2015/07/15 のログ
ご案内:「落第街大通り」に『鮮色屋』さんが現れました。
■『鮮色屋』 > ガタ――ガタガタ――
大通りを緩やかに特に目的もなく車椅子を走らせる。
『茶久』は車椅子を走らせながらここ二日以内に劇団フェニーチェが行った事を振り返ってみる。
公安と劇団フェニーチェが司法取引をしたこと
公安にミラノスカラ劇場を取り抑えられた事。
その後劇場が劇場跡になってしまったこと
――複数の公安委員が『エキストラ』になってしまったこと。
■『鮮色屋』 > 真偽がどうかは分からないが最初の二つには『脚本家』が絡んでいたという噂もある。
もしそうなら『脚本家』がそういう『脚本』を描いたということなのだろう。
それはそれで構わない……が
跡の二つは少なくとも『脚本家』がすることではない。
自らが開幕のブザーを鳴らしたまま閉幕のブザーを鳴らさないとは『茶久』も『鮮色屋』も想像できない。
(なんだかなぁ……)
何より自身の心に響いてしまっているのが複数の公安委員の『エキストラ』化。
(私は何より活きた喝采が聞きたいはずなのに…なんだか、なぁ)
車椅子の車輪を止めてその場でボーっと空を見上げる。
時間は昼頃。落第街は漆黒を醸し出すがその更に上の世界は純白と海のような青の世界が広がっている。
ご案内:「落第街大通り」に影山過負荷さんが現れました。
■影山過負荷 > 「あ、おたく、ちょっといいかな?」
手を差し出すように伸ばし静止する腕がひとつ、目の前に伸びる
夏だというのに黒いコートの長袖を着込んだその二の腕には
<<公安委員会>>の腕章が安全ピンで無造作に留められていた
「車椅子…大変だね、あ、僕はこの通り…公安の者なんだ
今は軽い職務質問?お互い学生なのに職務質問ってヘンだと思うけど…」
相手の返事を待たずに二の句を告げながら、手にしたバインダーに挟まっていたボールペンを取り
ポリポリとそれで額を掻きつつ
「とにかく、今ちょっとこの辺パトロールしてるんだよね…
こういうので声をかけられるのって嫌だよ?俺だって君の立場なら顔を顰めてしまうかもしれない
でも、仕方ないんだ、世情だからさ、だから…ええと、おたく、学生証とかある?」
あまり慣れていないような手つきで、相手に身分を提示するように求めて
少女の顔色を覗き込んだ
■『鮮色屋』 > (まぁ、こうなる。
あんなことすればこうして動きにくくなることぐらい分かっているだろうに…面倒な事だ)
公安委員の腕章を見て心の中で愚痴を吐く。
この場でこの口で今吐いた言葉を話せればいいのだが、そういう訳にはいかない。如何せん不便な世の中である。
とりあえず目の前の男にはコミュニケーションを取らなければならない。
車椅子のサイドにある荷物入れの中から新品のスケッチボードとボールペンをを取り出し、何かを書いた後にそれを見せる
【 こんなところまでご苦労様というやつだ
別にこの辺で彷徨けばそういう事を
聞かれるのは慣れている 】
気を使わなくてもいいということなのだろうか、
どうしても事務的な応答になるのは癖なのだが、
もう少し柔らかく物事を書き記したいと心の中で反省しつつ言われた学生証を取り出して見せる
1年(2年留年) 濡衣茶久 17歳
などと『鮮色屋』の身元が諸々書かれている学生証を見せる。
これは偽造品ではなく、茶久が入学時に手に入れた物を使用している為、公安が登録を抹消していなければ本物の学生証である
■影山過負荷 > 「えっと…?」
返事が返ってこない、なんだかあまり歓迎されていない?
そんなシンパシーを感じる、実際に心を読んだ訳ではないが、そんな感じがする
まあ自分だって職務質問といわれたら身構えてしまうが…
「ああ、うん…おたく喋れないんだ、車椅子で更にとは難儀だな
まあ世の中色々あるもんな、ああ、ありがとな。
ええと…1年の……濡衣……と…」
スマフォを取り出すと、フリック操作でどこかに繋いでいる
今は便利な時代だ、報告も資料もこれひとつで大体揃う
警官なら本部に一々連絡をするのかもしれないが、これは公安の仕事だ、後でまとめる
「ああ、大丈夫みたいだぜ、問題なしだ、でもな、こんな場所に車椅子で歩いてたら危ないぜ
良けりゃ送ってやるよ、というか…そうだな、むしろはいどうぞってそのまま通すのもなんだよな
どこに行きたいんだ?ここは散歩するような場所じゃないぜ」
後ろ押してやるか?と歯を見せて笑いかけ、行き先を促した
相手は何の問題もない一般人だと理解した上での、車椅子を見たならば
人として、何かお手伝いするべきだろうという思い立ちだ
■『鮮色屋』 >
【 この身体になってしまってからもう2年程。
慣れたよ
慣れてしまった 】
そういえばもうそのぐらい経ってしまうのか、とふとこれまであった事を振り返ろうとするが、今はそんなことをしている場合ではない。
【 そうか、大丈夫なら良かった。
見ての通りあまり健全な学生
ではないからな 】
公安の男が言う大丈夫と聞くと何故か残念という気持ちが湧いてきてしまう。
ただ、今は幸運と思うべきだろう。
【 行きたい場所は
そうだな。空に行きたい 】
至って真面目な顔でその旨を書いたスケッチボードを男へ向ける
■影山過負荷 > 「そ…そうか?慣れちまったか…なんか、悲しいな…
まあ、同情すんのもなんか違うと思うけど…
きっといい事あるぜ、きっとな!あ、ほら…なんならそこでお茶でも飲んで
そうだな、俺がお前のいい所100個ぐらい上げてやるよ、な!」
サムズアップして励ますような台詞、少し白々しいかもしれないが
気休めのような言葉を並べる、相手の表情は読み取れないけど
きっとこういう時は何か良い事は考えられないものだ、多分
「ああ、健康かどうかは関係ないよ、そうだな…なんか騒がしいらしくて…
ええと、わかんねえな、とにかく黒か白かで、黒は同行…って言っていい事じゃないな」
要領を得ない台詞、無造作な腕章もそうだが、自分は補助人員の協力員だ
正式な委員会の人間ではないボランティア、故に濁した様な返答で
「そら?空っつーと…上か?
