2016/06/21 のログ
ご案内:「落第街大通り」にクローデットさんが現れました。
■クローデット > 黄昏時から、夜に向かおうという狭間。
故郷の欧州ほどではないが、それなりに陽は長いため、既に夕飯時くらいの時間だ。
(落第街で奇妙な出来事が増えているから巡回を増やせ、ですか…
「ヒト」が絡まない怪異など、公安委員会(あたくしたち)の管轄ではないでしょうに)
公安委員会が守るのは、基本的に学園都市の「体制」だ。
なれば、「体制」に脅威になり得ない脅威は管轄外だし…何より、クローデットの「望み」的にも相手をして面白くないのである。
(憎悪の連鎖を招かぬ事象に対処する意味など、ありませんのに)
事件が降ってくればそれなりに楽しめるのかもしれないが…余計な仕事を増やされたことの方が、クローデットには不愉快だった。
■クローデット > やや不機嫌な表情で、大通りを悠々と歩いていく。
クローデットの姿と名は裏の街の住人にもそれなりに知られていて…拙いなりに対策を試みる者達も現れたところである。
それでも、公安委員と見ていきなり牙を剥く者はなかなか現れない。
…生死はともかく、ろくな目に遭わないのは分かりきっていたから。
ご案内:「落第街大通り」にマリアさんが現れました。
■マリア > そんな貴女の眼前で,怪しげな店からふらりと通りに出てくる人影。
その“少女”は,気配に気づいたのか貴女の方を見る。
「あら……?」
そして,僅かに目を細めて,足を止めた。
艶やかなプラチナのロングヘアは薄暗い時間でも良く目立つ。
周囲に明かりが少ない分,“少女”の髪や肌の色は一層際立って見えるだろう。
“少女”は歩いてくる貴女の方をじっと見たまま,道をあけようともせず,茫然と立っている。
■クローデット > (全く…余計な仕事を増やされるくらいなら魔術の探究に時間を使いたいくらいですのに)
そんなことを考えながら歩いていると…大通りの一角の怪しげな店から、ふらりと通りに躍り出る人影。
クローデットより小柄な…少女、に見える人物。
「…あら」
茫然とクローデットの前に立つその人物に…場違いに柔らかく、艶のある微笑を見せた後。
「…あなた、こちらで何をしていらしたの?」
そう、女性らしく柔らかな声で語りかけながら、堂々と近づいていく。
■マリア > その店は外から覗いただけでも,明らかに非合法な商売をしていると分かる。
具体的には,禁止されている薬物や密輸品,二級学生向けの武器などを売っている……まぁ、この街では珍しくもない裏の店だ。
「あ,私,このお店で働かせていただいていますの。」
さらりと言ってのける。仕事内容までは語らなかったが,後ろめたさも感じられない。
そしてやはり,クローデットをまっすぐに見つめ…
「……なんだか顔色が良くないですけど,大丈夫ですか?」
歩いてくるときの不機嫌な表情を見ていたからだろうか,
“少女”はあまりにもこの状況に似つかわしくない言葉を,クローデットへと向けた。
■クローデット > 明らかに非合法な商売の店。
そして、そこで「働いている」と…よりによって「公安委員の目の前で」断言したこの人物。
「………あら、そうでしたの」
(………正気かしら?)
