2015/08/28 のログ
ご案内:「落第街大通り」に鏑木 ヤエさんが現れました。
鏑木 ヤエ > (深夜の落第街。
 悪鬼羅刹蔓延る夜の街にそぐわない様相の少女が上機嫌で踵の高いヒールを鳴らす。
 
 白いシャツに胸元には垂れたリボン。
 コルセットスカートに赤いカーディガン。濁ったクリーム色の腰まで伸びた髪に鮮やかな紫の瞳)

「いやあ、今日もいつも通りにクソほどツマンネー街ですね。
 むしろいつも通りじゃなかったらあの偉そうなフーキの人らが出てくるからこれでも構いませんけど」

(ふああ、と大きく欠伸。
 時折わふわふと手を口に当てて遊びながら、何も持たず。
 その身一つでご機嫌な散歩を楽しんでいた)

(じろり、向けられる視線が刺さるも気にする様子はさらさらない)

鏑木 ヤエ > (どん。小柄な体躯が揺らいだ。
 前を見ずに歩いていれば間違いなく誰かとぶつかるというもの。
 前を見て歩いていても難癖をつけられるこの街じゃあ当たり前極まりない。
 落とした携帯端末に土が被った)

「やあ、どうも。やえですが。
 なにをお望みですか、お金ですか、それともやえの身体ですか」

(無表情を貫いたまま、甘ったるい声で囁く。
 自分よりも30センチ以上背の高い男に対して不遜な態度を変える心算はないらしい)

「わかってんならなァ、お詫びしてもらわないといけないよなあ?」

(嫌らしい、下卑た笑みを浮かべる男とただただ無表情で言葉を並べる少女。
 実にわざとらしく、実に適当に)

「きゃー、やえの処女がこんな童貞くさいヤツに奪われちゃいますー、きゃー」

(雑だ)

鏑木 ヤエ > (男は呆れたように少女を見下した。
 身長的にも言動的にも当然疑う余地もなく当たり前極まりないそれだった)

「あ、ぶたないでくださいね。たぶん父さんにぶたれたことはないでしょうから。
 あとやえ、痛いのは嫌いなんですよ。勘弁してください」

(随分と図々しい少女に手を上げる気も、ここからホテルに連れ込む意思も削がれたのか。
 「手前ェは今いくら持ってんだ」、と最低限不良の皮を取り繕った発言を。
 相対する少女はそんな男の様子を知ったこともない。ずい、と猫の顔を模した財布を差し出した)

「はい、好きなだけ持って行ってもらって構いませんので。
 元から大してないのであってもなくても変わりませんし、尚且つやえとヤりたいなんてことは言わないでしょう」

「るせェ、手前はもっとビビッてろよ」

(乱雑に差し出された財布をばっと奪う。
 趣味が悪く、猫の口を開くタイプの財布にまた興を削がれていく。男の表情に影が差す。
 猫の口の中に存在していた残金は100円玉と4円だけ。
 目の前にはドヤ顔でただ男の瞳を覗き込む鮮やかな紫水晶)

「さあ、持っていくといいですよ。やえの貴重な104円です」

(男は無言で少女の顔に財布を投げつけ、あからさまにいやそうな顔と舌打ちを残して背を向けた)

鏑木 ヤエ > (その瞬間。
 ほんの一瞬の出来事。満足そうに財布をカーディガンのポケットに仕舞った次の瞬間。
 少女は音もなく地面に適当に刺されただけの標識を引き抜いた。
 生活委員の整備したであろうその落第街の看板を、ひとえに、)

「相手がわるかったですね、やえに喧嘩を売るなどたぶん二千年くらいはえーですよ」

(鈍い音がした)

「………、やえの残金で笑ったくせにてめーも中々金欠学生じゃねーですか」

(後頭部を思い切り叩かれて泡を吐く男のジーパンのポケットに挟まれていた長財布を手に。
 実に不満そうな声をあげて、)

「千円だけ無限に借りてきますよ、やえは明日の飯もねーんです」

(ひょい、と。
 見覚えのある肖像を一枚だけ抜き取って元のポケットにきちんと戻す。
 伸びている間に誰かに抜かれても知ったことではない。
 あくまで彼女の管轄内は借りた一枚のみだ)

(申し訳程度に引き抜いた標識を元の場所に埋めてぺたぺたと地面の砂を固める。
 律儀なんだか、頭がいいんだか悪いんだかわかったことじゃない。
 ただ、満足そうに埋め終わればそのまま落第街の大通りを、何事もなかったかのように歩むのだ)

ご案内:「落第街大通り」から鏑木 ヤエさんが去りました。