2017/04/26 のログ
裏々築々 > 「…楽しい青春時代を過ごせたようだな。」

きっと、何かに浮かれていたのだろう。
きっと、それはもう取り戻せないのだろう。
…学生なんてそうでなくてはな。

「教師か。何か教えたい事でもあったのかな?」

この学校で教師になるのは他の学校と比べても難しくはない。
だが、それは何か一芸に秀でた者の場合だ。
彼は何を伝えたくて教師を目指していたのだろうか。

「ふむ、ならば醤油ベースの豚骨でどうだろう?
 科学調味料か。私も全然良いと思う。
 自然の素材の味が偉いという事は無い、食べ物は美味いものが偉いのだよ。」

竹村浩二 >  
「……かもな」

遠い目をした。正義のために迷いなく走っていけたあの頃。
仲間がいた、尊敬できるリーダーがいた、惚れた女がいた。
青春は灰を残し、その灰の匂いを嗅ぐ野良犬が今の自分だ。

「それが全く? 生活できりゃなんでもいいと思ってたのかもな」
「そういうの、あっさり見破られるのも常世学園っぽいよなー」

首から上は一級品。されど品性は下劣、根性は腐っているときたもんだ。
自嘲気味に笑ってスクリュードライバーを注文した。

「醤油豚骨か……良いんじゃあねぇの」
「そうそう、無科調とか自然回帰とかまだるっこしくてよー」
「あとは気の利いたチャーシューでも乗せておけば学生は喜ぶんじゃあねぇの、味じゃなくて食べ応えな」

うちで働いてるメイドも味覚は本物だ、手伝ってくれるかもしれない。
そこまで盛り上がって、何故だろう、急に。

昨日殴った骨の怪人の感触が拳に浮かび上がってきた。

怪人の呻き声が。舞い散る骨片が。生々しく想起された。
煙草を落としそうになり、慌てて灰皿でもみ消した。
喉が渇いて、運ばれてきたオレンジのカクテルを半分ほど一気に飲んだ。

「……いや、酔っているようだ。忘れてくれ」

俺の血で薄汚れた手で、人様に食わす料理なんて作っていいはずがない。

裏々築々 > 「その心意気、素晴らしいな。
 今からでも隠さず伝えれば雇ってくれるのではないかな。
 反面教師としてなら…。」

反面教師。果たしてそれは仕事なのだろうか。
自堕落に生活するだけで金がもらえるならそれも悪くない。
どこかに求人は出ていないだろうか?

「ああ、全くだ。
 味の濃さとボリュームさえあればある程度は戦えるだろう。」

…少し食べたくなってきたな。

「そうか、仕方ない。来た時から飲んでいたようだったしな。
 ほどほどにしてたまえよ。
 それと、この後未来のライバルの敵情視察に行こうと思うのだが君もどうかな?
 ああ、もし来てくれるならお金は私が出そう。何、臨時収入が入ったところだ。」

先日の仕事で得たお金である。
死にかけの二級学生に薬を試してもらう仕事その報酬だ。

竹村浩二 >  
「反面教師ならこの島に腐るほどいるからよォー」
「俺みたいなクズ、クズの中では一番の小者、って感じっすよォー」

反面教師としてすら一番になれない男、竹村浩二。

「……そうだな、飲みすぎかも知れん」
「お、いいんすか! ゴチんなります!!」

満面の笑顔で礼を言うとマスターに行って自分の分の支払いを済ませた。

「爆食スタミナ系ラーメンに胃が追いつかなくてよぉー、年ってのを感じちまうなぁー」
「ま、店のセレクトはモヤの人に従う。敵情視察、敵情視察ぅー」

のん気に笑って竹村は彼についていくだろう。

裏々築々 > 「入門用としては丁度いいんじゃないか?
 あまりに激しいのは見せられないだろう。」

あまりに激しいのを見せて泣かれても困る。
軽く引くぐらいが反面教師として丁度いい。

「ああ、気にしなくてもいいよ。
 今はかなり景気がいいからな。私は」

まだまだ今の雇い主のところで稼がせてもらおうと思っている。
ああ、これからも薬の被験者は増えてもらうつもりだ。 

「飲んだ後には濃いのが食べたくなるな。
 マスターこのあたりでおススメは?」

そうして行ったラーメン屋で二人は自らの若くなさを自覚するのだった。

ご案内:「酒場「崑崙」」から竹村浩二さんが去りました。
ご案内:「酒場「崑崙」」から裏々築々さんが去りました。