人に求めるものを、安酒やしけたギャンブルに求めていたのかも知れない。
当て所なく歩きながらどこからともなく取り出した煙草にライターで火をつけた。
メンソールの香りがする煙を吐き出すと、ゴミ捨て場で寝ていた体臭が幾分かマシになる。
気のせいか。
気のせいだな。
■竹村浩二 >
人間は精神である。
精神とは何であるのか。精神とは自己である。
自己とは何であるか。自己とは自己自身に関わる一つの関係である。
大昔の哲学者がそう言ったらしい。
じゃあ、精神性が腐りきった自分は何なのだろう。
そう考える。
自己との関係を築くことができなかった子供はどんな大人になるのだろう。
夜の街に煙草の灯りだけが煌々と移り歩いて見える。
夏場に俺は蜘蛛の怪人と戦った。
その時、俺は自分の正義と向き合える機会を得たのではないかと思った。
内心、縋った。
でもそれ以来、怪人は自分の前に姿を現さなかった。
あの日から、俺はケチな異能犯罪者を捻る程度にしか変身していない。
アーマードヒーロー、イレイス。
それが俺の真の姿。
そう、あれが俺の真の姿で、今の俺は仮初。
何度自分に言い訳しても、酩酊の余韻が台無しにしてくれる。
ご案内:「歓楽街」に真乃 真さんが現れました。
■真乃 真 > 「なあ、そこの人!タバコを吸ってるそこの人!」
夜の歓楽街に似つかわしくない雰囲気の男がかけてくる。
服は制服、首には異様に長いタオルを巻いた男である。
「ちょっといいかい?少し人を探してるんだけど知らないかい!?」
知っていたとしてもどんな人を探しているのか分からなければ答えようがないだろうが…
そんな事には気がつかない様子で
「いや、一回だけあった人なんだけど…連絡先も何も知らないからさ!
いそうな場所を探してるんだけど見つからなくて!!なにか知らないかい!?」
…必死に探していることだけは伝わるかもしれない。
■竹村浩二 >
昼間は常世学園の用務員。
夜は安酒を呷り、ケチなギャンブルに熱中し、饐えた臭いの淫売を抱く。
それだけが俺じゃない。
それだけが自分じゃない。
自分の目が淀んでいることには気づいている。
正直、自分を変えたい。
だが――――何をどうすればいいのだろう。
そこに声をかけられ、タオルを巻いた男を見る。
学生……? こんな時間に、制服の…風紀か?
「は、はい? 人探し?」
携帯灰皿に灰を落としながら困惑する。
「連絡先もわからない、いそうな場所しかわからない、と」
「わかったわかった、話を聞いてやるから」
「どんな奴を探しているのか、お兄さんに話してみろって」
くああ、と欠伸をする。
誰こいつ。歓楽街で探し人……?
■真乃 真 > 「ああ、人探し!」
特に行方不明者の捜索とか、いなくなった友達を探してというものではなくただ会う目的があるからであるが。
確かに人探しだ!
「本当かい!?お兄さんいい人だな!!」
大抵の人は面倒くさそうな感じで知らん!とか言うのにこの人はいい人だ!
「えーと、髪は短くて銀色。目つきは悪くて赤色で…身長は低目。だいたい、これくらいかな?」
手で身長を表して見せる。大体150センチ前後だろうか?
「性格は喧嘩っぱやい感じで後は、えーと…ヒーローが嫌いっぽい!」
性格に関してはあまり把握していないらしく最後の情報ではどんな人物なのか把握するのは難しいだろう。
あまり、親しい相手ではないのかもしれない。
「あっ女の子ね!」
■竹村浩二 >
「初手いい人認定はやめろ」
嫌そうに顔を歪める。
筋肉ついてる感じの野郎なのに純真そうだ。眩しい。
「随分と背の低いお知り合いだな」
星のない空を眺めながら紫煙を吹く。
歓楽街は明るいので星が見えにくい。
「喧嘩っぱやい。ヒーローが嫌い……」
その言葉にもっと表情を歪める。
悪いですね、ヒーロー名乗ってますよ。
「そりゃあ、あいつか。龍宮鋼」
「違ってたらちょっとわからん。俺も知り合いが多いわけじゃあないしな」
「そして龍宮鋼のことなら『超強い』って説明が頭につくだろうし……」
僅かに笑うと、煙草を携帯灰皿でもみ消して中に入れた。
■真乃 真 > 「いや!良い人だね!きっと!これで良い人じゃなきゃ結構な悪人だよ!」
酷い二択だった。
でも、自分からこんな事に関わるのは騙すつもりがある人か…
或いは善人だ!
