2017/10/22 のログ
レンタロウ > 相手の言葉に、うむ、とはっきり言い切って頷く。
学園の職員も風紀委員なるものに関してまでは説明してなかったと記憶にしていた。
男性の説明を聞いてから、もう一度回りを見回した時、納得したような表情を浮かべて。

「治安が良くないとは、学園の職員も言っていたな。
 確かに、建物も住民も空気もまるで違う。
 …正直、気を抜くと殺されるような気すらしてくる。大袈裟な話だと良いがな。」

恐らくは異物に敏感なのだろうと感じた。
そして、今の自分は非常に分かりやすく異物なのだということも理解した。

「うむ、聞かれたからには答えねばなるまい!
 この俺の名はレンタロウ。何処かの世界からやってきた異邦人である!
 記憶を失っているから、これ以上の自己紹介は無いぞッ!」

周りの目を憚らず、堂々と声を張り上げて名を名乗った。

ヨキ > 「まさか、と笑い飛ばして安心させてやれれば良かったが。
 大袈裟で済むのは、この辺りの『浅い』区画までだ。
 このまま知らずに奥へ進んでいたら、死ぬより酷い目に遭ったとも知れない」

言葉の選びこそ親しげだが、落とした声のトーンが単なる冗談ではないことを匂わせた。
得心がいった様子のレンタロウに、にっと小さく笑い返す。

「理解が早くて結構。観光気分で入り込んでこられては、住人らも困ってしまうでな……、!」

続く“自己紹介”に、驚いて目をまん丸くする。
しばしぽかんとしていたが、ややあって明るく笑い出した。

「ふッ……くく、ふふふふ!ははは、理解が早いのみならず、度胸もあると見た。
 金目のものなどは、みなぴったりと身に着けておるようだしな」

息を吐いて呼吸を整える。

「異邦人の……レンタロウ君。
 して、君はこれから常世学園の学生をやってゆくつもりかね?それなら、ここも一通り見てゆくといい。

 “悪いこと”を仕出かせば、君もここの住人の仲間入りをすることになる。
 面白い店や、安くてうまい飲み屋もあるが、進んで立ち入るのはオススメしない」

レンタロウ > 「うむ、忠告は素直に聞き入れるとしよう。俺も訳も分からないままで死にたくはない。
 その時には、それなりの覚悟をしておくとしよう。」

相手の言葉が冗談の類では無いことは、その声色で察することができた。
無いことを願いたいものだが、その時には覚悟を決めておくと答える。

「フッ、この俺も失うものが無いわけではないが…
 だからと言って、怖気ずいたままでは何も始まらないからなッ!
 ついでに、俺がその風紀委員ではないことを知らせる良い機会でもある!」

周りからの視線が一層強まるが、全く動じることなく腕を組んで笑みを浮かべる。

「うむ、そのつもりだ。…なるほど、此処の連中は皆訳有りというわけか。
 そうできれば楽ではあるが、この俺の事情が事情だ。 出来る限り、情報源は多く確保しておきたい。」

ヨキ > 「懸命で何より。落第街の人間は、強いられることを好まん。
 この世界には、郷に入らば郷に従え、という格言もあるくらいでな。
 仲良くやってゆけるのなら、悪い人間たちじゃあない。

 ……この道は、真っ直ぐ進むと急に入り組んで迷子になりやすい。
 何なら一緒に行くかね?土地勘なら多少はあるつもりだ」

レンタロウが進んでいた通りから、似たような建物が立ち並ぶ隣の路地へ視線を移す。

「それから……よく覚えていてほしい。
 ここの住人らは“訳あり”でこそあれど、皆がみな悪人ではない、ということさ。

 ――『落第街』の名の通り、ここに集まっているのは『落第生』が多くてな。
 表の暮らしに憧れながらも、叶わず燻ぶる他にない者たちだ。
 元から悪党として住み着いた者らは別として、常世島の住人らに身分の差はない」

まるで生まれ故郷でも眺めるような眼差しで街路を見渡し、レンタロウへ笑い掛けた。

レンタロウ > 「俺としても、むやみやたらに剣を振り回したいわけでもないからな。
 変に喧嘩を吹っ掛けられない限りは、友好的にいきたいと思っているとも。
 
 ふむ…そうしようか。迷子になるよりはずっとマシだろうからなッ!」

下手に歩いて迷子になるよりは、案内人が居た方が数倍良いだろうと判断して返答する。
その後は相手の少し後ろを付いていくように路地を歩いていく。

「落第生、か…。
 色々と思うところはあるが、俺が口にするべきでもないのだろうな。」

笑いかけてくる男性の言葉に、少し思案するような表情をしながら答える。
今の自分が口にしても、それはきっと対岸の火事を見るようなものにしかならないだろう。
ならば、頭で思うだけに留めておくのが吉だと考えてのことだった。

