2016/07/28 のログ
ご案内:「レストラン灰汁原」に灰汁原 仕上さんが現れました。
灰汁原 仕上 > 「──さあ、喰うがいい」

床に黒い塊がばら撒かれる
切り分けられた四角く黒い塊、漂うゴムの匂い
薄汚い格好の客達は床に這いつくばってそれを奪いあう

「争うな、まだある」

それを見て裕福そうな身なりの男は嗤う
嗤いながら口に運ぶは同じく四角く切られた黒い塊
いかにも高価な皿に盛られている黒い塊

「いかがでしょうか?お味の方は」

『──。』
裕福な身なりの男は褒める
思いつく限りの賛辞を述べて

「左様でございますか」

震えながら笑みを浮かべる
吹き出しそうになるのを耐えている

灰汁原 仕上 > 『───。』

「ワインでございますね ご用意させていただきます」

水道水を器に貯めてそれに赤い絵の具を一滴たらせば『ワイン』の出来上がり
これを良いワインの瓶に移し替えればそれはもう『高級なワイン』

『───。───?』

その色水を注いだグラスを回して嗅いで得意げに銘柄を告げる顔

「──流石のご慧眼 確かに初めて飲まれた方はそれと良く間違われます このワインは──」

そう言ってありもしないワインの蘊蓄を話しはじめる
頷きながら飲み進める様子にまたも吹き出しそうになるのを耐える

灰汁原 仕上 > 「はい、お会計はいつも通り現金でお願いいたします」

一センチほどの厚みの封筒を受け取り
裕福そうな男を満面の笑みで送り出す

「また、おこしくださいませ 」

裕福そうな身なりの男は外に待っていたボディーガードの男と共に去っていく
満足そうな足取りで

「っ…くっははははははははは 見たか貴様らあれを見たか!
 これを笑わずに何を笑う ほら貴様らも『笑え』 」 

男の背中が見えなくなれば貯めていたものが一気に噴き出す
床に残った一片も残さぬように舐めていた客たちも言葉に釣られたように笑い始める
だが、笑いながらも食べるのは止めない

「車のタイヤを食べて!絵の具の水を飲んで!それを褒め称える!
 ああ、なんて作り甲斐のない!なんて作り甲斐の無い!!
 貴様ら何を笑っている!私の嘆きがそんなに面白いか!『笑うな』!」

先ほどの笑い始めと同じようは笑いは止まらない
既に料理を食べ終わった一人の声が未だに店内に響く

「『笑うな』って言ってるだろう!
 ああ、お前も私を馬鹿にしてるのか!馬鹿にしやがって!」

止まらない笑い声に耐えられず厨房に駆け込み包丁を持ち出し

そして…

灰汁原 仕上 > 「またやってしまった…まあ、明日のランチに出せばいいか…」





本日はこれにて閉店  

ご案内:「レストラン灰汁原」から灰汁原 仕上さんが去りました。