2015/07/12 のログ
ご案内:「ミラノスカラ劇場」に『鮮色屋』さんが現れました。
■『鮮色屋』 > 懐かしき恋しき愛しき劇団フェニーチェの舞台、ミラノスカラ劇場。
今はただ静かに茶久の車輪の音を響かせるだけだが、その静けさもいつかは客の賑いに変わるものだと信じている
先日茶久が作品を作っている間に落第街大通りで一舞台演ったとの噂を聞いて
あの時聞こえた開演の音は幻聴の類ではなかったというだけで我慢しきれずにこの劇場まで椅子を運んだ。
( 我らの城は気付かぬ内にこの様に朽ち果ててしまった…
5年…?10年の間本当ここに誰もいなかったかのように、
しかしここから私が出来る事を一つずつ成していくしかない)
キュル、キュルと劇場全体を見まわるように車椅子を走らせる。
実際に5年や10年という時間は立っていないがそれほどまでに茶久は待たされたと言うのだろう
■『鮮色屋』 > 所々破壊されている客の席。
(この様な場所に客を座らせる訳にはいかない)
穴の空いた舞台
(これでは演劇なんて出来る訳がない。誰か修理出来る人物を呼ぶべきなのか)
破れているカーテン
(カーテンが破かれていては光が差しこんでしまう。照明の仕事が増えてしまうなんということは避けたいものだ)
茶久が見たミラノスカラ劇場は思った以上に悲惨な場所になっていた。かつては大盛況を見せていた場所とは茶久には全く想像が出来ない
全ては―――全て公安のせい。
あの時に公安が現れていなければこの劇場は文化遺産に登録されていたとしてもおかしくはない。
それほどまでに美しい劇場でかつ美しい演劇を繰り広げられていた―――はずなのに
■『鮮色屋』 > 茶久は暫し思考を巡らせる。
(先日の大通りの騒動。脚本がいたらしいが特に咎められている様子はない
寧ろ推奨されていると見てもいいものなのか…?それは脚本として――島で演じても良いというのか?
私が―――演じても―――?)
外側では分からないが鳥の顔を表すかのようなその被り物の内側は満面の笑み、演技でもなんでもない自然の笑み
笑い声は出ない、ただスカスカと空気が抜けるような音が被り物から漏れ出る。
それでも笑う―――嗤う嗤う嗤う嗤う――
意味はあるが中身はない音がスカスカと茶久から漏れ出る
裏方として、演じる事を羨む茶久にとってそれは主役として選ばれた以上に嬉しい事である
ご案内:「ミラノスカラ劇場」に『脚本家』さんが現れました。
■『脚本家』 > ごとり、ごとり。
ブーツの底を鳴らしながら、穴の開いた舞台に一人の少女が現れる。
其れは演劇の一幕のように、元から書かれていた"脚本通り"のようなタイミングで。
『脚本家』は歪んだ笑顔を携えて、『染色屋』の前に姿を見せる。
「やァ、久しいね───茶久。
厭、此の場合は『染色屋』と呼んだ方が正しいかな」
幾度となく繰り返された「久しいね」の一言。
会いたかった人物に会うたびにこの声は変わらず掛けられる。今も、同じように。
舞台の上で笑顔を浮かべ乍ら両の手を大きく広げれば、彼女は芝居がかった手振りでひとつ。
「衣装の準備は進んでいるかい、此れからはあの頃よりも忙しくなる」
嗤う『染色屋』を見て、彼女もまた嗤った。
■『鮮色屋』 > 鳥のような被り物でギョロリと舞台を鳴らした『脚本家』の方を見る
懐かしく、かつ頼もしい顔。こいつだから、こいつだからこそ茶久は開演の音が幻聴えたと思っている
ただ、仲間に対して劇をするのはナンセンスであると思った茶久は被り物を外し、いつも通りの仲間の顔を見せ、
いつものスケッチボードを『脚本家』に向ける
【 久しぶり ヒビヤ
