2017/11/04 のログ
ご案内:「違反組織群」に狗隠さんが現れました。
狗隠 > 時刻は太陽が中天を過ぎて、徐々に夕刻、そして夜へと傾いていく頃合。
それでも、落第街やスラムに蠢く無数の違反組織、部活の活動は続いている。

…とはいえ、今、この右腕を失った怪異が潜んでいる場所は完全にもぬけの殻だ。
無論、それを確認していたからこそここに身を一時的に潜めているのだが…。

「…再生の速度が遅い、か。矢張りまだ人型に慣れていないのが原因と見るべきだな…。」

ボロボロの壁に背中を預け、右腕…今は肘の半ば程度まで何とか再生したそれを眺め呟く。
ここはとある違反組織が根城にしていた廃ビル。弾痕や血痕、散乱した物がここで何が起きたかを物語っている。
…まぁ、風紀委員会に摘発・襲撃を受けたのだろうな、と狗は思いながら一息零す。

(…まぁ、本来の姿を晒すよりも敢えて人型の方が紛れるには都合が良いのだがな…)

本来の姿になれば、即座には行かずとも再生もさっさと済むかもしれない。
だが、迂闊に本来の姿になれない…厄介な相手とこの前遭遇したのもある。

狗隠 > 誕生してまだ1ヶ月程度…怪異としては赤ん坊に等しい。勿論人間から見てもそうだ。
それが、ここまでの理性と知性を保てているのは…自身の出自故だろうか。

「…うむ、落第街やスラムの死者の寄せ集めという身も蓋も無い怪異ではあるが」

そこに、幾つかの伝承が加わり骨子を形作り今の自分が在る。そして誕生した以上はは出来る限り在り続けたい。

「…我…んん、俺を構成する死者の無念がそう思わせているのだろうか」

今は一つの明確な自我として、一つの怪異としてここに存在している己。
だが、元を正せば無数の死者の集合体なのだ。記憶も経験も当然引き継いでいる。
無力な者、傲慢な者、強い者、弱い者、男、女、子供に老人。人外の死者も己の『中』には居る。

(…まったく、よくもまぁこれだけ雑多な想念が集いつつ俺という自我が確立されたものだ)

狗隠 > しかし、この人型の擬態…無駄に人の内臓、骨格、神経、筋肉を再現しているのが我ながら大変だ。
だからこそ、人の中に紛れるにはかなり都合が良い…服装や気配は兎も角。

「…擬似的とはいえ、痛覚や疲労も再現しているのは…良いのか悪いのか」

ただ、痛みというのは危険信号でもあると知識や記憶にある。ならばまぁ、いいのだろう。
人型という時点で、元々『狗』の姿が本体の己にとっては窮屈さはあるのだ…今更であろう。

「一先ず、右腕の再生を完了させて…後は、そうだな…何か武器と…服か」

己の姿を一度見下ろしてみる。…コート、シャツ、ズボン、靴。一通り揃ってはいる。
揃ってはいるが、どれもこれもがボロボロだ。薄汚れて敗れたり穴が開いたり酷い。

…これはこれで、スラムの浮浪者という誤魔化しが利くので悪くは無いのだが。
そして、この怪異は失念しているがスラムの住人にしてはその赤い瞳の理知的な光が浮いている。
…のだが、それに彼が気づく事は無い。流石に瞳の色や目付きまでは考えが回っていないのだ。

狗隠 > 「さて…小休止はこのくらいにしておくか」

十分に休息は取った。壁に預けていた背を離し、軽く人型の肉体の調子を確認する。
特に問題はなさそうだ。あまり一箇所に長く留まり続けるのはこの辺りでは得策ではない。
特に、基本は排斥される側に回る事が多い怪異にとっては…。

(…俺以外にも怪異が、この島に当然居るとして…どう溶け込んでいるのか。参考までに聞いてみたいものだな)

そんな事を思いつつ、ガラスが全て無くなって枠だけしか残っていない窓へと歩み寄り。
そのまま、無造作に身を乗り出せば空中へと飛び出す。風の魔術で自身を浮かせ同時に推進力を生み出せば。

そのまま、一陣の風の如く人の形に擬態した黒狗の怪異はその場を後にするだろう。

ご案内:「違反組織群」から狗隠さんが去りました。