2017/02/18 のログ
ご案内:「歓楽街」に和元月香さんが現れました。
和元月香 > 「…最悪だ…」

_____きらびやかなネオンが輝く街、歓楽街。
明らかに“今”の自分とは場違いな場所。

月香は眠らぬ街と名高いその目映い光を尻目に、遠い目で溜め息をつく。


(…はぁ…。今時“誤転移”とか…。もう何回目の人生だっつーの…)

簡単な話、月香は自分の空間魔術の【転移】にミスし、来た事も無い場所に“誤転移”してしまった。

【転移】は配分など調整やコントロールが随分細かく難易であったが、流石に今更失敗は無いと思っていたのだが…。

和元月香 > (…さて、どうするか。地図はあるけど、まず此処は何処なんだというね…)
妖しい店が立ち並ぶ一角なのは看板等を見れば分かるのだが…。

スクバから地図を取り出すと、ふーむと辺りを見回し始める。


「……駄目だ、全然分かんない」
(さーいーあーくーだー)

…転移するにも魔力の心配がある。一体どれだけ移動したのか不明なのだ。

「…はぁ…」
途方に暮れた月香は、とぼとぼと歩き始めた。

和元月香 > (…何だか妙に、懐かしく感じるな~…)

……かつて生きた世界の一つも、こんな場所があった。
その世界の月香は孤児で、こんな歓楽街の店でアレな仕事を与えられ育った。

そして直に、信頼できる部下とその街最大の店を作って…。

(……何か親近感わいてきたや)

その目が懐かしさを含んで、にまりと緩んだのに、道行く若者は気付けない。

…その、『“こんな少女”が“こんな場所”で浮かべるはずのない表情という、少しの違和感』にも、彼らは気付こうともしない。

和元月香 > そうやってふふふふふ、と笑みを漏らしているとぽん、と肩を叩かれる。

(…?)

ふと、振り向くと。
…明らかに怪しい金持ちそうなおじさんが一人。

「お嬢ちゃん迷子?おじさんが送ってあげようか?」
「えっ」
(うわこれアカン奴や)

______見事なまでのテンプレであった。

和元月香 > (いつの間にか周りを囲まれているっぽい)
と月香は置かれた手をそのままに内心舌打ちをする。

(こちとら気配にゃ敏感なババァなんだよ…。そんなゲスい視線なんてすぐ分かるっつの…)
内心は大袈裟に溜め息をつき、表情にも呆れは出ているが…。

…目はとても、彼等を同じ人として見ている目では無い。

和元月香 > 「…はぁ…。助かります。ありがとうございます……」
「ははは、大丈夫だよ。ほら、こっちにおいで」
(……よし)

さりげなく肩を抱かれ、傍の脇道に誘導される。
男の仲間も、さりげなく後ろに続く。

(…まぁもうバレてるんだけどねー)

こっそりべぇ、と舌を出した月香は……大人しく脇道に入っていった。

端から見れば、大人に逆らえない一般生徒の図。
…しかし月香は驚く程冷静に、欠伸を噛み殺していた。

和元月香 > 脇道に入った月香を取り囲む男たち。
…一様にニヤニヤと笑みを浮かべているものの、月香は呆れたように眉をしかめるだけ。

「簡単に騙されてくれたねぇ、お嬢ちゃん。もしかしてこの街は始めてかい?」
「……」
(分かってたけどな!!調子乗るんじゃねー!!)

と、心の中では盛大に啖呵を切るも現実は黙ってうつむくだけの月香。意外と演技派である。

「この街はねぇ、公安とか風紀にバレなきゃ基本何でも許される。全てが合法なんだよ」
「……」
「だから恨まない事だ。恨むなら、自分の警戒心の無さを恨むんだね」
「……」
「君は結構可愛いし、ちょっとおじさんの店で働いて貰おうか」

(あ~…またかよ)
茶番でしかない、と言いたげに冷めた目で襲いくる男たちを見つめ。

____…月香はニヤリと、小さく笑った。

和元月香 > そこからは、月香の独壇場であった。

「とー!」

「ぎゃああああああああああ!!!」
「ひぃぃぃぃ」

「ひゃっはー!」

「ぎゃあ!」
「ぐぶへっ」
…悲鳴も変な掛け声も、全て繁華街特有のざわめきがかき消してくれる。

___数分もしない内に、月香の足元には色んな物をぶつけられて伸びた男たちが無惨に転がっていた。

「…異能とか全然使われなかったな…」
(何か拍子抜けだわ…)

月香は何事も無かったかのように欠伸をぷかりと一つした。

ご案内:「歓楽街」に和元月香さんが現れました。
和元月香 > ぱらぱら、と何かが捲れる音がして我に返る。

『弱い』
『弱い』
『こいつらが弱いだけ』

「…分かってるっての」
傍にいつの間にか浮いていた黒い本に、ふてくされたように言葉を返す。

(私はどうせそんなに強くないですよーだ)

『ワタシなら、月香を強くしてあげられる』
『強くしてあげれるのに』

「………?
え、考えとく…」
ページに羅列する文字に眉を潜めながらも、月香はスクバを肩に掛け直してその場を去った。

(何とかして出口を探さねば…。それが最優先だ)

…後には、気絶した男たちだけが残されていた。

ご案内:「歓楽街」から和元月香さんが去りました。