酷いことを考えるクローデットだが、まあ表向きには笑みが少し不穏な方向に深まった程度だ。
艶が凄絶な方向に割り増しなので、気弱な人間が見ればびびる程度の事にはなっているが。
「したいことの時間を潰されて仕事に回されてしまって、少々不満を抱えている程度ですわ。
あたくし、魔法薬学も嗜み程度に学んでおりますので、体調は万全ですの」
笑みから、不穏さが一旦消える。
…そう、「物理的な」体調面のクローデットの自己管理は完璧だ。
「…あなたの方こそ、「大丈夫ですか」?」
「大丈夫ですか」の言葉には、よほど勘が鋭くない限り含みは感じられないだろう。
しかし、笑みには艶が戻っている。
…恐らく、この「少女」が慣れていないタイプの表情だろう。
■マリア > 断言した“少女”の方は,事の重大さに全く気付いていない様子だった。
相手が公安委員だと認識していないのかも知れない。
クローデットの笑みにも,特に気圧される様子はない。
「あらあら、それは大変ですわねぇ……ふふふ、本当に“少々”でしたらいいのですけれど。
………それにしても魔法って、凄い技術ですのね。」
素直に感心する。この“少女”の体調は…一見しても万全とは言い難いだろう。
元より体力のある方ではないが,この街での労働によってか,その表情には疲労の色が浮かんでいる。
だからこそ,クローデットの言葉の含みにはまったく気づくことも無く。
ただ、純粋にその言葉の意味だけを,受け止めた。
「………少し疲れてますけど,大丈夫ですわ。
あ…と、お仕事のお邪魔をしてしまってごめんなさい。」
…僅かに動揺したように見えるのは,気のせいではないだろう。
こんな表情を向けられることに慣れている人間なんてそうは居ない。
ましてや,外の世界を知らずに育ったこの“少女”なのだから。
■クローデット > 「ええ…「丁寧に学びさえすれば」、適性こそありますけれど全く学び取れない者の方が少ない、「ヒト」が誇る「技術」の一つですわ」
魔法について感心されれば、そう応じて花が綻ぶような笑みを浮かべる。
先ほどまでと比べると、幾分平和な微笑みである。
「…あたくしの心配より、ご自身の心配をなさった方がよろしいのではないかしら。
あたくしの仕事のことも…「お気になさらないで結構ですわ」」
そう言って不意に柔らかく笑むと、「少女」の手を優しく取ろうとする。
白磁めいて美しい、女性らしくも作り物めいた手だが…触れれば、それなりのぬくもりを感じることが出来るだろう。
その傍らで、右手の小指の指輪に仕込んだ探査魔術を、密かに少女が出て来た店に向ける。
少なくても表向きは大きな店ではないが、どんな隠し球があるか分からない。
周辺の数件の建物と…建物の天辺から上に10mと、地下10mくらいを含む立方体くらいの大きさで、詳細な探査をかけた。
そこまで多くはないが、探査範囲が広い割に細かい分、魔力を使っている。
間近で魔術の操作が行われているこの少女か…あるいは、それらの建物の中に魔力への感受性が高い者がいれば、何らかの干渉に気付くかもしれない。
■マリア > 「それじゃ,貴女は“丁寧に学んで”いるのね。私にもできるかしら…?」
そうとだけ言って,くすっと笑う。魔法を使うだなんて,夢物語としか思えなかった。
尤もこの“少女”は自覚していないだけで,既に魔術にも目覚めているのだが…
「……私の心配,ですか?」
その手を取られれば,ぴくりと身体を震わせた。
それ以上の反応を返すことは無かったが…紅色の瞳が,柔らかく笑んだクローデットを見やる。
……密かに発動された魔術に,この少女が気付くことはないだろう。
魔力の余波を受けて僅かに“違和感を感じる”程度である。
同様にして,どうやら建物の中にも干渉に気付くことのできる才能を持った者は居ないようだった。
店内は表向き,雑貨屋のようだった。
だが,地下に部屋が用意されており,非合法な薬物や正規ルートで手に入れられない者のための医薬品を扱っている。
また,さらに奥では護身用と呼ぶには少々物々しい武器の類を並べた部屋もあるようだ。
……ありがちな密輸品の店である。
「………どうしましたの…?」
