2016/08/03 のログ
ご案内:「落第街大通り」に高峰 司さんが現れました。
高峰 司 > 「……何やってんだアタシ」

溜息を吐く。
ここ数日、気が滅入っていたので散歩に出かけたのだが、何も考えずブラブラとしていたせいで、気がつけばこんなところに迷い込んでしまっていた。
別にだからなんだ、と言うわけでもない。フギン辺りに案内させて帰ればいいだけだし、めんどくさい奴は召喚獣で如何様にも始末できる。
が。

「……出物でもねーかな」

ついでなので、少し周囲を見て回る。
落第街には、表に出ない逸品がごく稀に出回っていると聞く。
現在自分よりも参ってしまっている同居人(仮)に投げ渡せるようなものでもあれば、儲けものだろう。

ご案内:「落第街大通り」に大沼由良さんが現れました。
大沼由良 > 「――あらあら、こんな所で誰かと思えば」

くすくすと笑いながら、司の方へ歩いてくる少女。
その手に扇をひらめかせ、嘲笑するような表情で司を見つめている。

落第街に似合わぬ雰囲気の華美な彼女こそ。
かつて高峰家で修行し、今は落第街に工房を構える、四元素使いである。

「出来損ないのあなたが、こんな所で何をやっているのかしら?」

高峰 司 > 「あ”ぁ?」

気だるげに声の方を見ると、その場に似合わぬ服装の少女。
見覚えはある、が。

「…………誰だ、オマエ」

正直、思い出せない。
つまりは実家に居た頃の知り合いなのだろうが、そんなものは司にとってゴミ以下の価値しかない。
その時の既知の顔など、どうでも良すぎて大体忘れてしまっているのであった。

大沼由良 > カチン。
ちょっと血管が額に浮きそうになる。
そういえば、こういう奴だった。

「――ご挨拶ですわねぇ。あなたに『魔神イフリート』の継承件を盗まれた者ですわよ」

ふんっと吐き捨てる。
彼女にしてみれば、司は実力も無しに魔神を与えられた、出来損ないである。
魔術の適正、実力は、彼女の方が高かったのだ。

高峰 司 > 「あ”ー?あー……」

魔神イフリート。高峰司の、現時点では二番手ともいえる召喚獣。
封印を解く代わりに契約した相手だが、ああ、そう言えば確かに、その儀を行う時に選抜みたいなのをした気がする。
心底どうでもよかったし、結果にも然したる興味が無かったので記憶の隅に追いやっていたが。

「あったな、ンな事も。……で、名前なんだっけ、オマエ」

なお、名前は思い出せない。最初から記憶していない。
確かに悪趣味な恰好の奴が、高峰の屋敷でも浮いている変人がいた記憶は微かにある。
余りに浮いていたので、かろうじて覚えていたというレベルだが。
しかし、それ以上の興味が一切なかったため、名前なんてのも一切意識していなかったのであった。

大沼由良 > 「――いいでしょう」

すぅっと息を吐き。
ゆっくりと扇を構える。

ここまでコケにされたのだ。
『アレ』でも見せてやらないと気が済まない。

「わたくしは由良――四元素の使い手にして、今は神に仕える者」

呪印を組み立てる。
周囲の人間の中で、魔力を察知した人々は逃げ始めた。

「冥土の土産に覚えておきなさいな!
来たれ、魔神マーリド!!!」

振り上げた扇の上、空間が割れる。
あらわれたのは、水属性の魔神!

高峰 司 > 「おいおい、なんだいきなり……」

心底面倒くさそうに相手を見るが……その呪印と、現れる魔神には僅かに顔を顰める。

「チ、ジンの中でも最上位のマリードかよ。めんどくせぇモン連れて来やがって」

マリード。
イスラームにおける精霊、魔神である「ジン」の中でも、最上位の力を持つとされる魔神。
イフリートも最上位ではあるのだが、イフリートよりも悪寄りである、もしくは僅かに上位の存在であるとされる。
即ち……単にイフリートをぶつけても、勝てない。
が。
司も慣れたもの、即座にエオローのルーンを刻んで召喚で応ずる。

「出ろ、ノーム!ゴーレム!」

選んだのは土属性の精霊、ノームと岩石の巨人兵、ゴーレム。
水属性は基本的に土属性に弱い。五行論などでもそのように説明される。
単純なパワーで勝てなくとも、相性で有利を取ればある程度は張り合う事が出来る。
召喚獣を用いる戦いは、相性の把握が肝でもあるのだ。

