2017/01/07 のログ
ご案内:「落第街大通り」にセシルさんが現れました。
■セシル > 年末年始に帰省していた風紀委員の面々も、徐々に島に戻ってきつつあった。
(もう少しで、落第街の見回りの仕方も通常通りに戻るか…)
帰省先がなく、この年末年始は落第街を重点的に回らされていたセシルは、安堵するやら心配やら、複雑な感情を抱いていた。
先日の事件で落第街の路地裏が大規模に破壊されて以来、落第街は復興景気とでも言えそうな賑わいを呈していた。
無論、その景気の賑わい方は「表」のそれとは一線を画した空気をしているのだが…。
■セシル > 表の建築業と比較すると、険のあるように見える作業員達。
大通りは落第街の中では比較的治安がマシな方で経済的にもそれなりの秩序を立てて回っているはずだが…それにしても、街が荒んで見える。
(復興の際には炊き出しもあったようだし、決して人々が助け合っていないわけではないはずなのだが…)
大通りから伸びる路地の陰には、気力を失ったと思しき人の姿も見える。
■セシル > 最近、落第街では薬物汚染の拡大が危惧されている。
路地に座り込み、うなだれている人が、先日の事件で何かを失った人なのか、それとも薬物汚染の被害者なのか。あるいは、その両方なのかは分からないが…。
「大丈夫か?」
仲間もいるし、セシルは彼に声をかけることを選んだ。
仲間を後ろに控えながら、路地の中へ足を踏み入れ、うなだれる男に歩み寄るセシル。
■セシル > 『………うぅぅ………』
「…!」
声をかけられて、呻きながら顔を上げた男の顔を見て、セシルは目を見張って軽くのけぞった。
焦点が定まっていない目。
まともに栄養を取れていないのか、やつれている頬。枯れた肌。
うめき声を漏らしただらしなく開いた口から、涎がつ、と垂れた。
「…保健課に連絡を頼む」
後方にいる同僚の片方に、それを頼んだ時だった。
『………あぁ、あぁぁぁぁあ………!』
先ほどより力を増したうめき声をあげながら、理性のない声のまま、男がセシルにすがりつこうとしてきたのだ。
■セシル > 「………!」
セシルは、思わず後ろに退いて男を避けてしまった。
『………うぅぅ………』
避けられた男は、再び力を失ってその場にうずくまる。
それでも、セシルはすがりつこうとしてきた男の異様さに背筋が凍るような感覚を味わったのを、まだ拭えずにいた。
身体は疲れていないのに、息が荒くなる。
■セシル > そうこうしているうちに、保健課が到着する。
「…あ、お疲れ様です…
危険薬物の摂取があるのか、挙動が安定しておりませんので…搬送の際にはお気をつけて!」
セシルは、彼を搬送しようとする保健課員にそう声をかけて、路地から大通りに戻った。
■セシル > 男を搬送する保健課の車両が、落第街大通りを走って行く。
『ラフフェザーさん、大丈夫だった?』
去っていった車の方に向けていた視線をセシルの方に向けて、同僚が尋ねてきた。
「ああ…大丈夫だ。
…しかし、意図が伺えんというのは、下手に敵意を向けられるよりよほど恐ろしいものだな」
そう答えて、溜息を吐くセシル。
それから、セシル達は落第街の警邏を続けたのだが…その日は、他にも似たような事例が起こる羽目になってしまったのだった。
ご案内:「落第街大通り」からセシルさんが去りました。