貴方の行動に不自然な間を感じたか,取られたてを振りほどくこともできずそのままの状態で“少女”は問いかけた。
■クローデット > 「ええ…魔力に乏しい者にも扱う手段はありますし、きっと、何かは」
そう言って優しく笑みかける。
目の前の人物についても、突然建物から出て来た関係上、軽くだが最初に探査をかけている。素養の存在自体は認めていた。そして…それ以外のことにも、気付いていた。
…だが、それを悟らせないために、言葉は濁す。
相手が自分に手を取られて、びくりとする様に、くすりと悪戯めいた微笑を口元だけで零す。
探査の結果は、ごくごくつまらないものだった。よくある、密輸品の類の店。
物々しい武器や非合法な薬物はあるが…規模も、優先して潰すほどのものでもない。
密輸の元を辿って面白い場所に行けるかも、微妙なところだった。
(あら、つまらない。
………けれど………)
自分と触れ合う「少女」の存在が、クローデットに「楽しみ」をもたらした。
「無知」は、「無垢」ではなく「野蛮」なのだから。
「…いいえ、大したことではございませんの。
…あなた、疲れるくらい「お仕事」を頑張っていらっしゃるようですし、よほど「働き者」なのでしょうね。
普段の仕事ぶりについて、是非お話を伺いたいですわ」
そう言って、花のほころぶような笑みを浮かべてはいるが…取ったマリアの手を、優しくだが両手で包もうとする。
簡単には、開放してくれない雰囲気があった。
■マリア > その右手を握られたまま。
決して縛り付けらえているわけではないが,“少女”は確かに捕えられていた。
クローデットが“気付いている”ことに“気付く”など,この“少女”には不可能な事だった。
「……魔術の授業,色々ありましたけど目移りしてしまって。
何か,おすすめの授業なんてありません?」
相手の雰囲気に飲み込まれないように,穏やかに笑って問いかける。
けれどその右手に,クローデットがさらにもう片方の手を重ねれば…
「…大したことはしてませんわ。私、このお店の用心棒みたいなものですの。
だから、平和な日はずっとここに居るだけですし……」
…この“少女”は明らかに動揺していた。
その理由さえ,自分自身では理解できないままに。
■クローデット > 「そうですわね…
理論を読み解くのが得意でしたら、獅南蒼二先生の魔術学概論、
理数系が得意でいらっしゃって、魔力の素養に自信がなければ雪城括流先生の魔方陣学、
魔術を感覚で扱ってみたいのであれば、コゼット・アルゼラーテ先生の元素魔術。
魔法薬学も、多少化学の素養が必要ですが魔力の素養はさほど問われませんわね。
…いずれも当てはまらなければ、魔術語入門でしょうか」
オススメを聞かれれば、すらすらと列挙する。魔術関連の講義で、めぼしいものは大体覚えてしまっているのだ。
「あら…この区画で用心棒だなんて、そのお身体で大変ですこと。
…お店から出ていらしたところを拝見しましたし…今日はもうおしまいでしょうか?」
気遣わしげに目を伏せながら…口元では柔らかい笑みを作り、そして腰を優美に軽く折って「少女」に少しだけ顔を寄せる。
「もし今日はおしまいなのでしたら、お近くまでお送り致しますわ」
そう言って、柔らかく微笑む。顔を、少し近づけたまま。
「少女」の動揺を楽しむ内心を、おくびにも出さずに。
■マリア > 流石に,一挙に羅列されるとは予想していなかった。
さらに言えば,これまで経験した事のないような,焦りがあるのも事実で…
「……私、あまり勉学が得意ではありませんので、
その中なら,コゼット先生の授業が一番合っているかもしれませんわ。」
…そう答えるのがやっとであった。
眼前の女性が“怖い”わけではない。
けれど,確かに今,“少女”はこの場から逃げ出したい。と感じていた。
「えぇ…もう店も閉まりますし……。」
声が僅かに震える。
僅かに寄せられたクローデットの柔らかな笑み。
…右手がじんわりと,汗ばんでいくのが自分でもわかる。
「……い、いえ、そんなお気遣いされなくても平気ですわ。
私の家,ここからそう遠くはありませんし……それに……」
…この場から,クローデットから逃れるべく言い訳を考えたが,咄嗟には思い浮かばなかった。
数秒の沈黙の後に,困惑した表情で貴女から視線を逸らすのみ。
