2015/07/13 のログ
■『共作者』 > 「ぁあ……ぁあ……『脚本家』。貴女は、団長のよぅ……なんて……ふふ……
ぃいえ……人は、人。それ以外には、ならないのよぉ……
貴女は、団長、ではなぃ……私も、貴女も、誰だって…団長では、ないのよぉ……?」
くだらない、つまらない、みにくい、ばからしい。
自分以外の誰かに成り代わるなど、愚かで愚かで愚かで愚かで愚かで……
「ぁあ……でも、いぃわぁ……狂おしく、踊るのが……私の、私たちの、人の……美しさ、だものぉ……」
くすくすくすくす
けらけらけらけら
からからからから
恍惚と、艶美に、醜悪に、奇怪に、
笑う嗤う嘲笑う微笑う……
哂うその手には、二冊の本。
一つは、最初から持っていた。
もう一つはいつの間にか持っていた。
「さぁ……私の、『創世の書』……
今一度……この、美しくも、醜くも……可愛らしくもぉ、恐ろしくも……
最低で、最高のぉ……私たちの、仕事場を……産み出し、なさぃ……?」
――瞬間
世界が色を変えた。
全ての条理が不条理が
道理が無理が
空間が時間が
曲がり伸びる
穴だらけの、破れだらけの、煤だらけの、世界が
磨き上げられ、整い、美しい世界に――
変わった。
■『鮮色屋』 > 【 嗤え嗤え、脚本家 共作者
鮮やかな色を映えさせるような笑いこそ
今の私に欲しいもの、その笑劇こそ島に届けて欲しいものだ 】
お前を止めるものは何も無い、鮮色屋もつられて笑みを零すもののスカスカと空気が抜ける演技しか出来ぬ
適役は嗤え笑え、『鮮色屋』は代わりに『笑い』を振りまく人こそ後押しする気になれるのだ。
ただこの『笑う』感情は抑えきれぬ。笑いたい、否、演じたい。
ただ『鮮色屋』が演じるならば身振りで、手で演じるしかない
共作者の手を離す訳にはいかない。故に『鮮色屋』は片手で演じる。
手を顔の横へ持ってきて親指と残りの四指で拍手をするように―――手話で言うこれは笑う
「ハハハハハハハハハハ!」
まるで『鮮色屋』が大声を張り上げるように指は拍手を鳴らす――それはフェニーチェ全体に向けた拍手かのように思われるように――
『鮮色屋は』視る。
世界が鮮やかに色が変わるのを
『共作者』が世界を、劇場を変えていくのを視る。
本人が視えているかは知らないが、『目』の代役を務める『鮮色屋』はその美しく整った世界を視て呆気に取られる
(彼女の世界には驚かされるばかりだ―――私もこう人を魅了する『鮮色』を作り出したいものだ。
否、作る。脚本家越えを目指すのだ。
更に美しい世界を彩る、『鮮色』を―――)
■『脚本家』 > フェニーチェは何時だって舞台を演じる。
役でなく、『自分』を。
故にこの場に存在しているのも「一条ヒビヤ」たる個人ではなく、『脚本家』で『団長の紛い物』だ。
愚かしくも、現実に起き得ないような下らない、凄惨な世界を再現するフェニーチェでは。
「ハッハハハハハ…………流石としか云いようがない
相も変わらずッ!現実を嗤うような魔術をッ!演劇をッッ!
