2015/06/08 のログ
ご案内:「落第街大通り」に生ヶ易案子さんが現れました。
生ヶ易案子 > 「うーん」
明るくうすっぺらく、軽装なりに動きにくそうないかにも女子のファッションをして。
薄暗い路地裏に、やや……どころかだいぶ場違いな娘がふらふらと歩いている。

生ヶ易案子 > サボってしまえば憂鬱でもない月曜日。
今週末が開けてこの方、なぜか知らないが、ちょっとした修繕工事の日雇いバイトが妙に多かった。
この異能――『永遠の一瞬』は、「やり直しがきかない」という特質上クオリティが求められる仕事には向かないのだが、一時的な足場組みなどにはそれなりに応用できる。
というわけで、これは好きに能力を使いまくるチャンスとハシャいでよく考えずに日雇いの予定を入れまくった、のだが。

生ヶ易案子 > 「ここ落第街じゃん!」
よく考えなさすぎであった。
自衛能力のある能力持ちならまだしも、戦闘力皆無の自分があんまり来るようなところではない。
そして、勝手がわからないので当然のように迷子だ。建物と建物の隙間、路地をひとつひとつ不用心に覗き込みながら、大通りを歩く。

生ヶ易案子 > 「大きい道だし、迷うってこたないと思うんだけどなあ」
特に場違いさを醸し出しているのは、そんな警戒心のなさである。
「んーでも、夜になったらまずい……。えーと……、学園地区はここから見て……西……?」
西、か。……夕陽に向かって走ればいいんだろうか。

生ヶ易案子 > 陽が落ち切るまでは、まだ時間がある。
困り顔はしてみせるものの、今すぐ逃げ出そうというような慌てた雰囲気は感じられない。
暗くなってから考えても遅いと言えばそうなのだが……、あいにく、そこまで危機感のある人格をしていないのだ。

ご案内:「落第街大通り」にウィリーさんが現れました。
ウィリー > 宵闇が近づいている。暗さの深まりにつれて、大通りの空気は
人を拒むような様相を呈して行く。

「女の子が一人歩きしてちゃあ危ないよ…」
低くかすれた声で、案子の背後から声をかける青年。
驚かす気満々である。

生ヶ易案子 > 気分的には夕陽に向かって進んでいるのだが、道は薄暗く、空は狭い。道もなんだか曲がってしまったような気がする。
やっぱり走ったほうが良かったか。
色を変えていく街を見わたし、「やばいかなー」と言いながら足を止めたところ、で。
「ぎゃん!?」
背後からの声に縮み、数歩を夕陽に向かって走り、小動物じみてぱっと振り返る。
「ってあ、ドーナツの人だ」
顔見知りとわかれば一転、頭より上でぶんぶんと手を振ってみせた。

ウィリー > 思っていたほどのリアクションではなかったが、
愛玩動物のような驚きように満足。可愛らしいものだ。

「おう。こんなところでどうしたんだ、なんか用事でも?」
建物を朱く染めて目を刺す夕日に手をかざしつつ、案子に歩み寄る。
警邏中なのか、軽装備と鎮圧用の空気銃を携えていて
多少は心強く思えるかもしれない。

生ヶ易案子 > 「バイトだったんだけど、住所よく見たら落第街だし、迷子だし、陽が暮れちゃったから夕陽に向かって走ろうと思って」
1、2段階ほど大胆にはしょった説明に、申し訳程度の身振り手振りを交えながら。
「つまり、なんか帰れなくなっちゃってさ……。んーと、」
いったん目をつむって、こめかみを小突いて脳をシャッフル。
「ウィリーくんだ。ウィリーくんは迷子って感じじゃないね。お仕事?」

ウィリー > 「なるほど、落第街でお金を稼ぎ雄飛に向かってダッシュで青春の一ページをスタートしようと?」
大雑把に切り返して、「つまり、目の前の事に夢中になりすぎて迷子ってわけだ」

入り組んだ街を先導して、比較的安全な方へと歩いていく。
「ご名答。あちこち見て回って歩いてんだ、このあたりは
 物騒なところも多いしな」
「それに、あんたみたいにうっかり危ないとこに迷い込むのもいる」

生ヶ易案子 > 「うむ。あんずさんは過去を振り返らないのだ」
過去の基準は三歩あるく前くらいだが。

ありがとー、と無邪気に返して、素直に横に並んで歩く。その足取りは、やはり、明るい商店街を友人と並んで歩いているのと大して変わらない。
「へー、かっこいいなあ。定職だ」
定職、というのとは少し違うかもしれないが、たぶん細かいことだ。
物騒だの、危ないだのいう言葉に、にこにこと相槌を打って、
「やあ、いてくれて助かった。……そうだ、お仕事か。『手伝える』ことがあったらなんでも言ってね!」
わかっているのかいないのか、と思わせるような満面の笑顔で感謝の意を伝える。

ウィリー > 「ははは、潔いな。嫌いじゃないぜ、そういうの」
暗がりに気を配りながら、気楽さを崩さない少女に笑いかける。

「おう、カッコいいだろ。惚れんなよ~…つっても
 実際は学生がメインでこっちは副業なんだけどよ」
危機感があるのだかないのだか。案子を見ているとこの街の
不穏さが安らいでくるような気すらしてくる。不思議なものだ。

