2015/09/05 のログ
ご案内:「落第街大通り」にダナエさんが現れました。
■ダナエ > 落第街の大通りの端。
蓋のない側溝は何年も清掃されていないらしく腐臭を放ち、
近くの店の軒先には蚊柱が立っている。
──ゴッ……ゴス…… ゴッ……ゴス……
ゴッ……ゴス…… ゴッ……ゴス……
海底の岩のような分厚い全身鎧の異形の重騎士が、
通行人の好奇と嘲りの視線を背負って道の向こうから歩いてくる。
兜の面甲に覆われて外から顔は見えないが、
面甲の下では眉間に思いっきり皺が寄っている。
ロストサインについての情報を集めるべく、
悪人の情報は悪人の集う街で──と落第街へ来たのはいいのだが。
聞き込みに不向きなこの姿、
ここに来るまで一体何人の通行人にからかいの言葉を浴びせられ、
絡まれかけただろうか。
退廃的な街。反社会的な街。非衛生的な街。
騎士はこの落第街の、何もかもが気に入らない。
■ダナエ > 通りの空き地でビールケースに腰掛けて酒をすすっていた男に、
仕方なく、本当に仕方なく声を掛ける。
「……昼間から楽しそうだな」
思わず嫌味になってしまう。聞き込みに不向きなこの性格。
当然ながら、白髪混じりの男はあぁん!?と気色ばんだ。
おい鎧が喋ったぞ、と白髪の男と同席の男が笑った。
長髪を後ろで一つに束ねたこの男も、十分に酔っている。
「……いや、すまなかった。
仕事の疲れを酒で癒すのは別に悪いことではない」
面甲を上げて顔を出し、怪しい者ではないと謝る。
が、なんなんだおめーはよぅ!という至極もっともなお言葉を頂く。
「ああ、いや…………人探しを、しているのだ。
ろすとさいん、という組織に聞き覚えはないか?」
間髪入れず、知らねえよバーカ!という返答。
そもそも聞く相手を間違えている。罵りの言葉にぐっと耐え、
「……そうか」
踵を返そうとしたところで、
長髪の男が知ってるぜ、と声を掛けてくる。
「本当か!? 詳しく教えてくれ」
振り返り尋ねると、長髪の男はそんじゃ一杯おごってもらおうか、
と空になったコップを左右に振った。
長髪の男の表情と口調からすると、ただ酒を奢らせたいだけで
本当にロストサインについて知っている可能性は低いのだが、
人間の心の機微に疎いので気付けずに慌てて店員を呼ぶ。
■ダナエ > 「すまない、酒を頼む」
注文すると、長髪の男がすかさず日本酒の銘柄を店員に指定した。
この店では一番高い酒であることを、騎士は知らない。
その後──
騎士はロストサインの情報は一つも得られず、
残金が二桁というほうほうの体で落第街を後にしたという。
もちろん、ロストサインの情報を持っていると騙したことには
それなりの代償は頂いた。
長髪の男は今日からは、ざんばら髪の男と呼ばれることだろう。
ご案内:「落第街大通り」からダナエさんが去りました。