2017/01/15 のログ
櫛鉈 蛟 > ちなみに、かれこれ30分以上は追いかけっこをしている。
しかも、足場が不安定な屋根から屋根に飛び移りながらの全力疾走。
それでいて、息一つ男は乱しておらずくだらない軽口を叩く余裕すらあった…が。

「…んーむ、これ撃退しないとずっと追ってきそうで怖ぇな…新手のストーカー?
…うっわ、ヤロウ10人からストーカーとか洒落にならんわぁ…」

ブルリ、とわざとらしく身震いしつつ時々飛来する銃弾を器用に振り向きもせずに交わし、あるいは左手の鉈じみた短刀で弾く。
これが他の地区なら風紀委員会が即座に出張るだろうが、ここは落第街である。
このような光景も、まぁ日常茶飯事と言えるかは微妙だが皆無でもないのだ。

櫛鉈 蛟 > 「…は~~仕方ないかねぇ…と、言う訳で!」

急停止からの急激な方向転換。いきなり彼らへとこちらから突っ込んでいく男。
その右手には蒼い刀身を持つ短刀が逆手持ちで既に握られている。
無骨な左手の鉈じみた短刀と合わせて短刀による二刀流。これが男の基本戦闘スタイルだ。
飛来する銃弾を全て回避、ないし左右の短刀で弾いたり切ったりしながら接近。

「まず一人…で、二人目と三人目」

最初の一人の懐に潜り込んで左手の分厚い鉈刀で両足を切り裂いて転ばし。
振り向きざまに右手の短刀を振るって二人目の拳銃を持つ手を切り飛ばす。
同時に、旋回する勢いで三人目の側頭部に鋭い蹴りを叩き込んで昏倒させる。残り7人。

男といえば、瞬く間に3人無力化させたがノンビリとした何時もの調子のままであり。

「えーーと、まだやるかい?俺としてはここらで手打ちにしてくれると助かるんだがなぁ」

と、ヘラヘラとした笑みを浮かべながら提案してみるが、各々の殺気がむしろ増した。あかんかなこれ。

櫛鉈 蛟 > 各々が拳銃だけでなく、一部が獣人なのか鳥人系と狼人系のタイプに獣化している。

「…おーおーすげぇ殺る気満々じゃねーか。たかがヤクの取引き見られた程度で大袈裟な」

軽口は収まらず、飄々とした余裕すら窺える態度は変わらない。
向こうからすれば小馬鹿にされたと感じるだろうか。一斉に飛び掛り、銃撃をしてくる――

「…が、悪ぃね。美女や美少女ならとことん付き合うが、ヤロウは勘弁な!」

と、笑顔でのたまいながら左右の手に握られた長さも重さも見た目も異なる短刀を無造作に振る。
少なくともただ振っただけにしか見えない動作…なのに、次の瞬間7人全員が血飛沫を上げて倒れていた。
よく見れば、倒れ伏した7人の体はあちこちに深く切り裂かれたような傷が見て取れる。
何かに一瞬で全身をズタズタにされたかのようなソレだが。男がやったのは短刀を振るっただけ。

「…と、一丁上がり。んーやっぱ腕が鈍ってるかもしれねぇなぁ…。」

短刀を左右の腰のケースに収めながらポリポリと頬を搔いて呟く。取り敢えず全員生きてはいる。
もっとも、『手加減』しなければ7人の首と四肢を纏めて切り飛ばしていたのだが。

櫛鉈 蛟 > 「……とりま、また追っ掛けられても困るから…んーと、後始末しとくか」

とはいえ、別に殺したりする程でもない。ただ、連中が持っていた武器を全部叩き切って使用不能にしておく。
何人か意識があり戦意もあるようだが、そこは笑顔で殴って完全に気絶させておこう。
一仕事終えたぜ、という顔で屋根から飛び降りて大通りの一角に着地。
連中は屋根の上に放置したままだが…ま、死にはしないだろう。死んでも責任は取らないが。

「やれやれ、やっとこさ鬼ごっこから解放されたぜ…あーー一杯飲みてぇ所だねぇ」

懐をゴソゴソと漁り、アメスピの箱を取り出すと1本だけ抜き出して口の端に咥える。
そして、ジッポライターで点火すればゆっくりと紫煙を吐き出して一息。
周りの住人も、今更屋根から人が飛び降りてきても特に気にした様子もない。
『何だ、クシナダの坊主じゃねぇか、はしゃぎすぎんなよ?』
「おぅよ、肝に銘じとくわー」

と、いった感じで通りすがりの顔見知りと挨拶を交わす程度には普通だ。

櫛鉈 蛟 > 道端で煙草を蒸かしつつ、何とはなしに町並みを眺める。雑多で混沌としているが…。

(…ある意味、こういう場所のほうが人間の本質ってのが表に出易いのかもしれねぇなぁ)

一度死んで再誕した身ではあるが、何千年経過しようと人の本質は変わらないように思える。
今の『蛇』はただの傍観者、もしくは自由人としての生き方を好んでいるが。

「…ま、生憎と今はなーんも使えねぇ訳だが。せいぜい死なないくらいかねぇ」

かつての力の喪失は、どうしても暗い影をその身に落とすけれど。
無いものは無いし、失ったものは戻らないのが道理。それを捻じ曲げる気も無い。

(いや、まぁ酒好きなのは相変わらずなんだけどな俺は。まー酒に強くなったのは万々歳って感じだが)

酒で眠らされて英雄に首を全て撥ねられた。冷静に考えたら情けない死に様である。
昔の自分が今の自分を見たらどう思うだろうか?ただの人間の男と嘆くだろうか?

櫛鉈 蛟 > 「…さて、と。ボチボチどっか近くのセーフハウスで寝るとすっかねぇ」

複数のセーフハウスを持っているとこういうときは便利だ。ここから一番近い場所は何処だったか?
頭の中で確認しつつ、煙草を咥えたままフラリと雑踏へと消えていく。

ご案内:「落第街大通り」から櫛鉈 蛟さんが去りました。