────嗚呼、最高だよ『共作者』ッッッ!!!!!」
一瞬で劇場は姿を変える。
色鮮やかに、何時だかを想起させるように。
其れで居て嘗てよりもよっぽど綺麗で、美しく、また狂気的に。
ミラノスカラは創り変わる。
劇団フェニーチェの大道具は、『世界』諸共創り直してしまった。
歪む世界。
歪む時間。
歪む道理に歪む空間。
『脚本家』は息を吐く。
嘗て自分たちの描いた栄光の軌跡を思い出すかのように。
嘗て台無しにされた"脚本"の続きを綴るかのように。
「舞台は整った。
────あとはお客様をお迎えするための準備を。
劇場に足を運びたくなるように"宣伝"をしなくてはいけないッ────」
宣伝。
島に狂気を撒き散らし、是非とも『お客様』を迎えられるように。
公安だろうが風紀だろうが、彼女たちは迎え入れる。舞台にあげて、小道具の一つにでも使うだろう。
人の目につくところで、好き勝手すればいい──と。
彼女はまた嗤った。
■『共作者』 > 「ふふ、ふふふ、あはは……恐悦、至極……よぉ……でもぉ……
ふふふ……頑張って、るのはぁ……私、だけじゃ……ない、みたいねぇ……」
くすくすくすくすくすくすくすくすくす……
手にもつ禍々しき瘴気を放つ、古ぼけた本……それを撫で擦る。
「えぇ、ぇえ……すばらしい、ああ、すばらしい……ぁの、『墓掘り』さんも……ふふ、ぉ仕事……してるみたいよぉ……
あは、ふふ……えへへ……はは……うふふ……良い子、じゃなぃ……無能だなんてぇ……可愛いわぁ……」
けた、けたけたけたけたけたけたけたけたけたけたけたと
歌うように嗤うように朗々と朧朧と謳い上げる。
「私の、最初のお仕事はぁ……ここまでねぇ……さぁ、『鮮色屋』さんもぉ……ふふ。
・・・・・・・
今の新しい作品創り……完成を、待ってる、わぁ……貴女なら、見えない私にも、感動をくれると……ふふ、思うわぁ……
『脚本家』さんも……あはは、ふふ……うふふ……万事、取り計らい……期待、するわよぉ……?」
ご案内:「ミラノスカラ劇場」に『殺陣師』さんが現れました。
■『殺陣師』 >
劇場が姿を変えた辺りで――何時の間にか、『脚本家』の側に控えている西洋人形。
だが、黙して語らず、ただそこに在るのみ。
「……。」
■『鮮色屋』 > 宣伝。
言うならばフェニーチェ復活を学園中に知らせる為の物。
それは今言う『墓掘り』の下準備とは別の―――正に舞台を盛り上げるようなもの―――
【 宣伝ならフェニーチェを描いてくればいいのだろう?
学園は勿論、転移荒野・開拓区・研究区・歓楽区
あげればあげるだけ、キリがない。
鮮色は揃っている。 島を染め上げる 】
【 紅く、真っ赤に朱い紅い血で
不死鳥を私達が蘇ったという事を知らしめる
不死鳥は私が嘶かせる 別にいいでしょう?脚本家 】
人が第一に認識するもの、それは色、色。人の肌より人の異常さより先に気にかかる色。
それは色鮮やかに不死鳥を再現させる即ち―――
【 この島にッ!
世界にッ!!
宇宙に!!
伝わらせるッッッ!! 】
【 私の作品『地上絵』を作るッ!! 】
地を指し、両手を広げ、そして天を指差す。
それは島の至る所に地上絵を作りフェニーチェ復活を知らせる計画―――
「私の新しい作品は決まった――量は恐らく足りる
足りなければ現地で新鮮なものを『善意』でいただけばいい」
『鮮色屋』は嗤う。嗤えなくとも嗤う
いわば最初の染を見つけたのだからこれを喜ばずに何時喜べばいいのか
『殺陣師』を見つけると『鮮色屋』はにやり、と微笑む
【 相変わらず、と言った所なのかな?