染色屋、うぅん私は鮮色屋。
舞台の上の新しい色を作る鮮色屋 】
鮮色屋を自称する少女は車椅子の上で舞台上で芝居をする少女を見て微笑む。
(あァ―――帰ってきた。)
この語り方こそフェニーチェ―――まるで故郷に帰ってきたかのような安心感に少女はスケッチボードと共に視線を脚本家に向ける
【 衣装も作ってる。
勿論鮮やかな色を使ったものは現在採取中
期待して待っているといい。
アレは良い色だ 】
今の茶久のアトリエにいる作品はとても生命力に溢れている、活きる作品。
アレを元に作った色は舞台を鮮色に染めれるだろう―――
ご案内:「ミラノスカラ劇場」に『狂作者』さんが現れました。
ご案内:「ミラノスカラ劇場」に『共作者』さんが現れました。
ご案内:「ミラノスカラ劇場」から『共作者』さんが去りました。
ご案内:「ミラノスカラ劇場」に『共作者』さんが現れました。
■『脚本家』 > 檀上でまたひとつ踵を鳴らす。
芝居がかったこの所作のひとつひとつも、大仰な此の語り方も。
劇団フェニーチェの"脚本家"である彼女はずっと、何時だって変わらない。
「───お前の色は舞台を鮮やかに彩る。
故にフェニーチェの舞台には必要不可欠。
───何時だって本物の赤を、紅を、朱を!其れ以外だって!」
歓喜に染まった表情で、高らかに。
其れで居て冷静さを欠かすことなく、彼女は声を張り上げる。
「当然期待させて貰おうじゃあないか。
『死立屋』も帰ってきてるんだ、未だ会えては居ないが───
劇団フェニーチェの復帰講演──厭、凱旋公演ももう直ぐだ。
屹度今頃『墓堀り』あたりが全力で下準備をして呉れているだろうさ」
長い黒髪のポニーテイルをふぁさと揺らす。
『鮮色屋』の其の双眸を、黒い黒い黒曜石のような其れがしっかりと捉えた。
■『共作者』 > 懐かしき舞台に帰ってきた。
此処は全ての始まりの場。全ての終わった場。
しかして、これからまた始まりが『読めた』場所。
「……あぁ……また、美しぃ……人の営みが、行われるのねぇ……」
とろりと恍惚とした声を上げる。
既に見えぬこの眼に、懐かしき人の名が見える。
この劇場に揃う二人の団員の名。
「あぁ……『脚本家』に、『鮮色屋』……ぁの二方が……此処にぃ……」
ことり、ことり、ことり……と、確かな足取りで歩く。
踊るように、跳ねるように。
劇場の中へと足を運ぶ。
■『鮮色屋』 > 【 本物の真っ赤な真っ赤な
紅い赤い朱い紅い赤い朱い 紅い赤い朱い
紅い赤い朱い紅い赤い朱い 紅い赤い朱い赤い朱い
この紅を見れば視界が明くなるようなものを
作ってやる
脚本を越える物を作ってやる 】
一心不乱にスケッチボードに紅を表すものを書けばストレスを発散したかのような表情を『脚本家』へ向ける
その筆を動かした指は勢い余っているのか紙と摩擦を起こし紅く滴るものを地面に落としている
【 『死立屋』?
それはとても楽しくなりそう
あれがいるなら盛り上がる衣装を作り出せるだろう 】
懐かしい名前が1人、そしてまた1人懐かしい声が聞こえる
果たしてコミュニケーションを取れるかは分からないが彼女を知っている『鮮色屋』が取る行動は一つ
車椅子を走らせ、『共作者』の手を掴み取ろうとする。
もし許すならばそのまま『脚本家の前まで誘導するつもりである』
■『脚本家』 > 狂気じみた『鮮色屋』の其の一連の行動を見遣れば、満足そうに笑う。
劇団には欠かせない、此の理性的な狂気。何一つ変わっていない。
厭、寧ろ以前よりずっと鮮やかに、色濃くなった───ようにも見える。
「あァ、此れなら以前より──『団長』の描いた劇と同じか、其れ以上に!
