2015/09/03 のログ
ご案内:「カジノ『比良坂』」にジブリールさんが現れました。
ジブリール > 【始めはほんの些細なことだった。
 表側にある『蓬莱』というカジノでは出来ない、刺激的な賭けをしようとして立てたのが始まりだったらしい。
 それが次第に膨れ上がり違法品だらけの品が取り扱われるようになり、こうして組織が出来上がったという。
 規模も薄く人数も多くは無く、纏まりも無い組織だ。】

「……フフッ」

【女はその一員、ではなかったが、数日前から興味を抱いて此処を視察に訪れた。金持ちの女、ということで一先ず金を積んだらすんなり通してくれた。
 そうしてときたまこの場所でトランプゲームや、サイコロ、ルーレットを回して遊んでいる。
 ここに流れてくるものは表向きには流せないものばかりだった。金や銃火器、薬物やはたまた生き物、魔道書――様々なものが集まるここは、"そういう人"達にとっては勝手のいい温床である。】

「はい、これでどうでしょうか」

【興じていたポーカーゲーム。フォーカードを突き出しながら柔らかく笑んだ。相手の手札と見比べる。女の勝ちである。】

ジブリール > 「あら、あら。またわたくしの勝ちですわ」

【といっても、女自身は大した賭け事を行なっていなかった。精々食事を奢ってもらうだの、ほしいものを買ってもらうだの。このカジノの中では比較的健全な内容で勝負をしていた。
 広くもなく狭くも無い部屋に歓声と怒号が混ざる。女人にして幼げな背丈の彼女に負け続けている男は机をたたきつけた。
 腰に力を入れると容易に軋みあげる椅子が、同調するかのように悲鳴を上げた。】

「ではこの後はお食事とお洋服の選別に参るということで、よろしくお願いしますわ、オジサマ」

【口元を吊り上げる。サングラスをしているせいで表情は読みきれないものの、その眼は歓喜で緩んでいたことだろう。
 本来女は包帯を巻いてやりすごしていたが、この場所に来ると包帯を巻いているだけで変に突っかかられることが多かった。
 何度も歩いて見回りした末に、目線を悟られず、光を一定量シャットアウトするサングラスを購入した。効果は覿面である。】

ジブリール > 【ポーカーゲームも遊びつくしたので、席を立って飲み物を貰いに行くことにした。
 表向きの場所であれば従者を付けていられるのに、ここでは一人で移動しなければならない。難儀である。

 ―――サングラス越しで反応する塗料を事前にセットしておいたからいいものを。】

【バーテンの元へと向かう。「今日も荒稼ぎですか」何気ない世間話を振る。】

「はい。お陰様で」

【女はにこやかに笑い、トマトジュースを頼んだ。一泊おいて出来上がるまでは無言が続き、傍のテーブルには別の誰かが賭け事で得て積みあがったチップの山をみて沸き立つ群集がいた。】

ジブリール > 【その人物の卓には段々と同卓者が少なくなってきた。背後の観客に混じってトマトジュースを飲みながら観察する。
 ――賭け事は何も運ばかりではない。確率論と記憶力も交えれば論理的に自分の手札がどのようにできるかを把握し、勝負事のリスクを減らすことができる。
 女は運に振り切ったパラメーターで勝負しているが、その人物は真逆らしい。
 非合法の賭博が行なわれるここではどのようなことがおこるか分からない。
 着飾った裏の人間――敗北者達は悲喜こもごもの表情を浮かべているのが見える。
 女はそれを見るのが溜まらなく好きだった。】

ジブリール > 【コトン。女はトマトジュースが入っていたグラスをバーテンに返した。】

「ではまた少し、遊んできますわ」

【確約で食事と洋服。ほんの少しの『お小遣い』稼ぎも出来たら上々だろう。
 この人物とも勝負してみたかったが、今は大した賭け事が出来ないので相手にはできないだろう。
 夜は更ける。欲望が渦巻くこのカジノは様々なにおいで溢れていた。時たま香る甘い香は、――まァ、そういう類なのだろう。】

「楽しみですわ」

【女は嬉々として手を合わせ、適当な人物の肩を叩いて手合わせのおねだりをする。
 その人物の表情が引きつるほどに強運として知らしめていることに気付いたのは、帰りがけにオジサンから食事を奢ってもらったときだった。】

ご案内:「カジノ『比良坂』」からジブリールさんが去りました。