脚本家に大事にされているようで何より―― 】
そう笑みを我慢出来ない表情でスケッチブックを向けている
■『脚本家』 > すうとひとつ大きく息を吸い込む。
「嗚呼、期待して呉れたまえ────
凱旋公演は屹度成功させて魅せようじゃあないか、狂気を育んで遣ろうじゃあないか!」
まるで劇の一節のように、高らかに。
其処に在る筈のモノは揃った。
劇場は嘗ての鮮やかさを取り戻した。そして控える西洋人形。
そして────誰よりも演劇を愛する同胞。
「構わないさ『鮮色家』、君の舞台だ
君が此の───フェニーチェを。不死鳥が舞い戻ったのを告げればいい
────啼かせればいいッ!」
存分に遣るといい、と。
「好き勝手に遣れば結局ひとつの演劇へと収束する────
嗚呼、どんな無理なことでもしてしまえばいい。脚本は好きに書き換えてやろう」
嗤う。 不敵に、嗤う。
「デウス・エクス・マキナが。
機械仕掛けから出て来られる神が如何だって収束させて呉れるさ」
演劇の上では好まれない技法も。
フェニーチェで演れば最高のスパイスとなる。
「好きにしたまえ、同胞諸君────ッッッ!!!!」
高らかに云い切って。彼女は──
嗤った。
■『共作者』 > 「ふふ、うふふ……本当はぁ……こうして、皆が来なければ……学生街にでも、劇場を、再現しようかとも……思ったのだけれどぉ……
でもぉ……やっぱり……此処が一番、よねぇ……あぁ、ぁあ……此処こそが、ふさわしく……すばらしい……わぁ……」
恍惚と恍惚と恍惚と笑みを浮かべる。
人が人であるために、醜く美しく生きるために、腐って正しく生きるために。
落第街の此処こそが、私たちらしさ
「あぁ……美しくも……儚くも……ああ、あぁ……『鮮色屋』さんの、お仕事が、
この世の、美しさをさらに……さらにさらに呼ぶのねぇ……ぁあ、ああ……すばらしい、わぁ……」
『殺陣師』の出現に、くきり、と首だけを動かして正確に『殺陣師』を見据える。
「あらぁ……『殺陣師』さん、ねぇ……ふふ、ごきげんよう……?
あなたは……ふふ……まぁた、後ろから……指揮、かしらぁ……
あはは、ふふ……それも、また、いいわぁ……」
ご案内:「ミラノスカラ劇場」に『演出家』さんが現れました。
■『殺陣師』 > この人形は大切にされているのだろう。
長く使われたであろうそれは、身なりも衣服もとても手入れの行き届いているものだ。
ひと目見れば、大事にされていると分かる。
『殺陣師』の人形が視線を動かした。『鮮色屋』ヘと、『共作者』 へと視線を合わせる。
声を掛けられれば、人形は答えるだろう。
「そうですそうです、それが私の仕事で御座いましょう。
――と言いたい所ですが、皆様腕前は衰えていないどころか輝きを増している模様。
これは『殺陣師』もいらないですかな?」
■『演出家』 > 「おやおやおやおや 見慣れた顔ぶれが並んでいますねぇ」
舞台の端にスポットが当たる。
白い司祭服が闇に映える。
「どこかで野垂れ死んでいるものだとばかり」
■『演出家』 > 「どうも、皆様……お久しぶりです。ご壮健そうで何より何より」
大仰な一礼。
■『鮮色屋』 > (『好きにしていい』
あぁ、なんとも役者を信用した言葉だ。
素敵、素敵という言葉が陳腐な程に好い演技だ。)
ただその『脚本家』の言葉に感情の昂ぶり抑えつけられぬまま立ち上がろうとするが足そのものが無い為に立ち上がる事も出来ない
ただ両手で指を鳴らし嗤う嗤う。
嬉しいのだ。好きにフェニーチェを啼かせても良いという言葉が。
楽しいのだ。今からどのようにフェニーチェを啼かせるのか。
新しく現れた『演出家』を見ればくすりと微笑む
