2015/06/28 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に白騎士さんが現れました。
■白騎士 > (右から斜め左へと剣が振り下ろされるや、鋼鉄製のシャッターがバターのように切り裂かれた。シャッターを乗り越えて白い甲冑が足を踏み入れる。拉致誘拐してきた人間を洗脳し組織の戦闘員として仕立てているというまさに現場へ土足で踏み込んでいくのだ。
異変に気が付いた黒服の男が白騎士へと銃を向けるも、次の瞬間には二等分に切り裂かれていた。
不思議なことに血液が甲冑を汚すことは無かった。
騎士は矢継ぎ早に放たれる攻撃へと飛び込んでいく。脚部装甲が開くと内側のノズルをさらけ出す。背面部の隠されたパネルがスライドし隠された水力偏向ノズルから膨大な水力を得て肉薄する。
銀色の剣が振りかぶられ、少なくとも三人を半分におろした)
■白騎士 > (静止しようとする人間が居ない限り騎士はプログラムに従い人を斬り続ける。意志も無く目的もなくプログラムに合致する対象を斬り続ける機械人形に恐怖など存在しない。無能力者でも大火力の火器を集中すれば損傷を与えられたかもしれない。しかし対人用の自動小銃如きでは騎士の装甲に傷さえ与えられない。第三世界でもっとも広く使われているデットコピー品の銃身を断ち切るや、返す刃で股間から脳天までの空間を切り裂く。泡を食って逃げ出した男の背中へと騎士は驚異的な速力を持って追いすがった。
およそ古風な外見からは予想も付かない推進機構から発生する勢いのままに。
男の下半身と上半身が二つに分断される。
動きが止まった。
あたりには無残な死体が転がっているだけで、ほかにはなにもない)
■白騎士 > (白騎士は虫の息の男へとゆっくり歩み寄る。袈裟懸けに切り裂かれてもなお死に切れず這って倉庫の外へと逃げ出そうとしている男である。
命乞いをする男だったが通用しない。
汚物に慈悲を与えてやるほど白騎士は人間的ではなかった。
胴体に一突き。去り際に、まるで自然に、頭を一閃。剣を鞘に収めると、辺りを見回す)
【敵対勢力 排除完了 戦闘システム終了】
(紅いカメラアイが光を消す。
ガシャン、ガシャン、と倉庫の外へと歩を進めていく)
■白騎士 > (人知れず悪人を斬る。世の中が世の中であれば正義の味方とも呼ばれたのだろうが――。
現在の基準では殺人を犯す異形と何一つ変わらない。)
ご案内:「違反部活群/違反組織群」から白騎士さんが去りました。
ご案内:「蚤の市」に日恵野ビアトリクスさんが現れました。
■日恵野ビアトリクス > 「賑わっているな……」
薄暗い曇り空の下。
眼前には猥雑な古物市が広がっている。
テントやシートが敷かれ、怪しげな品物がやりとりされている。
まるで異国にやってきた気分だ。
ビアトリクスは性懲りもなく落第街へと足を踏み入れていた。
といっても《魔術師喰い》の討伐が目的ではない。
もちろん見つけたら仕留めるつもりだし、そのための準備も一応している。
見るものが見れば、ビアトリクスの周囲が
普段とは違う異質な魔力に包まれていることがわかるだろう。
ここでしか手に入れられないものもある。
それを探しに来たのだ。
■日恵野ビアトリクス > 蚤の市はスリが多い。細心の注意を払って歩く。
貴重品のたぐいは持たず、かばんは前に持つ。
シートに座り込んで見たこともない意匠の美術品を並べているのが目につく。
その内のひとつ、タイトル不明とある版画に目が止まる。
(うわ、『十字架に掛けられたエリ』じゃん。
レプリカか? いや本物だ。
こいつものの価値を知らないな……)
フードの店主に声を掛け、二束三文を支払い購入する。
いい買い物だ。いや、これが目的ではないが。