素晴らしい劇が出来るかもしれない───彼に届けられるかもしれない!」
相も変わらぬ女の姿を認めれば、彼女は何時も通り、先刻と変わらぬ文句を。
・・・・
「───久しいね、『共作者』」
成り損ないのアカシックレコードは屹度変わらない。
故に彼女は見えぬ、聞こえぬ彼女にも変わらず芝居を続ける。
「調子は如何だい、もう既に前奏曲は終わり、幕も上がり。
開演のブザーも鳴いている訳だが───舞台の準備は問題ないのかい」
明日の天気を問うように、見知った彼女にゆったりとひとつ問いかける。
当然のように返ってくるであろう返答の内容は予想するに容易い、が。
■『共作者』 > 「ぁら……『鮮色屋』さん……大胆、ねぇ……ぁあ、ぁあ……演者は……私たちは……
いつも、いつも、そうだったわぁ……」
・・・
とろりとしたその声はそのまま……手を掴まれたまま、盲目の女は確かな足取りで惹かれ引かれて付いて行く。
「『調子は如何だい』……『準備は問題ないのかい』……?」
聞こえぬ耳を持つ女はしかし、問いかけを違わず返す。
ああ、ああ、可笑しい……とても可怪しい、犯しい質問だ。
そんなものはいつでもいつだって何処だって、私の答えは決まっているのに。
「ぁらぁ……いつでも、どこでも……私は、構わない、わぁ……
この、美しく……悲しく……寂れたぁ……私たちの、劇場だって……
元の姿に……戻せる、わぁ……それが望みなら……だけどぉ……?」
■『鮮色屋』 >
【 常に上を目指すのは衣装かつ、演者であるならば当然のこと
故に『団長』は越えるべくして越える存在
動かぬならばエキストラにすぎない 】
常に最良かつ、上を目指す。
内容はどうあれ『鮮色屋』は演じる事も染める事も上を目指し続けている。今も昔も未来も劇場でも島の上でも―――
(私らはお互い持つもの持っていないものを持っている
貴女は耳と目は無いが私には耳と目はある。
代わりに私には足と口はないが貴女には足と口がある
ただ、貴女と私を繋いでいるものは今貴女を引っ張っている手)
直接意思疎通は出来ないに等しいが、ただそれでも同じ『舞台』に立つ者として『鮮色屋』は『共作者』を先導する。
ただ、ただ仲間に合わせたいが為に――
■『脚本家』 > 当然のように返る言葉を当然のように受け止める。
聞くまでもない。また、先刻『鮮色屋』に向けた表情と少し異なる表情を彼女らに向ける。
恍惚じみた、其れで居て扇情的な、色欲に溺れた表情。
「クッ………ハッハハハハハハハハハハ!!!
当然ッッッ!!!僕は満足だッ!!厭、未だ満足なぞしてはいけないが───ッ!」
箍が外れたように笑いだす。
熱を帯び、狂気を孕んだ其れは、広い劇場に響き渡る。
「望み?冗句はよしてくれッッ!!!
こんなの云うまでもないだろうッ、此れは君の仕事だよ『共作者』シャンティ・シン!
劇団の大道具たる君のやるべき仕事だッ!!!
────君が、君が此の寂れた劇場に命を吹き込むんだ。君の能力でッッ!!!」
ゼエゼエと肩を揺らしながら、彼女はまた狂ったようにハハハと笑いを溢す。
何故こんなに面白おかしく笑っているのか彼女には解らない。
厭、こう云う"脚本"だったのかもしれないが、彼女は今は只管に役を演じる。
「───劇場を直ぐに綺麗に、紅く、橙の灯りの似合う劇場を"創って"呉れ!
世を新たに創り出せる君なら───創世の書を愛する君ならなんてことはないだろうッッッ!
あの色を取り返して呉れよ、『共作者』ッッッッ────!!!!!」
両の手を広げる。
彼女は、『団長』の役を、今だけ演じる。
自分では"役<チカラ>不足"だと解っていても、少しでも彼の面影を目の前の盲目の彼女に魅せてやりたかった。