ええと、おたく空でも飛んでみたい…のか?」
へえ…と聞き返しながら空を見上げた、空。空は表通りでも落第街でも変わらないもんだ
青い空に白い雲が流れている
13%
■『鮮色屋』 >
【 初対面の人に100も人の良いところを挙げるともなれば
それは中々に苦行になりそうだ。別に止めはしないが 】
あまりにも特徴の無い身体に顔、そこらへんの人と違う所といえば車椅子とスケッチボードに書く汚い字ぐらいだ
【 私も聞く限りは騒がしいと聞いている。
公安委員が負傷したとか、建物が炎上したとかなんとか 】
自分の仲間がしたことだが、自分がしたことではない。
もはやそれを気にする必要性も薄くなってきた。
【 冗談だ。そこまで本気にされるとこちらも困る
それともどうにか私を飛ばす方法でもあるというのか? 】
ただの冗談のつもりだったがどうやら真に受けられたらしい。
飛べたからといってどこかへ行きたい訳でもないし、何かしたい訳でもない為、実際に飛ばされると困るということもあるが
■影山過負荷 > 「まあ袖振り合うのも縁って言うじゃねえか
会った以上は紡がれる、縦に横にと柄を作るってな、それが人生ってもんだぜ」
前髪を鬱陶しそうにかきあげながら、そんな風に笑い続ける
「だよなあ、おっかねえ、まあ人間力を持つと気が大きくなんのかな
複数の人間がひとつの島に集まればそりゃあ軋轢も生まれるかもしんないし
そういう考えもわかんなくもねえけどさ、人間能力がどうじゃねえよ
能力があってもそうだな、まず、モテねえしな、へへ」
肩を竦め、そんな言葉をジョークめかして続ける
後半は実体験に基づいた話。
「そっか、そっか…だよなあ、なんかあんま余計なこと喋ったせいで変な気を使いそうになったぜ
え?ああ、うん、まあ、一応能力?とかでパーッと飛ばす事はできるよ
空を飛ぶと気持ちいいもんだよ、雲を固めてそれに乗ってフワーッて旅するカトゥーンがあるけどさ
アレよりはちょっと不自由だし、下を見るとそりゃあ気が弱けりゃフッと意識が飛ぶかもしんないけどさ
嫌な事とか、結構気になんなくなって面白いぜ」
下を指差し、そして上を指差すジェスチャ、それに呼応するように
自信の体がふわり、と少しだけ浮き上がって、な?と見下ろした
■『鮮色屋』 >
【 つまり私と出会う事が運命だったとでも
言いたいのか?
過程が過程が為に何とも難儀な運命だな。 】
男の笑顔を見るとどちらかといえば呆れ気味だが笑みを浮かべる。
【 生きている以上、夢を抱くのは人間として当然のこと
その過程で今ある自分の力、異能や魔術をどう駆使するか
そういうのも考えるのも楽しければ、
ひたすら上を目指すのも楽しいのだろう 】
【 ただ、間違いなく言えるのはモテるのは因果関係はない
絶対に 】
最後の一文だけ無駄に大きく強調するように書いている。
劇団内で恋愛沙汰なんて聞いたことはないし、そもそも自分には無縁な為にこの一文は全く根拠はないものだ
【 ほう?空に飛ばす事は出来るのか。
それなら布や物を飛ばす事も出来るだろう?
