2015/08/27 のログ
ご案内:「落第街大通り」に虞淵さんが現れました。
■虞淵 > 「あ゛ー………」
歓楽街から落第街へと差し掛かる、大通りの1エリア
退屈そうに、男が薄汚れたベンチに腰をおろしている
「つまんねェな」
いい加減暴れたりなさも限界点だ
とはいえ此処へ戻ってきてから数ヶ月、さすがに以前を知らない連中も自分を見ると逃げ出すようになっている
獲物、いない
ご案内:「落第街大通り」に霜月 零さんが現れました。
■虞淵 > 気がつけばフィルタぎりぎりまで吸っていた煙草を放り捨て、踏み潰す
「昔はもうちょいと噛みかかってきた連中もいたもんだがな」
ぐ、っとその太い両腕を上げて背伸びしながら大欠伸をかく
■霜月 零 > 「……かったる」
溜め息。そもそもこんなところに普通用事などないのに、わざわざいやいや来ているのだから当然ともいえる。
何故来ているかと言えば、理由は妹の芙蓉。
妹がまた虞淵と遭遇し、結果戦えず、相楽満に助けられ逃走。その結果、風紀の活動を一時お休みするというのだ。
何だそれは、と言う話だが、妹が空けてしまった穴は兄が埋めなくては、と思い、自発的にこんなところでパトロールごっこなんてしているのである。
「クッソ、やっぱりトラウマになってんじゃねぇか……あの馬鹿」
溜め息をつきながら、大通りをけだるげに巡回する。
■虞淵 > 「ン」
視線に止まる人影
帯刀しているが、見ない顔だ
「(この学園都市で平然と刃物を帯刀か、風紀か公安か……)」
落第街の人間じゃないことは明らかだ
見たことのないツラだし、何より身なりがよすぎる
さて、コイツは遊べるヤツなのか、どうか
ベンチの上で足を組みつつ、零へと視線を送る───
■霜月 零 > 「はぁ……」
溜め息。本当に面倒臭い、こんなことを好き好んでやっていた妹の気がしれないかもしれない。
が、まあ妹の不始末は兄の不始末だろう……と自分を納得させていると、視線を感じてそちらを見る。
――瞬間、意識が凍った。
「――虞淵」
実際に顔を合わせたことはない。
が、悪鬼羅刹と成り果てていたころ、根源接続にて情報だけは得ていた。
落第街の暴虐の王。圧倒的な力と、超人的な技巧を持ち合わせるバケモノ。
そして……妹、芙蓉の純潔を奪い、トラウマを植え付けた張本人。
思わず視線が鋭くなる、努めて脇に置いていた復讐心が、鎌をもたげる。
そのまま射る様な目で、即座に臨戦態勢に入った。
■虞淵 > 「おう、風紀か公安か知らねェがご苦労なことだな、クク」
薄ら笑いを浮かべて、少し大きな声をかけた
二人の距離は、10メートルほどといったところだろうか
「教わらなかったのか?パトロールは三人組、最低でもペアでやれってよ」
突き刺さるような殺気を感じる
なるほど
理由はわからないが、この目の前の男はヤる気らしい
久々で嬉しくなってくる感覚だ、が…今はまだ圧し殺そう
ご馳走が現れたとはいってもすぐにがっつくのは品がない
■霜月 零 > 「残念だが、俺は風紀でも公安でもねぇよ」
刀に手をかけたまま、抑えきれぬ殺意と共に睨みつける。
「……霜月零。テメェに犯された霜月芙蓉の、兄だ」
それだけ。端的に、殺意を向ける理由を込めた自己紹介をする。
そう、妹を犯された。それだけで、もはや万死に値する。
■虞淵 > 「あぁ?」
なんだそりゃ、と言いたげな声をあげる
当然この男には、罪の意識すら存在していない
「女なんて年中喰ってるんだ、どこのどいつか知らねーが、落第街なんかに来る女が悪いんじゃねえかぁ?
