2016/11/03 のログ
ご案内:「落第街大通り」にルチアさんが現れました。
■ルチア > 廃ビルの屋上――。
もしかすれば違法部活か何かが不法に入居していたりするのかもしれないが、
ともあれ今現在は明かりが灯ることもなく、
傷んで古びてきた建物だ。
そんな廃ビルの屋上のキィキィと鳴くフェンスに寄りかかりながら、深く紫煙を吸い込む。
歓楽街のコンビニで買った1mgのメンソールは、知っているそれと何処か違う味がした。
「沁みるなぁ……」
咥え煙草で器用に呟きながら空を見る。
空には細い月が浮かんでいた。
■ルチア > “あの夜”は、もっと風が温い夜だった。
丁度こんな廃ビルの屋上に、とある吸血鬼と対峙して――。
“彼女”を追うようにそこから飛び降りたのだ。
そして、気がつけばこの島にいた。
「……………」
煙草の灰を落として、再び吸い込む。
久々に肺の腑に行き渡るニコチン。
心地よいような、寂しいような、そんな味。
現状に不満はない。
学校というものにも馴染んできたと思うし、
衣食住は確保している。
バイト先の人たちは客も含めて親切であったし、
友人と呼ぶ人もできた。
まあまあ上出来と言ったところだ。
ふぅ、と吐き出した煙は、あっという間に宙に溶けた。
■ルチア > それでも、何処か“この世界”に“あの世界”の残滓を探している。
ここに来たのも、前にこの周辺に来たときによく似た“匂い”がしたからだ。
それでも。
この世界には自分の生まれた街はなかった。
この世界には自分が最後に過ごした日本の街は無かった。
この世界には自分がいた組織は無かった。
この世界には。
この世界には。
この世界には。
気がつけば、無いものばかりを数えている。
「ダメだなぁ。
こんなことでは笑われてしまう」
もう、笑ってくれる人はここにはいないというのに。
短くなった煙草をコンクリートの上に落として、ブーツのつま先で火を消した。
続けてもう一本、咥えて安物のライターで火をつける。
■ルチア > 身体をひっくり返して、フェンスに背中を預ける。
キィキィと五月蝿く音を立てるが、たいして気にすることでもない。
空には細い月が浮かんでいる。
星は僅かにしか見えない。
風は冷たく、もうすぐ冬の訪れを語るよう。
もし、“あの夜”をやり直せるなら。
自分はあの屋上から飛び降りるだろうか。
愚問だと解っていても問いかける。
「――ッ、あつ、」
そんなぼんやりとした思考をしていたせいだろう、
煙草の灰を落としてしまって、服に焦げ跡が出来た。
格段熱いわけではなかったけれど、おもわず出た言葉。
「ああ、替えの服は最小限だというのに」
あまり、衣服には頓着が無い方だ。
■ルチア > まだ長い煙草を再びコンクリートに落とし、同じようにつま先で火を踏み消した。
まだ殆ど残っている煙草の箱を適当に投げ捨てる。
こんな場所だ。
ポイ捨てしたくらいで咎める者もいないだろう。
背中をフェンスから離して、何処か遠くを見つめてから――。
その場から飛び降りて、何処かへと)
ご案内:「落第街大通り」からルチアさんが去りました。