■クローデット > 「少々、素養で差が出てしまいますけれど…それでも、習得自体はある程度可能なようですから、悪くはないかと存じますわ。
並行して、魔術に関係のあるお勉強も履修されると良いかもしれませんわね。
数学、物理、化学…治癒を学びたいのでしたら生物もでしょうか」
にこにこと、「比較的」邪気のない笑みを浮かべながら。
それでも、マリアの動揺は、しっかりとその目に捉えていた。
「あら…この界隈にしては、随分早くお店が閉まりますのね。
あまり大きいお店ではありませんから、治安上の意味もあるのかもしれませんが」
もちろん、マリアの手を包むクローデットの手にも、そのじんわりとした湿り気は伝わってくる。
…が、まるで何でもないかのように振る舞ってみせて。
「お仕事でお疲れでしょう?無理はなさらない方がよろしいですわ。
…この辺り、最近今までにも増して物騒なようですから」
「だからあたくしがこうして職務に当たっているのですし」と、「少女」の手を包む両の手に、今までより少しだけ…やんわりと、力をこめた。
■マリア > 逃げ出したくとも,強引に振り払う訳にもいかない。
クローデットの柔らかな笑みがそれを許さないのもあるが,一方で,どう足掻いても逃げられないと思わせるだけの何かがあった。
「折角ですし,魔術の授業は受けてみようと思います。
貴女みたいに使いこなせるかどうか,自信はありませんけれど。
でも……ごめんなさい,一度に言われてしまうと,覚えきれませんわ。」
治安上の意味、というクローデットの推論に小さく頷いて…
…自分を落ち着かせようと,小さく息を吐いた。
「そう言っていただけるのは,本当にありがたいのですけれど…
…したいことの時間が潰されたって,先ほどおっしゃってらしたじゃないですの。」
何を言おうと,右手を包む柔らかなクローデットの指が開くことはなく,
そのか細い牢獄に包まれた汗ばむ自分の手のひらが,何故だか妙に恥ずかしく思えてきた。
■クローデット > 「あら…申し訳ございません。魔術のこととなると、つい」
「覚えきれない」と言われれば、そう言って申し訳なさそうに伏し目がちにしながら、口元では笑みを絶やさない。
「シラバスには、魔術の授業を受ける前提知識として必要だったり、受講を推奨する科目の案内が記載されていると思いますから…そういったものを参照なさるとよろしいかと存じますわ」
それでも、助言は忘れなかった。
…そして、なおも固辞する「少女」に対して、ふわりと笑んでみせた後…
「…本当に、お気にならさないで下さい」
すっと、耳元に顔を寄せて。
「あなたにお会い出来ただけで、時間は取り戻せましたから」
そう、「少女」にしか聞こえないだろう大きさの声で囁いた。
口元には、艶のある微笑を湛えたまま。
■マリア > 貴女の口ぶりや,その知識量からも“魔術”へ傾ける意識の高さは十分に伝わってきた。
だからこそ,その言葉には信頼がおけるし,その助言は覚えておくべきなのだと思える。
普段なら、そう思えただろう。
努めて普段通りに振る舞おうとしている今は,表面上だけ,そう取り繕うことが精いっぱいで,それさえもできているかどうか怪しかった。
殊に、耳元でに顔を寄せた貴女に,優しく囁かれれば…
…この“少女”はピクリと身体を震わせて,
「…い,意味が分かりませんわ。そんな風に,からかわないで下さい。」
必死に動揺を隠そうとしていた。
けれど,声がすこしだけ大きくなったところからも,“少女”の動揺は貴女に伝わるだろう。
“少女”はもはや無抵抗で,包まれたその手のひらだけが僅かに震えていた。
■クローデット > くすくすと楽しげに笑いながら、顔を「少女」の耳から離す。
「ふふふ、申し訳ありません。
…しかし、嘘は申し上げておりませんわ」
そう、嘘ではないのだ。
非合法な店と、その働き手…用心棒で魔術に疎いとなれば、恐らく異能者(バケモノ)…の存在を知ったことも。
その用心棒が、あくまでも「少女」として振る舞おうとする、「そうでないもの」であることも。
「…申し遅れましたけれど、あたくし、クローデット・ルナンと申します。
この区画を出るまでは、送らせて下さいね」