【 役者は死なない
一時的に舞台奥へ隠れただけ
そして今は時期が来ただけの話 】
時期というものはとうの昔に来ている。ブザーが鳴ったあの日……いやそれより前かもしれない。
【 懐かしい顔が視れただけでも私は力を貰ったよ
そろそろ作品が飛び起きるころだからご飯を上げないといけない 】
そう描いたスケッチブックを見せれば満足したかのように車椅子の横の荷物入れに突っ込み、車椅子を劇場の出口へ向ける
(私の――舞台はもう始まってる―――)
その顔は少年が奇跡に対して目を輝かせているような、そんな顔だった
ご案内:「ミラノスカラ劇場」から『鮮色屋』さんが去りました。
■『脚本家』 > 「こりゃあまた随分と」
芝居がかった様子で両の手を大きく広げ直す。
同胞は、相も変わらず。嘗てと同じように此処に集まる。
『ミラノスカラ劇場』は、全く変わらず───厭、多少鮮やかになって劇団員を迎える。
嘗てと同じように、彼らの居場所になる。
・・・・
「久しいね、ルギウス公。
君こそ野垂れ死んでるんじゃあないかと心配していたよ」
心配なぞ全くしていないような口ぶりで、『脚本家』は彼を迎え入れる。
車椅子をゆらりと揺らして出口に向かった『鮮色屋』を見遣れば小さくひとつ。
「期待してるよ」、と。
■『共作者』 > 「ぁら、あら、あらぁ……『演出家』さん、ねぇ……ふふ……
私、は……そぅ……それこそ、貴方を……本に、するまで……死ねません、わぁ……
でも……ふふ。すこぉし……『読んで』、いました……よぉ……あはは……あなたも、好きですねぇ……
お祈り、だなんてぇ……ふふ……信じる……なんて、ぁあ、あの人達も、可愛らしかった、わぁ……?」
くすくすくす、と嗤う。
ああ……この素敵な人たちを、全て本にするまで……私は死ぬわけにはいかない
「逝って、らっしゃぁい……『鮮色屋』さん。ふふ……
私は、ねぇ……『殺陣師』さん……『共作者』なのぉ……
誰かと、ともにあってこそ、なのよぉ……ふふ」
『鮮色屋』を微笑って見送り、『殺陣師』に咲って強請る。
■『演出家』 > 「実を言うと、何回か死んでおりましてねぇ……。
死んだついでにあちらこちらで“舞台”を眺めながらブラブラと」
張り付いた笑みのまま、脚本家に対して礼の姿勢を続けている。
「染色屋様の仕事は、まず外れませんからねぇ。
期待できそうです。私としましては映えるような仕込をしておきませんと名が泣きそうですよ」
「私を本にするならば、私となるか無限の寿命を手に入れて頂きませんと。
……我が神の教えですのでねぇ、己の欲求には素直でいませんと」
共作者の方に首だけを向ける。
■『殺陣師』 > 「成る程。相も変わらず魅力的なお嬢様で御座います。
確かに世界が在れど誰も住まなければゴーストタウンで御座います。
ですが今はどうでしょう!こんなにも多くの同志が、再び集った!
誰かと共に在る貴方の<演出>も、さぞかし生きて映える事でしょうか!」
大げさに舞台へ向けて両手を開くアクションを取り、振り返る。
「して、<指導>がご入用でしたら何なりと。
『共作者』、いえ、貴方がたの<演出>をより激しく致しましょう。
とは言え、私めも再び壇上に上がるかもしれませんが。」
■『殺陣師』 >
「そして先日振りですか、<ワンマンレギオン>、いえ、『演出家』」
大げさなフィンガースナップを一つ、響かせる。
「やはり表立つのなら、『演出家』の仮面は貴方にこそふさわしい。」
■『共作者』 > 「ぁら、あら……それでは、一生ぉ……死ねませんねぇ……ふふ、ふふふ……
『演出家』さん、あなたに、なるのは……ぇえ、それは違います、ものぉ……ねぇ……?