……クック、それでお優しいお兄ちゃんが仇討ちにでも来たわけだ、泣かせるなぁオイ」
そこまで言って、男はゲラゲラと大声で笑い始める
家族愛などというものは、この暴君には理解できないものなのだ
■霜月 零 > 「ハッ、名前すら覚えてねぇか」
軽く笑いを零す。おかしくて笑っているのではなく、本当に様々な感情を含んだ、そんな笑い。
「仇討ちのためにわざわざ来たつもりはねぇが……ここであったが百年目、だ。落とし前はつけさせてもらうぞ……!」
刹那、目に蒼い燐光が灯る。
異能『根源接続・応報羅刹』、発動。
霜月零はこの瞬間……仇討のための鬼となった。
そして、更にその刹那、零の右手が奔る。
居合抜き……の、動作だが刀を抜いていない。
刀の抜き、に偽装して、その手は棒手裏剣を虞淵に向かって放っている。
勿論こんな小技、通じるわけもないが……あくまでそれは牽制。
顔面を狙ったその棒手裏剣の対応に少しでもまごつけば、そのまま踏み込んで本命の抜きを放たんとする二段構え。
――神道精武流、裏手『陰剣』
■虞淵 > 「落とし前、ねェ」
バンッ
大通りに響く大きな音
男が石畳に向けて、組んでいた足を振り下ろした音だ
砕け、舞い上がった石畳が棒手裏剣と衝突し、破砕する
「………ナマっちょろそうなツラぁしてるが、ま……妹のほうよりは楽しめそうだな」
依然男はベンチに座ったまま
青年の放つ殺気を肌で感じ、笑う
さあどうする?
牽制は牽制にならなかった
そのまま、踏み込んで一撃見舞ってみるかい?
それとも俺様が立ち上がるのを待ってみるか…
笑みは消えない
■霜月 零 > 「チッ」
小さく舌打ち。雑なようで無駄がなく、隙がない。
芙蓉の言が正しければ、なまなかな技では『見てから対応』されてしまう。
陰剣はほぼほぼ棒手裏剣を無駄にするだけに終わってしまった。
そのままわずかに考え、刀をその場で抜く。抜刀術に拘り選択肢を狭める意味はない。
だが、相手は座ったまま。初手の有利は一応こちらにある。
それを考えた上で……
「(……これだ!)」
零が選んだのは、突撃しての突き。
即座に間合いを詰め、そして『剣が届き手足が届かない距離』から、神速の三連突きを放つ。
それは「一度突いたと思ったら三度突いていた」と言う神速の連突きであり、一呼吸の間に顔面、喉、心臓をほぼ同時に突くという絶技。
わずかに腰を落とし、更に構えを下段に寄せる事で座ったままの虞淵の顔面、喉、心臓をほぼ同時に突き貫かんとする。
ただ手足を出して迎撃するなら、剣の方が先に届く。さりとて立ち上がれば、この突きに対応する時間が無くなるはずだ。
故に必勝。その理合に背中を押され、詰め寄り突きを放つ。
――天然理心流『無明三連突き』
■虞淵 > 「(へェ、殺気ギンギンの割には冷静じゃねェか)」
居合の構えから、抜身に切り替えた様子を見て感心する
怒り任せに抜刀を放つかと思っていたが、なるほど。
そう考えるに、比較的優秀な剣士だということがわかる
続く攻撃
踏み込みや起こりから、直線的な軌道なのは読める
見る間に詰まる互いの間合い
男が巨躯と言えど、刀に勝るリーチはもたない
ほぼ無防備のままに三段突きを喰らう───筈であった
「選択としちゃあ悪くなかったな。俺様の後ろが壁だったなら、だが」
神速の三段突きは手応えを返さない
ベンチが後方に30cmほど引き摺られた跡が、石畳に残されている
答えは単純だ
石畳を踏み割った足をそのままに突っ張り、座った姿勢のまま後方へ間合いを拡げた、ただそれだけ