街と街との境目が近づいてくる。じきに『まとも』な学生たちの
住む街に辿り着くだろう。
「手伝えること…手伝えることか。んじゃうちの自警団で
 家事担当として働いてくれ。人手不足なんだよ」
本気とも冗談ともつかない口調で、隣を歩く少女に言った。

生ヶ易案子 > 「学業が本業ってか。耳が痛いなあー」
けらけらと返しながら、ひらけてきた空、ほとんど終わりかけの夕焼けを顔に浴びる。

「家事? ……うーん、家事かあ」
にへら、と。相変わらず細かいニュアンスを介さない調子で、ごく真面目に答えようとする。
「あいにく掃除洗濯は人並みだな。『作品』じゃないから――でも、」
なぜか無駄に腕まくりして、
「料理なら自信あるんだぞお。これでも。仕様の都合で味の調整はできないけどさ」

ウィリー > 橙色に誰そ彼を問う時間は終わり、街頭に灯りがともり始めた。
そして、街の華やぎも肌で感じられるようになって。

「そりゃいい。うちの連中は団長も含めて料理が下手でさ。
 外食代で随分飛んでっちまうんだ」
彼女の異能がそういう類のものであることを今更思い出して、
それなら尚更と。もちろん『作品』とできないものは、
一から叩き込む必要があるのだが、そちらはさほど問題ではなかろう。

「本当に自信があるなら、給料はかなり弾んでくれるだろうぜ」
本当に美味しいならな、と少し意地悪く煽ってみたりもする。

生ヶ易案子 > ぽつ、ぽつと灯りが灯れば――、建物の並びそれ自体に覚えはなくとも、その光の間隔にはなじみがある。普段暮らしている『まとも』な街の一画に入ったことには間違いがなかった。
立ち止まって、振りかえる。

「本当!?」日雇いバイトは土木作業ばかりだが、自分だって可愛らしく料理でもしているほうがよほど好きだ。それで日銭が入るなら、そんなにおいしい話はない。
が、ちょっと自信なさげになって、
「味ばっかりは好みがあるからなあ……。そこは今度にでもお試ししてもらわないとね。……お口に合わなかったときの『修正』もきかないし」
後から塩やソースを振ろうとすると反発して飛び散ってしまうという、なかなかクレイジーな料理になる。のだが、まあ、そこはあとで説明すればいいやと黙っておく。

ウィリー > 境で待つ団員に引継ぎを行なう。ウィリーよりも数倍ゴツい男だったが、
案子を一瞥するとウィリーたちが来た道へと向かっていった。

「うし、あのエリアは終わりだ」喧騒と、明かりに目を細めて一息つく。
「そんな鯱張るこたあねえよ、いきなり満点の美味しいもん出してくれれば一番だが
 まずは色んなヤツの味覚を確かめてみるのがいい」

「…団長は厳しいぜ? 食事がパーフェクトでも他がダメだったらケツ叩くだろうな」
ハハハと笑う。互いに説明不足なところがあって、明らかに
問題が生じそうではある。が、存外にうまくいきそうな――
そんな雰囲気もなくはなかった。

「んで、この後はどうする?」

生ヶ易案子 > 「今夜? このまま帰ってもいいけど……」
ちら、と時計をみる。明るい街をうろつくなら、まだ早い部類の時間だろう。
「そーだな、その、ウィリーくんの自警団ってどのあたり? 近いなら寄ってけるかな。いや、今夜いきなり料理ってのは準備がないから無理だけど」
そういう話なら、連絡先と住処くらいはね、といったことを身振り手振り混じりに伝える。

「あ、あんずさんは週休七日だから、だいたい女子寮にいるか、職員室で叱られてるよ。呼んで呼んで」にぱりと笑う。

ウィリー > 「歓楽街の中心区だから言うほど遠くはない…はず。
 時間が時間だからみんな出払ってるだろうけど気にしないでくれ」
人ごみに向けて歩き出す。はぐれても面倒なので手をひきつつ、
「連絡先はあっちについてから書いて渡すけど、無線機の
 貸与もあるから問題ないだろ」そう何気なくいう。

「待て、週休七日ってなんだそれ。ツッコミどころ多すぎるだろ」
くつくつと笑う。この少女は、とらえどころがなさすぎて面白い。

生ヶ易案子 > 「予定はいくらでもツッコめるよお」
そういう話ではない。

「歓楽街かあ。あんずさん、そっちはあんまり明るくないんだよなあ……引き続き道案内してもらえると助かるかも」
と。
手を引かれたことに多少「ひゃあ」と声をあげつつも、無抵抗に横をついていく……。

ウィリー > 「いや、だからそうではなく…」そういう話でないのをわかっているから、期せずしてのせられてしまう。
恐らくは相性の問題なのだろう。

「なーにさっきいた場所よりゃマシだ。若干うるさいのと
 はしゃぎすぎてるのが多いだけ」
ついでに食事でもして、少し慣れてみるのもいいかもしれない。
新たな仲間?を得たウィリーは、厳めしい面を少しほころばせながら、案子の手をひいていった――

ご案内:「落第街大通り」からウィリーさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から生ヶ易案子さんが去りました。