2018/01/28 のログ
ご案内:「落第街大通り」に竹村浩二さんが現れました。
竹村浩二 >  
安いビニールの椅子にどかっと腰を下ろす。
適当な店だ。名前も覚えちゃいないが、何か飯屋だ。
落第街は体に馴染む。探し人の情報も入りやすい。

煙草に火をつけると、空になった箱を握りつぶした。

「親父、ラーメンくれ」

紫煙を鼻から吹いて勝手にテレビのリモコンを操作した。

竹村浩二 >  
「今日は寒いな……」

ぶるっと震えて隙間風に身を丸くする。

あの晩。メイジー・フェアバンクスと俺は戦った。
正義だと思っていたものは正義でも何でもなかった。
自分は、我が家に住み着いていたメイドをアーマードスーツを着てぶん殴ろうとしただけだ。
……あの赤頭巾がメイジーだと知らないとはいえ、だ。

何もかも、茶番に思えた。

それでも、メイジーに会おうと思ってあれから俺は彼女を探し続けている。
会ってなにをする?
何を言えばいいのだろう。
それはわからない。

寒い。とにかく寒い。
ラーメンはまだかよ。

竹村浩二 >  
メイジーが家から出て行ってから俺の生活は加速度的にマシになった。
まとも、とは言わない。
ただ、ギャンブルはもうしてない。
あんなものに時間を使う意味をもう見出せない。

常世の用務員の仕事も真面目にこなしてる。
身を持ち崩したらメイジーが帰ってくる場所がなくなる。

なんてな。アイツが帰ってくると思い込んでる時点で、女々しいよ。
目の前に運ばれてきた超テキトーなラーメンを前に割り箸を割る。

最近はニュースをよく見る。
あいつはメイドルックで超目立つ。
だから、どこかでニュースになってないかと期待している。
……今まで成果はゼロだが。

竹村浩二 >  
「相変わらずテキトーなラーメン作りやがって」

聞こえるように毒づくと店主が舌打ちを返した。
別にここの店主と仲が悪いわけじゃない。これが俺たちの普通だ。

これ見よがしにコショウをかけまくる。

ポケットに手を突っ込むと、桜貝が触れた。
あいつは……今もこの貝の片方を持っているのだろうか。
腹を空かせたりしていないだろうか。
……悪い奴らに騙されたりはしていないだろうか。

心の中に蔓延る弱気ごと麺を啜りこむ。
別に俺なしじゃ何もできねーガキじゃねーよ、メイジーは。
いや……俺よりよっぽど大人で…

ポケットから取り出した写真を見た。
メイドと二人で映っている俺は、どこか照れくさそうで、それでも笑っていた。

竹村浩二 >  
ぼんやりとラーメンを食べながらニュース番組を見ていた。
漫然とものを口に運んでいたら、昔はおふくろに怒られてたっけ。

『―――……となると、霧の夜には気をつけないといけませんねえ』
『………いえね、まだたしかなことは判らないとのことですが―――』

バッドニュースに訳知り顔で解説するいい大人。
それもこの国じゃ普通のことだ。

『……事件があったのは27日の未明、あの日は一晩じゅう土砂降りの雨だったんですよ』

ニュースに集中する。
もし、通り魔事件なら変身して狩ることも考えなければならない。

『―――となると、今度の《赤ずきん》は雨の日にも出ると?』

!?
い、今……ニュースで赤ずきんって言ったか…?
メイジーか……! でも、どうして事件なんて!?
いや……この際、真偽は後回しだ。
メイジーに繋がるかも知れないなら、俺は……俺は。

竹村浩二 >  
『風紀委員会は28日付で捜査本部を設置しました。中継が繋がっています……木下さん?』
『はーい! こちら《赤ずきん》連続通り魔事件捜査本部から、木下がお送りします!』
『まだ詳しい事実の公表は差し控えたいとのことで………あっ、ご覧下さい。会見が始まる様です!』

風紀が動いている。
これはまずい。
真実がどうあれ、風紀にメイジーが捕まったら?
取り返しがつかない。

早く見つけなければ。彼女を。メイジーを。
その時どうするかなんて、わからない。

ラーメンをそのままに、代金を支払った。
動き出さなければならない。
もう、腐りきったままの自分ではいられないのだから。

竹村浩二 >  
まずは情報収集だ。
そして、変身アイテムの整備を進めなければならない。
肝心な時にすぐ変身できるようにしておかないと。

メイジー。
まだ真実は霧の中だが。
必ず見つけ出してみせる……だから。

早まったことはしてくれるなよ。

ご案内:「落第街大通り」から竹村浩二さんが去りました。