飛ばして貰っても良いか?少し時間はもらうことになるが 】
ふわりと浮かぶ男の姿を見ると、とても興味深そうに足元を見る。
確かに浮かんでいる。これがこの男の異能なのだろう、と理解するのは簡単だった
■影山過負荷 > 「えっ? いや…なんかそれは…下手なナンパみたいで恥ずかしいな…
まあ、なんだよ、でもまあ、そんな所だよ、フワッとしてっけどさ
元気なかったら大丈夫!って言ってやりたいだろ、根拠なんてなくてもさ」
相手が車椅子なので屈みこむような格好になるが、そんな風に言い
ようやく笑い返されたのを見て、目を細めた
「そうか?まあ夢ってのは悪い事じゃないけどなぁ…
人を怪我させちゃお終いだと思うんだよなあ…
うーん……まあおたくに言ってもしょうがない話だよな」
「つれないお言葉。」
最後の一文にはもうちょっと希望がほしかった
そんな事はないよとか、大丈夫イケてるよとか、まあ仕方ない
「布?とか…物?よくわかんないけど、ああ、出来るぜ
ただ、落下して危ないようなもんはあんまり飛ばせないし
無重量圏までは飛ばないと思うけどな…何か空の彼方にやっちまいたいものでもあるのか?」
すと…と軽い足音と共に着地すると、パンパンとスラックスをはたきながら
問いかける
■『鮮色屋』 >
【 縁という言葉を使うだけでナンパ文句としては十分だ
但し私はそんなものに引っかかるつもりもなければ予定もない 】
ふっ、と男の言葉を鼻で笑い飛ばす。
別段励まされたくてこの場を彷徨いていた訳ではないが、結果的に心は少し楽になった…気がする。
【 現実というものは常に非情なものだ
受け入れろ 】
良くある小説の一節にもありそうな一文を見せて男を諦めさせる。
実際にそれで諦めるかは分からないが、常人ならこれで諦めて欲しい
【 私が飛ばすのは…まぁ、鳥みたいなものだ
別に落下場所はどこでもいい。海でも島内でも
なんなら火事現場でもいい 】
不死鳥を飛ばす意味は全くない。寧ろ適当に飛ばされる事に意味がある
茶久は車椅子のもう一つのサイド、生地入れに触れればそこから様々な色の生地が飛び出す
最初に選ぶは朱色の生地。引き寄せるようにそれを触れれば朱色の生地は一本の糸へ変化する。
そしてその糸を裁縫道具より取り出した裁縫針に通し、一枚の白地の布に刺繍していく――とても手慣れた様子で一羽の朱い鳥が布に現れる
【 これを飛ばしてくれ 】
そう書いて朱い鳥が刺繍された布を手渡す
■影山過負荷 > 「そっか?いやあ、なんかまずい思いさせたかと思ってよ
まあこういうのはデリケートな話だったり、本人はどうとも思ってなかったり
むずかしい話だもんなあ、ハハ」
よかった、少なくとも変な人間だとか、不快だとは思われていないみたいだ
安堵するように息を付いて
「文字でしっかり見せられっと落ち込むなあ…」
俺、そんなにイケてないか?スッと手櫛で髪を少しといてみるが
別にそれで何か変わるわけではない
「鳥、ねえ……えっと、アレか、ワッペンみたいなもんか?
火事現場はちょっと…」
生きて羽ばたくアレか?と思い浮かべるが違うらしい
「へぇ…ちょっとしたモンだな…そりゃあなんだ、花嫁修業って奴なのか?」
朱い鳥の刺繍を受け取ると、それをまじまじと眺める、飛ばしてしまうのは勿体無い気もするが
掌にそれを載せると、目を瞑る
「行け………行け………」
ふわ…と周囲を不可視の力が渦巻き、掌に集中していく
刺繍の鳥は、その渦の力に乗せられ、運ばれるように空へと舞った
ふわ…と空を飛び、ある程度の高度まで乗ると、南風に乗って、どこかへと飛んでいく
「本当は、無闇に何かを打ち上げるモンじゃないけど…ま、アレぐらいはな…」
手でひさしを作って、飛んでいこうとしている鳥の刺繍を見上げる
■『鮮色屋』 >
【 不味いと思ってるなら私は逃げてる
寧ろお前は気にしすぎだ。モテたいのか? 】
こんなに欲に塗れてる男も中々見ない気がする。
いやまだ生易しいのかもしれないが
【 男の見た目はこんなフツウではない女より
公安の仲間の女に聞いた方が利口だぞ。
あいつらは素直に意見をぶつけてくるはずだ 】
あくまでイメージだが、意見の真っ直ぐさなら公安が一番だろう。
その真っ直ぐな意見にこの男の心が持ち堪えられるかは知らない
【 布一枚ぐらいで人に危害を加えられるはずはない
ただ内容が内容。それを見て嫌な気分になるやつはいるだろうが 】
風に乗ってどこかへ飛んで行く不死鳥を見送って大した事はしてないが、不思議と達成感を感じた。
不死鳥《fenice》は飛びだった。
それは海に墜ちるかもしれない。
それは地に墜ちるかもしれない。
それは空を長らく飛ぶかもしれない。
『鮮色屋』はどうでも良かった。
劇団フェニーチェの行き先は演者が決める事。
『鮮色屋』は『鮮色屋』らしく舞台を降りる事を決めた
【 改めて自己紹介をしようか
劇団フェニーチェの1人『鮮色屋』
公安なら名前ぐらいは聞いたことがあるだろう? 】
全て終わった。安らぎが混ざった表情を男に送る