そして
ゆっくりと男はベンチから立ち上がる
「遊んでも良さそうだな、お前」
間合いは、依然近いままだ
■霜月 零 > 「(ふざけんな!)」
内心毒づく。なんなんだ、あの回避行動は。埒外過ぎる。
が、無明三連突きが躱されようが、それで手詰まりになるほど霜月零は引き出しの少ない剣士ではない。
そもそも……一応は『神速』と謳われる技を目にして、ゆっくりと立ち上がるという行為に隙がある。
「遊んでも良さそう」と言い切る前。その時点で更に踏み込み、今度は上段からしゃがみ込む様にして打ち込む。
体ごと沈み込むことで、速度と威力を補強した必殺の唐竹割り。
ちょうど立ち上がった所に被さる様に、立ち上がるのを叩き落とすが如く。
霜月零の手持ちの技の中でも最速に近い打ちが放たれる。
――聖蓮流、雲耀之太刀『天雷』
■虞淵 > おっと、間髪いれずに来たか
たたっ斬る気満々だな、いいね
「おいおい、そんなモンでブッた斬られたら死んじまうだろ?」
男の軽口が振りかかる
振り下ろされた刃は男の肩口に届く前に、停止している
まるで空中で万力でも挟まれているかのように
男の凶悪な反射神経と握力によって挟み込まれている
それは白刃取り、などという技と呼べるようなものですらない
「それとも、ブッ殺してもいい…と思ってるのか?小僧」
楽しげに歪む口元を見せながら、その刃から手を離す
同時、瞬時にスウェーによって距離を取ると、男は腰を落として構えた
心意六合、男の愛用する型
「そう思ってるなら、お前にもブッ殺される覚悟があるんだろう、クク」
■霜月 零 > 「ハ、殺す気も殺される気もありません、っつって納得するタマでもねぇだろ。
それにだ……仇討、つってんだろ」
殺意は本気にして本物。今ここに、霜月零は『死合い』の覚悟で臨んでいる。
……そうしなければ呑まれかねない、と言うのもあるのだが。
神速の『天雷』を掴み取るなど異常にもほどがある。そして、構えは心意六合、中国拳法だ。
根源からの情報も、剣士としての直観も、間違いなくこう告げているのだ。
『この相手は、殺す気でやらねばやられる』と。
そして、その上で更に強気に構える。
構えは変則の右上段……否、右八双。
天を突くが如く真上に切っ先が向き、左足を前にしてわずかに腰を落とす。
その過程で、更に五感を調整。
味覚、嗅覚は不要。更に、視覚の中から色相情報を削減。
体を『日常生活用』から『戦闘用』に根本的にスイッチする、古流の技法。
根源に接続してやっと再現出来る無茶を、惜しまず使う。
備えは万全、後は間合いに入った瞬間、斬り落とすまで。
『二の太刀要らず』
そう謳われた、薩摩の剛剣において執られる一刀必殺の構え。
どこまで行っても、間合いの有利は剣士にある。ならば、最短最速最強の打ちで迎撃せんと備える。
――示現流『蜻蛉之構』
■虞淵 > 「クックッ、俺ァ単なる力比べも嫌いじゃねーぜ?…ま、人殺しの覚悟ができてるヤツに一々言うことでもねぇーな」
震脚一閃
まるで地面が揺れたかのような錯覚を伴わせ、更に深く構える
この構えから、いつでも最大最強の中段突き、所謂『崩拳』を繰り出すことができる
象徴とも言える、代表的な技
それもこの男の肉体を以てば人知を超えるものとなる
「さァて……『人間技』で、切り落とせるかな?」
男の眼がギラつく、次の瞬間
周囲の石畳が爆ぜる
まるで爆弾でも爆ぜたような衝撃と共に、ロケットが如き速度でその巨拳が、男の体が発射される───!!