ヨキ > 秋の肌寒い空気の中、白く濁ったビニールシートで隔てただけの飲み屋や、謎掛けめいた看板で職種を記した店舗、店を開けているんだかいないんだか、一目では窺い知れない建物……、
一癖や二癖どころでは足りない通りを、気侭な散歩のように歩いてゆく。

「ああ。そもそも常世学園には、他に行き場のない者が学生として入ってくることが殆んどだ。
 それでいて『落第生』となってしまうのだから、その絶望たるや筆舌に尽くしがたいものがある。

 このヨキは、そういう学生らを訪ねて回っているのだ。
 追い詰められて悪事に走る前に、どうにか支えてやりたくてな」

少し後ろを歩く、レンタロウの顔を見遣る。

「……記憶がない、ということだったが、君の所作は身体が自然に覚えていたものかね。
 人並みの憚りもあるならば、元はきちんと学んでいたのだろうな?

 かく言うヨキも、はじめは拠りどころのない異邦人だった。
 君の役に立ちたい気持ちも湧くというものさ」

レンタロウ > 相手の後ろを歩く中で、周りを観察してみる。
なるほど、これは独りで歩くのはかなり厳しいものがある、と感じた。
何故、このような形になっているのか。その理由は、落第街だから、ということなのだろう。

「…他に行き場が無いのに、落ちこぼれ扱いされるのか。ふむ…余り気分の良い話ではないな。
 学園の方では、そういう支援はしてはいないのか。」

男性の言葉を聞く限り、個人的な行動に感じて聞いてみる。
此方の顔を見る男性には、やや不思議そうにしている顔が見えるだろう。

「どうやら、身体が覚えていたらしい。
 何処で誰に叩きこまれたのかも思い出せないが…今は感謝しておくとしよう。
 
 ほう、貴殿も異邦人だったのか。すまんな、この借りはいつか返すとも!」

ヨキ > 「教師や財団の職員の中には、落第街など元から存在せんように語る者さえある。
 異邦人で、一介の教師に過ぎんヨキに、はっきりとした理由は判らぬがな。

 この島の住人らは、異能と呼ばれる力を持ってしまったために常世島へとやってきた。
 常世島は、そうした能力者が生きる時代の基盤となるべく造り上げられた街でな。
 今ここにある事態を大きく動かすことは、そう簡単に出来ることではないのだよ。

 ……追い立てられた人間が学ぶ意欲と生きる力を失ったとき、引き上げてやることはなかなか難しい。
 学園として解決に至る手立てがない以上、個々の教師がこうして奔走しているのだ」

言葉を選び、レンタロウの理解の度合いを窺いながら穏やかに話す。
教師然とした語り口に見えて、すれ違った女へ手を振る様子は、街の軽薄な若者とそう変わらない。

「よいことだ。無理に思い出せずとも、自然と滲み出るものに身を任せるのがよかろう。

 ふふ。ヨキは貸しを作ったとも、礼を返してもらおうとも思っては居らん。
 常世学園とその教師らは、支えなき者たちの支えとなるために在るのだからな。

 この地球で生きてゆくにしろ、記憶を取り戻して元の世界へ帰るにしろ、
 君が君らしくこの島で過ごしてくれることがいちばんの礼さ」

レンタロウ > 「…聞いていて、あまり気分の良い話ではないな。
 確かに有るものを無いと言い張る。現実逃避でしかないだろう、そんなものは。

 …ただの異邦人であり、一人の生徒でしかない俺が知ったところで、どうしようもないことなのだろうな。
 だが、知ってしまった以上は、此処の認識を改めなくてはならんか。」

恐らくだが、自分が一念発起したところ、此処の問題を解決するには至らないだろう。精々、騒ぎを起こして終わりだ。
だが、知ったからには学園への認識を改めなくてはならないと、不機嫌さが滲みでていそうな顔をしながら言葉を口にする。

