2018/01/11 のログ
ご案内:「落第街大通り」に狗隠さんが現れました。
■狗隠 > 何時もはスラムを活動範囲としている黒狗の怪異だが、人の想念から生まれたので人間らしい感覚もある。
…まぁ、つまりは偶には息抜きというか少しは違う景色を見たり違う空気を吸いたくなった、というものだ。
それでも、落第街…ここいら辺りが己にとってのほぼ絶対的な境界線となるかもしれないが。
(…流石に、ノコノコと学生街に赴く訳にもいくまい。特に用向きも無ければ尚更にな)
正直、それとなく好奇心は刺激されるのだがそこはグッと抑える。それで目を付けられたら意味が無い。
ともあれ、当面の武器は手に入れたので後は矢張り服だ。今、着ている衣服はまぁ見事に汚れや破れが酷い限りで。
さっさと少しは見栄えがマシな服を一式買い直したいのだが生憎と今は持ち合わせは少ない、というかほぼ無い。
「……そもそも、怪異が真っ当に買い物をするというのも滑稽な話ではあるが」
誰にも聞こえない程度に小さく呟いて。しかし、ここはスラムに比べ矢張り良くも悪くも活気がある。
その熱が陽であれ陰であれ、スラムには無い賑わいがある。そんな雑踏を一人歩く姿は怪異には見えないだろう。
…まぁ、ボロボロの浮浪者一歩手前の服装の酷さは否定できないものがあるのだけれど。
■狗隠 > まぁ、所詮は怪異といっても、今の自分は生まれてから数ヶ月程度。危険視される程の力もまだ無い…と、思う。
生まれは選べないとはいえ、矢張り怪異という存在は地味に不便だと思うこの頃だ。
(表の住人だけでなく、裏の住人からも厄介者扱いされ易いだろうからな…)
男がまだそうなっていないのは、単に露骨に目立つようなやらかしを起こしていないからだ。
そう自重するだけの理性はあるし、正直、死者の想念があれば食事なども特に困らない。
雑踏を歩きながら、赤い瞳を左右に走らせる。違法な店、一見合法と見せ掛けている店。違反組織や違反部活の息の掛かった場所も無数にある。
(……以前、風紀委員会所属のロボットと交戦したとはいえまだ顔などは知られていない、か)
その方がこちらとしても助かるが。正直、指名手配なぞされたら面倒でしかない。そういう感情もちゃんとある。
と、いうより元々が死者の想念の塊に、異世界から来た何者かが融合して生まれたのが己だ。
融合した経緯は覚えておらず、そもそもその何者かも殆ど自身で自覚も把握も出来ていない。
―まぁ、つまりは。怪異とはいえ正確には異邦人との混じりモノなのだ。
ご案内:「落第街大通り」に狗隠さんが現れました。
■狗隠 > 「…さて、まぁ今の自分を悲観するのは程々にしておこう」
あぁだこうだ嘆いても世界は回るし周囲も動く。ともあれ、衣服を調達しなければ。
流石に、ずっとこのままのボロ衣装だと逆に目立つ事になるので困りものだ。
スラムならば、まぁ溶け込めるかもしれないが落第街、となると流石に若干は目立ちそうで。
「……ん?」
と、偶々古着屋らしい店の前を通り掛る。金銭の持ち合わせは無いのだが一応見ていこうと店の中へ。
無愛想な店主の男に「いらっしゃい」とぞんざいな挨拶をされるが気にしない。
こっちの姿を見ても変な目で見ない辺り、まぁ慣れているのだろう。こちらとしては好都合だが。
「…しかし、我ながらどんな服装が似合うかサッパリ分からんな…。」
そう、ここに来て最大の問題が発生した。衣服のセンスとかそういうのがよく分からないのだ。
■狗隠 > 「………ん?」
そんなこんなで、所在無く古着屋の決して広くは無い店内をうろつく。流石に服装のセンスまでは考えてなかった。
ともあれ、何か似合いそうな服か、もしくは破格の安値で売られている服でも無いか一応探して見る。
まぁ、流石に捨て値で売られているような服、しかも一式などそうそうある訳が――…
「………あるものなのだな」
ありました。ただし問題はそれがいわゆる『執事服』というものだ。そう、あの執事服である。
…店主にちょっと聞いて見れば、どうやら常世祭の執事喫茶で使われていたブツが一部こちらに流れてきたらしい。
…何でこんな捨て値なのかというと、つまりは売れそうに無いという事のようだ。
「……流石に、俺がこれを着るのもどうかと思うが。しかし他に買えそうな物も無し…。」
執事服の怪異…何か地味にシュールな気がしてきた。そういう感覚も自分にはあったらしい。
と、いうよりこれは正確にはコスプレ衣装の筈だ。無駄に本格的に作りこんではあるが多分そうだろう。
(…参ったな。今の服装よりはある意味マシなのだが、これを着て歩くと変に目立ちそうではある)
執事姿なんて、流石に落第街でも…ましてやスラムでもまず早々は見かけないだろう。諦めるべきか、むしろ思い切って買うべきか…悩む。
■狗隠 > ―――で、30分程度無駄に悩んだ結果。
「ありがとうございました」という、店主のやる気の無い声を受けて外に出てくる男。
…見事に執事服姿になっていた。まぁ、左腰に刀を下げて右腰にはリボルバー拳銃を提げているが。
「……無一文になったのはいいとして、我ながら選択を間違った気はするが…」
ただ、矢張りボロボロでも汚れても居ない衣服はそれだけで気分が少しマシになる。
…まぁ、マシになっても執事服だ。通行人の目が、偶に『何だコイツ?』という目で見てくるが。
(…まぁ、スーツ姿の亜種と考えれば違和感は無い…筈だ)
そう、自分を納得させておきたい。エセ執事もとい怪異執事誕生の瞬間である。
■狗隠 > そして、武装した執事の噂が少しの間だけ落第街の一角で立ったとか立たなかったとか――。
ご案内:「落第街大通り」から狗隠さんが去りました。