■日恵野ビアトリクス > 開放的な蚤の市だけあってか、落第街といえどそう殺伐とした雰囲気はない。
自分以外にも一般生徒が訪れて買い物をしているのが見える。
(あ、あいつバカだな。
これみよがしに財布にお金ぎっちり入れちゃって……)
適当に店を冷やかしながら奥へと歩いて行く。
そうこうしているうちに目的のテントを見つけ、
そこに入る。
■日恵野ビアトリクス > テントの主は蜥蜴頭の異邦人だ。
「……」
並んだ品に視線を走らせ、そのうちのひとつ
色とりどりの瓶が詰まった、“Carbuncle”と印字された木箱を指さす。
蜥蜴の店主が指を立てて価格を提示した。
「……高いな」
独特な聞き取りづらいイントネーションで話す店主との
コミュニケーションは結構難儀したが、
とりあえず提示された価格の2/3程度で済んだ。
とはいえ高かった。やはり倹約が必要だ。
■日恵野ビアトリクス > 《カーバンクルの万能絵具》。単に《カーバンクル》とも呼ばれるそれは
異界の幻想生物カーバンクルの額の宝石を削って作られた
顔料が使われているという。
色味と伸びはそこそこだが、強い魔力が込められており呪物作成に適し、
魔法芸術家の間では珍重される。
常世学園にはそう描画魔術使いが多くないらしく、
運よく手に入れられることができた。
思わず頬を緩ませながら、テントを出る。
■日恵野ビアトリクス > 問題はその少し後に起きる。
蚤の市を離れ、人気の少なくなった細い路地に出た途端、
屈強な男三人に囲まれたのだ。
(……チッ)
外見で強さを識別することは難しい世界だ。
少し頭の回るチンピラなら一見ひょろそうだからといって喧嘩を売ることはない。
しかし“怯え”の気配を嗅ぎとって弱者を判別することはできる。
ビアトリクスはそこに目をつけられたのだ。
(《カーバンクル》が目当てか?)
金を取られるぐらいならいいが、こればかりは。
■日恵野ビアトリクス > なんとかお帰り願えないかと交渉を試みるも失敗。
「がっ」
(こいつ遠慮無く顔を殴ってきやがった)
……果たして逃げ出すことかなわず、
ビアトリクスはゴロツキ三人衆に殴られ、組み伏せられる。
抵抗などできない。一度殴られた時点で戦意は喪失していた……
ご案内:「蚤の市」に湖城惣一さんが現れました。
■湖城惣一 > 「…………」
ふと、立ち止まる。聞こえてきたのは騒動の声。
竹刀袋を下げた痩躯の男が、ノミの市を踏み入れた。
見れば、襲われている少女、否、少年。この場所において、そういったトラブルは絶えない。
「……君たち」
声をかける。腹に美しい真一文字の傷跡が刻まれた、目つきの悪い男。
無表情で威圧感もないはずだが、悪目立ちする格好はここでは即ち実力をあらわすといっても――過言ではない。
■日恵野ビアトリクス > 『ああ、なんだよてめえ、は――』
ビアトリクスを襲った男のうち、スキンヘッドの男が
事態への闖入者に気づき凄んでみせた。
しかし、現れた男の服装に若干怯んでいる。
奇妙なハラキリスタイルの男の噂を知っているのかもしれない。
他の二名も同様だ。もう少し凄むか、踏み込むかすれば
退散しそうな雰囲気を醸し出している。
体格こそ優れているが、彼らは無能力者のチンピラにすぎない。
■湖城惣一 > 男は、構えない。
竹刀袋からいつでも"得物"を抜けるように手に提げるだけだ。
だが、チンピラたちはそれだけでも言いようのない"空気"に呑まれるだろう。
わざわざ進んで相手を拘束するつもりは、ない。
だが、かかってくるつもりならハナシは別だ。
「どうする?」
聞いたのはそれだけだ。だが、その空気が雄弁に語ることだろう。
去るか。
戦うか。
単純な二択だ。
■日恵野ビアトリクス > 『ぐ……』
チンピラたちは一瞬にして空気に呑まれる。
リーダー格らしい、スキンヘッドの男が目配せした。
『チイッ』
