2015/08/01 のログ
ご案内:「落第街大通り」に『墓掘り』さんが現れました。
『墓掘り』 > 落第街の通りにあるラーメンの屋台。
男はそこで、ラーメンを啜っていた。
どう味わってもインスタントラーメンと大差は無いが。

「――ふぅ」

溜息を吐く。

――不死鳥は地に堕ち。
団員は舞台から去るか、新しい舞台へと移っている。

そんな誰も居なくなった舞台で。
この男だけがまだ、最後のチェックをしている。
忘れ物は無いか、誰か残っていないか、客は全員帰ったか。
――まるで、舞台の残り香を惜しむかのように。

『墓掘り』 > 一条は新たな舞台――『脚本家』として誰かと対峙するのを選んだようだ。
『七色』『囚人』は、それぞれ彼女ららしい方法でフィナーレを飾った。
『鮮色屋』『伴奏者』は新たな道を見つけたようだ。結構な事だ。

「ごっそさん」

金を払い、ふらりと立ち上がる

『墓掘り』 > 一条と共に行く事は出来ない。
彼女が『脚本』で勝負するのなら、舞台監督である自分が出来る事は何も無い。

『七色』のような結末も選べない。
彼にはそれを為すだけの華やかさがない。

『鮮色屋』のような次の生き方も選べない。
彼には演劇以外の事は出来ないし、するつもりもない。

じゃあ、どうする。

「――墓掘りが死人になっちゃぁ、世話ぁないな」

『墓掘り』 > もっとも、彼がそれを心配する必要も無かったのかもしれない。

落第街の大通り。
土曜の夜は、どこも客引きと酒、女などを買おうとする連中で溢れている。
そんな人通りの多い場所で。

『墓堀り』とすれ違った、一人の男が。

あまりにも自然に。

その胸に。


「――あ?」


ナイフを、刺した。

『墓掘り』 > 「――ぁ」

刺した男の顔は見なかった。
それは余りにも自然で、殺意の欠片も無かったから。

しかし現実に。
『墓掘り』の胸には、無骨な大型ナイフが刺さっており。

「――――」

彼は物も言わず。
喧騒の大通りに、倒れ付した。


少し遅れて。
悲鳴が上がる。

『墓掘り』 > (――まぁ、俺にはこの程度がお似合いだよな)

彼が刺されて思ったのは。
ただ、それだけ。

刺した人間にも、刺すように命じた人間にも恨みは無い。
むしろ、有難いくらいだ。

(本当俺は、三文、役者、だ……)

そう、自分の幕すら引けない三文役者。
だが、それでも。

舞台のバラしは終わった。
劇場の明かりは落ちた。
演者たちは『次の舞台』へ向かった。

なら、彼の役目はここまでだ。
心残りがあるとすれば。

(――あいつの次の脚本、見たかった、かな)

そんな、僅かばかりの未練を抱いたまま。
彼は己の意識を暗闇の中へと投げ出した。

ご案内:「落第街大通り」から『墓掘り』さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に眠木 虚さんが現れました。