ぁあ、でも……それなら、すこぉしだけ……『読ませて貰う』、のは……だめ、かしらぁ……」
真新しく美しい白い本を手にする。
それは無垢なる色。何者にも染まる白。
「ふふ……今日のところはぁ……劇場……の演出で、手一杯、だわぁ……
いずれ、ふふ……良い演出が、あれば……お願いしたい、わねぇ……
良い舞台を……用意する……のが、お仕事……ですものぉ……」
くすくすと、『殺陣師』に笑いかける。
■『脚本家』 > 楽しげに語らう彼らを見遣れば、大仰に肩を竦めた。
本当に。何一つ変わらない彼らに『脚本家』は安堵する。
ふっと表情を緩めて、彼女はごとりと、ひとつ踵を鳴らす。
「嗚呼、本当に楽しみだ。
心が揺さぶられる。こんなにも気分が高揚したのは何時振りか───」
くるりと背を向け、一言。
「僕はこの辺りで失礼させてもらうよ。
こんなにも役者が揃うとは思わなかった。
────脚本を書き換えないといけないじゃあないか!」
歓喜に染まった声を、高らかに。
再びブーツの音を響かせて、舞台から降りていくのであった。
■『脚本家』 >
───去り際、ひとつ開演の合図が再びヴ──ッ、と鳴いた。
ご案内:「ミラノスカラ劇場」から『脚本家』さんが去りました。
■『演出家』 > 「ええ、先日振りですねぇ……『殺陣師』。
こんな私でもネームバリューがあればいいのですがねぇ。
何せ長らく舞台から降りていた身ですので」
くつくつと笑う。
白本を見れば、笑みを濃くする。
「読まれるのは構いませんが、没頭して仕事を忘れては困りますよ?」
そのまま共作者の手をとる。
「期待していますよ、『脚本家』様。
是非とも我々が満足するに足る脚本の完成を願います。
さてさて、役者は揃い開演ブザーは鳴った。
観客もいるでしょう……動き出した物語はエンドロールまで止まりませんねぇ」
■『殺陣師』 > 「手一杯、いえ、こう申しましょう。
劇場の演出に全てを注いだと。ああ、だからこそ素晴らしい!」
磨き上げられ、整い、美しく変貌した世界を、歩きまわる。
「さて、お嬢がお帰りになられるのですから。私めもこれにて失礼致しましょう。」
『脚本家』の後を追い、舞台から降りた。
ご案内:「ミラノスカラ劇場」から『殺陣師』さんが去りました。
■『共作者』 > 「また、いずれ……『脚本家』さん……ふふ……
ぁあ……本当に……まぁ、楽しくなって、きたわぁ……あは、ふふ……」
ああ、ああ、すばらしいすばらしいすばらしいすばらしい……
「あら……嬉しいわぁ……ふふ……
大丈夫、よぉ……私は、いつでも、いつだって……この子と、共に、あるのだものぉ……」
手には禍々しく瘴気を放つこの世の全てを書き尽くし続ける本。
狂気と凶器の本を抱えながら『演出家』に取られた手を歓喜の顔で見つめる。
無垢なる白本は、じわり、じわりと黒く黒く黒く黒く禍々しく染まっていく。
「ふふ……本当に、本当に、人形なのねぇ……ぁあ、なんて人間らしくも、人形なのかしらぁ……さようなら、『殺陣師』さん。また、こんど」
■『演出家』 > 「ご満足いただければ何よりです」
手をとったまま、恭しく傅く。
「是非とも皆様には後世まで語り継がれる舞台を演じていただきませんといけませんからねぇ」
ある程度黒く染まれば、手を離す。
「さて、今宵はそろそろ……といったところでしょうか。
エスコートが必要ならば、どこへなりともご案内致しますよ。
……例え、その先が異世界であったとしても」
■『共作者』 > 「ふふ……それでは……どう、しようか、しらぁ……?