大沼由良 > ノームとゴーレム。
土属性の魔神。
なるほど、基本通りだ。

が、由良は元素術士。
属性戦は得意中の得意だ。

「――四元素に当てはめれば冷・乾。
すなわち――基点は熱をもって元素を変換す!」

錬金術の応用だ。
ゴーレムの中に熱を発生させる事により、その属性を土から火へと反転させればいい。

「すなわち、こうですわ」

小さなガラスの瓶から水銀を取り出す。
そして空気中のマナに働きかける。
――熱を帯び、土属性を火属性へ転じさせる作用を働かせ。

高峰 司 > 「ちっ……イス!」

元素術士。即ち、『元素変換(フォーマルクラフト)』を操る魔術師相手に、属性戦は不利である。
何故なら、ルーン魔術は細かな属性変更にはあまり向いていない。
意味を付与する魔術であるが故に、こういう面では小回りが利き辛いのだ。
なので、ルーンガンドで停滞の意味を持つ『イス』のルーンを本体に叩き込むと同時に、元素変換の対象になっているゴーレムを即座に送還する。
マリードとの対決でパワー戦になった場合を想定して呼び出したが、元素変換をしてくるなら話は別だ。対応して属性を広く取らなければならない。
次の一手のために召喚枠を開けつつ……。

「ノーム、地面から吸い上げろ!」

『はーいさー!』

ノームには、地面から地属性の魔力を吸い上げて補強する事を指示。
自然界に存在する魔力をそのまま流用する……と言う、五行術系の発想の応用である。

大沼由良 > 「――馬鹿の一つ覚えですわね!」

向こうは覚えていなくても、こちらは司を覚えている。
司の技術は圧倒的な召喚術、そしてそれを補強するルーン魔術。

ガンド打ちへの対抗は、耐呪。
元素の力を拮抗させる事で呪いを防ぎつつ。

「マーリド!」

時間を与えないよう、水の魔神に攻撃を命じる。
魔神は大きく拳を振りかぶり、あたり一帯を破壊しながら司に迫る。

周囲の阿鼻叫喚を尻目に、由良は周囲何箇所にも細い杭のようなものを刺していき

高峰 司 > 「ちっ……シゲル、ウル、ソーン!」

相手への直接攻撃は対策されている……ルーンガンドまで対策されているとは思わなかったが。
だが……ルーンの使い道はそれだけではない。
寧ろ、ルーンガンドこそが邪道。ルーンの本当の使い方はバフ効果の付与である。
強大なエネルギーを意味するシゲル、荒々しいエネルギーを意味するウル、情動を意味するソーンを一気にノームに刻み、その力を補強する。
マーリドは上位の魔神だが、それでも根幹の属性ならノームが有利。
そして、大地より吸い上げた土の魔力と、ルーンによる補強。
これにより、マーリドに対抗しうる精霊へと強化された。

「迎撃しろ、ノーム!」

『おーりゃさー!』

小柄だったノームが巨大化し、そのままマーリドに拳を振るう。
その一方で。

「出ろ、前鬼後鬼!」

裏でエオローを刻み、今度は二体一対の召喚獣、前鬼後鬼を召喚する。
彼らに与える役目は。

「オマエらは本体を囲んで潰せ!」

『応!』

『御意!』

マーリドをノームが受け止めている間に、本体を始末する事。
マーリドクラスの召喚獣は、呼んで維持するだけでも結構な魔力を消費し、どうしても単騎になりがちなのだ。
故に、相性有利を取って抑え込み、サブの召喚獣で本体を狙う。
これが『強力な召喚獣を叩き付けてくる相手』への基本的な対処法の一つである。
人間の大人より一回り大きい、と言ったサイズの式鬼二体が、片方は刀を、もう片方は薙刀を持って、周囲で杭を刺している由良に襲い掛かる。

大沼由良 > 「――やはり、召喚の技術ではそちらが一枚上手ですわね」

由良はマーリド以外の召喚を使えない。
彼女の召喚技術では、マーリド一体の維持が精一杯なのだ。
故に、現在前鬼後鬼を止められるものはいない。

筈、だった。

「ですが――そんなちまちましたモノで」

由良が周囲に刺した杭が光る。
杭は刺さった場所の属性となる――すなわち属性は「土」
魔神の属性は強力な「水」

由良は元素使い。
すなわち、二属性程度の複合属性を扱うのはお手のもの。

土と水の複合属性があらわすものは――『毒』

「魔神よ、力を貸しなさい!
『ヴェノム・ハザード』!」

大地がごぽごぽと水のように沸き立ち、そこから毒の瘴気が立ち上る。
あたり一面に満ちる毒の力。
それは、ノームを、前鬼後鬼を、司を、そして何の罪も無い落第街の住人まで襲い。