踵を返して逃げるが――そのうちの一人がせめてもの戦利品とばかりに
地面に転がった《カーバンクル》の木箱に手を伸ばす。
されるがままに地面に伏していたビアトリクスの顔色が変わる。
「《イリューガー》!」
そう短く叫ぶと、《カーバンクル》をつかもうとした男が
一瞬にして火に包まれる。
ビアトリクスが万が一の時に備えて召喚していた火霊だ。
炎は一時的なささやかな物で、服や髪が多少焦げる程度であったが
男は恐慌状態に陥り、他の二人に続いて逃げていく。
「……」
ビアトリクスが埃をパンパンと払って、ゆっくりと立ち上がる。
自分を助けに入った男と目が会い、気まずそうに目をそらした。
「……その」
■湖城惣一 > 慌てた様子で逃げていく暴漢たち。それを横目に眺めながらも、追いかけようとはしない。
全て終われば、身体をビアトリクスに向け直す。
「…………」
無表情。何を考えているかもわからない瞳が、ただまっすぐに少年を見つめている。
微かに息を吐くと、竹刀袋を担ぎ直してゆっくりと間合いを詰めていく。
五歩ほどあいた距離まで近寄ると、そこでぴったり立ち止まる。
「大丈夫か」
端的に尋ねる声。それは実に平坦な響きで、ここからも大した感情を読み取ることはできないだろう。
■日恵野ビアトリクス > 散乱したかばんや《カーバンクル》を拾い上げる。
どちらも無事だ。
「……大丈夫、です」
殴られた顔がヒリヒリと痛む。
別に大した傷ではない。すぐに治るだろう。
――なのに、一度殴られただけで戦うことも逃げることも
できなくなってしまった。
表情に悔しさが滲む。
少しの時間を置いて、ぺこり、と頭を下げた。
感謝のつもりだろう。
■湖城惣一 > 「そうか。ならいい」
相手の応答に答えながら、懐から手ぬぐいとペットボトルを取り出した。
手ぬぐいを、ボトルの水で濡らすとそのままつかつかと更に歩み寄って、
「使っておけ」
と、差し出した。ここのちんぴらたちは、その性質上あまり清潔とはいえない。
拭い、多少冷やすだけでも違ってくるだろうと。
相手の感謝にはどこ吹く風、というよりは無感動に、ただそちらの瞳を見つめるような視線だ。
■日恵野ビアトリクス > 「……あ、その……
ありがとう、ございます」
掠れた声で応え、受け取った手ぬぐいを顔の傷にあてる。
「……」
男の視線が外れない。感情が読めない。
その場から去ることもできず、ただ立ち尽くしている。
「……あの、あなたは何者なんですか」
沈黙に耐え切れず、おずおずと問いを口にする。
武人然とした服装、立ち振舞。背負う竹刀袋。
(――人斬りの類だろうか?)
向けられる視線に僅かな怯えが混じる。
■湖城惣一 > 「いや、礼には及ばん」
声を出して礼を述べられれば、ゆるりと頭を振って否定して。
「ただ目についただけでな」
そういってから腕を組んで、路地の壁に背を預けた。
剣呑な気配はない、だがさりとて優しげな素振りもない。
ただ視線を向けるだけの彼に怯えを懐くのも無理はあるまい。
「俺は……そう」
何者か、と問われれば。
「一応、形式上は風紀・公安に属している身でな。
警らは俺の範疇ではないから進んでするつもりもないが、
さりとて目の前でそれを見過ごすほどの主義でもない、というだけだ」
言いながら、腹を鳴らした。大きく息を吐くと、懐から拳大の握り飯を取り出して咀嚼を始める。
■日恵野ビアトリクス > 「風紀公安に属しているもの……」
復唱する。なんだかよくわからない言い回しだ。
イリーガルな立場にあるのだろうか、と理解する。
腹の音には多少面食らった様子を見せる。
「ここには、《武器》を探して訪れました。
少しでも“力”が欲しかったんですけど……見ての通りのありさまですよ」
自虐の笑い。《武器》とは《カーバンクル》のことだ。
蚤の市の喧騒が遠い。