少しだけ「少女」の正面から顔を少しだけ寄せて、軽く首を傾げながら品と艶のある微笑を浮かべる。無論、手は握ったままだ。
クローデットの名と姿は、裏の街の住人にはそれなりに知られているはずだが、この「少女」はどう出るか。
■マリア > “少女”は何もわかっていない。
貴女がすでに“気付いている”ことも,貴女の“異能者”への感情も,
……その笑みの真意も。
「えっと……それなら…。」
言葉を選ぶのに,だいぶ時間がかかった。
握られた手のひらだけでなく,身体中が火照っているような,奇妙な感覚がまだ残っている。
貴女の真意を知らぬ“少女”は,貴方を真っ直ぐ見つめ返して…
「ありがとう…ございます。」
…戸惑いや迷いはありつつも,素直に,貴女に礼を述べた。
正面から顔を少し寄せられれば,戸惑いながら微笑み返すのが精いっぱい。
“少女”の手のひらがまた少し、熱を増したように感じるだろう。
「あ……ええと,私はマリア・フォン・シュピリシルドですの。
もしよろしければ…私のお家で,一休みしていきません?」
どうやら,その反応を見るに,クローデットの名を知ってはいないようだ。この場所に来て日が浅いのかも知れない。
そして,最後に付け加えた言葉は,“少女”がこの期に及んでも平静を装おうとした努力の結果だった。
■クローデット > 「どういたしまして」
「少女」の礼に、花のほころぶような、邪気の薄い笑みで応える。
「シュピリシルド様、ですわね。よろしくお願い致します」
そう言って…抱えた手を下ろし、握手の形に切り替えた。
…と、先ほどまで動揺から懸命に目をそらし、動揺の根源であるクローデットを家に招くと言い出せば、目を瞬かせ。
「…あら、よろしいのですか?」
と言った後…
「ありがとうございます。
それでは、委員会の方に連絡だけ取らせて頂きますので、少々お待ち下さいね」
と満面の笑みを浮かべて言ってから、手を離した。
マリアからくるりと背を向けると…ポシェットからメモを取り出す。
そのメモに、自動で小さく何かが素早く書かれたようだが…それが完成するや否や、そのメモの紙はクローデットの手から消えた。
内容は、
『巡回の代行要員を派遣要請』
という内容にしか見えないだろう。…少なくとも、今のところは。
そのメモの転送が終わると、改めて笑顔でマリアの方を振り返り、
「…それでは、ご案内いただけますか?」
と、満面の笑みで問いかけるのだった。
■マリア > “少女”が見た貴女の笑顔は,その内心を読み取るにはあまりに無邪気で,
外の世界を知らぬ“少女”の目には,それはあまりにも眩しかった。
いまだにか細い指に捕えられたまま,離れられぬ右手は…勇気を振り絞って僅かに貴女の手のひらを握り返す。
そして手のひらが,不意にふわりと解放される。
“少女”は汗ばんだその手を見つめてから視線を上げ…貴女の後姿を,静かに見つめた。
目の前で展開されるあまりにも自然な魔法には言葉も出ない。
何がどうなっているのか、今の“少女”には何一つ理解できなかった。
「わ、私,こうやってお客様をお迎えするのは初めてですの。
満足のいくおもてなしなんて,出来ないかも知れませんけど…
…えぇ,こちらですわ,ルナン様」
初めての事には誰でも動揺するものだ。何も不思議ではない。
自分にそう言い聞かせながら,努めて普段通りに振る舞いつつ。
“少女”は貴女を,自宅へと導くだろう。
ご案内:「落第街大通り」からマリアさんが去りました。
■クローデット > 「あら、あたくしが初めてのゲストですのね」
「光栄ですわ」と、花のほころぶような笑みを見せた。
ちなみに自動筆記のメモは念写機能を持つ特製品、転送したのは平凡な転送術である。
…それでも、クローデットほどの使い手が「あえて音声で連絡しなかった」けれども「自身への応援は要請しなかった」点で、委員会本部にはそれなりの意図が伝わることになっている。
「ふふ、楽しみですわね。
シュピリシルド様は珈琲とお茶、どちらがお好きですの?」
などと、楽しそうに他愛ない話をしながら、「少女」の自宅へ向かうだろう。
「死刑宣告」は、まだ先の話である。
ご案内:「落第街大通り」からクローデットさんが去りました。