■霜月 零 > まさに刹那。
巨体が動く……いや、霞む。
それをはっきりと『視て』、そして『左足を後ろに踏み込む』。
速い。まさしく神速、いやそれすらも超えるかもしれない。
故に、前に踏み込んでいては距離が足りない。だが、剣術は前に出るだけではない。
後ろに踏み込む、引き斬り。これにより半歩だが間合いを稼ぎ、そしてそこから放たれる一閃もまさに神速。
『左肱切断』と呼ばれる、独自の技法。
通常の剣術において太刀は左腕が主導して振るわれるが、示現流においては左腕はほぼ動かさず、左肱から先を無い物として扱い、それによって太刀の動きの自由度を損なう代わりに太刀の速度と戻りを速くしている。
自由度が損なわれる欠点も、この刹那の交差においては意味をなさない。速度と威力。ここに必要なのはその二つの要素だけ。
故に余分は省き、最短を駆け抜ける。
その太刀は『地軸の底まで打つ』イメージで放たれ、まさしく大地を割断せんと振り下ろされる。
狙いは放たれる中段突き、その腕。顔を狙っていたのでは間に合わない、攻撃時に突き出される腕を斬り伏せる事で先手を取る。
かの新撰組ですら「薩摩の剣士とは打ち合うな、初撃を外せ」と教えていたという、『雲』間より『耀』る日光の如き、光速に迫らんとする一閃。
「ちぃえぇぇぇえぇぇぇい!!!!!」
猿叫と呼ばれる大きな気合いの声と共に振るわれるその秘剣の名は。
――示現流『雲耀』
■虞淵 > 「───!」
そう来たか──
巨拳と、一閃の衝突
一瞬の交差、周囲にギャラリーがいたならば、目を疑ったであろう
巨躯の男が、その一瞬の後に後方へ大きく飛び退いたのだ
そして、互いが交差したその位置には、地面に赤黒い染みが増えている
「チッ」
大きく距離をとった男が右腕をあげる
太いその腕には斬傷が刻まれ、赤い血が流れ出している
「前に出るしかねェ構えに見えてその実、そういった動きもできるってワケか。よく出来てやがんな」
化け物の反射神経が、雷光の如き一撃よりも僅かに速かった
腕の傷も見た目より深くはなく、やがて血も止まる
「しかし妙なガキだな、構えには熟練、研鑽された古さがあるが振るう剣自体には年季が無ェ。ソイツがお前の異能ってヤツか?」
■霜月 零 > ち、と舌打ちしながら刀を軽く振り、血払いをする。それほど血液が付着していたわけではないのだが。
「……俺の異能は『根源接続』。この世の根源に接続し、情報を得て……剣術なら、この身を以て再現する。
俺が振るうのは『剣術』と言う歴史そのもの。剣が重ねてきた『剣史』とでも呼ぶべきもの。
確かに年季はねぇが、俺は俺の再現しうるあらゆる剣技を使う」
静かに告げる。目には蒼い燐光、根源との接続の証が灯っている。
「浅いが、まずは一当て……次は、仕留める」
蒼い目線は貫くが如く。変わらぬ気迫を以て、虞淵を睨みつける。
■虞淵 > 「成る程ね」
くつくつと笑みを浮かべながら、零の言葉を聞く
腕に伝う血を舐り、こちらも零を睨みつけた
「剣の歴史、そりゃ大層なモンだな、まぁ、だが………」
ズン
再び震脚と共に、先程よりもかなり低い耐性に構える
「その剣の記憶とやらの中には、ここ最近になってようやく現れた人類史上最強の身体能力を持つ者を相手取った記憶はねェだろう?」
深く、深く
それはまるで地に伏せ、獲物を狙う虎が如く
「───伏虎」
その鋭さは、獲物へと飛びかかる虎が如く
「輪転爪蹴───!!」
その姿は獲物へと何度も爪を振り下ろす虎が如く
表現するならば、パワーショベルの重さを持ったカミソリ
そんな蹴りの嵐が幾重にも、零へと振りかかる!!
■霜月 零 > 「……!」
臨戦態勢は維持していた。
異能により五感は鋭くなり、さらにそれを限定化することにより人智を超えた領域に至っていたはずだ。
なのに、思考が、認識が追いつかなかった。
猛虎の如き連撃、それは寧ろ、八岐大蛇が如く。
だが、それを認識する前に『体が動いた』。
取った行動は防御。
刀で以て流し、逸らし、いなし、それでも防ぎきれない蹴りを腰から抜き放った小太刀で受け。
それでもなお体中に裂傷を負い、刀も小太刀もボロボロになりながらも、弾き出される様にして、その連撃の間合いから体は逃れんとしている。
認識すら追いつかぬ刹那、鍛えた体が覚えていた技術と、根源の情報が合わさり、限定的に剣境を再現する。
一刀流開祖、伊東一刀斎が更なる奥義を求め鶴岡八幡宮に断食や水垢離を含む参籠をし、満願日を迎えても神託を得る事が出来ず失意のまま帰路に付こうとした時、突如襲い掛かって来た男を何を感じるもなくただ夢想のままに斬った事で開眼した剣境。
一切の雑念なく、ただその場の状況に対し、思考よりも体が先に的確な判断を行い実践するこの剣境において、全ての太刀は揺るぎなく、また起こりが速い。
見て考えて動くのではなく、認識より早く体が動き、状況に適した行動を選択する奥義。
―― 一刀流、剣境『夢想剣』
■虞淵 > 「───はっ、少しは熱くなったっていいんだぜオイ、妹の敵討なんだろォ?」
両足からぶすぶすと摩擦熱による煙を燻らせながら、爪牙の檻から逃れた零を見やる
「そっちのほうがシチュエーション的には燃えねェかァ?