過度に優しくもされず、治安の悪い場所を歩いていたことを叱られもしない。
ビアトリクスにはその不干渉な態度がむしろありがたかった。
安心したように息を大きくつく。怯えたことを心中で詫びた。
「ぼくは日恵野ビアトリクス、見ての通りただの一般学生です。
よろしければあなたのお名前を伺えませんか」
そして、若干言いづらそうにして、
「……それと、落第街の出口まで付き添っていただけませんか」
と、助けを願う。だいぶ気力を消耗してしまった。
スケッチブックに貯蔵した魔法や《イリューガー》で
なんとかならない手合に襲われたら終わりだ。
■湖城惣一 > 「力か」
男にとって、力とは他に求めるものではなかった。
だが、共感はできずとも理解はできる。
ゆっくりと握り飯を咀嚼し、飲み込んでから自分の顎を撫でる。
「湖城惣一。二年だ」
やはり端的に己の名を告げ、ゆっくりと路地の壁から背を離す。
助けを願われれば、それを無碍にするほど"執着もない"。
「出口か。構わん。……しかし、力か。
ほしいならばくれてやる、というほど気軽なものでもないが――」
目の前の彼にどう声をかけたらいいかは、男は分からなかった。
「何故欲しいのか、それが分かれば多少は助言はできると思うが」
■日恵野ビアトリクス > 「何故……ですか」
そう訊かれると答えに窮する。俯いて、時間をかけて考える。
そもそも何故力がほしい、と思ったのか。
目の前の湖城と名乗った男を眺める。和装の剣士。
想起されるのは、記憶に新しい、元ロストサインの男。
表情がかすかに憎しみに歪む。
……そして、最近もっとも感情を揺らされた存在。
鞘当をしたばかりの式典委員会の副委員長。
やがて、
「……ぼくは」
「……ぼくは、ずっと虐げられてきました。
美しいもの、力あるものに。
少しでもほしいと思ったものは、全部そいつらのものになっていました」
「……ぼくは弱い。そいつらに歯向かっても、
奪い返すことはできず、返り討ちに遭うばかりでしょう」
「だけどせめて」
「腕の一本ぐらいは道連れにしたい」
とぎれとぎれに、本心を口にした。
息が荒くなる。瞳が憎悪に揺らめく。
誰にも吐露したことのない内心だ。
会ったばかりの彼に、なぜか告白してもいいと思った。
■湖城惣一 > 「…………」
顎を撫でる。目の前の彼はなるほど、懸命に生きる者なのだろう。
こだわり。執着。どう言い換えても違いはない。
いずれにせよ、彼に雄弁に語れるほどの経験をしたことはない。
惣一という男に在ったのは個我のみだ。
生来他者への執着を色濃くしたことはない彼に語れるのはあまりにも少ない。
故に。
「もしも君が、己の領分以上の何かを為したいと思ったならば」
己の為してきたことを告げる他にない。
「抱えられる気持ちはたった一つだ」
言葉少なに、ぽつぽつと、握り飯を咀嚼しながら話を進めていく。
「強くなりたいのは何故か。
憎むのは何故か。
猛るのは何故か。
"何故"を追求し、君の想いの根源を探り当てろ。
その想いを抱えて潜ったそこに、"神域"がある」
――必要なのは純度だ。そう告げる。
最後にそう告げた。
湖城惣一は神域に沈むもの。どこまでも一人で技を追求してきた。
抱える想いすら希薄な彼は、そうしてそこへと至ったのだ。
隠すつもりはない。彼にとってそれは手段であり目的だ。
彼には、本質的な意味で"敵"と思えるものも居ない。
だから淡々と、己に出来、恐らく目の前の少年にもできるであろう、"己の極意"を簡単に詳らかにするのだ。
■日恵野ビアトリクス > 「なぜ……憎む……?」
さらにその奥まで考えろ、というのか。
気が昂ぶっている。手ぬぐいを強く傷に押し付けた。
――《踊るひとがた》の発動。
当てられた手ぬぐいが黒く滲み、顔にまで染みわたり、
怪物じみた相貌と化す。