「うむ。言われずとも、俺は俺が思うままにいくつもりだ。そこは安心してくれていいぞ。
 まぁ…そのせいで少し問題を起こすかもしれないが、その時はその時だッ!」

男性の言葉に、不機嫌さを一旦抑えて笑みを作ると自信満々に答える。

ヨキ > レンタロウの語調と表情に、柔らかく笑い返す。

「……たしかに、望まずして常世島にやって来た者はたくさん居る。
 その一方で、この島でかけがえのない夢を見つけて飛び立っていった者も多い。

 ヨキもまた、異邦から迷い込んだところを学園に救われたうちの一人だ。
 だからこそヨキは、島の表も裏もなく駆け回っているのだよ。

 これは、ヨキ個人の義憤からなる奔走ではない。
 財団の、学園の、島の一助になれるようにと、強く願ってのことだ。
 くれぐれも、この島のことを悪く思わないでいてほしい」

その言葉には、やわらかな制止が含まれていた。
島中にさまざまな事情があり、絡み合って縺れたものは、ゆっくりと解きほぐしてゆくしかないのだと。

「おや。問題を起こされては、堪ったものではないな。
 ヨキの怒りの雷は、鬼神も斯くやと定評があってな。ふふ、君を説教する羽目にならないといいが」

笑って、進む先の十字路を指し示す。

「この辺りが、比較的安全に行き来できる限界だろう。
 ここから更に奥は――ヨキにも何が起こるか判らんでな。

 レンタロウ君は、今はどこへ身を寄せているのだね?もう少し見物に歩いたら、近くまで送ってやろう」

レンタロウ > 男性の言葉、その中に含まれた制止を汲み取ったのか。
複雑そうな顔をして視線を横へと逸らし、鼻で溜息をつく。

「生憎だが、貴殿のように考えるには俺自身の器量が小さいらしい。
 先程までの話を聞いて、悪い印象を持つなというのは、俺には無理難題だ。
 ………だが、良い部分もある、という所は認めよう。この俺を受け入れてくれたようにな。」

物事には長所短所があるように、此処にも良い部分と悪い部分がある。
そう思うことで納得させるのが精一杯のことだと答えた。

「………安心するが良いッ!その場で誤って済む程度に留めるともッ!」

あまり説教をされるには好きではないと苦し紛れの言い訳のように答えた。

「そうか、覚えておこう。
 その先へ踏みこむことが…無いと良いのだがな。
 俺か?今は寮に住んでいるぞ。そうか、ではそこまでよろしく頼むとしようか!」

ヨキ > 「いいや。訪れてすぐに許容しろという方が無理な話だ。
 だから君には、この島を広く見て知ってもらいたいと思っている。
 そこにある仕組みをより良く変えるのは、いつだって外からやってきた者の視点なのだから」

制止こそすれ、否定はしない。
微笑んで頷くと、レンタロウの力強い宣言に苦笑した。

「是非そうしてくれると助かる。
 多少はワンパクすぎるくらいが、こちらの気分も明るくなるというものだ」

この先は危険だという路地とは逆の通りへと曲がる。
どちらにせよ、表通りに出るまでは同じような道が続くことには変わらないらしい。

「さあ、これから何が起こるとも判らんからな。
 進んだ先にこそ見つかるものだって、時にはあるやも知れん……。

 ……などと言っていると、行かせたいのか行かせたくないのか、判然としなくなってしまうね。
 それくらいヨキは、この落第街が好きなのだろうな」

寮へ行き先を定めると、それでは、と改めて歩を進める。
見知った通りへ抜け出すまで、しばし気楽な会話を続けたことだろう。別れの挨拶に曰く、

「では、レンタロウ君。
 またの機会に、この島で新しく見知ったことを聞かせてくれたまえよ」――と。

ご案内:「落第街大通り」からヨキさんが去りました。
レンタロウ > 「広く見て知る、か。できるかは分からないが、やってみるとしよう。」

男性の言うようなことができるかは不明だったが、それでも努めてはみると答える。

「まぁ、あまり委縮してしまっても仕方ないことだろうからな!」

男性に続いて曲がると、やはりこれまで見たのと同じような道。
まるで迷路だと思いながら歩き続けて。

「行くべき時が来たなら、堂々と足を踏み入れるとも。
 今は、その時ではないだけの話だ。そうだろう?」

時が来たなら、と答えて大通りへと男性に続く形で向かっていく。
その間には、色々と話をして。別れ際の男性の言葉には快く笑顔で了承したことだろう。

ご案内:「落第街大通り」からレンタロウさんが去りました。