「うん、喧嘩っぱやい!
あと、凄く怒る!何か、大体怒ってた気がする!」
真の態度に問題があったのかもしれない。
ヒーロー嫌いも真がヒーローっぽい恰好になった時に凄いキレたから間違えないだろう。
…いや、逆に好きなのかもしれない。
「おお、流石有名人だなあの子!合ってるよ!でも、『超強い』はどうだろう?
確かに僕もボロボロに負けたけども!…多分あと一歩だったね!」
無駄にカッコいいポーズをとりながら自分の戦績を盛る。
うん、普通にボロ負けだったと思う。
「もしかして、どこにいるかとかも知ってたりしちゃうのかい!?」
■竹村浩二 >
「どういう判断基準だ……?」
竹村は困惑した。人には善性と悪性、二つがあって人間である。
少なくとも竹村はそう信じている。
よって良い人じゃなければ悪人という彼の二択には困惑するばかりだ。
「ボロボロに負けたのかあと一歩だったのかどっちなんだよ」
ツッコミを入れながら首の辺りをボリボリ掻く。
「さぁなぁ。夏前か夏くらいにパチンコで大負けして落第街をぶらついてる時に猛犬の尻尾を踏んで逃げ回ってたら不良のテリトリーに入ってボコボコに殴られてる時に助けられてから会ってない」
私はクズですと笑いながら自己紹介した。
「だからお前の力にゃなれそうにねぇな……」
「前に会ったのは落第街だってことは伝えておくがな」
それにしても。
ゴミ臭い自分に声をかけて一方的に良い人認定。
その上でやってることが不良少女探し。
何という非日常。
「龍宮鋼に惚れてるのか?」
「だがやめておいたほうがいいな、あのタイプは惚れると一途だがまず振り返らせるのに苦労する」
「クラスに一人はいるだろ、誰にでもヤらせてくれる娘がさ」
「まずはそういう子でチュートリアルを済ませてからだな…」
視線で自動販売機を探した。寒い。あったか~い飲み物が欲しい。
■真乃 真 > 「つまり、あれさ!お兄さんはきっと自分が思ってる以上には良い人なんだと思うよ!」
良い人さがある程度なければ追い払とか無視とかするだろう。
それを普通に話を聞いてくれるのはそう、それなり以上の良い人か利用しようとしている悪人である!
「…ボロボロ寄りかな?」
つまり大敗である。
「それは…災難だったね…。でも、ノラ犬が可哀想だから足元には気をつけて歩いた方がいいな!
…ていうか、あの子自分も人を助けてるじゃあないか!」
割と真面目に受け取って返す。
今の話の一番の被害者はノラ犬である。可哀想!
「落第街かありがとう!…行きたくないな!」
落第街はパスだ!怖い!この時間に行くような場所ではない!
「いや、惚れてないよ!
あれだけボロボロに負けて惚れるなんて流石にそんな趣味僕にはないよ!
むしろ、今でもちょっと怖いくらいだ!」
必死に否定する。
ああ…正直、ちょっと怖い。
「ああ、でもありがとう!助かったよ!
特にお礼ではないけども、お兄さんは何か困っていることは無いかい?
僕が助けられる範囲の事なら助けるよ!!」
だって、酒の匂いと、ゴミの匂いと、タバコの匂いを混ざらせた良い人(真主観)である。
何か大変なことが起きたのだろう!!
きっと、困っていることがあるに違いない!!