怒りが足りねェってなら、オマエの妹の抱き心地でも語ってやろうか?ククッ」
■霜月 零 > 「あいにく、この異能のせいで俺の感情はある程度フラットに固定されるんでな……」
最早人を斬る機能を失ってしまった太刀と小太刀を鞘に納め、最後の小太刀を抜き放つ。
が、体はボロボロ。今の一撃だけで、かなりのダメージを負ってしまった。
「(クソ、これじゃあ……!)」
勝てない。
いくら夢想剣があろうと、手元にあるのは小太刀一本。間合いの利をほとんど失い、体はボロボロ。
異能により強制的に冷やされた頭が、状況を冷徹に判断していた。
「(どうする……!)」
小太刀を向け、必死に思考する。だが『技術』を以てしても『肉体』の差を埋めきれない。
答えを導き出せぬまま、構えてそれで止まってしまっていた。
■虞淵 > 「へェ、そいつぁちっとばかしつまんねェ異能だな。
こんなにも盛り上がる戦いを楽しめねェなんてよォ」
巨躯が笑う、しかしその笑みはどことなく、気落ちを含んでいた
「オマエがそんな異能なんてモノもってなきゃ、過去の遺産なんざ超えた剣豪にもなれたかもしれねェのにな」
もったいねぇ、と吐き捨て、男は構える
最初と同じ、あのロケット砲のような崩拳を繰り出す構えだ
「さぁて…テメェのフィジカルじゃ間違いなく死ぬ一撃だが、どうする?
俺としては異脳なんざに頼らねェテメエ自身の剣にも興味はあるんだぜ、ガキ」
言っているのだ、この男は
今は見逃してやる、と
■霜月 零 > 「(ちぃっ……!)」
冷えた頭が断言する。今は逃げるべきだ、と。
だが、その中で、零の自我が吠える。妹の仇を前に背を向けるのか、と。
「(どうする、どうする……!)」
実力が足りない。武器も足りない。
零の得手はやはりどこまで行っても太刀術。小太刀も二刀ならともかく、一刀はそこまで得意ではない。
根源接続で技を取り入れても、本体の得手不得手は多少なりとも反映される。その多少は、この相手には十分致命的だ。
……脳裏に、ある日の光景がフラッシュバックする。
妹が犯され、委員会街で保護されたあの日。自分が悪鬼羅刹となろうとも応報すると誓ったあの日。
その記憶は、異能の枷を超えて零の感情を爆発させようとし……
「(……)」
その瞬間、二人の女性の顔が頭に浮かんだ。
『もう復讐はやめだ』
そう告げた日の、安堵した妹の顔。
『俺は、お前に惚れちまった』
そう告げた日の、驚いたような恋人の顔。
「(ダメ、だ……!)」
死ねない。こんな所で、自分は死ぬわけにはいかない。今ここで死んだら、最も泣かせたくない二人を泣かせてしまう。
「ちく、しょう……!」
屈辱はある。だが、異能による強制的な冷却ではなく、零自身の意思によって、撤退を選択する。
その為に、一手。
通常の『剣術』ではなく、未だ練習中で不完全だが、剣術を超えるために編み出された技術。
燐光は消え、異能の力を借りておらずとも……零自身の手で学んできた剣技。
もう一つの手札である巫術と剣術を組み合わせた、霜月流『巫刀術』。
小太刀に手早く金行を集める。そして……
「畜生ッ……!」
届かない距離から、真横に振るう。
当然小太刀は届かないが……その軌道をなぞるような、三日月形の金行の刃が構えを取る虞淵めがけて飛んでいく。
これは撤退のための一手。一瞬の時間を稼ぎ、その時間を全て逃走に使うための一手。
目の前の屈辱よりも……生きる明日を選ぶ、矮小だが大きな一手。
――霜月流巫刀術『飛月』
■虞淵 > 「───フン」
豪腕を真横に薙ぎ払う
それだけで、自身へと飛来した刃は脆くも弾け飛ぶ