今日は、お仕事をしたからぁ……あとは、一時閉幕……貴方の、お好きな様に……エスコート、願いましょうかぁ……?」
黒く染まった本を愛おしげに撫でながら夢見るように歌うように返事をする。
連れて行かれる先は狂気の園か、悪魔の里か……そんなことはどうでもよかった。
■『演出家』 > 「では、読書好きな貴方の事です……今は本の夢に抱かれたいでしょう。
……静かな静かな場所にご案内いたしましょう。
月が世界を支配している間だけの静寂の支配する場所に……」
再び手をとった後に、観客席に向かって恭しく礼をする。
「さぁさ、今宵の舞台はこれにて終幕にございます。
次の舞台公演は未定でございますが、近いうちに必ずまた我らの顔を見る機会が訪れましょう。
お帰りの際は足元に気をつけて、お忘れ物なきようにお願い致します。
忘れてしまわれたものは、悪魔が全て持ち帰ってしまいます故に……」
再び深く一礼してからスポットライトが消える。
ご案内:「ミラノスカラ劇場」から『共作者』さんが去りました。
ご案内:「ミラノスカラ劇場」から『演出家』さんが去りました。
ご案内:「ミラノスカラ劇場」に『墓掘り』さんが現れました。
■『墓掘り』 > 「――おう、これで全部だ。ご苦労さん」
雇われた人々にチップを渡し、帰らせる。
あのエアリアから渡された携帯――そこに連絡し、『マネキン』と名乗る男から物を受け取った。
かなりヤバいものなので、細心の注意を払い、この劇場に運ばせた。
やれやれ、なんてブツを寄越すんだか……
「――さーて、どうすっかねぇ」
劇場前のベンチで一人。
煙草に火を点ける。
■『墓掘り』 > 『マネキン』の説明では。
あの一時期落第街を騒がせた『暴走剤』の改良品らしい。何を改良したか知らんが。
「こいつは一条待ちだな。俺の手には余る」
面白い事は保証するが。
使うのは表舞台の連中だ。
煙草を吸いながら、劇場を眺める。すっかり寂れちまった。大道具に頼んで修繕してもらうか……
■『墓掘り』 > 「――ふぅ」
『墓掘り』はかつてを思い出す。
目の色を変えた観客たちが、劇団の芝居を見にこの劇場へ殺到してくる。
公演は阿鼻叫喚。クスリで興奮した観客が猥雑に騒ぎ、その喧騒すら圧倒するほどの芝居が舞台で繰り広げられていた。
伝染病の芝居の為に本当に病気になった奴もいれば、ギロチンで首が飛び死んだ演者だっている。何人が劇団に入り、何人が死んだのか。『墓掘り』だって正確な数は知らない。
だが、愉しかった。
あの日々ほど愉しい時間は無かった。
■『墓掘り』 > 多分、あれと同じにはならない。
あの芝居は『団長』が居たからこそ出来たものだ。
今のフェニーチェに、あれを演じる力は、おそらく無い。
――だが、いいじゃないか。
狂気に形などあるはずがない。
俺達は俺達らしい芝居をして、その狂気を示せばいい。
何もかも同じでなくていい。同じ芝居だって、昨日とまったく同じになどならない。
「――次は。各メンバーに連絡だな」
美味そうに煙草を吸う。
落第街の安物だが、生きている実感に満ちた今。本当に煙草ですら美味く感じる。
■『墓掘り』 > メンバー同士の連絡、スケジュール調整も舞台監督の役目だ。
もっとも、連中はスケジュールを調整する気なんざはじめから無いので、メンバー同士の連絡が主になる。
どうせこのミラノスカラ劇場に火が灯れば勝手に寄ってくるだろうが。
金も入ったし、メンバーを見つけたら連絡をつけるようにしよう。
「――まぁ、連絡しても無意味な連中も多いんだけどな」
煙草をふかしながらボヤく。
一癖二癖どころか百癖ありそうな連中ばかりだ。
■『墓掘り』 > そういえば、ものすごい大金が入ったところだった。