憎い。憎いのはなぜか。
(逆恨みなんだ)
醜い自分が恐れ多くも手の届かない場所にある美しいものに
邪な欲望を抱いた罰を受けたのだ。
醜いお前が手を伸ばしてはいけないものがたしかにこの世にはある。
蝋の翼が陽の光に焼かれるのと同じなんだよ。
憎いから醜い。醜いから憎い。
「…………」
思考を中断する。
深呼吸する。顔と手ぬぐいの色が元に戻る。
「ぼくは、」
一度えずいたように呻く。
「ぼくには、時間がかかりそうです、それには」
■湖城惣一 > 「すぐには成せん。だが、己を突き動かすのが何か。
もしそれを良しと思えなかったなら――
そのために手に入れた力は砂上の楼閣でしかない」
それは呆気無く崩れるぞ、と。男は忠告した。
心の平衡を保てずに破滅したものを数多く見てきた。
本当に、最後の最後に残ったそれを見つけられなかったなら。
それは全ての歯車を狂わせ、足を掬われる。
「力を求めることが悪ではない。
ただ、自分の居る場所、足元を見据えられないならば、見当違いの力を求めることになる」
男は、ただ見つめるだけだ。無表情の瞳の奥に、少年が何を見るかはわからない。
狂気かもしれないし、どこまでも澄んだ水のようかもしれない。
男はただ、表情を変えずに見つめているだけだ。
■日恵野ビアトリクス > 「……」
彼の瞳をのぞき込むと、憎悪の熱が引いていくのがわかる。
けして消えたわけではなく、未だずっと燻ってはいるが。
わかっている。
本当は憎しみのために戦いたいわけではない。
その憎しみの一番の矛先はほかならぬ自分であるわけだから。
けれど憎しみ以外があまりにも自分にとって眩しすぎる。
今はただ楽になりたい。
「……ご忠告、痛み入ります。湖城さん」
静かにそう応える。
ほんの少しだけ、背負う荷が軽くなった、そんな表情。
■湖城惣一 > 「そうか」
人の感情をあまり解すことが得意ではない。
しかし、激情が引いていくことは分かる。
それに対する安堵か、それとも単に握り飯を食べ終えたからか。
大きく息を吐くと背を向けた。
「……さて、行くか。なに、ただ力を求めるだけなら幸いここにはいくら手段はある。
その中から、自分の思いに沿う、納得いくだけの選択肢を見つければいい」
そういって、ゆっくりと歩き出す。ビアトリクスの歩調に合わせて。
立ち止まれば止まるし、ただそちらの動きに沿うように。
ただ約束を守るように、ゆっくりと惣一は歩いて行くだろう。
■日恵野ビアトリクス > ゆっくりとした歩調で湖城とともに歩いて行く。
前にもある人物にこうして落第街の出口まで付き添ってもらったことがある。
ほんの数日前の記憶のはずなのに、ひどく懐かしかった。
――やがて別の区域との境界線近くにたどりつくと、振り返る。
彼の気持ちはどうあれ、自分を助け、苦悩を吐き出す相手になり、
歩き方を示してくれたのは揺るぎない事実だった。
「……重ね重ね、ありがとうございました。
今後ここに足を運ぶことは多分そうないと思いますけど、
もしまた顔を合わせることがあったら、
お話していただけると嬉しいです」
と言って、深く頭を下げる。
ビアトリクスに出来る最大限の敬意の表しかただった。
そして再び背を向け、ビアトリクスは歩き去っていく。
ご案内:「蚤の市」から日恵野ビアトリクスさんが去りました。
■湖城惣一 > ――出口へとたどり着いた。
彼を見送りながら、自分も顎を撫でる。
時折、自分も悩むときはある。
去りゆく彼の背にそれを重ねながら、ふむ、と唸った。
「ああ、いや。俺はそもそも学園の生徒なんだが――」
言う前に、去って行ってしまった。
仕方ない。いずれにせよ、機が合えばまた会うことになるだろう。
ひとまず食事を補給するために、ゆっくりと食事処へ足を向けた。
ご案内:「蚤の市」から湖城惣一さんが去りました。