が、男本人にも今の攻撃の意味は、理解っている
「なァ小僧、一つだけ良いことを教えてやるよ。
俺ァ幾度と無く喧嘩に明け暮れてきたが、ブン殴ってもブン殴っても倒れないってヤツがいるんだぜ、この俺様に殴られても、だ。
テメェが今後も剣振り回して生きるってんなら覚えとくといいぜ。
最初に見るべきはソイツの体躯でも、構えでもねぇ、背後だ」
ガツンガツンと安全靴が石畳を叩く
「そいつの背後に何があるかでソイツの根底的な強さが決まる。
クック、オマエがたったひとりでこなきゃア、結果は違ったかもなァ」
塵になって消え去る刃の向こうへ、そう言葉を投げかけた
■霜月 零 > 「……」
言葉は返さない。ただ、胸にだけ刻んでいく。
次の機会があるかはわからない。次はなく、今度交わることはないのかもしれないし、また結局戦うのかもしれない。
だがその言葉は、不思議な重みがあった。屈辱と共にその言葉を胸に刻み、必死に逃走する。
帰るべき場所に、帰る為に。
ご案内:「落第街大通り」から霜月 零さんが去りました。
■虞淵 > そう、背後に何があるかで決まる
自分の背後には
「クックッ、ま…なぁんにもねェってのも寂しいもんだぜ」
踵を返す
そこそこに歯ごたえのある相手だった
しっかりと準備し、再度やれば…結果はわからないかもしれない
そんな空想に口元を歪ませて、男は落第街の闇へと消える───
ご案内:「落第街大通り」から虞淵さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に洲崎さんが現れました。
ご案内:「落第街大通り」から洲崎さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に洲崎さんが現れました。
■洲崎 > 「みんな大げさすぎるよねー♪」
棒付きキャンディを口に入れながら大通りを歩く白衣の男
その表情には笑顔が浮かびまるで子供の様で
「違反者が殺気立ってるなんていつもの事だし、それぐらいで出歩くのもやめとこうなんて…
皆科学者らしく勇気を持てばいいのに。」
つい先日起こった風紀委員の施設に対する襲撃それによる脱獄者
そしてそれを白血球よろしく異物として攻撃する悪い輩
■洲崎 > 「そんなので引き下がってたら素敵な出会いはなくなっちゃうよ。
それに最近猫ちゃんとデートもできてないし、面白い子も見かけないし…
僕のストレスはもう有頂天だからね、そろそろ発散しないとヤヴァイ」
ガリガリとキャンディを噛み砕き周りを見やる
歓楽街だけあってちらほらと面白そうな人物も居るし
美しいや可愛いと言ってさしさわりのない女性も居るには居る…が
■洲崎 > 「んー…なんかこうビビッとくる子は居ないかなぁ…」
態々声をかけるまでには至らず頭を掻く
刺激が足りない
好奇心を満たしたい
そんな色々な意味を含めての素敵な出会い
それを探すようにふらりふらりと通りを歩く
■洲崎 > 「ヤバい、居ない…」
ブラブラと通りを歩き偶に路地も覗いてみたが、自分が望むような者は居なかった
「んぁー…脱獄したって聞いたから何か凄いのを想像してたのに、
居ないじゃーん…」
そんな事を呟いて落ち込む
はぁ…と大きなため息をつきこれからどうしようか頭を働かせる
■洲崎 > 「路地裏なら何か発見があるかな?
それとも委員会街の方か…んー、悩むなぁ。」
どちらに行けば面白いか
そんな事を考えながら一先ず通りを離れる
ここには特に面白い物はない様だから
ご案内:「落第街大通り」から洲崎さんが去りました。