何か食いに行くのもいいな。
「――寿司、焼肉、しゃぶしゃぶ、コース料理」
とはいえ、一人で食う気にもならない。
何か食いたいものは……
■『墓掘り』 > 「――ピザ食いてぇなぁ」
自然と口をついて出た。
窯焼きのピザじゃない。落第街でも配達してくれる、あのやたら生地が厚くてチーズとトマトの味しかしないやつ。
あれが食いたい。
ってか、何でピザなんだ俺。
もうちょっと良いものがあるだろう。
■『墓掘り』 > いや、理由は分かってる。
かつて『公演』の前には、皆でミラノスカラ劇場に泊まりこんでピザを食っていたからだ。
あの欠食児童どもの食事を準備するのも舞台監督の仕事。
みんな『またピザかよー!』って文句を言いながらもばくばく食ってた。確か照明が一人で凄い量食って文句を言われてたはず。
やれコーラ取ってくれだのトッピングはアンチョビだペパロニだなど、大騒ぎしながら皆でピザを食べたものだ。
「――あぁ、そうだな」
■『墓掘り』 > そうして舞台で皆で騒ぎながら。
ピザを食い、コーラを飲み、各々好き勝手に話をして、片づけを俺に押しつけやがるんだ。
「――――」
『墓掘り』は無意識に立ち上がり、劇場の方を向いた。
あの頃の喧騒は、もう戻ってはこない。
彼の食べたかったものは、永遠に手に入らない場所へと行ってしまったのだ。
火の点いたままの煙草から、灰が落ちる。
「――何で死んじまったんだよ、団長」
ご案内:「ミラノスカラ劇場」に『室長補佐代理』さんが現れました。
■『室長補佐代理』 >
「――何でも何も、問うだけそれは無駄なことだろう?」
■『室長補佐代理』 > その男は、いつの間にかそこにいた。
ザンバラの黒髪を揺らし、銀の指輪をつけた左手を仰いで、そこに。
伽藍洞を思わせる瞳で、じわりと『墓掘り』を見て……嗤った。
「公演まではまだ時間があるのかね」
■『墓掘り』 > 「――芝居に無駄な台詞なんざぁない」
ゆっくり向き直る。
公安の腕章。あぁ、そうか。
あのチラシは、どうやらお気に召して貰えたようだ。
「……お客様、申し訳ありませんが、当劇場は本日公演を行っておりません。
凱旋公演はもう少し先になります」
■『室長補佐代理』 > 「それは残念だ。じゃあ入部希望ということにしておこう。それなら、文句はないだろう?」
嘯き、そのへんに転がっているベンチに座る。
本来なら、公演を待つ聴衆が座るべき席。そこに堂々と。
「それとも、客も入部希望者も選べるほど『偉い』劇場だったかな、ここは?」
■『墓掘り』 > 「入部希望?
それはそれは――」
クックッと笑う。あぁ、成る程、公安だ。
滑稽な程に合理的で、傲慢で、そして――恐ろしい威圧感。
「当劇団は来る者は決して拒まない。だが――あんたはお断りだ」
『墓掘り』はベンチの前に立つ。
背に汗をかき、ともすれば震えそうになる膝を伸ばし。
劇団員として、公安の男の前に立つ。
「この劇団は、己の人生を愉しく演じるものの為の場所でね。
生憎、誰かの為に生きようなんていう『正義の味方』の居場所はねぇよ」
■『室長補佐代理』 > 目前に立つ『墓掘り』をみて……男はじわりと嗤う。
男は座ったままだ。立っている『墓掘り』よりも視線は低い。
座視したまま、『墓掘り』を見上げる。仰ぐ。『覗き』込む。
伽藍洞の瞳が細まる。真っ黒な瞳孔が『墓掘り』を見る。
その闇が収斂して、じわりと――滲む。
「誰かの……為?」
男は嗤う。くつくつ、唸るように。
まるで、大笑を抑えるように。
「常在舞台。全てが観客。全てが役者を謳う連中の一員が、そもそも舞台で客や共演者を選ぶということも大層な笑い種ではあるが……
いうにことかいて、『正義の味方』が、誰かの為?
本気でいっているのか? 『劇団員』」
くすくすと、男は……嗤う。
■『墓掘り』 > 「違うのかい?」
目の前の男に負けないように嗤う。
まぁ、引きつった笑いだ。所詮『墓掘り』は三文役者。目の前の男の威圧感には到底勝てやしない。
目を覗きこまれれば、冷汗をかいた事までバレている気がする。
「あんたら公安は、常に居もしない『誰か』の為に戦っているじゃないか。
学園の秩序? 名も無き誰かの安寧? お前たちの『救う』誰かは、一体誰なんだい?」
己が何を喋っているのか。
もしかしたら、この言葉は自分ではない誰かの言葉ではないか。
何に突き動かされて言葉を紡ぐのか。
それすら分からず『墓掘り』は台詞を続ける。
「この常世島は全てが舞台、全てが観客、全てが共演者だ。
だがな、いくらエンターテイメントでも『全ての共演者、全ての観客を受け入れる』なんてお行儀の良さを求めるんなら、大人しく常世劇場にでも行くんだな。
ここはミラノスカラ劇場だ。観客が罵声を飛ばして役者をこき下ろし、舞台になだれ込み滅茶苦茶にし、時には共演者に殺される事だってありうる。
それが『フェニーチェ』だ」
『墓掘り』は精一杯の虚勢を張り、宣言した。
■『室長補佐代理』 >
「云ったな? 『フェニーチェ』」
『墓掘り』の言葉を聞いて。
男は……嗤う。
嗤う。嗤う。嗤う。
滲む笑顔は汚泥の如く。
「謳ったな? 『フェニーチェ』」
男が、立ち上がる。柱のように。森の古木のように。
黒髪を振り乱して、『墓掘り』を覗き込む。
伽藍の瞳は虚の如く。
「嘯いたな? 『フェニーチェ』」
その笑みが、愉悦のそれであると、いつ気付けるであろうか。
その笑みが、嘲弄のそれであると、いつ気付けるであろうか。
男は、嗤う。
墓穴の底で己を見返す『墓掘り』に、じわりと……嗤う。
「観客が罵声を飛ばして役者をこき下ろし、舞台になだれ込み滅茶苦茶にし、時には共演者に殺される事だってありうる。
それが、『フェニーチェ』なのだな?」
男は、嗤う。
「なら――同じことをされても何の文句もいえないな、『フェニーチェ』
ここはミラノスカラ劇場だ。お行儀の良さなんてどこにもない、観客が罵声を飛ばして役者をこき下ろし、舞台になだれ込み滅茶苦茶にし、時には共演者に殺される事だってありうる舞台だ。
お前はそういった。
なら、お前が『そう』されても……助ける奴は誰もいない」
男が――嗤う。
「演目は正義の味方。付き合って貰おうか。『フェニーチェ』
俺の救う誰か……それが一体だれか? その問答が、今回の演目だな?
悪くない問答だ。付き合ってやるから、付き合って貰おう。
それとも、役者でもない男に怖気づき、引けをとるか? 『フェニーチェ』」
■『墓掘り』 > 勘弁してくれ。
泣きそうになるのを堪えながら墓掘りは天を仰ぐ。
何で舞台監督がこんな事せにゃならんのだ。一条とか『七色』とかに任せたい。
もしくは『死立屋』とかがいい。あいつなら会話にならないから。
「分かったよ『正義の味方』。
お前らが助け、お前らが焼き、お前らが殺してきたのが一体誰か」
が、まぁやるしかない。
劇場の前で、こんな喧嘩を売られて。
買わなけりゃ、劇団員の名が廃る。
そして男は仮面を脱いだ。
こうなりゃヤケだ。最後まで付き合ってやろうじゃないか。
「なぁ、聞かせてくれよ『公安委員』!
お前らが俺から奪ったものをよぉ!
劇団に劇場、数多の劇団員、フェニーチェを待望する観客、阿鼻叫喚の日々、そして『団長』!
はは、お前らが焼き払ったそれらに匹敵する価値のある『誰か』ってのを見せてくれよ!」